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企画展「みてさわって堺のやきもの~はじめまして、堺生まれのやきものです。」@さかい利晶の杜(2)

さかい利晶の杜で開催されている企画展「みてさわって堺のやきもの~はじめまして、堺生まれのやきものです。」は一部の展示品を実際に触れることができます。前回の記事では、会期に先立つ内覧会で、堺陶芸会の昼馬和代さんから、作品を出展している堺市の堺陶芸会と姉妹都市ウェリントンのウェリントン陶芸家協会の出会いや、展示している茶器について解説していただきました。今回のレビュー記事第二回では、同じやきものでも造形作品の一部を紹介していきましょう。

 

■堺陶芸会の作品を紹介

 

 

日本では陶芸作品というと器が真っ先に浮かぶ人が多いのではないでしょうか。欧米では造形作品と器はまったく別物として扱われているともききますが、日本の作家はどちらもやる方が多いように思います。それは、茶の湯、茶道があるが故、器も芸術のジャンルとして認められているからではないかと思うのですが、どうでしょうか?

内覧会には、堺陶芸会のメンバーも何人か来ておられて、作家自ら解説をしていただくことができた作品をここでも紹介することとしましょう。「 」内は作家のコメントから。

 

 

●「風の音」河井聖憲

 

「泉ヶ丘の土を使い、二回焼いている作品。本体は釉薬なしで焼き締め、「麻の葉」の模様が描かれたプレートの部分には釉薬を使っている。フォルムは漢字の風をイメージ」
この風は至善豊かな泉北丘陵地帯を吹く風でしょうか。だとしたら、やはり朝鮮半島から渡来した技術者たちが、土や薪を求めてさまよった古墳時代の風なのかもしれませんね。

 

●「珊瑚たちの海」佐藤美枝子

 

「青い海がこれからも無限であることを願いながら作った。外側の白い模様は珊瑚の産卵をイメージ。外側の色彩は少なくなっており、内側をぜひ覗いて見て欲しい」
南の海へと見るものを誘ってくれる作品。作者が一番見せたい色彩豊かな珊瑚を壁で囲んだ遊び心が面白い。内側を覗き込むという行為は、擬似的な潜水で、海底への冒険なのでしょう。

 

●「The Moon」大橋成光

 

「球体を目指した作品ですが、焼くときに縮んで割れたり、自重で崩れるなど、これまで3回失敗してきました。これが4回目で、中はハニカム構造になっています。表面は月の写真を見ながら、クレーターも作っています」
これだけの大きさの球体をやきもので作ることが、どれほど技術的に困難なことなのかを語っていただきましたが、クレーターを一つ一つ刻み「月」を表現しようとした美へのこだわりも相当なもの。月に惹かれる作者の心に惹かれます。

 

 

●「オリエンタルの風 Ⅷ」嘉見菊子

 

「友人であるインド人のキャプテンから更紗のタペストリーをもらい。それを作品に取り入れました。ノコ歯模様は、インドの大地をイメージして鳥、花、文字を表現しています」
下部のどっしりした造形と文様が大地から湧き上がる力を感じさせます。その上をなぞる風も土の香りをはらんでいるようではないですか。

 

●「にょきにょき」米地紀美子

 

 

「沖縄が好きで、沖縄の巨木やマングローブをイメージ。なやんだり、考え込んだりする姿を表現」
キノコのようにも、人のようにも見える作品。顔を寄せ合い相談しているような姿、ただ1人背を向けたたずむ姿。とても雄弁な沈黙を感じます。

 

●「白い砦」昼馬和代

 

 

「粘土を薄くのばしたものを積み上げて80kgほどあったものの中をくりぬいています。これは岩の中の家をイメージしていて、たとえば戦争で家に帰ることが出来ない人が、明日には帰ることができると思い描く家。同じように仕事で家に帰る事が出来ない人にとっての家。岩の中の砦のイメージです」
美しい風紋の刻まれたこの岩は、古代の巨獣たちが闊歩していた時代から何億何千万年の風雪に耐えて起立している岩なのでしょう。悠久の時を過ごす岩にとって、刹那の一時を過ごす人間は、なんとも儚い存在にすぎない。動きを封じ込めたような表現の中に、硬軟、遠近が潜んでいる面白い造形だと思います。

