インタビュー

アーティストをバックアップする画廊! Arts-B Gallary(2)

 

ギャラリーは大きくわけて、展覧会をしたい人に場所を貸すレンタル画廊と、ギャラリーが企画して展覧会を行う企画画廊があります。堺市西区鳳にある「Arts-B Gallary」さんは、レンタルもする企画画廊です。また、ギャラリーによって得意なジャンルがある中、「Arts-B Gallary」にはこだわりがなく、ジャンルはごちゃごちゃだと、オーナーの土居勝さんはいいます。ただ、土居さんには「若手と障がいのある人の作品を展示したい」という強い思いがありました(第一回)。第二回の記事は、まずその理由からおききします。

 

■無名の人の絵にこだわる

 

▲土居さんが衝撃を受けた絵。この絵がギャラリーを開いたことにつながっていく。

 

 

--若手の作品、障がいのある人の作品を展示したい。それはなぜなのでしょうか?
土居「ひとつは僕は障がいのある方の作品が好きなんです。はい。それは一つの僕が好きなジャンルです。それと学生さんや、美術学校を出て何年かという、いわゆる若手。若手の作品です。画歴とかそんなものを僕は求めてなくて若い人の作品を展示したいんです。これには一つの理由っていうのがある程度あるんです」
--それはどんな理由なんですか?
土居「一つは値段の問題です」
--作品の値段の問題。
土居「僕がギャラリーをしたもう一つの思いっていうのは、ご家庭にアートの作品を持ち込んでもらいたいなというのがあるんです。やはり本物のアートを持つという楽しみを知っていただきたいという思いがあります。それに関してのネックはやはり値段なのです。普通のサラリーマンの方が、いいなと思って買って持って帰っていただける作家を探そうとすれば、やはりどうしても若い人になっちゃうんですよね。いわゆる無名な人です」
--なるほど。
土居「いい絵を買おうと思えば、百貨店のギャラリーにいけばいつでも買えます。しかし、単価が高いです。やっぱりそういう絵は。西天満あたりのギャラリーをまわってみても、やっぱり高いです。単価も高いし、敷居も高い。だから誤解のないように言っておくと、障がいのある人の絵が安いというんじゃないんですよ、無名の人の絵が安いんです。だから無名の人の絵を見つけたい」
--そうですね。作家が作品に込めているものを思えば、何十万といっても高くはないのですけれど……。
土居「高くはない。高くはないんですけれども、とはいえ日本のサラリーマンが手を出せるかというと難しい」
--だから手頃な値段で買って帰れる方がいる、それで無名の方も潤うという循環を作ろうということなんですね。
土居「はい。それはそうなんです。だから例えばAjuの絵なんて、初めて知って買った時は何千円でした。それが今はどんどん高くなっている。今では僕もちょっと買いにくくなっているんですけれどね」
--すごく精密な堺の風景画で知られるAjuさんですね。『発達障がいを生きない』というAjuさんの本がギャラリーにも置いてありますね。
土居「新しい若い人を僕は探せばいいだけですけれど、どうしてもAjuの絵が欲しい人は、頑張って貯金して、始末して買ってください。始めは安くてもだんだん高くなっていくのは、コレクターとしても半面は嬉しいですよ」

 

■貧困なアート環境

▲鳳にあるまっしろなギャラリー「Arts-B Gallary」。気軽にアートと出会える場所です。

 

--Ajuさんは、一つの成功例と言えるのではないでしょうか?
土居「そうですね。しかし、作家だけでやっていくというのは、非常に難しいんです。例えば日展作家の方でも難しい。百貨店で個展を開催できる方でも、普通のサラリーマンぐらいの所得になるんじゃないかな。一部上場企業に勤めている方がいいですよ」
--しかも不安定ですしね。
土居「たとえば百貨店で個展をして1000万円売れたといっても、手元に入ってくるのは400万円程度になるでしょう。それを2回しても800万円。そんなに売れることはなかなか無いでしょうし。そこに画材の費用とかがかかる。経営的には苦しいですよ」
--絵画に限らないですよね。日本では芸術にかかわる人、全般的にそれだけでやっていくのは難しい。
土居「僕はいつも思うんですけれど、インスタレーション(空間展示)をやっている人たち。僕は本当にね、ある意味尊敬するんですよ。どないしてやってはるんやろう」
--インスタレーションだと、それこそ売るものがないですからね。
土居「その他にも色んなこと、例えば音楽にしても、なんか粗末に扱われているなと思いますよ。例えば大きなイベントでもアーティストが駆り出されてやっているけれど、なんかやらしてやっている感を感じるんですよ」
--そうですね。
土居「もっと大事にしてほしい。例えば堺の市展とかがあるじゃないですか。堺の市展の場合は、若い人が受賞したりしても堺市が買い上げとか全然してないよね。堺市には飾るところはいくらでもあるじゃないですか」
--公共の施設なんて沢山ありますよね。ホールとか。やっぱり市立の美術館がないというのも問題ですよね。80万の政令指定都市でおかしな話です。
土居「こんな話をしたらね、ミュシャもそうですよ。ミュシャをあんな天井の低い、狭い所に閉じ込めていたらかわいそうですよ」
--堺アルフォンス・ミュシャ館ですよね。世界最大級のミュシャコレクションがあって、優秀な学芸員さんたちもいるのに、ハードが残念に思いますね。

まずもって日本におけるアート環境の貧困さに気づかされる話です。そして、こんな状況だからこそ、ギャラリーオーナーの土居さんは、アーティストと社会をつなぐ間に意識的に立ってされている仕事の大切さ、貴重さがわかります。一方で、個人で状況を動かすことは簡単ではありません。堺市も文化都市というのであれば、文化行政にももっと力を注いでほしいと思わずにはいられません。

さて、土居さんのお話はもう少し続きます。次回は、土居さんには過去を振り返っていただいて、「Arts-B Gallary」にたどり着くまでの道のりをお聞きしたいと思います。

(→第三回

 

Arts-B Gallery
住所:堺市西区鳳南町5丁517−115 517番地115
電話番号:072-289-5281

 

 

 


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