与謝野晶子

堺トラム2号「紫おん」お披露目と町をつなぐアート

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▲与謝野晶子をテーマにした『紫おん』。晶子が好きだった紫色の車体です。

 

我孫子にあるちんちん電車の車庫。
普段は鉄道マンでもなければ入らない敷地に、60人ほどの市民が集まっていました。カメラを提げた鉄道ファンもいれば、年輩の方、親子連れまで様々な人たち。共通しているのは、どこかワクワクしているような期待に満ちた表情です。
それもそのはず、この日は堺トラム2号「紫おん」のお披露目式なのです。
「ちんちん電車」あるいは「ちん電」の愛称で親しまれる阪堺線(阪堺電気軌道)は、堺市民の生活の足です。
料金改定後、堺の浜寺から、大阪の天王寺・新今宮(恵美須町)まで200円で行けるとあって、最近は乗客も増えてきました。
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▲我孫子の車庫に多くの人が集まりました。 ▲竹山市長は「100年の計画。これからは世界へ発信していく」と挨拶。左はとても気さくな阪堺電気軌道の山本社長。
来賓の竹山修身堺市長もにこやかです。
「『紫おん』ちゃんがこの3月から運行することになりました。昨年導入された『茶ちゃ』に続いて2両目の堺トラムです」
と、「ちゃん」づけで「紫おん」お披露目会挨拶の冒頭を飾り、導入された意義を語ります。
「『紫おん』は低床車両でお年寄りや障がいを持つ方も乗りやすい」
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▲向かって左が昭和3年から走るクラシカルな車両。右が2013年に導入された堺トラム1号『茶ちゃ』。千利休にちなんでお茶のグリーンの車体です。
そうなのです。車両の中には昭和3年に製造されたものが現役で走り、クラシカルな風情が愛され、堺を代表する観光資源となっています。が、車体とホームの段差は高く乗降の不便さが問題になっていました。
そこで導入された堺トラムは低床車両でホームと同じ高さなのです。ベビーカーも車いすもそのまますっと乗り込める。
「これも、市民の皆さん、ちんちん電車を愛している皆さん、鉄道ファンの皆さん、特に『未来へつなごう! 堺ちん電の会』の皆さんが応援してくれた結果です」
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▲『未来へつなごう! 堺ちん電の会』の堀畑会長。廃線の危機を乗り越えたのも市民の熱意があってこそ。 ▲お待ちかねの『紫おん』がみんなの前に登場!
竹山さんと並ぶのは『未来へつなごう! 堺ちん電の会』の会長堀畑さん達。会の尽力が結実した今日の日です。
「『紫おん』は『茶ちゃ』の時よりも多数の方に寄付をしていただきました。ちんちん電車と共に今生きた証を後世へと残すことが出来るんです」
堺トラムの車内には寄付した方のお名前がプレートに刻まれ、トラムがあるかぎり、堺と大阪を自分の名前が走り続けるのです。
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▲寄付された方の名前が刻まれたプレート。 ▲『紫おん』に乗り込みます。
さぁ、いよいよ試乗の開始です。喜色をあらわにして参加者が堺トラムに足を踏み入れます。まっさらな車体、綺麗なシート、名前の刻まれたプレート。見どころは沢山ありますが、ぜひ視線を少し上に向けてください。
天井と壁の接する曲面部分に写真展示があります。これは堺在住のアート集団『PAO』の制作したアート作品なのです。
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▲すっきりして落ち着いた印象の車内です。 ▲PAOの現代美術家朝岡あかねさんが、作品について解説しました(この日の展示は、1月中に『茶ちゃ』に展示されていた『あきこin堺 2013』のアート作品)。
1月の『茶ちゃ』の展示は堺名物の写真に混じる形でありましたが、3月1日から1か月間展示予定の「あきこin堺2014 『母のくにの花』」は、すべてのスペースを使った展示です。
これは23才の時に堺を出て帰ってこなかった晶子の『川ひとすじ 菜たね十里の宵月夜 母がうまれし国美しむ』という歌を詠んだことをヒントに、晶子と逆に故郷を離れて堺で暮らし働く異郷の人々を撮影し、思い出の花について尋ねた作品です。
「美術館やギャラリーに飾られているものだけがアートではない。アートと人、アートと町などの関係性があってはじめて成立するアートがこれなのです」
PAOの朝岡あかねさんと渕上哲也さんの2人が今回手がけたのは、トラムと町を繋ぐアートです。

 

