与謝野晶子

花狂爛みだれ髪groovin’! イベントレポート

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いつもは人通りも少なく、ひっそりと身を横たえている綾之町東商店街。そこに、花と歌声と多くの人々がやってきました。ジャンベ(アフリカの太鼓)やギターの音が野外会場になった空き地に響き、出店も賑やかなこのお祭りの名は『花狂爛みだれ髪groovin’』。開催場所の綾之町東商店街は堺区の旧市街地でも北端に位置します。

 

■隠れたグルメ商店街
「近所の人すら信じないんですが、昔は人で溢れて迷子が出るぐらいの商店街だったんだそうです」
そう教えてくれたのはイベントを取り仕切ったひとり、木工房『あをい屋』の辻大樹さん。高石市在住で、縁があって学生だった数年前に元呉服屋さんの店舗を自力で改装して工房をオープンしました。辻さんの『あをい屋』には、地元の人たちだけでなく、職人やアーティストも頻繁に顔を出すコミュニティスペースとして機能しています。昨年は、人形作家の三浦孝裕さんと共に、そうめん流しのイベントを開催して60人もの参加者を集めるなど、これまで無縁だった人が商店街に訪れはじめていました。
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▲物静かな『綾ノ町東商店街』に沢山の人の姿が。 ▲かつてはマーケットだった空き地。

 

「このコロッケ、美味しい!」
誰もが驚きの声をあげたのは、『あをい屋』とライブ会場の空き地を挟んだお隣の『酒井精肉店』さんのコロッケです。寒の戻りで冷たい風が吹く中、アツアツの揚げたてコロッケは大好評。
この日は商店街の店舗で買い食いしてもらおうと、近くの御惣菜屋『菜ころこころ』さんの手作りおにぎりが会場で販売されました。
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▲おにぎりと、『和泉商店』のお漬物も。
「コロッケもすごいけど、この漬物も絶品ですね!」
と感心しきりだったのは、イベントに餃子の屋台を出したお持ち帰り餃子の専門店『龍崋山』の毛穴貴祥さん。こだわりの絶品餃子の開発者です。美味しいものを食べ続けたグルメの舌が、商店街のコロッケとお漬物にうならされたのです。
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▲美味しさの秘密が知りたくなる 『酒井精肉店』のコロッケ。(撮影:加藤恵大)
その毛穴さんが「白ごはんに合う餃子」というコンセプトで開発した『龍崋山』の餃子。お持ち帰り専門なのですが、この日は特別に毛穴さん自らが餃子を焼いての販売です。会場にごま油の焼けるいい香りが漂いはじめました。

 

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▲オーナーの毛穴さん自ら餃子を焼きます。 ▲『龍華山』は3月17日に宿院店がオープンしたばかりです。
■みだれ髪groovin’!
「『花狂爛 みだれ髪groovin’』は、2013年の12月7日に開催された『与謝野晶子生誕祭』からはじまった一連のアートイベントの一つなんです」
今回このイベントを企画したクリエイターズユニット『PAO』の渕上哲也さんと朝岡あかねさんは、阪堺電気軌道(ちんちん電車)に導入された新型車両『堺トラム』1号の『茶ちゃ』、2号『紫おん』に与謝野晶子をテーマにしたアート展示を行いました。
「トラムに乗ってアートを楽しんで町へ行き、トラムから町へ降りてアートを楽しんでほしい。綾ノ町電停からすぐの綾ノ町東商店街は『花狂爛 みだれ髪groovin’』というイベントを開催するのにぴったりの場所でした」
イベントタイトルは、生花を利用したライブアートの『花狂爛』、そして音楽ライブの『みだれ髪groovin’』の二つのタイトルを重ねたもの。
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▲『みだれ髪バンド』登場です。(撮影:加藤恵大) ▲ジャンベの坂本剛士さん。『アロハサカイアンズ』や『Water Drop Travellers』でも活躍中。(撮影:加藤恵大)
ライブ会場では、いよいよ『みだれ髪バンド』のバンドメンバーが舞台に登場。
「僕らなりに芸術家・与謝野晶子さんを解釈し、選曲しました」
バンドのリーダー、ジャンベ奏者の坂本剛士さんは、晶子のロマンチシズムや哲学をテーマに曲をセレクト。この『みだれ髪バンド』は、このライブのために結成されたバンドで、実はメンバー全員が初顔合わせ。しかし、そんなことを感じさせない演奏が始まります。オープニングはブルース演奏に合わせて晶子の短歌の朗読です。
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▲ソウルフルなヴォーカルの中島理恵さん。(撮影:加藤恵大) ▲ギターの樋口恵介さん。指先を切る熱演も!!(撮影:加藤恵大)

 