せっかくなので、昼馬さんにお話を聞いてみました。
――今回の企画展では、堺陶芸会の皆さんは、抹茶茶碗のような器としてのやきものと、造形作品の両方を出展されていました。昼馬さんの作品は、社会的なテーマの強い作品で、現代芸術の文脈で作られた作品だと思います。この二つのジャンルで創作されている違いはあるのですか?
昼馬「作っていると違和感はないですね。現代造形は造形を追いかけていく。(器と)入り口は違うけれど、追求していくと同じところへ行くと、私は思いますね」
――道具でもある器と、造形作品が突き詰めると同じになるというのは、興味深いですね。
昼馬「お茶碗を作っている時に、オブジェの展覧会があって、もっと(お茶碗を)作りたいと思っても中断しないといけない時もありますけれど。あの作品(白い砦)も、大地から出てきたモニュメントで、形を追いかけている。自然を自分にしていく所は一緒なんです」
――器は楽焼と伊羅保焼の二種類でした。楽焼は堺では湊焼でもおなじみですが、伊羅保焼はどこのやきものになるのですか?
昼馬「もともとは韓国のやきものです。堺の土を使って、堺独特の伊羅保が出来ればいいと思い、堺伊羅保と名付けているんです」

オブジェと器を完全に別ジャンルと考えるのは、浅はかな考えだったようです。違いはあれど、両者に通底する精神を昼馬さんは語ってくれました。そして、堺伊羅保の挑戦など、日進月歩する堺のやきもの文化のこれからにも注目したいですね。

 

■ウェリントン陶芸家協会作品

 

堺市とは姉妹都市であるニュージーランドのウェリントン市。堺市の様々な面を知って欲しいという意図で、企画展ではウェリントン陶芸家協会の作品7点が展示されています。そのうちから3点を紹介します。

 

●「新西蘭(アオテアロア)の光」 久美子 ジャコラン

 

 

アオテアロアはニュージーランドの公用語の一つであるマオリ語でニュージーランドという意味。日本で陶芸を学びウェリントンで暮らす作家による手捏ねによる茶碗。ウェリントン在住で堺陶芸協会の大橋成光さんの設計による穴窯で焼かれたとのこと。
パステル調の景色が淡く浮かび、ニュージーランドの海や空を思い浮かべます。

 

●「火炎による社会の一面 Facet-nation with Fire」 ピーター ランブル

 

 

作家のピーター ランブルさんは、ウェリントンの穴窯焼成チームの一員で、学生の指導をしているとのこと。タイトルにある「社会の一面」から、作品の表面の流線文様はマオリの意匠を取り入れたもののように推測しますが、どうでしょうか? マオリ語が公用語に採用されていたり、ラグビー代表でのマオリ系の人々の活躍が知られているように、ニュージーランドは世界でも多様性を誇る社会の一つです。しかし、現実にはラグビーはマオリ系が社会的に成功するための手段という側面を無視することはできないようです。また、マオリ文化の商品化、文化盗用の問題も顕在化しています。実際に作家が、この作品にどのようなメッセージをこめたのか尋ねてみたいですね。

 

●「5つのエレメント 5Elements」 クスタブ カンデカー

 

 

有名なモンドリアンの抽象画を立体にしたオブジェかとおもいきや、花器とのこと。やきもので幾何学造形と抽象文様を追求する作者のこだわりは、いかにも西洋美術の文脈から生まれた作品という風に思え、実際に花器として使われている所を見てみたくなります。タイトルのエレメントは一般的には”要素”のことですが、抽象画にある神秘的な考え方との相性の良さを考えると、神話風に地・水・火・風・空の五大元素をさしているようにも思えます。立方体のうち五の面にそれぞれエレメントが配置されているのかと思って眺めるていると、幾何学模様が迷宮となって心がさまよいます。

 

こうして、堺陶芸会とウェリントン陶芸家協会の作品を続けて鑑賞すると、背景に流れる西洋美術と東洋美術の違いを感じますが、それ以上に個々の作家の個性の違いに興味をひかれ、それぞれの作品に関するお話を聞いてみたくなりますし、もっとじっくり鑑賞したいという気持ちになります。

さて次回の記事では、この企画展の最後のコーナーに注目。お茶席に見立てた展示で、昔の堺のやきものに迫ります。

■日 時
令和 3 年 10 月 16 日(土)~11 月 14 日(日)
午前 9 時~午後 6 時(最終入館 午後 5 時 30 分)
※休館日:令和 3 年 10 月 19 日(第 3 火曜日)
※新型コロナウイルス感染症における感染防止対策を十分に行った上で実施します。
■ 主 催 さかい利晶の杜
特別協力 小谷城郷土館、堺陶芸会、堺市博物館、堺市国際部

■ 場 所
さかい利晶の杜 2 階 企画展示室(堺市堺区宿院町西 2 丁 1-1)

■ 観 覧 料
大人:300 円、高校生 200 円、中学生以下 100 円
※「千利休茶の湯館」「与謝野晶子記念館」の観覧券で企画展もご覧いただけます。

さかい利晶の杜
堺市堺区宿院町西2丁1番1号
072-260-4386
http://www.sakai-rishonomori.com/

 

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