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企画展「みてさわって堺のやきもの~はじめまして、堺生まれのやきものです。」@さかい利晶の杜(1)

 

堺がまだ堺と呼ばれていなかった昔、最初に住み着いた技術者集団の中には「やきもの」の技術者も含まれていた事でしょう。古墳時代、今の堺市南区の丘陵地帯にあったの陶邑(すえむら)は、日本最初の巨大やきものセンターでした。堺生まれのやきものは大和王権の権威の象徴として全国の有力者に届けられたとされています。
その後、中世には茶の湯が勃興し、大名も文化人も血眼になった茶器を求めるようになります。茶器としてのやきものは堺の富の象徴となったのです。
千年の時を経ても、ただ土を焼いただけのものが、こんなにも人を引きつけ価値を持っているのはなぜなのでしょうか。今回、さかい利晶の杜では企画展「みてさわって堺のやきもの~はじめまして、堺生まれのやきものです。」が開催され、堺生まれのやきものに光があてられ、実際に一部の展示品には触れることが出来るとのこと。これは時代を超えるやきものの魅力を体感できる機会ではないでしょうか。
そんなわけで、会期前日に開催された内覧会にお邪魔してきました。

 

■やきものの縁

 

会場はさかい利晶の杜2階の企画展示室。一室のみの企画展ですが、展示点数は60点近くある上、一見してコーナーごとにそれぞれの狙いがしっかりと定められており、見応えは十分ありそうです。
まずは、企画展を担当されたさかい利晶の杜運営グループの宮本雅代さんに、企画展の概要を説明してもらいました。

宮本雅代「この企画展は、堺市博物館の特別協力を得てさかい利晶の杜運営グループが企画いたしました。普通美術館や博物館に展示されているやきものは触っていただけませんが、お茶席であれば触ることができます。今回は、展示品の一部のやきものに触っていただける企画展になっています」
触れられる展示品というのは、企画展示室中央の平台に並べられた茶碗と造形作品の展示です。これは堺で焼かれたやきもので、堺陶芸会の皆さんの作品です。
宮本「(企画展示室の)入り口前には、百舌鳥古市古墳群が世界遺産に登録された年に鳥の埴輪をイメージして、堺陶芸会の皆さんに鳥の埴輪を焼いてもらいました。展示室内にも羽ばたく鳥をイメージしたやきものを壁に展示しています。これには堺の陶芸文化が鳥のように羽ばたいて欲しいという願いが込められています」

展示室内には入り口側から順番に堺陶芸会による造形作品のコーナー、堺市とは姉妹都市のウェリントン市(ニュージーランド)の陶芸家協会の作品のコーナー、そして昔の堺の焼き物といったコーナーで構成されています。

 

▲堺陶芸会・陶芸家の昼馬和代さん。

 

続いて堺陶芸会の役員で、堺を代表する陶芸家である昼馬和代さんによる展示の解説に耳を傾けてみましょう。
昼馬和代「堺陶芸会は普段は個人個人で活動しておりまして、堺で活動をアピールする機会はなかなかありませんので、こういう機会をいただけるのはありがたいことです」
堺陶芸会の結成は、今から20年ほど前のこと。きっかけとなったのは、1998年のウェリントン陶芸家協会からの招待でした。
昼馬「姉妹都市のウェリントン市というのは陶芸が盛んな町で、ウェリントン市へ行って欲しいと堺市の国際課から要請があったんですね。ウェリントンに行ってみますと、向こうの方からぜひ堺に行って交流展をやりたいというお話になったんです。それで国際課と相談しまして、ウェリントンの陶芸家を招待して、堺ウェリントン陶芸交流展(2001年)が開催されることになりました。それが、堺陶芸会が結成されたきっかけの一つです。もうひとつは、2000年に大仙公園で世界民族芸能祭ワッショイ!2000が開催されたのですが、世界の人々に堺の土で作った抹茶茶碗をプレゼントしようということになりました。丁度、南区の再開発で赤土が大量に出たので、その赤土を使ってお茶碗を作ることになりました。それが堺陶芸会が出来るきっかけになったのです」
古代のやきものセンターだった南区の土から、現代の国際交流につながるというのも、いかにも堺らしい話ですね。

 

■堺焼と伊羅保焼

中央の平台に展示された「堺焼」の茶碗の数々は、2種類のやきものになるそうです。
昼馬「ひとつは、伊羅保茶碗です。伊羅保は1230度から40度ぐらいで焼きます。窯は電気、ガス、灯油窯と、いろんな窯で焼かれる方がいます。堺の土を釉薬にして作り、堺伊羅保と名付けています」
伊羅保焼とは、もともとは韓国のやきものだそうで、江戸時代の初期に日本から注文を受けて作られたものだそうです。ざらざらした表面に釉薬がかかり、素朴な味わいのある作風が特徴です。

 

▲素朴な表情の伊羅保茶碗。抹茶をいただくときにほっとできそうですね。

 

昼馬「もう一つは楽焼です。楽焼は黒楽と赤楽の2種類がございまして、黒楽は1100度から1150度で焼き、窯から引き出し(急冷することで)黒く変色します。赤楽は800度の低い温度で柔らかく焼きます」
堺の楽焼といえば、江戸時代初期に湊で作られた湊焼と、それが途絶えた後に復興された復興湊焼が知られています。昭和に入って湊焼を復興させた人物としては、現堺能楽会館の館主大澤徳平さんの父・大澤鯛六さんの名があげられます。この日の内覧会には、大澤徳平さんもいらっしゃり、茶碗を手に鑑賞される姿がありました。

 

▲漆黒と黄金が豪奢な印象の黒楽。こちらは気合いが入りそう!

 

なお、11月13日14日には、実際のお茶席で展示されているお茶碗が使われるとのこと。お茶室で手で触れてお茶碗を堪能できる絶好の機会を逃す手はありません。

さて、次回の記事では、堺陶芸会とウェリントン陶芸家協会による造形作品に注目することにしましょう。

 

■日 時
令和 3 年 10 月 16 日(土)~11 月 14 日(日)
午前 9 時~午後 6 時(最終入館 午後 5 時 30 分)
※休館日:令和 3 年 10 月 19 日(第 3 火曜日)
※新型コロナウイルス感染症における感染防止対策を十分に行った上で実施します。
■ 主 催 さかい利晶の杜
特別協力 小谷城郷土館、堺陶芸会、堺市博物館、堺市国際部

■ 場 所
さかい利晶の杜 2 階 企画展示室(堺市堺区宿院町西 2 丁 1-1)

■ 観 覧 料
大人:300 円、高校生 200 円、中学生以下 100 円
※「千利休茶の湯館」「与謝野晶子記念館」の観覧券で企画展もご覧いただけます。

さかい利晶の杜
堺市堺区宿院町西2丁1番1号
072-260-4386
http://www.sakai-rishonomori.com/

 


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