ようこそ! 連歌の世界へ!(3)

前回は2022年3月3日に開催された、南宗禅寺連歌会の様子をお届けしました。はじめて拝見した連歌は、ルールの中で競い合い、ライブ感たっぷりで、しかも参加者(連衆)同士の作品が相乗効果を発揮するという、文学による協演でありスポーツ競技のようでもありました。
今回はその一月後。4月2日に開催された花の下連歌会の様子をお届けしながら、どうしてこの連歌会が生まれたのか、代表の竹内魁成さんにお話をお聞きしました。

 

■三好長慶公縁のお寺で

▲竹内魁成さんと三好長慶公の銅像。

 

1ヶ月後の南宗寺の境内に、南宗禅寺連歌会の面々……連衆たちがつどっていました。お天気にも恵まれ、桜の花も見事に咲き乱れています。

竹内さんには、これまでもまさにここにある三好長慶の銅像建立など三好長慶に関するイベントの取材記事で何度も登場していただきました。
この南宗禅寺連歌会も「三好長慶」が縁だったのだといいます。
「この南宗寺連歌会をはじめて7年目です。この長慶公の銅像を造った時に、『連歌、連歌』という夢のお告げを聞いて閃いたんです。それで三好長慶公がたしなんでいた連歌をしようと」

連歌の歴史は、伝説ではヤマトタケルが東征の際に詠んだ連歌がはじまりとされ、文献上では万葉集にも掲載されています。その後、平安時代には公家の間で様々な形式の連歌が楽しまれるようになり、鎌倉時代には一般の庶民の間でも連歌は流行します。時代と共にルールは洗練され、南北朝時代になって、関白も務めた歌人・二条良基によって式目はまとめられ、それが現在も使われています。つまり、現代の歌人たちは、600年も前の人々と同じルールで競い合っているというわけです。

 

▲まさに文字取りの花の下連歌会です。

 

戦国時代になっても、歌人にはある種のステイタスがあったのでしょう。三好長慶機内を掌握し、織田信長に先駆けて天下人となった三好長慶も優れた連歌の詠み手として知られていました。
戦争に強いだけでなく、政治力とは切っても切り離せない文化教養の力も優れていたのが三好長慶の魅力です。それを知らしめのに連歌をというのは、竹内さんに夢のお告げを下した何者かはなかなか鋭いですよね。

ともかくその夢のお告げで、起きたその朝から竹内さんはさっそく行動を開始します。

 

■南宗禅寺連歌会発足

▲三好長慶は茶人としても知られていました。この日はお茶を野点で楽しみながら。

 

目覚めた竹内さんは、連歌所のある平野の杭全神社へ飛び込み、宮司さんから協力をとりつけ、南宗寺の田島老師に報告。連歌会を開催すると決まった所までがたった一日の出来事だったそうです。その後、これもわずか一ヶ月の間に、鶴崎裕雄宗匠を紹介していただき、三好長慶が開山した南宗寺での連歌会の準備会が発足したのでした。
「最初はみんな初心者でしたが、5年目になって冊子を作って全国に配った所、堺の南宗禅寺連歌会はすごいと褒めていただけるようになりました。ついに太宰府連歌会から招待されるようになったんです」

 

▲鶴崎宗匠もお茶を楽しまれていました。

菅原道真公も連歌の名手として知られ、かつては連歌会では道真公の肖像画を掲げるほどだったそうで、太宰府は連歌のメッカなのだそうです。冊子はこれまでの作品や、関係者のコラムが掲載された立派なもので、なるほど堺の連歌会はすごいと思われるでしょうね。
しかし、竹内さんにとっては、これはまだ第一歩にすぎないようです。
「大鳥大社にも連歌会を作りまして、教えにいくことになりました。大鳥大社は和泉国一宮ですから、摂津、河内の一宮にも連歌会を作りたいと思っています。摂津の住吉大社、河内の枚岡大社。私は堺を連歌のメッカにしたいんです」

 

▲この日、採択された句は三好長慶公の銅像に掲示されていました。

 

さてこの日の花の下連歌会の方ですが、発句は前回の連歌会で入会したばかりの千代子さんが詠まれた「武士や歌を詠まんと花のもと」(千代子)でした。
ここから、全部で四十四句の連歌が始まります。
この発句に続く「脇」は田島碩應老師の句、「泉の園にかげろふのたつ」(碩應)となっています。この花の下連歌会が開かれている南宗寺は、三好長慶が治めた和泉国きっての名刹です。発句の「武士」が何者なのか、その姿を補強する一句ですね。
それに続くのは、「春ひかり そよ吹く風にさそわれて」(魁成)と、竹内魁成さんの句。400年以上前に活躍した三好長慶の姿から、今日この日春風にさそわれて集った連歌会の情景が詠まれました。連歌によって、時代を貫く物語が描かれていきます。はたして、今度の連歌はどんな仕上がりになるでしょうか。長い旅の始まりです。

旅といえば、南宗寺には観光客もやってきます。この日も通りすがりに連歌会の様子を見て驚き、興味深そうにされていました。きっと彼らの旅行の思い出には「南宗寺に行ったら、三好長慶の銅像の前で連歌をやっていた」ことが刻まれるでしょう。

さて、連歌についての記事でしたが、皆さんはどんな印象をもたれたでしょうか?
筆者は漠然と感性で勝負し芸術性で角を突き合わせるようなイメージをもっていました。しかし、実際には厳密なルールがあり、そのルールがあるが故にむしろ気軽に参加し、自由に創作を楽しむことができる敷居の低さに驚かされました。
竹内さんは「子供連歌会をしたい」とおっしゃっていましたが、子供でもできる、いや頭の柔軟な子供だからこそ楽しめるのが連歌ではないか、とも思いました。
これからの南宗禅寺連歌会の活動が楽しみです。

 

南宗禅寺連歌会
南宗寺
堺市堺区南旅篭町東3丁1-2


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