日本製鉄堺ブレイザーズ観戦記23-24(2) vs東レアローズ第一戦(後編)
バレーボールの国内トップリーグV.LEAGUEに所属する日本製鉄堺ブレイザーズは、2023-24シーズンの開幕戦をホームアリーナである大浜だいしんアリーナで東レアローズと対戦。若いスターティングメンバーで挑み、第一セットを25-22で勢いよく奪取したものの、第二セットは20-25で奪われます。なんだか勢いが空回りしてしまった第二セット。第一セットと第二セットでなんだか別の顔をしたチームのようにも見えました。さて、勝負所の第三セット、コートに姿を現すのはどちらの顔の堺ブレイザーズなのでしょうか?
(→前回記事)
■インターバルタイムの応援を力にかえて
と、試合のレポートに行く前に、インターバルタイムのパフォーマンスの様子もお届けします。
まず第一セットと第二セット間には、日本製鉄堺ブレイザーズの公式パフォーマンスチーム「B-REX」のパフォーマンスがありました。試合開始前のパフォーマンスがスタイリッシュでプロスポーツのカッコよさにマッチしたものだとしたら、こちらは小さなお子様の心をキャッチするような可愛らしさを前面に出したパフォーマンス。堺ブレイザーズサポーターやバレーボールファンならずとも、誰であってこの会場に来ていいんだよ、そんな空気作りに一役買っていたように思えます。
第二セットと第三セットの間の15分間のインターバルタイムには、こちらも試合前のパフォーマンスタイムに引き続き、堺チアリーディングクラブ「マリン」がパフォーマンスを行いました。芸術的な要素に加えて体操選手さながらのアスリート的な要素が求められ、それを「応援」へとベクトルを向けて集約していくチアリーディング。「マリン」さんは、年代的にはキッズ年代からジュニア年代になるのでしょうか、まだ小さな体躯がはじめるような迫力のあるパフォーマンス、大掛かりなチアリーディングでアリーナを圧倒し、会場を盛り上げていました。
また、この試合はサンTVでのライブ中継があるということで、サンTVのマスコット、「おっ!さん」と日本製鉄堺ブレイザーズのマスコット「二代目我王」の夢のコラボレーションも実現。ファンの皆さんの中には、久々の地上波放送をテレビで観戦されたり録画された方も少なくなかったのでは? 2月の大浜だいしんアリーナでの試合もサンTVでのライブ中継があるそうなので、楽しみですね。
■第三セット 耐え忍び勝ち取る
第三セット序盤は、互いに連続得点ならずにサーブ権を奪い合うサイドアウト合戦となり我慢の展開に。堺ブレイザーズの得点源シャロン・バーノンエバンズ選手(13)は、第二セット以来どうも相手のブロックに捕まるシーンが目につきます。仲間の不調に、代わってチームをけん引したのは、コート内では年長の髙野直哉選手(4)。バックアタックにブロックポイントと、チームに喝を入れるかのようなプレイぶりで、ようやくブレイクして9-8となると、そこから両チームがブレイクをとりあい、12-11でテクニカルタイムアウトは堺ブレイザーズのものに。
危うい均衡が続いた第三セット前半は、このままバーノン選手がくすぶったままだとどう転ぶかわからない。そんな印象を受けました。
タイムアウト後。不安は的中。ブロックを突き破れないことでプレーのリズムに狂いが生じたのか、バーノン選手はタッチネットやラインを踏むなどミスが続き、東レアローズのブレイクとなって得点は12-14に。ただバーノン選手に腐る様子はなく、コート外までボールをおってダイブするなど、ディフェンスにも手を抜かない全力プレーを続けていました。
じわじわと点差を広げられ、耐え忍ぶような時間。しかし、「天は自ら助くる者を助く」の言葉があるように、諦めずに闘い続けたものに転機がやってきます。
リベロ堀江友裕選手(5)があげたボールを走りこんでセッター山口頌平選手(14)がバックトスでつなぐと、ラリーとなりバーノン選手にチャンスボールを届けます。ついにバーノン選手のバックアタックがさく裂。一点は同じ一点ですが、振り返ってみればこれは風向きを変える、復活ののろしとなるプレーだったかもしれません。
