行って、見て、知ろう! 動物指導センター(1)

 

JR阪和線「堺市」駅から、北へ徒歩数分。公園と堺市立斎場と隣り合わせの位置に堺市動物指導センターはあります。大きな動物慰霊碑が、道路から見て入り口の向こう真正面に見えています。
「人間の斎場の隣だから、動物のお墓があるなんて思われているようですが、昔ここに死んだ動物の焼却炉があったそうです。斎場からの帰りに手を合わせていかれる方も少なくありません」
とは、主幹の大橋吾郎さんの言葉です。
どこか控えめに佇むこの施設ですが、この動物指導センターは、わたしたちが暮していく上で、沢山の命を守る重要な仕事をしてくれています。その仕事ぶりについて、大橋さんに案内してもらうことにしましょう。

 

■狂犬病予防は人を守るため

▲動物慰霊碑。動物指導センターの職員の方は、毎朝手を合わせているそうです。

 

堺市動物指導センターには、約50年の歴史があるそうですが、業務内容も時代に合わせて変化しています。
大橋吾郎(以下、大橋)「20~30年前までは野犬を捕まえる業務が多かったのですが、しだいに減っていきました。最後まで野犬がいたのは南区の鉢ヶ峰あたりですが、それも十数年前ということです。堺市では、野犬捕獲はそれ以来無くなり、飼い方の指導、適正指導が多いです。しかし、堺市が標準的なのかというとそうでもなくて、近畿圏でも山間部だと野犬が山から下りてきて捕獲が多いようです」
――確かに犬がうろついてる所ってみませんものね。堺市では、もう野犬を捕まえることもないんですね。
大橋「野犬ではなくて、飼っていた犬が逃げ出した放浪犬の捕獲はありますが、通報も年に10件ぐらいで、行ってみたら居なかったケースも多いんですよ。飼い主さんが先に見つけたり、自分で家に戻ったりして。犬の捕獲は昔に比べて減りました」
――そんなに件数が少ないんですね。
大橋「昔と違って、トイプードルやチワワなど小型犬の室内飼いが増えたので、放浪犬も減りました」

▲犬を捕まえるための器具。実際に使うことはまずないようです。「これを使う距離まで近づけるのなら、手でリードをつけられますから」

 

――野犬じゃなくとも、犬を捕まえるのって大変じゃないですか? 危険なことは無いですか?
大橋「実は飼い犬だとそんなに難しくないです。中型犬だと、近づくことができれば簡単に捕まえることができますよ。首輪があれば、首輪にリードを付けて終わり。大型犬だと、逃げ出すことはまずないです」
――え、どうしてですか?
大橋「大型犬は賢いですからね。ゴールデンレトリバーとか。私はこれまで大型犬を捕まえたことは一度もないです。逆に猫の方が難しいですよ。網にひっかかった猫が爪を出してあばれているとか。麻酔を使わないといけませんから」
――なんと猫の方が凶暴なんですね(笑)
大橋「犬には別の危険があります。私たちが犬を捕まえることができるのは、狂犬病予防法という法律に基づいているのですが、狂犬病というのは、発病するとほぼ100%死ぬ病気です。この50年間、日本での発生はありません。しかし、先日、フィリピンから日本に来られた方が、フィリピンで犬に咬まれて静岡で発病して、亡くなるということがありました」
――犬を放し飼いにする文化の国がありますけれど、狂犬病は要注意ですね。
大橋「犬は唾液の中に狂犬病のウイルスが溜まるんです。人間だと6ヶ月~1年程度、犬は2週間以内に発病すると言われてます。だから、咬傷事故……犬が人を咬む事件があったら、狂犬病の診断をします。咬傷事故の後すぐにと、2週間後の2回行います。鑑定結果を飼い主に提出してもらう。その指導も、動物指導センターではしてます。犬に狂犬病ワクチンを打ちましょうというのは、犬を守るためというよりも、まず人を守るためです」

 

■室内飼いの啓蒙を

▲保護されていた子猫たち。

 

