ツアー・オブ・ジャパン堺ステージのアツイ一日(2)

 

自転車ロードレースの国際大会ツアー・オブ・ジャパン堺ステージが4年ぶりに堺に帰ってきました。この堺ステージは、ユネスコ世界遺産の大仙古墳(仁徳天皇陵)に隣接する大仙公園が会場です。午後に行われるツアー・オブ・ジャパンの第一戦を前に、同じコースを利用して午前中には全選手が参加する堺国際クリテリウムが行われ、その様子を前回の記事では紹介しました。堺ステージが1周のタイムトライアルの個人戦なのに対して、堺国際クリテリウムは10周のチーム戦です。一日で違うタイプの2レースを楽しめる堺ステージはなかなかお得ではないですか。ちなみに、この2レースの間にも、”国際”がつかない堺クリテリウムというレースが行われていました。丁度時間帯が堺国際クリテリウムの表彰式とかぶっていたので、様子を見に行けなかったのは残念でしたが、そうなると1粒で3度美味しい堺大会と言えそうです。
さて、今回はその堺国際クリテリウムの表彰式と、同じメインステージで引き続き行われたチーム紹介の様子をお届けします。

 

■堺国際クリテリウム表彰式

 

▲堺国際クリテリウムの勝者はマトリックスパワータグのゲオルギオス・バグラス選手。

 

ツアー・オブ・ジャパンに出場する全選手100名ほどが参加した堺国際クリテリウムの勝者はマトリックスパワータグのゲオルギオス・バグラス選手でした。
大仙公園内催し広場に設けられたステージでは、昨日の記者会見でも司会されていた方の軽快なMCが会場を盛り上げ、さっそく表彰式が開催されました。
まずステージに登場したのは、3位入賞のトリニティ・レーシングのルーク・ランパート選手。トリニティ・レーシングはレース序盤は常にレースをリードしていました。終盤になってもトップを争う位置にいましたが、最終的にルーク選手が3位に入賞という結果に。
2位には、宇都宮ブリッツェンの小野寺玲選手。宇都宮ブリッツェン、マトリックスパワータグはレース終盤に、トリニティ・レーシングとトップ争いを繰り広げていました。いずれにせよ表彰台に立った選手たちにしてみれば、午後の本番を前に実力の片りんを見せたという所でしょうか。

 

▲入賞選手に堺観光コンシェルジュから花束の贈呈。

 

では、そのツアー・オブ・ジャパン堺ステージに出場するのは、どんなチーム・どんな選手たちなのか。表彰式に引き続きチームプレゼンテーション(出場チーム紹介)が行われました。各チーム3分ずつとのことでしたが、トークが弾み少々時間オーバー気味になっていました。

 

■チームプレゼンテーション(出場チーム紹介)

●スパークルおおいた

▲2021年設立のスパークルおおいた。プレゼンテーションの後は、サイン会もおこなっていたそうです。

 

トップバッターは2021年に九州大分市で設立されたスパークルおおいた。九州初のUCIコンチネンタルチーム(UCI(国際自転車競技連合)に登録しているチーム)。昨年の東京ステージではもう少しで表彰台という成績だったそうです。マイクを握る黒枝咲哉選手です。
「4年ぶりに8ステージ、フルステージで帰って来たということで、すごい楽しみでもありますし、久しぶりの長丁場のステージで不安な面もあります。初めてのスパークルおおいたとしてのフルステージなので、楽しみながらリザルトを残していきたいと思います。今回は東京と美濃ステージが平坦ステージということになると思うので、スプリンターチームの僕たちとしては、その2ステージで表彰台に上れるように皆さまにみていただければと思っています」

 

▲魅力的な笑顔で活躍を誓った黒枝咲哉選手。

https://sparkle-oita.jp/

 

●ヴィクトワール広島

▲ヴィクトワール広島は、2015年に誕生した地域密着型プロ自転車ロードレースチーム。

 

2番目の登場となったのはヴィクトワール広島。昨シーズンは三つの国際レースで優秀な成績を収めたチームですが、地域密着型プロ自転車ロードレースチームということで、自転車安全教室など地域貢献にも熱心に取り組んでいるそうです。MCの方が話をふったのは、世界的な実績を持ち今季新加入のベンジャミン・ダイボール選手。
「素晴らしいツアー・オブ・ジャパンに戻ってこれてよかった。(何色のジャージも似合いますねと言われてニコッと笑い)ヴィクトワール広島として来れて良かった」
ベンジャミン選手は、昨年は富士山ステージで強烈なタイムを残し、総合2位だったとのこと。
「今年はもっと富士山を早く登りたいし、チームとしてやはりステージ優勝を重ねてもっといいポジションにあがっていきたいと思っています」