とはいえ、すぐに流れが変わったわけではなく、その後東レアローズにブレイクを許して19-23まで差を広げられた時には、コート上は静かになり堺ブレイザーズの選手たちも打ちひしがれているように見えました。
土俵際まであと一歩。このピンチの中、ラリーで粘った後の渡邉晃瑠選手(10)のクイックが決まり、相手のブレイクを断ち切ります。続くサーバーはその渡邉選手で、この時千葉進也監督は山口選手に代えてブロックの強いセッター赤星伸城選手(22)を前衛に送り込みます。するとさっそく竹元・赤星の二枚ブロックがブロックポイントを決め、赤星選手は見事に期待に応え、スコアは22-23に。
好プレーばかりが続かないのがバレーボール。流れを引き寄せた渡邉選手のサーブはラインを越してしまい22-24と、セットカウントに。悔しそうな渡邉選手はバーノン選手に一声かけられたあとリベロ森愛樹選手と交代しベンチへ。次のプレー、セッター赤星選手はトスをバーノン選手へ。バーノン選手のアタックがさく裂し、23-24に。
サーバーはその赤星選手。独特のローテーションから強烈なサーブが相手コートへ。両チームこのボールを粘って拾い執着を見せますが、東レアローズの攻撃はラインアウトとなり、24-24。堺ブレイザーズ、ついに追いつきます。
デュースとなりますが、続く赤星選手のサーブはラインアウト。赤星選手に代えて山口選手がコートに帰還。このまま東レアローズが一歩リードしながらデュースが続きます。
こんな時に決定的な活躍をするのが千両役者、ヒーローなのでしょう。27-27でサーバーとなったバーノン選手。まずは一発目、狙いすましたサーブがライン際を叩いてサービスエース。あまりにも大きな一点で、28-27に。
二発目のサーブも強烈で、東レアローズの選手があげたボールは大きく跳ね返り直接堺ブレイザーズコートへ。このチャンスボールを山口選手は髙野選手にトス。これを髙野選手は確実に決めて、29-27。
第三セット。土俵際まで追い詰められながらもセットを奪い取ったのは堺ブレイザーズでした。
■第四セット 実力の証明
快勝の第一セット、打ちのめされた第二セット、追い詰められ逆転勝利の第三セット。この勢いで第四セットは連取しかない。もちろん、東レアローズにしてみれば、ほんの僅差でセットを奪われただけのこと、第四セットをとってフルセットに持ち込んでの勝利を目指しているはずです。
第四セットの序盤の展開は第三セットと同じような均衡した展開に。両者相手のブレイクを許さない鎬を削るサイドアウト合戦。そこから最初に東レアローズが三連続ブレイクを取れば、負けじと堺ブレイザーズもブレイク。この時の竹元裕太郎選手(21)のノータッチエースは目が覚めるような一撃でした。
折り返しの12点目は渡邉晃瑠選手のブロックポイント。ただスコアは12-10と大きな差はつかずにテクニカルタイムアウトとなります。
中盤戦、突き放したい堺ブレイザーズに追いつきたい東レアローズの伯仲の闘いとなり、サイドアウトで点数が積みあがっていきます。刻一刻と圧力が高まり、いつか爆発することがわかっているボイラーを前にしているかのような緊張感です。
ここで先に状況を変えたのは、堺ブレイザーズでした。第三セット後半から息を吹き返したバーノン選手がバックアタックをさく裂させて17-15とすると、バーノン選手の愛称「ショー」コールで会場がわきます。そのバーノン選手のサーブから、意地の張り合いのような好ラリーが続きますが、これを決めたのはまたも渡邉選手のブロックポイントでした。ついに差が開き、18-15。
たまらず東レアローズはタイムアウトをとり、堺ブレイザーズの流れを断ち切ります。残りあとわずか、どう詰めていくかのベンチワークも重要です。堺ブレイザーズベンチも目まぐるしく動き、鵜野幸也選手(23)、赤星選手らをピンポイントで投入していきます。
東レアローズも食らいつき、ブレイクをもぎ取り21-20と迫りますが、肝心な所で東レアローズのサーブミスで22-20となると、ここでまたもバーノン選手。アタックを決めて23-20。山口選手がバーノン選手のお尻をパンチの連打で手荒い祝福をするほど、大きなブレイクです。
