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シェア型書店 HONBAKO(1)

 

陽の光の気持ちよい坂道に、そのお店はありました。
御陵通をそのまま東へ、大仙古墳の拝所へと続く坂道で、ピザ屋さん、ジェラート屋さんと軒を並べるのはシェア型書店「HONBAKO」さん。店頭においてあった絵本箱が目に留まって、ふと扉を開けてみました。
室内はテーブルとイスがゆったりと配置され、カウンターもあってカフェのようにも、もっといえば居心地のよい居間のような印象も受けます。そして、壁一面に備え付けられた本棚は、本屋さんで見慣れた本棚とはちょっと様子が違います。縦横30cmほどの正方形の棚スペースに本は並んでいますが、それぞれ個性的にディスプレイされていて、アートボックスとでも呼びたくなるような風情です。
この箱をシェアしているのが、シェア型書店ということのようですが、実際どういうお店なのでしょうか? 代表取締役の牧田耕一さんと、店長の中道尚美さんにお話しをお聞きしました。

 

■路面にでたい

▲HONBAKOそして株式会社まころ企画の代表取締役牧田耕一さん。

 

――牧田さんが、こちらのお店をオープンされたのは、一体どういう経緯からなのでしょうか?
牧田「うちは母体がホームページの制作会社なんです。ホームページの制作やウェブマーケティングを18年間を堺でやらせてもらっています。本社は津久野にあって、そちらはそちらで本社としてやっているのですが、私はずっと路面に出たいという思いがあったんです。路面というのは、人通りのあるところのことで、今はちょっと暑すぎて人通りがないですけれど、気候の良いときとか、土日やと割と人通りがあるんです」
――たしかに気持ちのいい感じの通りですよね。
牧田「そうですよね。僕はこういう環境下でやりたいというのはずっとありました。僕は商売人の子として生まれて、親戚もみんなそうなんですけれど、物心がついたころから西成の一杯飲み屋みたいな所で、ニッカポッカを履いたおっちゃんの足を引っ張って、ボンボンって可愛がってもらって、そういうのが原風景としてあるんです。そういう所で人間関係が出来るとか、酒を飲んで盛り上がっているとか、そういう商売に憧れがあるんです」
――飲食、接客、本社のお仕事とは方向性が違いますね。
牧田「制作会社やマーケティングって、打ち合わせとか取材とかで、人とお話したりっていう機会はあるんですけれど、いったん素材を持って帰ってしまったら、延々と事務所で仕事をすることになります。それが路面に出ると、たまたま入って来たお客さんと話をして、そこで仕事ができたり、仕事をお任せするパートナーさんが出来たり、雇用を生んだりとか、そういうことが出来るのが楽しいなというのは、ずっとあったんです」
――なるほど。子どもの頃からのあこがれと、今のお仕事にないビジネスの広がりの重なる所がこのお店なんですね。
牧田「以前から、あちこちに物件を見に行ってはいたんです。例えば中百舌鳥とか堺東とか、JRの堺駅や我孫子の方とかも見たことがあるんですけれど、なかなかコストもあがるし、人が入って来てお話してたりすると、生産性も下がるし、なかなか両立が難しなという所があったんです」
――接客と制作の両立は難しいですよね。

 

▲店長の中道尚美さん。

 

牧田「それで2年ぐらい前に、シェア型書店を吉祥寺の方で始めた方の情報をネットで見つけたんです。ここもそうなんですが、そこでは箱のオーナー、箱主になると、持ち回りでお店ができる仕組みになっているんですね。接客を箱主さんにやってもらったら、僕たちはここで仕事をしながら、来ていただいたお客様と人間関係を築くことが両立出来るんじゃないかとうのが、一番最初のきっかけというかアイディアだったんです」
――オーナーの箱主がお店番をするというのが面白いアイディアですね。
牧田「このシェア型書店の仕組みは先ほどの東京のブックマンションさんが始めました。大阪でもちょこちょことシェア型書店をやっているところがあるのですが、お店番は大概強制なんですよ。利用者は必ずしないといけないというのがあるんですけれど、うちは希望者だけにさせてもらっています」
――お店番をするのが難しい方もいるでしょうから、柔軟性があっていいですね。それで開店はいつ?
牧田「昨年の9月23日にオープンしました」

 

 

■逆風も乗り越えオープン

▲取材中にも次々と箱主さんが訪れ、店内はずっと賑やかでした。

 

――実際の開店の準備にはどれぐらいかかったんですか?
牧田「わりとパタパタやってしまったんです。この物件は三階建てで、さびたシャッターを開けたら何もなくて、駐車場みたいにして使ってたようです。古い畳の部屋だったりで。横の喫茶店でこの場所いいなと思ってたら、色々縁があって、ここを借りれることが出来るようになったんです」
――リノベーションには随分時間や費用もかかったのではいですか?
牧田「そうですね。三階全部リノベーションしたので、それなりに時間はかかりました。ネットで情報を見つけたのは(2021年)10月ぐらいで、次の日は吉祥寺にいって、事業計画立てて、もう1月には着工しているんで、そこはかなり早かった」
――すごい行動力。
中道「当初は1月の頭ぐらいに着工して春にはオープンする予定だったんですけれど、資材の高騰や職人さんが入院されたりして、(2022年)9月の末になってしまったんです」
牧田「物件の選定をここと決めて、資金調達を考えて、工事会社も決めてたんです。やるんやったらこの会社と。うちとお付き合いのある会社さんで。それで1月着工で、この通りは全部桜通りでめちゃくちゃ綺麗なので、その時期に合わせられたらなと思ったんですけれど、店長の言う通り、資材の問題とかで遅れに遅れて」
中道「物が入ってこないというね」
――大変でしたね。
牧田「そこから余裕をたっぷりとって、オープンを9月23日に決めて、オープンまでに箱主さんを募集して、オープニングイベントの時にはもう仲良くなっているような状況を作ろうという目標を立ててやっていて割とトントン拍子でした。オープン前からメディアに取り上げていただいたり」
――箱やこのお店のハードも素晴らしいのですが、人との出会いやつながりというのがすごく重要そうですね。
牧田「お店番という仕組みがあるのと、この三階建ての三階に一階と同じ面積でシェアスペースというのがあって、箱主さんになっていただくと使っていただけます。例えばヨガのインストラクターの方が、ヨガ関連の本を置かれて、三階でヨガの体験イベントで使っていただける。このシェアスペースでのイベントに、他の箱主さんが喜んで来てくれるんですよ。どんな人か知りたい。あの人がやるんやったら行こうと。それで仲良くなってもらって、すごく早い段階でコミュニティが出来たんです。それで人間国宝さんにもなった」
――おお!(笑) あのテレビ番組の人間国宝に! 出だしの逆風はありましたがトントン拍子じゃないですか!

 

▲三階のシェアスペース。ワークショップだけでなく、展覧会などにも使えそうです。

 

シェア型書店HONBAKOのヒミツの一つは、箱主さんとの関係にあるようです。こうしてインタビューをしていても、次から次へと箱主さんがやってきて、店内は賑やかになってきました。

次回の記事では、箱主さんとのコミュニティ。そしてそのコミュニティから外へと広がっていく活動について紹介していきます。

 

(→第二回へ続く)

 

シェア型書店HONBAKO
堺市堺区大仙中町8−2
https://honbako-cafe.com/

 


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