 

▲新加入でチームの主力として注目のベンジャミン・ダイボール選手。

https://victoirehiroshima.com/

 

 

●グローバル・シックス・サイクリング

▲ニュージーランドで2021年に設立されたグローバル・シックス・サイクリング。チーム紹介は右端の小山選手から。

 

3番手、グローバル・シックス・サイクリングは2021年に設立されたニュージーランドのチーム。様々な背景を持つ選手に走る機会を平等に提供しているとのこと。まずは小山智也選手がマイクを握ってチーム紹介をしてくれました。
「(グローバル・シックス・サイクリングは)ニュージーランド籍のチームなんですけれど、みんなは普段ヨーロッパで活動していいて、多分ほとんどの選手は日本に来るのが初めてなんですけれど、2日ぐらい日本で主に日本食を楽しんでいて、準備はいい感じかなと思います」
誰か面白そうな話ができる人にマイクをと、無茶ぶりされたガブリエル・ミュレール選手は「時差ぼけだよ」と笑顔。チームワークのよさそうな雰囲気が醸し出ていました。
今後のツアー展開は「富士山ステージが決め手になる」と予想。

 

▲「時差ぼけ」というガブリエル・ミュレール選手に仲間たちの笑顔。右は小山選手。左は前日の記者会見に登壇されていたケイラム・オーミストン選手。

 

●さいたま那須サンブレイブ

▲那須ブラーゼンとさいたまディレーブのレース活動を統合し、2023 年に誕生したさいたま那須サンブレイブは、複数地域連携型のプロサイクルロードレースチーム。

 

次は、さいたま那須サンブレイブ。マイクを握った吉岡直哉選手がチームを紹介。
「皆様こんにちはさいたま那須サンブレイブです。今年さいたまディレーブと那須ブラーゼンが合併して誕生したチームとなります。初めて出る国際レースがこのツアー・オブ・ジャパンということで嬉しくおもっています」
プロスポーツチーム運営に様々な課題がある中、複数地域連携型で地域間コラボレーションに活路を見いだせるのか、というところにも注目のチームですね。

 

▲チームをけん引するベテラン吉岡直哉選手。

https://sunbrave.jp/

 

●チームブリヂストンサイクリング

▲チームブリヂストンサイクリングの設立はなんと1964年。東京オリンピック開催の年で、来年は60周年を迎えます。

 

白いジャージがまぶしいチームブリヂストンサイクリングは、来年は設立60周年を迎えるという歴史あるチーム。昨年の全日本自転車競技選手権では、7種目制覇という歴史的偉業を達成しています。ツアー・オブ・ジャパンでの期待も当然高く、
「123(表彰台独占)を目指していきたいと思います」
と橋本英也選手はMCとのやりとりで力強く宣言。

 

▲橋本選手とMCとの掛け合いも楽しい。

https://www.bscycle.co.jp/anchor/team/

 

●愛三工業レーシングチーム

▲愛三工業レーシングチームは、愛知県大府市に本社を置く自動車機能部品システムメーカーの愛三工業株式会社を母体とする自転車ロードレースチーム。

 

続いては愛知県から愛三工業レーシングチーム。鈴木譲選手はかつてシマノレーシングに所属していたからでしょうか、堺市在住で地元の利を活かしたいところですが……。
「最寄り駅も隣で地元も地元ということで今日は頑張りたいです。(MCから細かいコースの違いもチェック済み?)なんですが、結構コースが単調すぎて、もう僕の地元の利が全然無いというね(笑)」
ちょっと残念(?)なお話でした。

 

▲MCからレジェンドと紹介された鈴木譲選手。2009年から2013年までシマノレーシングに所属していました。

http://www.aisanracingteam.com/teamblog/index.html

 

 

●マトリックスパワータグ

▲株式会社マトリックスをスポンサーとし、高石市を拠点とするチーム。

 

次に登場したのは、先ほどの堺国際クリテリウムで幸先よく1位となったマトリックスパワータグ。お隣の高石市を拠点とするということで、ほぼ地元のチーム。設立18年目で過去にも優秀な成績を収め、さらに上を目指す「アダルト」なチーム。チーム紹介では「イケメンぞろい」とありますが、確かに皆さん格好良くて大人の色気があふれてますね!
インタビューに答えて、ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア選手は「ツアー・オブ・ジャパンに戻ってこれて嬉しい」、エドガー・ノハレス・ニエト選手は「ツアー・オブ・ジャパンにはじめて参加できてハッピー」とのコメント。

 

▲ステージから集まった観客を背景に自撮りで記念撮影。これが少年の心をもった大人ってやつでしょうか? ツアー・オブ・ジャパンを満喫してますね!

