行って、見て、知ろう! 動物指導センター(3)

 

様々な理由で行き場を失ったペットたちを保護する堺市動物指導センターでは、いわゆる『命の期限』を設けていません。しかし、大怪我を負ったり、慢性の病気を抱えていたり、幼すぎたりと、救うことが難しい命もセンターにはやってきます。この命を少しでも多く救うためには一体どうすればいいのでしょうか?
第3回となる今回は、保護されている犬たちや猫たちが保護されている犬舎・猫舎を見学することになりました。案内は引き続き大橋吾郎主幹にお願いしています。(第1回第2回

 

■かりそめの地の犬と猫

▲部屋の奥からじっとこちらを見る目が印象的でした。

 

大橋さんに案内されて犬舎の中に入ると、動物独特の匂いと一緒に、興奮した吠え声が聞こえてきました。
大橋五郎(以下、大橋)「職員が来ても飽きてしまってちっとも吠えないんですが、初めての人が来ると遊んでくれると思って騒ぐんですよ。出してみましょうか?」
大橋さんは、そう言うと1匹のチワワのいる部屋の扉を開け、素早く首輪にリードをつけます。しかし、チワワは興奮してカメラに収まってくれません。
大橋「そっちの子は、怖がっているます。初めての人にはこんな感じです。私も首輪をするのに半年ぐらいかかりました」
――明らかにびびってますね……。
申し訳ないと思いながらカメラを向けます。壁にへばりついて怯えた瞳でこちらをじっと見ています。この子は一体どうして、人に対して恐怖を感じるようになってしまったのでしょうか。かと思えば、扉ごしに仕切りにアピールしてくるやたら元気な中型犬たちもいます。

 

▲防御姿勢で身動きひとつしない猫たちに凝視される。

 

次は猫舎をみせてもらいます。
大橋「普段はここの建物は使っていません。今、保護している犬と猫の数が多いんですよ。丁度、多頭飼育されていた所が2件あって、そこから保護してきたのを、それぞれ別の部屋に保護しています」
――それぞれ別の部屋にしているのは意味があるのですか?
大橋「ひとつは病気の感染予防のため。もうひとつは動物も人間と一緒で知らない人とだと緊張するでしょう。ストレスを溜めないためにも分けています」
――なんか、めっちゃ視線を感じますね。ケージに入った猫たちがみんなこっちを見てますよ。
大橋「こちらの部屋は比較的大きな子ばかりですが、みんな動かないでしょ。うずくまって防御姿勢をとっているんです」
――飼われている時に、多頭で環境があまり良くなかったのでしょうか。このじっと動かない感じって、ちょっと馴染みがないですね。確かに猫の外見はしているけれど、何か猫じゃない生き物のようにも感じます。

 

▲様々な病気を抱えた猫たちが保護されていた。

 

大橋「次の部屋はもう少し小さな子たちばかりです」
――たしかに、ちょっと小さいですね。さっきの部屋の子たちよりは、ちょっと活発な感じもします。何才ぐらいですか?
大橋「こちらのプレートにそれぞれの年齢が書いてあります。年齢と性別以外に色々書いてあるのは、病気についてとかです」
――結構病気を持っている子がいますけれど、譲渡先は見つかるのですか?
大橋「そうですね。今もお試しで預けている子もいます。今は普段使ってない猫舎をこうして使っていて保護している子たちが多いですが、がんばって譲渡するつもりです」
――保護されてくるペットたちの中には、簡単に譲渡できない事情を抱えた子は少なくありません。でも、市民の協力があれば、多くの命が救われるということなんですね。

 

■地域猫活動

 

――殺処分を本当にゼロにしようと思うなら、出口だけでなく入り口。川下じゃなくて川上にも目を向ける必要がありますよね。どうやって、保護されるべき動物の数を減らしていくのか。
大橋「そうした動物愛護活動として、市民の皆さんによる地域猫活動があります。堺市では、一定の条件を満たした地域猫グループに対して、不妊去勢手術費用の助成をしています」
――地域猫活動によって、野良猫の増加を抑えることが出来るということですね。
大橋「ええ。しかし地域猫活動への助成金は、年間150頭前後で、徐々に頭数が増えてきてはいるのですが、まだまだ十分とは言えないでしょう」
――助成金はいくら出るのですか?
大橋「一頭につき8000円です。ただ地域猫活動をされている1グループにつき15頭までの制限があります」
――不妊去勢手術自体はどの程度かかるものなのですか?
大橋「堺市には動物病院は80近くあるのですが、手術費用は病院によってまちまちです。話によると一番安い所で、オスで1万2千円。メスで1万5千円ぐらいだそうです。はみ出た分は自己負担になりますね。猫の繁殖シーズンは4月から6月なので、どのグループも年度初めに申請を急ぐことになります。特に今年はコロナの影響もあって、すでに上限頭数に達しようとしているグループもあります」

 

▲地域猫活動など周知のためのリーフレットなど。地域猫ガイドブックは、各保健センター(ちぬが丘を除く)、堺市役所本館6階食品衛生課、堺市動物指導センターで入手できます。

