大鳥大社よ蘇れ! (1)
大鳥大社は、和泉國一宮と称され、泉州地域の中でも筆頭の神社です。
先日、平安時代から続く大鳥大社の花摘祭の現在の様子をレポートしましたが、近年はお祭りも執り行うことが困難な時期もあったのだそうです。その事情を、大鳥大社を立て直すべくやってきた神主・水無瀬忠俊禰宜(ねぎ/当時)にインタビューしたのは、2017年のことでした。
その時も、歴史ある大鳥大社を地域に開かれた神社として再生したいという、熱い想いをお聴きしました。ただ、それはあまりにも困難な道に思えました。
しかし、時は移り、2019年の花摘祭では、水無瀬さんは宮司(ぐうじ)となり、また汗を流す若い神主さんたちの姿も見受けられました。お祭りの時だったこともありますが、あの淋しげだった大鳥大社の空気が随分変わっていました。
この2年間で一体どんな変化があったのか。新しくやってきた神主さんの一人、権禰宜(ごんねぎ)の万力康司さんに話を伺いました。
■荒れた神社と新しい仲間たち
インタビューの枕に、まずは一般的にはなじみが薄い神社の世界について伺ってみることにしました。
――神主や、宮司、禰宜(ねぎ)と色々呼び名がありますが、どういう区別なのですか?
万力「神主というのは、神職の総称です。神社をひとつの会社にたとえるなら、宮司は社長で、各神社に一人しかいません。禰宜は部長で、権禰宜は課長や係長にあたるでしょうか。その下にいるのが、見習いの出仕(しゅっし)になります。白い袴を履いている人たちですね」
――神主さんになるには、資格が必要なのですか?
万力「必要です。全国にいくつかある神職養成機関で勉強して資格を取る必要があります。私は熱田神宮学院で学び、資格をとりました」
――どうして万力さんは、神主さんになろうと思われたのですか? たとえば万力神社という神社があってそこの神職さんを代々されている家系であるとか?
万力「万力神社があるというわけではないのですが、親族に神職をしているものが多くて、親族が集まるとまずはお供えと御祈祷をして……という感じだったので、神職を目指すのはごく自然なことでしたね。21才の時から神職について、20年になります」
――万力さんが大鳥大社に来られたのはどういう経緯があったのでしょうか。
万力「私は以前は、大阪市の天満宮で権禰宜をしていて、禰宜だった水無瀬さんにはお世話になっていました。その水無瀬さんが、大鳥大社の禰宜になるというので、お手伝いに行ったら、あまりにもの荒廃ぶりにびっくりしました。木は生え放題で、建物もボロボロ。私ともう1人で、木を切りにきたり、ペンキを塗りに来るようになりました。それでこの神社を再生できたなら、やりがいがあるのではないかと思ったのです」
――でも、天満宮といえば、大阪を代表するような、全国的にも知られた神社ですよね。言うなれば、都会の一流企業です。そこから老舗とはいえ経営が上手くいってない会社へ転職するようなものですよね? よくその決断が出来ましたね。
万力「そうですね。私には子どもも3人いたて簡単な決断ではありませでした。しかし、丁度40才の節目の年で、自分が納得できることをしたかった。出来上がっている神社の仕事はパターン化しているところもあるし、(転職するには)40才でラストチャンスだと思いました。相談すると、奥さんもいいといってくれたのです」
■ゼロベースで再建を目指す
大鳥大社の再建に魅力を感じたのは、万力さん1人ではありませんでした。現在6人の神主さんが大鳥大社に所属しています。
万力「みんな住吉大社や春日大社などに務めていた経験のある神主ばかりです。それまでやってきた経験を糧に、大鳥大社の再建と改革に全部吐き出して反映して行こうと思っています。私も天満宮では、総務や財務、色んな仕事に携わりました。培ったノウハウを全部ここで出し切りたい。自分のためにも、神社のためにも出し切りたいと思いました」
――実績と熱意のあるエキスパートが集まったんですね。なかなか燃える展開です。具体的にはどんなことをしているのですか?
