劇場から世界を変える!! アジアンユースシアターフェスティバル(2)

 

 

マレーシアのリゾート地コタキナバルに、アセアン諸国を中心に12カ国14団体の演劇を志す子どもたち、若者たちが集まりました。アジアンユースシアターフェスティバルというこのフェスティバルは、今年で3回目になります。集まった子どもたちは160名以上。一つのホテルに泊まり、500席規模の劇場がある会場施設では、各団体の演劇の上演とワークショップがひたすら続きます。
初日はオープニングセレモニーに続いて、日本チームのFREAM! theatreがトップバッターを務めました。トラブルもミスもありましたが、トップバッターに相応しい盛り上がりを見せた上演でした。
第2回では、2日目に上演された各国の舞台を中心にレポートします

■演劇祭が本格的に始動

 

▲はじめて木刀をもって殺陣にチャレンジ!

コタキナバルの朝は、雨ではじまりました。ホテルの屋上でビュッフェ形式の朝食が出ることになっています。強い雨のため、この日は屋上の屋根の下にセッティングされていたメニューは、ミゴレン(焼きそば)でした。様々な宗教に対応して、チキンとベジタリアン向けの2種類。ちなみに、両方食べてみましたが、味に大きな違いはありませんでした。

しばらくして、ホテルから会場へ向かう時間には、雨はすっかりあがっていました。1階ロビーに集まった子どもたちとスタッフは、送迎の大形バスに乗り込んで会場へ向かいます。
昨日、公演を済ませたばかりの日本チームでしたが、もう一仕事まっていました。ワークショップです。
各団体それぞれ公演を1舞台と、ワークショップを1コマ担当することになっていました。フェスティバルの参加者も、いずれかのワークショップを必ず1回は受講するようにと割り振られています。
日本チームは、大城戸洋貴さんを講師に殺陣のワークショップをする予定でした。日本から模擬刀に木刀も持ってきていたのですが、またも想定外の事が置きました。殺陣ワークショップはフェスティバル参加者全員が参加する特別なワークショップに指定されていたのです。160名以上の参加者に対する殺陣のワークショップは大城戸さんにも未経験の難題だったことでしょうが、他のメンバーの助けもあってやりきることが出来ました。参加者たちも、サムライアクションを体験できて満足の様子でした。

大仕事を終えてほっと一息ついてるうちに、2日目の公演がはじまっており、慌てて劇場へ向かうことになりました。

 

●「RIVER OF LIFE」KLPAC’S THATRE FOR YOUNG PEOPLE(マレーシア)

 

 

途中から見ることになってしまいました。マレーシアからは2チームが参加しており、これはマレーシアの首都クワラルンプールの劇団KLPAC’S THATRE FOR YOUNG PEOPLEの作品。

7人の男女が登場し、抑えた衣装と照明で、衣装もシンプル。人間の形、動き、言葉、歌の美しさがくっきりと表現された舞台のように思えました。
タイトルのリバーとは、クワラルンプールを流れる2本の川のことだそうですが、川の汚染問題だけでなく、そこには男と女がメタファーとしてあるようでした。

 

●「DUST TO DUST」BUDS YOUTH THEATRE(シンガポール)

 

参加国の中では、日本と並んで豊かな先進国の位置にいるシンガポール。タイトルは旧約聖書創世記より取られた、埋葬の時の言葉「灰は灰に、ちりはちりに」から。

ファッション業界と、ファストファッション、それを支える貧困国の低賃金労働(児童労働を含む)という、衣料業界の闇に切り込んだ作品。

 

●「THE DREAM」MACIK MUSICAL(ベトナム)

 

ラオスチームの欠場によりベトナムチームは4日目から2日目にプログラムが移動になったようです。

スタッフに専属デザイナーがいることもあってか、非常に凝った衣装が印象的でした。伝統的な美意識と現代的なアートが融合したような作品で、登場するキャラクターは、自然の精霊のような存在ですが、日本のアニメやテレビゲームに出てきても不思議はない完成度でした。

 

●「THE ULTIMATE MASK」PRACHYANAT(バングラデシュ)

 

 

関西ではお馴染みの新喜劇を思わせるような舞台装置とキャラクター配置ですが、「環境問題」というテーマに、「マスク」というモチーフで挑んでいました。

このマスクは、時に汚染された大気から身を守る酸素マスクであり、環境サミットに出席する動物をマスクで表現したり、ペルソナであったりと、多義的に使われていました。

ユース世代のお芝居ということもあって、技術的にはまだまだだなと感じることもありましたし、テーマの表現も直接的すぎる印象もありましたが、全身で訴える気迫は心に響くものがありました。

 

 

■マスターとの出会い

 

▲最強カメラマン! ベトナムチームのTrunさんとAYTFのアドバイザー・Theatre Group GUMBOの田村佳代さんのツーショット!

この日、立て続けに4本のお芝居を見て疲労を感じながらも、フェスティバルに参加しているという実感がどんどんわいてきました。
子どもたちがわいわい騒ぐ送迎バスにのってホテルにつきます。子どもたちは、疲れてそのままシャワーを浴びて寝てしまう様子でしたが、大人たちはコーヒーやビールを片手にプレイルームに集まってビリヤードやおしゃべりを楽しんだりしていました。

日本チームも遅くまでプレイルームに居残っていると、1人の男性が笑顔で声をかけてきました。大きなカメラを持った彼はどうやらベトナム人のようですが、英語がほとんどしゃべれません。カメラも迷彩柄で、そのまま戦場にでも乗り込みそうな機能的な服装です。どうやらプロカメラマンらしく、こちらもカメラを担当していると気づいて、声をかけてきたのですが、手を引っ張るようにして雰囲気の良い場所にこちらを立たせます。記念撮影かと思いきや、そこからカメラ教室がはじまったのです。

 

▲マスターのカメラ教室ではまず構図の作り方を教わりました。モデルはシンガポールの女優でアンバサダーのMasturah Oliさん。

 

1対1では分かりづらいとみるや、打ち合わせ中だったフェスティバルのクルーの女性の手をひいて即席モデルに。戸惑うこちらもお構いなしで、なかなか強引なのですが、笑みを絶やさない態度、いい写真が撮れた時の褒め方に、ついこちらも良い気持ちになってしまい、付き合わざるをえません。この写真教室は延々深夜まで続きました。
彼の名はTrunさん。私たちが敬意を込めて“マスター”と呼ぶことになる彼が、壮絶な人生を送ってきたとんでもない人物であることが分かるのは、まだもう少し先のことでした。
怒濤の3日目を迎えることになります。

第3回へ続く)

●関連情報
アジアンユースシアターフェスティバル2020の情報はこちら→web
アジアンユースシアターフェスティバル日本チームの情報はこちら→FaceBook

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