――指導センターで捕獲するのは、犬と猫だけなのですか? 野生動物への対応とかはどうなっているのでしょうか?
大橋「野生動物の場合、堺市では環境共生課に相談していただくことになります。飼っているペットが逃げた場合は、動物指導センターということになります。それだけに限らず、ペットに関する相談は動物指導センターになります。年間で、犬についてが100件、猫についてが200件ぐらいになります」
――堺市全体でどれぐらいのペットが飼われているのですか?
大橋「そうですね。犬は登録制なので、堺市に何頭いるか把握できています。堺市では4万頭の犬が登録されています。何度も逃げ出す場合は、飼い方大丈夫ですかと指導します。犬は、公共の場所でリードを外すのは禁止されていますので、その指導をすることもあります。また、先ほど狂犬病の話をしましたが、年に1回の狂犬病のワクチン注射が飼い主に義務づけられています」
――犬の相談というと、やはり吠えてうるさいとかですか?
大橋「犬の相談は、鳴声もありますし、うんこ、おしっこ。朝、飼い主さんが出かける時に鳴く、夜帰ってきた時に鳴くというのもありますが、飼い主が出かけている時に鳴いているケースが結構あって、飼い主さんが知らないことも多いんです。今、新型コロナウイルスの影響で、家にいることが多くなって、初めてわかったとか。そして、一番多いのは、飼育方法の相談ですね。夏場になって日中陽がずっとあたって可哀想だとか、ご近所からの相談が多いです」
――飼い方が可哀想っていう相談が一番多いんですか、意外です。
大橋「多いんですよ。猫になると、相談のトップは餌やりです。ほとんどがマナーのことになりますね。猫がいるということに対する相談というのは、ほとんどないです。糞尿と出産が問題になるのです。飼育方法の相談は、集合住宅が多いですね。一戸建てだとある程度距離があるので気づかないのですが、集合住宅だと糞尿の臭いで気づくんです。どうもたくさん飼っているらしい。猫御殿になりそうなので、早めに行って欲しいといった相談ですね。しかし、猫の多頭飼いを取り締まる法律も条令もないので、手が出せなかったりもするんです」

 

▲動物との共生を目指す動物指導センターだけあって、看板も多言語でした。

 

――猫ってあっという間に増えてしまいますよね。
大橋「猫は年に2~3回の出産が可能とされています。実は猫の受胎には特殊な事情があって、交尾をすることによって刺激されて排卵されて受胎をするので、受胎率が高いんです。発情期間には、いつでも出産が可能になります」
――それで、いつの間にか猫御殿になっちゃうんだ。
大橋「猫に関しても、お年寄りには猫は外で飼うものという考えがあって、無闇に外に出して、お腹が大きくなって帰ってくる。雄の場合だったら、外で子どもを作ってくる」
――そうなると野良猫も増えてしまいますね。
大橋「ですので、指導センターでは室内飼いの啓発をしています。猫の餌やりに関しても、餌を与えているだけだと、猫が集まってきて、繁殖の場になって猫が増えていきます。餌やりに関しても、堺市には餌やりを取り締まる条例はありません。だから、餌をやる方には、ちゃんと糞尿の掃除もしてください。そして避妊もしてください。不妊去勢手術をしたら、桜耳というのですが、耳のカットをしてくださいと指導しています」
――野良猫の不妊去勢手術を推奨したり、野犬も堺では10年もいないまま。しかし、動物指導センターで保護する犬猫はいまだにいるんですよね。

動物指導センターには犬舎・猫舎があり、この日も保護されている犬猫たちが数多くいました。それは何故なのか、彼らはどんな運命をたどることになるのか。次回は、さらに深掘りして、「殺処分」について迫ります。ここには一筋縄ではいかない問題が潜んでいました。(第2回へ)

 

堺市動物指導センター
住所:大阪府堺市堺区東雲西町1丁8−17
電話:072-228-0168
web:http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/dobutsu/shidocenter/shidocenter.html

■動物愛護フェア 開催予定

日時:2020年9月22日(火・祝)の 10:30~15:00
場所:堺市動物指導センター

 


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