万力「ゼロベースで、新しいものを出していってます。お守り、お札1つとっても、私達が出した新しいアイディアを、水無瀬宮司が形にしてくれる。積極的に取り入れてもらえるとやる気もでてきます。たとえば、おみくじも勝ちみくじと名前を変えて、大きめの紙を使うようにして、凶を強運に変えて縁起の良いおみくじにしました。御朱印帖のデザインも変えました」
――色々リニューアルしたんですね。
万力「新しいことだけでなく、伝統もしっかり守って。御祈祷も熱意のある神職がしっかりとするようにして、丁度今日朝から作業していたのですが、夏越しの茅の輪くぐりの茅の輪も、朝から葦を刈ってきて、鉄組が見えないように綺麗に作りました。やはり神事もきっちり行わないといけませんから」
――急速に改革が進んでいますね。
万力「時には水無瀬宮司がブレーキをかける時もありますが、若い私達のやることを応援してくれています」
――花摘市や宵宮も、皆さんからの提案なのですか?
万力「あれは宮司発信です。色んな意見を出しながら、賑わいのあるイベントにして、継続していきたいと考えています」
平安時代から続く花摘祭に、神事だけでなく地域の人が楽しめるイベントとして花摘市を開催。それに先だって、去年からは同様の趣旨のイベントとして、7月31日の宿院頓宮御渡の前日の7月30日には、夏神幸祭宵宮を開催しています。
こうしたイベントに触発されてでしょうか。神社発信でないマルシェイベントや、ヨガ教室などにも大鳥大社の境内が使われるようになってきました。
神社の扉が、地域に向かって開かれて、人が大鳥大社に向いはじめた。そんな流れを感じるようになったのですが、そんな矢先に大きな問題が発生します。
2018年9月4日。
日本に上陸した台風21号は、21世紀最大級の暴風雨となって近畿地方を襲いました。大阪の被害はすさまじく、大鳥大社も甚大な被害を被ったのです。
後篇では、その日の夜当直だったという万力さんの生々しい証言をお伝えすることにします。
大鳥大社
住所:堺市西区鳳北町1丁
TEL:072-262-0040
web:http://www.ootoritaisha.jp/
※※イベント情報※※
■大鳥大社夏神幸祭・宵宮
日時:2019年7月30日(火)16:00~21:00
会場:大鳥大社境内
■リアル謎解きゲーム
日本最大の英雄ヤマトタケルを祭神とする聖域・和泉國一宮大鳥大社の空に不気味な暗雲が立ちこめ、異変が発生!! この怪現象の謎を解き明かすのはキミだ!!
実際の大鳥大社の境内で行うリアル謎解きゲームです。受付で謎解きキットを購入し、プレイヤーは大鳥大社の依頼を受けた陰陽探偵ケイオスシーカーとなって、ミッションクリアに挑みましょう!!
※境内では15:00より夏神幸祭宵宮を開催。19:30より舞台「幻想ヤマトタケル」上演。
日時:2019年7月30日(火)10:00~17:00(受付16:00まで)
目安プレイ時間:1時間
会場:大鳥大社(堺市西区鳳北町1-1-2 JR阪和線鳳駅西出口より徒歩6分)※受付場所は授与所です。
料金:700円
問合せ:sksg2019@gmail.com
https://sksg2019.wixsite.com/sksg
■舞台「幻想ヤマトタケル」
大鳥大社夏神幸祭・宵宮
堺国際市民劇団「幻想ヤマトタケル」
日時: 2019年7月30日(火)19:30開演
会場: 大鳥大社・拝殿前
(堺市西区鳳北町1-1-2 JR阪和線鳳駅西出口より徒歩6分)
観覧無料
問合せ:
堺国際市民劇団準備会 sksg2019@gmail.com
https://sksg2019.wixsite.com/sksg
大鳥大社々務所 TEL:072-262-0040
http://www.ootoritaisha.jp/
作: 渕上哲也
演出: 田村佳代(Theatre Group GUMBO)
出演: 大城戸洋貴(FREAM! theatre)、出田英人(劇団とっても便利)、廣瀬れい
田村佳代、西原亮、宮坂野々、真渕健一(Theatre Group GUMBO)
堺国際市民劇団
照明: 比田克弘(Reset) 音響:松尾謙(SOUND-1)
ダンス振付: ToBi 殺陣: 大城戸洋貴 衣装: Theatre Group GUMBO 白鳥造形: 坂口雅彦
協力: 大鳥大社、堺市立西文化会館(ウェスティ)、FSアカデミー