 

https://team-matrix.jp/

 

●シマノレーシング

▲堺がホームタウン! ご存じシマノレーシング。右端が入部正太郎選手。左から二人目が石原悠希選手。

 

チームプレゼンテーションも折り返しの8チーム目でようやく登場したのが、地元シマノレーシング。観客からの声援も一際大きくなります。チーム設立は1973年で、「日本の自転車競技をリードしてきた」と自負する伝統あるチームです。
前日の記者会見にも登壇した入部正太郎選手は、「気合はどのチームよりも入ってる」とアピール。午前中の堺国際クリテリウムでは5位に入賞した石原悠希選手は、
「のびのびとやれています。みんなに助けてもらっての5位です。ツアー・オブ・ジャパンは8日間と長いのでみんなで協力していきたい」とコメントしました。

 

▲ファンの応援もコンサートさながら(?) 選手タオルやプラカードで応援。

 

●EFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチーム (アメリカ)

▲EFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチームは、 UCIワールドチーム「EFエデュケーション・イージーポスト」直下型の育成チーム。

 

さて9チーム目です。母体であるEFエデュケーション・イージーポストは世界でも19チームしかないUCIワールドチームということもあり、このEFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチームで育った選手たちの中から将来のスター選手が登場するかもしれませんね。
「外国人選手2人と日本人選手4人でがんばりたい」
父親が往年の名選手として知られる橋川丈選手はMCからの質問に、
「日本ではツアー・オブ・ジャパンで走るのが初めてです。父からも楽しんで来いと言われています」
とコメント。プレゼンテーションの最後には、選手からファンにプレゼントが投げ込まれました。

 

▲ベルギー生まれベルギー育ちの橋川選手は、日本でのロードレースはこのツアー・オブ・ジャパンが初参加。

 

https://teamnippo.jp/

 

●ソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ

▲ルーマニアのソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズは、若手育成に力を注ぎ外国人のアスリートにもチャンスを与えている。

 

10チーム目はヨーロッパからルーマニアのソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ。こちらも若手育成を目的としたチームです。
マイクを手にした鳴海颯選手は、
「人生の中で一番最初に観たのがツアー・オブ・ジャパンです。そのレースに自分が出られることを嬉しくおもいます」
と、自身と大会の縁を語ってくれました。ツアー・オブ・ジャパンも長い歴史のある大会。その魅力を受け取って新しい世代が生まれ、文化が継承されて豊かになっていく。好循環の好例ですね。
クライマーのコナー・シャンク選手は「移動が多くて大変。でもKabuto(キャップのスポンサー)をかぶれば大丈夫!」と、スポンサーへの気配りもわすれません。

 

 

▲日本から世界へと渡り活躍する鳴海颯選手。

 

https://www.giottivictoriateam.com/

 

●宇都宮ブリッツェン

▲設立15周年を迎える栃木県宇都宮市を拠点とするチーム。様々な年代の育成チームを下部チームとして抱えており、海外のプロスポーツクラブチームを思わせます。

 

11チーム目は、午前中の堺国際クリテリウムで小野寺玲選手が2位に入った宇都宮ブリッツェン。キャプテン谷順成選手からも、
「小野寺が2位に入ってチームとしてはいい状態でスタートできました。チームとして形を作りたい。狙っていけば素晴らしい結果を得ることができると思います」
と、手ごたえを感じているコメント。確かに堺国際クリテリウムでも緋色のジャージはチームとして目立っていましたね。小野寺選手も、
「これから狙えるステージも増えてきます。久々のツアー・オブ・ジャパンを楽しみます」

 

▲堺国際クリテリウムで2位入賞の小野寺選手(左)と谷キャプテン(右)。

 

https://www.blitzen.co.jp/

 

●トリニティ・レーシング

▲トリニティ・レーシングはイギリスのUCIコンチネンタルチーム。多種多様な競技と性別にアプローチした、世界最高峰の若手育成チーム。

 

12チーム目は、午前中の堺国際クリテリウムでは終始トップ集団でレースをリードし、入賞こそ3位ですが最も存在感を見せたといえるトリニティ・レーシング。前日の記者会見に登壇し、3位入賞も果たしたルーク・ランパーティがマイクを握ります。
「楽しい時間を過ごせました。3位でフィニッシュし、いい流れでタイムトライアル(ツアー・オブ・ジャパン堺ステージ)に挑むことができます」
と笑顔。兄のトーマス選手が東京オリンピックMTBで優勝したジョセフ・ピドコック選手に、MCから「お兄さんからのアドバイスは?」との質問。
「兄からは良い時間を過ごしてと」
今は「トーマスの弟」と紹介されるジョセフ選手ですが、将来はトーマス選手が「ジョセフの兄」と紹介されるほどの実績をあげてほしいですね!