東レアローズがサイドアウトで23-21とした後、竹元選手がクイック攻撃を決めて24-21。ついにマッチカウントです。ここでピンチサーバーとして登場したのが、新加入の安井恒介選手(3)。本日デビュー戦、第二セットで交代出場してますが、しびれる場面での登場。この場面で、安井選手は思い切りのいいサーブを打ち、その勢いに客席から歓声があがります。しかし、東レアローズは粘りを見せてこのプレーをサイドアウト、そしてブレイク。カウントは24-23と、まさに互角。
この激戦の幕切れはあっけなく訪れます。ここまで、東レアローズの攻撃をひっぱってきたパダル・クリスティアン選手のサーブがラインアウト。無情にもラインアウト。
日本製鉄堺ブレイザーズ。今シーズン初戦、ホームゲーム初戦を勝利。改名後初の勝利です。
なお、この試合、最も印象に残った選手「VOM」に選ばれたのは新加入リベロの森愛樹選手。攻撃時は堀江選手、相手チームのサーブ時は森選手と役割分担で堺ブレイザーズのコートを守り続けた新守護神です。やはり今日の試合は、振り返ってみると守り勝ったという試合だったのかもしれませんね。
森選手にとって試合後の勝利者インタビューは、もちろん堺ブレイザーズでは初体験です。インタビュー前から、チームメイト、特に同じリベロの堀江選手から盛んに冷やかしのヤジが飛ぶ中、緊張の面持ちで受け答えされていました。森選手は、昨シーズンまではDIVISION2の兵庫デルフィーノに所属し、2年連続でサーブレシーブ賞を受賞しています。DIVISION2でトップの評価をされたリベロは、DIVISION1でも通用するところを見せつけたと言えるのではないでしょうか。
■記者会見
2023-24シーズンの初戦を勝利で飾った日本製鉄堺ブレイザーズの記者会見はキャプテンの山口選手、安定したプレーでチームを支えたアウトサイドヒッター髙野選手、新加入でスタメンを勝ち取り大活躍した渡邉選手の三人です。まずは各自の試合の振り返りから。
髙野「今日は開幕戦ということで、スタートでは硬い部分とかがあったのですが、試合をこなす中で、だんだん自分たちのプレーも出てくるようになりました。大きな勝因としては、三セット目で逆転で勝ち切れたことが大きいと思います」
山口「開幕戦ということで、個人としてもチームとしても難しい場面、劣勢の場面も続きましたけれど、3-1で勝てたということが何よりも大きくて、この一勝を機に1つ1つ積み重ねていくだけだと思います。もちろん、今日の試合の中で、色々細かい部分の修正というのは必要ですけれど、まず勝てたということは今日は本当に一番良かったです」
渡邉「開幕ということで、自分としてはいいプレーが出来たという風に思っています。また、まだまだ練習していかなければいけない点も沢山発見したんですけれど、それが分かってよかったと思います。それから、東レアローズというチームと対戦し、今日はうちのチームが勝ちましたが、明日は東レアローズも気合を上げて向かってくると思いますので、それにむけて準備をしたいと思います」
続いて記者との質疑応答です。
ーー髙野選手に質問です。今日の試合に出た選手の中ではベテランな選手でしたが、これまでのシーズンと比較してご自身の調子と、チームの状況についてどう思われていますか?
髙野「今シーズンは自分自身30才になって、ポジション別で見た時も、チームで一番上ですし、チーム全体で数えた時も上から三番目のベテランになっているので、まずは自分自身のプレーでチームを安定させるというのを心がけてやっています。チームの状況ですけれど、今日も見てわかる通り、コートに入っている選手がとても若い選手が多い中で、本当に勢いのあるチームだと思っています。そこをうまく出し切ることが出来れば、もっともっといいバレーボールも出来ると思いますし、そこを引き出すために、僕自身も安定したプレーをしていかないといけないので、もっともっと今日以上にいいプレーをして、もっともっと勝利に貢献できるようにやっていきたいと思います」
ーー山口選手。今若いチームという話がでましたが、ピンチの時にコートが静かになってしまう時もあったように思うのですが、山口選手としては何か気を使ったり、心がけていことはありますか?