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▲竹山さんと現代美術家の朝岡あかねさん。
「3月のトラムの展示期間に合わせて、阪堺線の沿線の各所でイベントやアート展示・ワークショップを開催する予定です。堺の若いアーティストやミュージシャン、町や商店街の人たちと一緒になって、盛り上げていきたいです」
『つーる・ど・堺』と『紙カフェ』などホウユウグループも、堺を元気にする仲間・協賛企業として『あきこin堺 2014』に参加します。
現在予定されているイベントについてご紹介しましょう。
●アート展示 Ren Hasuda in ART BOX
『宿院』電停下車、山之口商店街内の『ギャラリーいろはに』さんの外壁に設けられたシューウィンドウ「ART BOX」では、このスペースをひとつのギャラリーに見立てたアート展示がおこなわれます。
アーティストは、堺在住のRen Hasudaさん。「花」をテーマに、瑞々しく女性らしい感性の作品が展示されます。展示期間は3月1日から31日まで。

 

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▲15年の歴史を持つ『ギャラリーいろはに』。休廊は木曜日です。 ▲道行く人が気軽に覗ける、町に開かれたアートボックス。

 

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▲空間プロデュースをしたRenさんの作品。 ▲青色にこだわったというRenさんのフォト作品。
●オリジナルノート作りワークショップ
同じく山之口商店街で、ひとつ北の『大小路』電停近くの『紙cafe』では、昨年行われた『メイドインさかいフェア』で好評を博したオリジナルノート作りのワークショップが行われます。
ちんちん電車や燈台に古墳など堺名物模様などのハンコや、色とりどりのマスキングテープを使って、無地のノートをデコレートします。小さなお子様から大人まで、自分の感性を自由に発揮して楽しむことが出来るのです。

 

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▲オリジナルノート作りの様子。10分~15分程度で個性的なノートが完成します。 ▲町家を改装した『紙cafe』。堺にちなんだ雑貨や、堺珈琲・古墳カプチーノなどユニークな喫茶も楽しめます。
●ライブ&アートライブイベント 花狂爛 みだれ髪groovin’
大道筋と線路が分かれる『綾ノ町』電停からすぐの綾之町東商店街内のクリエイターズ工房『あをい屋』を中心にライブとアートライブのイベントが開催されます。
ライブ『みだれ髪groovin’』では、ジャンベ(アフリカ太鼓)奏者の坂本剛士さんと、ウッドベースやエレキギターも入り、「晶子」をテーマにセレクトした昭和歌謡からブルースやジャズまで幅広い楽曲を演奏します。バンド名はずばり『みだれ髪band』
当日は無料ジャンベ教室・体験もありますので、お子様も一緒におこしくださいね。
そして、アートイベント『花狂爛』には、『ART BOX』のRen Hasudaさんが登場。
「参加者は思い出の一輪の花を持ってきて、アート作品作りに参加できます」
商店街が華やかになる花の作品になりそうですね。
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▲『あをい屋』で行われた『そうめん流し 涼葵祭』の様子。ライブ会場は、車いすスペースも設けられ、小さいお子様も来ていただきたいと、禁煙になるそうです。 ▲ハワイアンチーム『サカイアンズ』や音楽ユニット『Water Drop Travellers』などでも活躍するジャンベ奏者の坂本剛士さんを中心に結成された『みだれ髪Band』。
試乗会はいよいよ山場。
皆の期待を乗せて『紫おん』が動き始めます。
車庫から我孫子道電停へ。年代物のホームに、真新しい車体が入ってきました。
そして堺へ向けて出発進行!
トラムは坂道を上り、大和川を渡る鉄橋へ。
全日の悪天候が嘘のように、川面は晴れ渡り、土手の緑が目に入ります。
川を渡ると堺市です。高須神社、綾之町を過ぎて大道筋へ。線路脇の植樹帯には、黄色い花が咲いています。

 

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▲菜の花など、植樹帯の花が咲き『紫おん』を迎えてくれました。 ▲3月から浜寺~天王寺間を運行します。
「堺は綺麗ですね」
乗客の1人が呟きました。車と同じぐらいの低い目線は新鮮で、町が間近に感じられます。

 

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▲走行中も車内は静かで揺れも少なく感じます。 ▲左は『あきこin堺』を支援する『ボルボックスアート団』の岸田さん。阪堺沿線の魅了を紹介する『チンチン電車ぶらぶらサイト』も運営。
時に自動車と入り混じって走る大阪市内と、堺では阪堺線の様子も違ってきます。雑多な賑わいが身近に感じられる大阪と、端正な落ち着きを見せる堺と2つの顔を持つ阪堺線は、やはり魅力的な鉄道だと感じたのでした。
■企画:PAO
■共催:堺市

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