 

▲ジョセフ・ピドコック選手。東京オリンピックで優勝した兄のトーマス・ピドコックのように、トリニティ・レーシングから羽ばたけるか?

 

●キナンレーシングチーム

▲キナンレーシングチームは、和歌山県に本社を構える株式会社キナンをメインスポンサーとし、熊野地域をホームグラウンドとする自転車ロードレースチーム。左から三人目が山本選手。

 

13チーム目はお隣の和歌山から、熊野地域を本拠地とするキナンレーシングチーム。国際ロードレース「Tour de 熊野」での優勝とレースイベントの成長を最大の目標とするとのこと。地域イベントを育てていくというのは、面白い個性ですね。
マイクを手にしたのはジロ・デ・イタリア完走の実績を持つ山本元喜選手。
「まずはフルステージで開催できる嬉しさです。キナンレーシングチームは登りで強い布陣です」
クライマーで2021年のツアー・オブ・ジャパンでは個人総合2位、2022年も個人総合3位の実績を誇るトマ・ルバ選手は、
「もちろん前回はいい思い出。今回も強いチームです」
と自信をのぞかせました。

 

▲過去のツアー・オブ・ジャパンでも好成績を収めてきたトマ・ルバ選手。

 

https://kinan.racing/

 

●アルマティ・アスタナ・モータース

▲カザフスタンのアルマティ・アスタナ・モータース。UCIアジアツアー2022ランキングで3位を獲得した強豪チーム。アスタナワールドチームに将来移籍するための選手育成を目的としています。

 

14チーム目は、カザフスタンのアルマティ・アスタナ・モータース。チーム名のアスタナはカザフスタンの首都名から。カザフスタン自体が数多の名選手を輩出している自転車強国のようですね。
マイクを手にしたのはニキタ・ビズルチコ選手。
「日本は美しい国ですね。夢をもてたら叶うということを私は伝えたかった」
とポジティブなメッセージを発信してくれました。

 

▲ロールモデルとしての発言も見事だったニキタ・ビズルチコ選手。午前中の堺国際クリテリウムでは14位。

 

●トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム

▲トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームはマレーシアのチーム。トレンガヌ州政府によって2011年に設立されました。右端がメトケル・イヨブ選手。左から3人目がジャンバルジャムツ・セインベヤール選手。

 

15チーム目のトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームは、ツアー・オブ・ジャパンに参加しているチームの中ではUCI(国際自転車競技連合)ランキング最上位チーム。
メトケル・イヨブ選手からは、「ツアー・オブ・ジャパンに呼んでくれてありがとう。しっかりと上位で闘っていきたい」と有力チームらしいコメント。
ジャンバルジャムツ・セインベヤール選手は、「2016年のアジア選手権で来日しています。ツアー・オブ・ジャパンは色んなステージがあり楽しみです」

 

▲メトケル・イヨブ選手は東アフリカにあるエリトリア出身。かつてイタリアの植民地であった影響もあり、エリトリアでは国技といわれるほど自転車競技が盛んだそうです。

●JCL TEAM UKYO

 

▲JCL TEAM UKYOは、元F1レーサーの片山右京さんが設立し、ツール・ド・フランスに出場し、表彰台に上ること」を目標としています。

 

いよいよ16チーム目のオオトリは、2022年の優勝チームであるJCL TEAM UKYO(昨年はTEAM UKYOです。ディフェンティング・チャンピオンとして今年も好成績が期待されます。
昨年総合1位だったネイサン・アール選手は、「エキサイティングしています。今回もいいメンバーで参加しています。ジャージを守りますよ」と連覇を宣言。
岡篤志選手は、「2019年のツアー・オブ・ジャパン堺ステージでは優勝することができました。今年もがんばりたいです」とコメント。相性のいい堺で活躍が期待されます。

 

▲昨年は個人総合優勝を果たしたネイサン・アール選手。最有力・再注目選手ですね。

 

https://jcl-team-ukyo.jp/

 

チームプレゼンテーションが終わりましたが、レース開始までにはまだ時間があります。会場には沢山のブースもでていますので、次回はそちらの様子もレポートします。

 

(第三回へ続く)

ツアー・オブ・ジャパン公式サイト
ツアー・オブ・ジャパン堺ステージ公式サイト

 


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