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Ajukaju 松本 達洋

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profile
1977年1月7日 生まれ
2007年7月7日 ネットショップ開業
2010年3月8日 実店舗開店
扉が開き、お客様が入ってきました。
奥行きあるお店の一番奥のレジカウンターにいる店主の松本達洋さんは「いらっしゃいませ」と言っただけで動きません。
「お客様から声をかけられない限り応対しないんです」
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▲一番奥のカウンター付近から。作品を置いている作家さんは、北海道から沖縄まで130名以上になります。

 

見ると壁には「ゆ~~~~っくり覗ける雑貨屋さん」の貼り紙が。
お店は、堺市中区の2階建ての雑貨屋さん『Ajukaju(アジュカジュ)』。お客様は遠く新潟や佐世保からもいらっしゃいます。中には『Ajukaju』来店だけを目的に一人で徳島から高速バスに乗ってやってきて、一日お店で過ごしてとんぼ返りをしたお客様もいたとか。

 

店主の松本さんは、店舗を出してわずか3年足らずで日本中のお客様が足を運ぶまでに育てあげました。そして、それに飽き足らないのか、南大阪の雑貨店やカフェなど約50店舗を紹介するフリーペーパー『Re*Q(リキュー)』を発行し、更に南大阪最大規模と銘打ったイベント『フリーフェスティバル』開催を準備中だと言うではありませんか。
その尽きないパワーはどこからやってくるのでしょうか? 『Ajukaju』に松本さんを訪ねました。
■地元におしゃれな場所を
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▲堺市中区の福田にある『Ajukaju』。駅からも遠く、古い住宅街の中にあります。
「大阪に出なくても、地元にもおしゃれな場所があるよって言いたくて」
生まれ育った地元・南大阪には「おしゃれ」という空気がないと感じていました。その空気を変えたくて、2007年にネットショップとして始めた雑貨屋さんを実店舗に移行したのは、2010年の3月のことでした。
店内を見渡すと作品の多さに圧倒されますが、スペースごとに同じコンセプトでまとめられているため、雑多さの中にも統一感が感じられます。
まず店舗の一階の前面スペースは「カジュアル、レトロポップ、アメリカン」がコンセプト。ポップなポストカード、赤い電話ボックスの陳列棚など華やかなおもちゃ箱のよう。
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▲1階の前面スペースはカラフルでポップな作品が目につきます。大阪という土地柄か、明るい色使いの作品が人気だとか。 ▲『Hurricane TD』。ひとつひとつ装飾の違う本革ブレスレットで、個性に合わせて男性から女性まで幅広い層に似合いそうです。
奥のスペースは「ナチュラル、可愛い、フレンチアンティーク」。繊細なアクセサリーや、革製品でもフェミニンな印象のものが目につきます。

 

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▲柔らかな木のぬくもりが感じられる1階の奥スペース。ナチュラルカラーの布物やテープカッターなどもがさりげなく目をひきました。 ▲ビーズ刺繍の小物、アクセサリーの『Secret*Garden』。「お花や動物、自然のモノをテーマに大人可愛いアクセサリーを作っています」。全ての展示には作家からのメッセージつきのポップが必ずあります。
そして、2階をあがってすぐのスペースは、カフェを思わせるインテリアの数々。
そして2階奥は、「アジアン、オリエンタル」で、どこか博物館のような空気が流れています。
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▲階段をあがった2階。内装のリフォームは友人に手伝ってもらってほぼ自分達で仕上げました。 ▲下段におかれている布小物は佐渡島の『葵工房』の作品。着物をリメイクしています。
お子様連れのお客様などは、「じっくり見たいけど、子供がいるし……」とかえって二の足を踏むかもしれません。しかし店内には、なんと小さなキッズルームが作られているのです。
「秘密基地みたいでしょ。子供の視線の高さに合わせて作ってあるんです」
大人の背の高さで見ると、自然に視線から外れるため、横を通り過ぎてもキッズルームの存在に気づかないこともあるとか。
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▲キッズルームで流しているアニメを1話が10分以内の『トムとジェリー』にしているのは、子供が長居しすぎないようにするため。脇には折りたたみの椅子もあり、付き添いのお父さんなどが座って待つことも出来ます。
■素敵な雑貨屋の店主になろう
実は、昨年男の子を授かり、松本さんはお父さんになったばかりでした。
キッズ対応の細やかさも納得です。
「子供が出来たら可愛いだろうなと思っていたんですけれど、思っていた以上に可愛いです。これまでだって頑張って来ましたけれど、『もっと頑張りたい』と思うようになりました」
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▲子供服が可愛い『handmadeDON』。シンプルなデザインに、ポイントで使われている図柄の入れ方が他にないセンスを感じます。 ▲手作りおもちゃと雑貨『樹の子の森』の木工おもちゃ。幼児向けの作品には、釘やボンドは使用せず、天然素材の接着剤を使うなどの配慮もうれしいですね。
そんな松本さんですが、過去の道程は不安定なものでした。
大学卒業後、就職してわずか1ヶ月で仕事をやめてしまいます。
「その後はフラフラと放浪の生活……今で言うフリーターですよね」
小説家を目指しながら、アウトレット店でアルバイトを続けました。
「父親が肩書きのある人だったからか、作家になりたかったのも、肩書きのないゼロからのスタートをしたかったんです」
ゼロからスタートする。そのスタンスは、松本さんが後に大きな決断をする時にもずっと貫かれることになります。
30才目前、小説家の道から新たな道を目指すことにしたのは結婚がきっかけでした。
その時頭に浮かんだのは、ジブリ映画『耳をすませば』に登場したアンティークショップ『地球屋』です。主人公たちの理解者として応援する『地球屋』の主人の姿に自分が重なります。
「主役にはなれなくても名脇役になろう。素敵な雑貨屋の主人になろう」
そう決意すると突如タイへ買い付けに飛びます。
「友人が丁度タイに駐在していたんですが、突然タイへ行くと言うと彼女はあきれましたね」
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▲カウンターの背後の棚には、『耳をすませば』に登場するキャラクター・バロンの人形が飾られています。
開店して以来、苦労も多かったのではないでしょうか?
「今でもお店のチラシをポスティングしたりしますよ。以前、ポスティングをしたことで、お客様が直接お店にこられてお叱りを受けたこともありますが、最後にはお客様に笑顔で帰っていただきました。『盛り塩をした方がいい』とかアドバイスをいただいたりして」
こんな時アルバイト時代の経験が生きたそうです。
アウトレット店では傷のある商品も扱うので、クレームを受けることもたびたびでした。
「ちゃんと謝った上で、なんとかしようとすること。土下座したりは、人として一線を越えるなと思ってしませんでした。ひたすらお客様の話を聞き続けて、解決を目指し続けるんです」
そんな松本さんの態度が、お客様との間に信頼関係を生むのでしょう。
いつのまにか『Ajukaju』は、「なんでこんな所に店を出したの?」と言われることもなくなっていました。

