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週末は街の商店街へ行こう (後篇)

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堺東で新たにはじまった「ガシ横マーケットプラス」は、多くのお客様を引き寄せるようになりました。4回目となる9月のイベントを前篇ではレポートしました。→コチラ
後篇では、「ガシ横マーケットプラス」の会場でもスタッフとして活躍していたタウンマネージャーを訪ね、堺東銀座のビルにあるNPO「商業まちづくりネット」の事務所に足を運びました。
■まちづくりへの情熱
「『商業まちづくりネット』は2007年から活動を開始したNPOです。今回、国の緊急雇用創出事業の一環として、堺市のプロポーサル(企画提案)に『タウンマネージャー養成』で手をあげた所、通ってしまったんですね」
理事長の鶴坂貴恵さんは、簡潔に経緯を説明してくれました。この企画により、実際に雇用されたのが、アシスタントマネージャーの伊津田裕さんと川端裕貴さんの二人です。今年26才と25才という若い二人ですが、タウンマネージャーにたどり着いた道のりはまるで別のものです。
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▲東北でのボランティアでは、新しい道を作るための砂運びなど体力仕事も経験しました。

 

箕面市出身の伊津田さんは消防士を目指していました。
「卒業後、アルバイトをしながら消防士の試験にチャレンジし続けていたんですが、24才の時に断念して仕事を探している時に『町を動かそう』というタウンマネージャーの募集を見つけたんです」
危険を顧みない肉体仕事の消防士と、人との折衝やデスクワークのまちづくり、お仕事としてかけ離れているようにも見えますが?
「その2つの間に震災のボランティアがあるんです」
2011年、東日本大震災のあった直後の7月に、学生だった伊津田さんは被災地にボランティアとして入りました。
「何も出来ませんでした。何も出来ないなりに、現地のおじいさんと一緒に流された物を探したり、その時に思い出話を聞いたりしたんです」
伊津田さんがそこで見たのは、「利益関係無視で助け合う」人々の姿でした。
「コミュニティ広場のような所が出来て、そこがパブリックスペースになり盛り上がったりして。その経験が消防士とまちづくりを繋いだ部分なんです」
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▲母方の実家が北野田にあり、堺には馴染みがある川端さん。

 

一方、堺市中区の病院で出生したという川端裕貴さんは、大学時代からゼミで地域活性化に関わっていました。
「東大阪で商店街活性化事業に携わり、就職も京都のホテルやレジャー施設でのイベントをする会社で、地域貢献にも理解のある所でした。温泉街でイベントをしていたんですが、もっと本格的にまちづくりに取り組みたいという思いが強くなり退職したんです」
そしてどうせなら縁のある大阪でと、新しい就職先に堺市のタウンマネージャーを選んだのでした。
そんな二人は、堺東の商店街をどう見たのでしょうか。
「まず、大きな商店街だなと驚きました。それから飲み屋が大半だなと」
伊津田さんは初見の印象をそう語り、川端さんもうなづきます。
「僕も同じで、第一印象は飲食店が多い。そして若い世代が遊べる所がない、でした。堺の玄関口なのに飲み屋街では、若い世代はなんばやイオンに行ってしまう」
タウンマネージャーに就任した二人は堺東の問題の深刻さに気付きます。
「堺東のお客様は市役所の人か近隣のお年寄りばかりで、女性客を取りこぼしているんです」
若い世代、女性客がひきつけられるショッピングが楽しめるような物販のお店が少ない。そんな状況から、「ガシ横マーケットプラス」が誕生したのは理の当然でした。
■飲み屋街に光をあてる
2014年の3月に伊津田さんと川端さんを雇用した、「商業まちづくりネット」の鶴坂さんも二人の人材育成を進めていかねばなりませんでした。
「堺市からはOJTで人材を育てるようにというオーダーがあったんです。それで堺東駅前商店街代表の矢本憲久さんに泣きつきまして(笑)」
矢本さんたちは、2013年の11月に商店街内の飲み屋横丁で「ガシ横マーケット」という物販イベントを開催し好評を博したのですが、初回開催以後宙ぶらりんの状態でした。
矢本さんらのアドバイスを受けたタウンマネージャーの二人は「ガシ横マーケット」を発展させ、「ガシ横マーケットプラス」として開催する企画を立ち上げました。
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▲二人を指導する「商業まちづくりネット」理事の鶴坂貴恵さん。 「二人が『毎月開催します』なんて無茶なことを言って引っ込みがつかなくなって」
「プラスとつけたのは、市民にどうプラスできるのかということです。市民をどう巻き込めるかと。『ガシ横マーケット』は出店者はプロの商売人や作家の方が多かったんです。でも『ガシ横マーケットプラス』では、非営利のNPOや○○の会といった集まり、一般の作家にも間口を広げました」
企画の主になった川端さんは、イベントが買い物以外でも生活拠点のコミュニティとなることを目指しました。
「買い物をするお客様同士のコミュニティ、出店者同士のコミュニティ、お客様と出店者とのコミュニティが出来ればと。お客様が『次は私が出店する!』と気軽に手をあげてくれる。若い世代も加わってコミュニティの場として魅力が増していくと考えたんです」

 

