肌触りのある展覧会『ボスニア・ヘルツェゴビナ刺繍と生活の彩り展2019』

 

JR阪和線堺市駅からほど近くにある音カフェで開催中の『ボスニア・ヘルツェゴビナ刺繍と生活の彩り展2019』を覗いてきました。

この展覧会、昨年も開催情報を耳にしていたのですが観覧を果たせずにいたので、一年越しに希望が叶いました。

会場は、リニューアルしたばかりの音カフェの中二階のギャラリースペース。階段を上がると、白地に紺の印象的な刺繍作品が展示されていて、作家のジェキチ美穂さんがいらっしゃいました。

 

 

ジェキチ美穂さんは、現地での生活が20年にもなります。このズミヤニェ刺繍の紺色を一目見て、胸を打ち抜かれてしまったのだとか。

しかし、こうした伝統的な刺繍デザインもちゃんと図面が残されているわけではなく、作品を撮った小さな画像から美穂さんがデザインを起こして作品を作っているのだそうです。

「こうした刺繍は服の袖飾りなどにも使われます。嫁入り前の女性は、紺色ではなく赤色を使うんですよ」

 

今回展示されている作品は、もちろん全て美穂さんの作品。昨年の展覧会では、ほとんど作品は売れてしまったので、一年間で作った新作ばかりです。一年間で、これだけの繊細な作品を作れるのも驚きです。

「でもイライラしている時にすると、刺繍が荒れたりするんですよ」

と美穂さん。刺繍とは、感情と直接つながったものであり、つまりは日々の生活と密接な芸術でもあるということでしょう。それは、この展覧会のタイトルが『ボスニア・ヘルツェゴビナ刺繍と生活の彩り展』であることにも現われています。

今回は駆け足の訪問だったので、堪能することが出来なかったのですが、展覧会は刺繍だけでなく、ボスニアコーヒーやスイーツもありました。美穂さんから現地の生活のお話をうかがいながら、舌でも耳でもボスニア・ヘルツェゴビナの文化を楽しむことが出来るのです。遠いボスニア・ヘルツェゴビナの人々の日々の生活を身近に感じることができる展覧会で、かしこまったホワイトキューブ(美術館やギャラリーなどの白い空間)とは違った、カフェギャラリーの良さも活かした肌触りのある展覧会でした。

 

 

さて、ボスニア・ヘルツェゴビナというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。かつては、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国に所属する一国であり、独立するにあたりボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で苦しんだこと、首都サラエボでオリンピックがあったこと、サッカーファンならサッカー強国の一角であり名選手を生み続けてきたこと、日本代表の監督も務めたイビチャ・オシムさんのことも思い出すでしょう。

そこに堺市民であれば、こんなエピソードも覚えておいてはいかがでしょうか。それは、会場の音カフェから阪和線の線路を挟んで堺区側にあるアルフォンス・ミュシャ館のことです。

かつて、つーる・ど・堺でも取り上げましたが(記事【1】【2】【3】【4】)、アールヌーボーの旗手として人気が高いアルフォンス・ミュシャの世界最大級コレクションが堺市にはあります。ミュシャはパリでデザイナーとして名を馳せましたが、当時オーストラリアハンガリー帝国に支配されていたチェコの出身です。

パリ万博で同じスラブ民族のボスニア・ヘルツェゴビナ館の壁画制作を担当したことから、ミュシャは民族独立のために芸術家として残りの半生を捧げることになります。スラブ民族の苦難の歴史を題材とした感動的な連作『スラブ叙事詩』の制作に没頭するだけでなく、独立したチェコスロバキア共和国の切手や紙幣のデザインなどをほぼ無償で引き受けたのです。

そんなミュシャコレクションのお膝元で、同じスラブのボスニア・ヘルツェゴビナの文化が紹介されるのも不思議な縁を感じます。展覧会に足を運んだ後は、ミュシャ館にも足を伸ばして、たっぷり東欧の薫りを浴びてみてはいかがでしょうか。

 

この『ボスニア・ヘルツェゴビナ刺繍と生活の彩り展2019』は、2019年7月29日(月)まで、興味を持たれた方はぜひ観覧へ!!

 


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