 

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▲お客様に応対する松本さん。「男性のリピーターも多いんです。雑貨好きというわけでない男性が、女性のためのプレゼントを買いに来られたり」
多くのお客様や作家とつながりを築いてきた松本さんが次に挑むのが「南大阪最大規模のイベント」です。
■喜んでもらえることで成長できるなんて
周囲の見る目が変わってきたきっかけのひとつに、南大阪の雑貨店・カフェを紹介するフリーペーパー「Re*Q(リキュー)」の発行したことがあります。
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▲つーる・ど・堺でお馴染みのお店も掲載されている『Re*Q』
リキューの名称はもちろん堺の茶人 「千利休」に由来します。
「Re=リターン、*(星印)=参加ショップという意味Q=旧」で、「商売の街、堺市に活気を戻せたら」という想いが込められています。
掲載されているお店の数は50店舗以上。
「ゼロから出発する人を応援したい」
と、次の号では100店舗以上を目指しています。
「大阪には鎖国的な所があって、大阪内の小さなエリアの地元愛が強かったりします。この地元愛を他県の人にアピールする意味で、(堺市より少し広い)南大阪というくくりにしてみました」
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▲『Re*Q』掲載店が一目でわかるマップ。雑貨店のつながりがオープンになることで、お客様の食い合いになるのでは? という懸念よりも、お店のクオリティが上がることで熱心なお客様が常連になってくれるはずだと松本さんは考えます。
フリーペーパーの発行と連動させて、「南大阪最大規模のイベント」を定期的に開催する準備が進んでいます。
場所は『ハーベストの丘』。堺市民ならお馴染みの自然とふれあえる巨大な農業公園です。
「イベント名はフリーフェスティバル。略称はFF。『自由な祭り』がコンセプトです」
何やら有名ゲームを思わせる略称ですが、そんなことも話題の一助になってくれればと名称を決めました。
「『最大』というだけで、なんとなく楽しくなるでしょ」
やるからには楽しくやりたい。お客としてだけでなく、作り手として参加することで楽しかった文化祭のようなお祭りにしたいのです。
「ダンスパフォーマンスや外国人のDJを呼んだり、ハンドメイドコンテストを開催したり、それに地元の子供たちが参加できるように、地元の吹奏楽部に出てもらえないかと考えています」
子供たちが地元のイベントで素敵な体験をすることが、ゆくゆくは「地元をおしゃれに」することにつながるはず。
「どんどん発展する先のヴィジョンがあるんです。ホテルや観光タクシーとも協力していきたいですね」
地元を元気にする起爆剤となることを目指しています。
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松本さんは、実はイベントを企画する側にまわるのはこれがはじめてなのです。
「知らない方が吸収力がありますから。色んな人の意見を聞きやすいでしょ。だから、なんでもやる時に覚えるようにしているんです」
ゼロからスタートするというスタンスはここでも取られていました。
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▲流木を利用した展示用の棚は、松本さんの作品です。 ▲乾かしていた裏板をフレームにはめ込みます。
アーティストとして木工の作品作りを始めたのも、雑貨店の仕事をはじめてから。丁度仕上げ作業に入っていた木のフレームを見せていただきました。
「たくさんの作家さんとお付き合いするようになって自分も何かした方がいいだろうと思って木工をはじめたんです」
流木を利用した棚などの松本さんの作品は『Ajukaju』で展示に使用されています。
「このフレームは、お客様がお子さんの絵を飾るために注文されたんです」
慣れた手つきで木のフレームに絵を収める松本さん。
「お客様に喜んでもらえる事をするのがこんなに嬉しいなんて思いもしなかったです。喜んでもらえるから成長できるんです」
結果を出すことによってやりがいが出来て、また積み重なっていくのだとか。
「僕も子供が絵を描いたら作ろうかな」
松本さんが見つめるフレームの中の絵が微笑んでいました。
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▲「愛妻家で子供好きですよ」と語る松本さん。
〒599-8241 大阪府堺市大阪府堺市中区福田484-47
 072-220-637
松本達洋

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