 

 

――地域猫活動のグループを作るのは簡単に出来るのですか?
大橋「堺市では活動グループのガイドブックを出していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。このガイドブックに沿っていいますと、活動グループを作るところまでは簡単なのですが、難しいのはまず『活動ルールと計画を作成』するという段階です。エサのルールをどうするのか、糞尿の清掃をどうするのか。これにはマンパワーと根気が必要です。次に『地域住民に説明し、同意を得る』。ここはやはり難しいですね」
――猫は嫌じゃなくても、糞尿害が嫌だという人が多いと言ってましたね。
大橋「だから、地域猫グループの相談に来られた方には、まずは糞尿の掃除をするところから始めたらどうですかとすすめています」
――まずは実績作りということですね。
大橋「お陰様で地域猫グループの数も増えてきて、堺市内で10数グループになっています。ただ、場所は公開していません。というのも、地域猫グループがあると知ると、そこに猫を捨てに来る人がいるんです。それは犯罪ですからね。動物の遺棄になります」
――地域の猫を助けるためにしているわけですから、話が違いますよね。地域猫グループだって、助けることができる猫には限界があるわけですし。
大橋「そうなんです。助成金にも頭数制限があります。そこで、動物愛護フェアで周知を図ることで、多くの方にふるさと納税でセンターや地域猫の活動を支援していただきたいと考えています」

 

■動物愛護フェアとふるさと納税

▲テンション高めのわんちゃんも。

 

――動物愛護フェアというのは、センターで行われているイベントですか?
大橋「はい。毎年9月に動物愛護フェアを行っています。目的は動物の愛護と適正飼育についてみなさんに良く知ってもらうことです。慰霊碑への献花や、飼い主募集中の犬や猫の展示、獣医師会や動物福祉協会のブースもあって、ペットの飼い方などの各種相談も受け付けています。今年は新型コロナウイルス感染症の対策で、写真展示などが中心になるかと思います」
――写真展示は動物のものですよね?
大橋「『おもしろペット写真展』と題しています。みなさん自慢のペットの写真を、堺市在住・在勤の方対象に、1人1作品募集しています。ぜひ応募してください」
――ぜひペット自慢をして欲しいですね! それとお悩みのある方にとっては、飼い方相談を受けられるのもいいですね。
大橋「それぞれの国の文化もあるので、一概には言えませんが、ペットに関しては、日本は残念ながら後進国といわざるをえません。しつけの仕方も、飼い主独特のオリジナルのしつけをしている人が多くて、間違っている場合も多いのです。しつけの先生によると、たとえば、犬は静かにしている時に褒めて、吠えている時には何もしないのがいいようです。吠えている時にしかると、犬にしてみると吠えたら相手をしてくれると思うわけです。これは逆で、吠えると相手をしてくれないけれど、静かにしていると遊んでくれると思わせるようにしないといけないわけです」
――それは結構目からうろこですね。吠えてる時にしからないといけないと思ってました。
大橋「また先ほどお話しした事ともつながるのですが、ペットのための生前対策のご相談もしています。これは、飼い主さんが亡くなった後、ペットをどうするのかの相談です。たとえば、普段からペットを見てもらえる所、ご近所で少しでも見てもらえるところはないか、探してもらうのはどうかと提案しています。何かあった時に、いきなりペットを譲るとなるとハードルは高いです。ペットにとっても何度か預けてもらった所なら安心です」
――なるほど。自分はペットを飼うのは慣れていると思っている方でも、一度動物愛護フェアに来てみたら、驚くようなことがあるかもしれませんね。
大橋「それと、ぜひ知っていただきたいのが、堺市のふるさと納税(堺市ふるさと応援寄附金)として「堺動物愛護ふるさと納税」があることです。この「堺動物愛護ふるさと納税」で集められた寄付金は、保護された動物たちのフードであったり、必要な治療・薬品購入費に使われたり、地域猫活動の支援に使われています。不妊去勢手術費用への助成もこれで行われています」
――このふるさと納税によって、治療費や不妊去勢手術費用が増えれば、死に直面した動物をもっと救うことが出来るようになりますね。

わたしたちの生活からペットがいなくなるなんていうことは、もう考えられないでしょう。しかし、ペットを巡る日本の環境は、「ペット後進国」と言われたように、文化的にも、意識的にも、法律的にも不十分なものでした
そんな中で、堺市動物指導センターの力と、地域猫活動グループなどの活動をされている堺市民の協力によって、大きな成果をあげています。さらに多くの市民が動物指導センターに注目し、ふるさと納税などで活動を支援していけば、いつか本当の意味での殺処分ゼロが達成されるかもしれないのですね。

 

堺市動物指導センター
住所:大阪府堺市堺区東雲西町1丁8−17
電話:072-228-0168
web:http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/dobutsu/shidocenter/shidocenter.html

■動物愛護フェア 開催予定

日時:2020年9月22日(火・祝)の 10:30~15:00
場所:堺市動物指導センター

 


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