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▲『SADA JAZZ BAND』のウッドベース、SADAさん(左)。中島さんのお友達がコーラスで参加。(撮影:加藤恵大) ▲キーボードのマリリンさん。頼もしい存在でした。(撮影:加藤恵大)
芸術家であり、母であり、故郷から出た越境者でもある与謝野晶子の多面性を表現するように、選曲のジャンルも様々。
昭和歌謡あり、ブルース、ジャズ、ゴスペル。30分ほどのライブは瞬く間に過ぎ、最初のステージが終わりました。
■子育て世代も楽しめるライブイベント
物販ブースのお店も、与謝野晶子をテーマに商品をセレクトしていました。
今回出店した『紙cafe』のある山之口商店街は、与謝野晶子の生家跡にほど近く、晶子との縁は深いものがあります。『紙cafe』をプロデュースしている『つーる・ど・堺』ももともとは『与謝野晶子百首かるた』の紹介からはじまったwebサイト。今回は堺カミモノと一緒に『与謝野晶子百首かるた』を並べました。
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▲『紙cafe』の出店。ここでも『ぱんだこふん』は大人気。のぼりも登場しました。
歴史の息吹の感じられる素晴らしい発想の展示を見せてくれたのは、アンティークアクセサリーの『イシズピエスモンテ』。晶子年表と、その年に出来たアンティークスプーンを飾りました。
『おらが春ビンゴ』では、素敵なアクセサリーに、都島区で経営するカリフォルニア料理のお店『セイントカフェ』のサービス券も提供してくださいました。
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▲『イシズピエスモンテ』は1970年代からアメリカで生活したイシさんが、ヒッピーやネイディブアメリカンから製法を学んだ、アンティークスプーンなどを加工したアクセサリーを制作販売しています。(撮影:加藤恵大)
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▲アンティークスプーン展示。晶子と同じ時代を生き、年月を経たものだけが持つ本物の質感。
南大阪最大規模のイベント『フリーフェスティバル』主催者、2階建ての雑貨屋さん『アジュカジュ』は、『母』としての晶子に注目。「お母さんがいつもステキ・綺麗でいられる小物」をテーマにセレクト。お母さんにプレゼントしたくなるアイテムが揃いました。
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▲日本全国100人以上の作家の作品が揃う『Ajukaju』。(撮影:加藤恵大) ▲美しくディスプレイされた作品たちは、どれも素敵です。(撮影:加藤恵大)

 

花を手に会場に足を運んでくれた方もたくさん。ライブアートイベント『花狂爛』は、故郷を離れた晶子が菜の花に堺の面影を見て歌に詠んだことにちなみ、思い出の花を一輪もってきていただき、その場でライブアートするという企画。担当したのは堺出身の若きアーティスト、Ren Hasudaさん。このイベントは幅広い年齢層に参加していただきましたが、特に目立ったのが子供たち。
「花は生花でも造花でも写真でも絵でも構わない」
とのことで、その場で描いた花の絵をディスプレイすることも出来たのです。子供たちは大喜びで花の絵を描いてくれました。
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▲ご近所の皆さんが花を持ってきてくださいました。左はアーティストのRen Hasudaさん。 ▲子供たちが花の絵をお絵かき。

 

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▲どこに飾ろうか……。 ▲「僕の絵はここ!」 少しづつ完成に近づきます。

 

このライブイベントは親子連れにも大好評。子供がライブアートに参加している間に、お母さんたちがゆっくりショッピングやライブを楽しめる仕組みになっていたところが喜ばれました。
ライブが終わってからは、坂本さんによるジャンベ教室も開催。多くの子供たちがはじめて異国の楽器に触れ、太鼓を響かせたのでした。

 

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▲坂本さんの手拍子に合わせてジャンベ教室のはじまり! ▲はじめてジャンベに接したみんな。楽しんでます。(坂本さんのジャンベ教室情報はこちら
■白熱のイブニングライブでフィナーレ!!
夕方。肌寒さも増してきたころに、第二ステージの開始です。
『みだれ髪バンド』がステージに立つと、最前列には先ほどジャンベ教室で太鼓をならったばかりの子供たちが並びます。
寒さを吹き飛ばすような熱演が繰り広げられました。
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▲ライブ演奏に初挑戦! (撮影:加藤恵大) ▲女子三人組もジャンベ&手拍子で。(撮影:加藤恵大)
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▲アンコール! (撮影:加藤恵大)
この日のイベントには、久しぶりに綾ノ町東商店街へ訪れたという方もいました。
「20年ぶりに来ました。酒井さん(お肉屋さん)も和泉さん(漬物屋さん)も荒物屋さんも、みんな覚えていて。懐かしくて」
挨拶をした商店街のすべてのお店で買い物をされたとか。
「子供のころに過ごした商店街が、こんなに賑やかになってうれしい」
と、子供時代を近所で過ごした方が、今度は自分の子供を連れてきたりもしました。
堺には、東日本大震災の影響で避難を続けられているご家族が多くいます。この日のイベントには数家族が招待されていました。
年月を経るにしたがって、むしろ生活が苦しくなる傾向にある避難生活。そんな中で、ひさしぶりに髪を切ったという女性の方がこんな話をしてくれました。
「自分で切るんじゃなくて、お店で切ってもらった時、『人間性を取り戻した』って思ったんです」
生活費を切り詰め、おしゃれとも無縁の生活を送り三年近くになるそう。この日、力の抜けた表情でお祭りを眺めていました。
いつの間にか足が遠のいていた地元の方、遠く東日本から堺に来られた方、色んな方がこの日、この場所に縁あって集うことができました。
アート、ライブを通じて、美味しい食べ物を通じて、心に何かが灯る。そんなハレの日に皆さんにとってなっていればいい。そう思う一日でした。
協賛:阪堺電気軌道、サンユー都市開発、ホウユウ株式会社

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