山口「やはり調子のいいときは声も出るし盛り上がって、調子の悪いときは沈んじゃうというのは、当たり前というか、確かに8月9月といろんなチームとの練習試合も重ねてきた中で、一つの課題として雰囲気の波があるというのは、あることはあります。そこはリーグ戦を戦う中で、チーム全体として劣勢の中でも立て直す力というのは必要になってくると思います。自分もセッターでキャプテンなので、落ち着かせる所だったりとか、ここで一個ギアをあげて持ち直すぞというところだったり、そういうところをチームの中心としてコントロールできるようになればいいかなというのは思います」
ーー渡邉選手に質問です。先日の出陣式で、千葉監督に新加入選手の中で、最初に活躍しそうな選手は誰かと尋ねたところ、渡邉選手と安井選手の名前があがりました。今日の試合、ご自身の手ごたえはいかがでしたか?
渡邉「いいデビューだったという風に自分でも思います。また、良くしていかなければならない点も沢山あるんですけれども、スタートとしては良かったと思います。帰ってビデオを見て、どの点を良くしていこうかということについて、考えたいと思います」
ーー最後の質問ですが、堺ブレイザーズは応援がすごいチームなのだと、みんな思っているのですが、今シーズン久しぶりに声だし応援も解禁されて、今日の応援について渡邉選手はどのように感じられましたか?
渡邉「今日は何人のお客様がいらっしゃったか、ちょっと分からないんですけれども、本当に皆さんの雰囲気が大変素晴らしいという風に思いました」
堀井通訳「すいません。炎の演出についても感想を聞いてみたのですが、『あれはびっくりした。ショーはプロレスのWWEみたいだ』と言ってます」
ーー(笑)
ド派手な演出で有名なショープロレスの代名詞WWEの名前が出てくるなんて、今回の演出は大成功だったのではないでしょうか? 堀井通訳、フォローありがとうございます!
なお、スタッフの方にお聞きしたところ、今後も大浜だいしんアリーナでの試合ではド派手演出は続けるそうです。日本製鉄堺体育館などでの試合では、設備的にこうした演出は難しいので、選手とファンの交流など別のアプローチを計画しているそうなので、ファンの方もお楽しみに。
続いて千葉監督の記者会見です。
ーー試合の振り返りからお願いします。
千葉「そうですね。まずはこの開幕戦、大浜の体育館に本当に沢山のファンの方に入っていただいて、本当にうれしく思います。その中で、しっかり勝ち切れたということは、非常に嬉しく思います」
ーーミドルブロッカーの起用についてお聞きしたいのですが、今日の渡邉選手、竹元選手は、出耒田選手や松本選手がいる中で、開幕戦で2人を起用した狙いはなんでしょうか?
千葉「先週までずっと色んなチームと練習ゲームを重ねてきて、現時点で一番コンディション的にもパフォーマンス的にも良い2人が、晃瑠と竹元ということだったので、今日はスタートから使いました。松本(慶彦)自体は元々しっかり調整していて、パフォーマンスを出せる状況にはなっているのですが、わりと途中から出てもしっかりと数字を残してくれていて、練習ゲームを通してもそういった所は見られたので、松本はちょっと置いといて、というところ。出耒田については、まだちょっとコンディションが上がっていない所があったので、今日のスタートにしました」
ーー今日の勝利は、第三セットで、逆転できたことが大きかったという風に監督も思われていますか?
千葉「そうですね。はい」
ーーその辺り、どのような要因で、うまく接戦を制することが出来たと思われていますか?
千葉「やはり、終盤まで競ったところで、しっかりとサーブを弱気にならずに、打ち込めたというところと、途中から出た赤星がしっかりと目的としていた役割を果たしてくれたというのは大きかったと思います」
ーーありがとうございます。
さて、試合を振り返ると、若い力が躍動して勝ち切った試合。不安定な所も見受けられましたが、この勢い、力か本物であることを証明するためにも、翌日の東レアローズとの再戦では今日以上のパフォーマンスで勝利したいところ。
第二戦の様子がどのようだったか、レポートいたしますので、しばらくお待ちください。
(→第三回へ続く)
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