与謝野晶子

与謝野晶子巻頭歌

歌および校訂は、講談社「与謝野晶子全集」を参照したものです。
[ 初 ] … 初出誌・紙( 書簡も含む )  [ 新 ] … 新潮社版 「 晶子短歌全集 」
[ 改 ] … 改造社版「 与謝野晶子全集 」  (1)~(5)…(初句)~(結句)を示す。

1.みだれ髪
夜の帳(ちやう)にささめき盡きし星の今を
下界(げかい)の人の鬢のほつれよ

[ 新 ] 夜の帳(ちやう)にささめきあまき星も居ん下界(げかい)の人は物をこそ思へ
[ 改 ] (2)ささめきあまき

2.小扇
われと歌をわれといのちを忌むに似たり
戀の小車絃(をぐるまいと)さらに巻け

[ 初 ] 虞美人草 – 明星 明 35・7 (4) 戀の小ぐるま
[ 新 ] (1)この頃は (3)忌むに似ぬ
[ 改 ] 初版同

3.毒草
肩を垂れ裾にそよぎし幾尺は
王(わう)が手にさへ捲かれじなとも

[ 初 ] とある日 – 明星 明36・9
[ 新 ] (5)捲かれじとせし
[ 改 ] 新同

4.戀衣
春曙抄(しゆんじよせう)に伊勢をかさねて
かさ足らぬ枕はやがてくづれけるかな

[ 新 ] 初版同
[ 改 ] 初版同

5.舞姫
うたたねの夢路(ゆめぢ)に人(ひと)の逢(あ)ひにこし
蓮歩(れんぽ)のあとを思(おも)ふ雨(あめ)かな

[ 初 ] はなたちばな – 明星 明38・6 (5) おもふ雨かな
[ 新 ] 初版同
[ 改 ] 初版同

6.夢之華
おそろしき戀(こひ)ざめごころ何(なに)を見(み)る
わが眼(め)とらへむ牢舎(ひとや)は無(な)きや

[ 初 ] 新詩社詠草 – 明星 明39・1 (4) 瞳(ひとみ)とらへむ
[ 新 ] 初版同
[ 改 ] 初版同

7.常夏
ある宵(よひ)のあさましかりしふしどころ
思(おも)ひぞいづる馬追(うまおひ)啼(な)けば

[ 初 ] 朝寝顔 – 藝苑 明40・1 (4) 思ひぞいづれ
[ 新 ] (4) 思ひぞ出づる
[ 改 ] 新同

8.佐保姫
この五日(いつか)うつし心もなきわれば
狐(きつね)の墳(つか)を踏(ふ)みてこしかも

〔初〕(無題)-萬 明41・10・17(5)けだし踏(ふ)みしかも
参 新詩社詠草-明星 明41・11
〔新〕(1)この日ごろ(5)踏みてきぬらん
〔改〕(4)(5)狐の塚を踏みて來にけん

9.春泥集
一人(いちにん)はなほよしものを思(おも)へるが
二人(ふたり)あるより悲(かな)しきはなし

〔初〕青き傘-東京毎日 明43・7・27 参 うきくさ集-文章世界 明43・8
(増)(無題)-都 明43・8・28
〔改〕(5)悲しきは無し

10.青梅波
美(うつ)くしく黄金(こがね)を塗(ぬ)れる塔(たふ)に居(い)て
十(と)とせさめざる夢(ゆめ)の人(ひと)われ

〔初〕塔-東京毎日 明43・8・6美(うつ)くしき黄金(わうごん)ぬりし
塔(たふ)に居(ゐ)て十年(とせ)さめざる夢(ゆめ)の人(ひと)かな
〔新〕初版同
〔改〕初版同

11.夏より秋へ
琴(こと)の音(ね)に巨鐘(きょしょう)のおとのうちまじる
この怪(あや)しさも胸(むね)のひびきぞ

〔初〕(無題)-大阪毎日 明45・2・24 梵鐘(ばんせう)の音(おと)と
琴(こと)の音(ね)うちまじるこのあやしさも胸のひゞきぞ
参 梵鐘-新日本 明45・4
〔新〕初版同
〔改〕初版同

12.さくら草
この頃のわが衰へを美くしと
見るすべ時にうち忘れつつ

〔初〕歌二十首-文藝復興 大3・6(4)見る術時に
〔新〕初版同
〔改〕初版同

13.朱葉集
何(なに)すると遠方(をちかた)に居(い)て知(し)ることも
この世(よ)ばかりのことに終(をは)るな

〔初〕朱葉集-三田文學 大4・11
〔新〕初版同
〔改〕初版同

14.舞ごろも
まぼろしが幻(まぼろし)として消けぬ薬(くすり)
われのみぞ持つ君のみぞ持つ

〔初〕幻と病-三田文學 大5・4 幻がまぼろしとして消ぬ薬われのみぞ持つ君のみぞもつ
〔新〕初版同
〔改〕初版同

15.晶子新集
憎むにも妨げ多きここちしぬ
わりなき戀をしたるものかな

〔初〕(無題)-東京日日 大5・11・17 (3)こゝちすれ
〔新〕初版同
〔改〕初版同

16.火の鳥
春(はる)の水(みづ)君(きみ)に馴(な)れたる
心(こころ)とわが思(おも)ひとも
見(み)ゆる夕(ゆふ)ぐれ

〔初〕(無題)-大阪毎日 大8・5・9
〔改〕(3)こころとも

17.太陽と薔薇
凋落も春の盛りのあることも
教へぬものの中にあらまし

〔初〕(無題)-大阪毎日 大9・5・15
〔改〕初版同

18.草の夢
劫初(ごふしよ)より作りいとなむ殿堂に
われも黄金(こがね)の釘一つ打つ

〔初〕(無題)-萬 大11・1・21(2)造(つく)りいとなむ
〔改〕(2)つくりいとなむ

19.流星の道
御空より半はつづく明きみち
半はくらき流星のみち

〔初〕靄の塔-明星 大11・11(3)明き道
〔改〕(2)なかばはつづく

20.瑠璃光
榮華など見も知らざるにおぼつかな
捨てんと神に子の誓ふかな

〔改〕初版同

21.心の遠景
わが倚るはすべて人語(じんご)の聞えこぬ
ところに立てる白樺にして

〔初〕越佐游草-明星 大13・9 赤倉と關にてト詞書アリ
〔改〕初版同

22.霧嶋の歌
大君(おほぎみ)の薩摩の圀に
龍王(りうわう)の都つづくと見ゆる海かな

[ 改 ] (4)みやこつづくと

23.満蒙の歌 (満蒙遊記より)
船室の白と港の山うつる
鏡もさびし皐月の七日

[ 改 ] (2) しろと港の (4) かがみもさびし

24.白櫻集
裸木が何れも武器(ぶき)に代わるべき
用意をしつつ師走に至る

[ 初 ] 疎花 – 冬柏 昭9・12

 


つーる・ど・堺

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