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▲出店者同士で買い物をしたり、おしゃべり、情報交換なども頻繁です。
6月に第1回の「ガシ横マーケットプラス」がオープンし、以後毎月第三日曜日に開催され9月で第4回を迎えました。店舗数も順調に増えています。
「第1回が15店舗ほど、第2回と第3回で20店舗になり、第4回で20店舗を超えました」
現在は堺東に8つある商店街のうち、3つの商店街の協力のもと開催していますが、もっと多くの商店街に協力してもらいエリアも拡大したいのだとか。
「出店されている中の方から堺東はいいなと思う方が出て、商店街の空き店舗に店を出してもらうのが中間目標のひとつです。そういう実績を積んでいけば、信頼を勝ち得て他の商店街さんとも協力してもらいやすくなると思うんです」
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▲視察に訪れた竹山修身市長を撮影する川端さん。イベントの様子をリアルタイムで細かくネットにアップ。 ▲表通りでチラシを撒き、呼び込みをする伊津田さん。

 

イベント当日の役割分担は、伊津田さんが備品関係や呼び込み、川端さんが写真撮影やスマホでインターネットに情報や写真を即時アップする広報を担当しています。
「当日は忙しくて余裕がないんですが、後で撮った写真を見るとみんなが笑顔になっていることに気づくんです」
会場になっている横丁は昼間でも薄暗く、一般のお客様が足を踏み入れにくい場所です。そこに女性客だけではなく、小さな子供も走り回っている。その様子を見る店舗の店主さんも笑顔になっている。
「街の中に溶け込んで、保育所の散歩コースにもなってきたんですよ。あったかい空間が出来たなと思って嬉しいですね」
と川端さん。
「出店者さんも、『楽しかった』『ずっと出店するよ』と言ってくれたり、つながりも出来てやっててよかったと思います」
伊津田さんも日々成果を感じるようになりました。
「堺市広報にイベント情報が載せると、問い合わせがどんどん来るようになったんです。注目されていると実感しますね」
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▲親子連れの姿が目につきます。
■ガシ横マーケットプラスのこれから
ガシ横マーケットプラスの今後はどうなっていくのか、二人を見守る人たちの意見も聞いてみましょう。まずは鶴坂さん。
「最初は『なんだこいつらは』なんて思いましたけど(笑) だんだん堂に入ってきましたね。二人もイベントも進化してなんぼだと思うんです。同じことの繰り返しでなく、ヴァージョンアップしないと。やり方は一緒でも中身が変わっていくとかね」
フットワーク軽く他の町での取り組みを見学したりする二人の熱心さを鶴坂さんは評価しています。
「たまに街に来るのではなく、この二人は毎日堺東に通っています。だから街の店主さんや事業主さんと問題を共有しやすいんです。『路地裏にいる猫をどうしよう』とか。それに若い二人が頑張っているを見て、商店街の方も可愛がってくださっているみたいです。だからもっと若者ならではの突拍子もないアイディアを出していってほしいですね。そこに期待しているんですから」
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▲ガシ横の未来を指し示す矢本さん!?
商店街側の見方はどうでしょうか。駅前商店街の矢本さんは、
「イベントは回を重ねるごとによくなっていますね。二人の今後の成長にも期待です。二人を育てる場でもありますしね。お客様も順調に増えていて、さっき枚方からまちおこしの見学に来られた方と話していたんですが、枚方では結果を出すのに3年かかったそうです。それが堺東では4か月でここまで来ました」
ガシバルの仕掛け人でもある矢本さんは、目先の成功ではなくこれから先を見据えています。
「堺東は土日に閉めてしまう店も多くて、集客の穴を埋めたいんです。商店街も街の一員として、街の人が週末に遊べる場所にしたい。用事がなくても近隣の人が遊びに来れる場。三世代が楽しめて、おじいちゃんおばあちゃんが孫を育てる場。高齢者・リタイヤした人が子供に何か教えるようなこともしたいですね」
未来の堺東を見据えて、まずは第三日曜日には「ガシ横マーケットプラス」を開催していることを定着させたいというのは、矢本さんをはじめタウンマネージャーも共通の思いです。
「ガシ横マーケットプラス」の開催は11月まで計画されていますが、その後は白紙です。タウンマネージャーの二人の契約も2015年の1月までで、その後の継続は二人の頑張り次第で、町の人に認められるかにかかっているようです。
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▲アンケートを記入する地元の山本さん。さて評価は!?
二人はもちろん前を向いています。
「ガシ横マーケットプラス」は川端さんが主となり、伊津田さんが支える形でしたが、西区の鳳商店街では、伊津田さんが主となる形で企画をすすめています。「パフォーマンスバザール」というイベントで、ひとつのテーマのもと街角のパフォーマーと店舗が街を盛り上げる企画です。
今後について二人に尋ねると、伊津田さんは、きっぱりと言いました。
「この道でやっていくと腹をくくっています。経験もノウハウもないけれど、一言言うなら、僕に投資をしてほしい」
川端さんも同様です。
「何ができるかは見えないけれど、街の役に立つ人間になります。堺東をもっと発展させるような自分になります」
矢本さんたちがはじめ、今やタウンマネージャーたちも加わり大きく育ちつつある「ガシ横マーケットプラス」。来月にはもう一筋の横丁もエリアとし、更にスペースを拡大する予定です。
イベントの存在も浸透してきており、取材中にもチラシを片手に「ガシ横マーケットプラス」を目的に来ている人の姿も多く目にし、「思ったよりすごいな」「名前訊いたことある」なんて声もききました。
今後の更なる飛躍に期待大です。
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▲タウンマネージャーの二人。どちらも独身、彼女募集中だそうです!
TEL:090-6242-2770
メールアドレス:gashiyokoplus@gmail.com

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