大鳥大社よ蘇れ!(2)

 

2017年に取材した大鳥大社は、大阪天満宮から当時は禰宜(ねぎ)だった水無瀬忠俊さんを迎え、再建をはじめていました。それから2年経って、水無瀬さんは宮司(ぐうじ)となり、4月の花摘祭も盛大に行われ、若い神主さんたちが活き活きとと神事に活躍している姿が見られるようになっていました。

前篇では、昨年新しく権禰宜として大鳥大社へやってきた万力康司さんに、再建への取り組みを伺いました。万力さんら若い神主さんたちが、情熱的に新しいアイディアを出し、水無瀬宮司が上手に手綱を取りながら現実化させていった経緯を伺いました。水無瀬宮司の地域に開かれた神社にしたいという思いは、いよいよ実現しようとしていたのですが、そこに思わぬ災難が降りかかったのです。
それは、2018年の日本に大きな被害の爪痕を残した台風21号の暴威でした。

 

■台風被害

 

▲大鳥大社の本殿は大きな被害を受けて、大規模な修復工事が必要になった。

 

アジア名チェービー(つばめ)という可愛い名前を名付けられた台風21号は、今世紀最大級の台風へと成長し、四国へ上陸し、その後近畿を直撃しました。そのコースや規模は、かつて堺に甚大な被害をもたらした、室戸台風、第二室戸台風を思わせるものでした。実際に、大阪湾の潮位は第二室戸台風時の記録を塗り替えたといいます。
”つばめ”のもたらした被害は、死者14名、負傷者1000名を越え、家屋も全壊・半壊・一部破損を合わせると、8万5千棟以上になりました。

その恐ろしい台風の日、万力さんは大鳥大社に詰めていました。
万力「当日はここにいたのですが、身の危険を感じました。木々は倒れ、恐ろしい音をたてて、目の前で拝殿の檜皮葺の屋根も吹き飛んでいきました。もうどうしようもなかった」
台風一過。境内の様子は一変していました。倒れたのは境内の神木だけでなく、玉垣、瑞垣、石鳥居に、拝殿前の八角柱の鳥居も倒壊。拝殿の屋根の檜皮葺の屋根も剥離、そして本殿も千木が落下、鰹木がゆがむなど大きな被害を受けたのでした。小さな被害を含めれば数え切れないことでしょう。
万力「もう途方に暮れるような状況でした。そんな中、造園業の方が、他所をそっちのけで来てくれて片付けをしてくれました。ご近所の方も100名以上も手伝いに来てくれて、3日間門を閉め切って掃除をしました。しかし本殿の被害はひどくて、とても年間の祭祀を執り行える状況ではなくなってしまったのです」
この被害を受けた箇所を元通りにするためには、莫大なお金と時間が必要です。

 

▲最初の一枚の写真を見て気づかれたでしょうか。拝殿前にあった特徴的な八角柱の鳥居も倒れて撤去されたままで礎石が残るのみ。再建のめどはたっていないそうです。

 

――これだけの被害。施設の修復はかなり大変なのでは?
万力「自己資金といえるものもありませんので、全額募金でまかなうことになります。鳳地区だけでなく、泉州全体で助けていただけないかと、宮司も企業をまわっています」
――大鳥大社は和泉國一宮ですから、泉州の神社として協力していただけると助かりますね。それで、修復にはいつまでかかりそうでしょうか?
万力「本殿の修復工事をはじめていますが、長くかかるでしょう。令和4年には、日本武尊(やまとたけるのみこと)が昭和32年に御祭神に戻ってきてから60年の式年大祭になります。それまでには、本殿の修復工事も終えて、お披露目をしたいと考えています」

荒れた神社の再建に、台風被害まで加わり、大鳥大社の行く道は、一層困難な道となりました。しかし、大鳥大社の神主さんたちの夢は、大鳥大社をただ再建するだけにとどまらないようでした。

 

■文化や伝統を伝える場、そして地域のコミュニティーの場へ

 

▲茅の輪にもくぐり方があり、意味づけがある。

 

――時代も変化していく中で、神主の皆さんは、この大鳥大社をどのような神社にしていきたいと考えておられますか?
万力「神事ごとをきっちりおこなう礼拝施設でありながら、地域コミュニティーの場でもある。ここで清々しいお参りを出来る環境を整え、色んな人が集ってコミュニケーションを取っていただきたいですね。また、現代の人たちは、日本の文化についてよく知らない方が多くなっています。神社は昔から同じ白い衣装を着ています。国史や文化を伝えていきたいですね」
――確かに地域に残る日本文化に触れない、よくわからないという方も少なくないでしょう。
万力「たとえば、堺や泉州地域でさかんなだんじりも、豊穣の祭りです。見た目は荒っぽいお祭りですが、でも神事なんです。僕ら若い世代が、そこに交わっていくことで、神道の成り立ち、なぜ神道が発生したのか、日本のアイデンティティがそこにあるので発信していきたいです。日本の国ぶり、崇高さを自覚していきたい。これから、もっともっと古いものが見直される時が来るのではないでしょうか」
――一方で、国際化の時代。地域のコミュニティにも外国ルーツの方が暮らし、参加する時代にもなっています。
万力「はい。先日の花摘祭にも、外国からこられた方に花摘女として参加してもらっています。宗教施設ですが、この質素な作りが日本文化の良さなんだと、ホームスティされている方など、もっと外国の方にも関わってもらうことで、理解してもらえるのではないか。彼らに日本の文化に触れてもらうことで、海外にも日本の文化を発信していきたいですね」

 

▲海外にルーツのある方にもお祭りに参加してもらい、日本の伝統文化に触れてもらう。

 

――これまでの話を伺うと、地域に愛されながら、積極的に発信していく神社といったイメージが浮かびます。今の段階での、手応えはどうでしょうか。
万力「水無瀬宮司のもと『普通の神社にもどす』をスローガンにやってきました。3年かけて地域の方も、神社に足を運んでくれるようになりました。神社で地域の寄り合いをしていただいたり、宮司が誘われてだんじりの上に乗ったりして、地域の方との交わりも増えてきました。丁度、今は転換期なのではないかと思います」
――宮司発信とおっしゃっていた花摘市や宵宮といったイベント(神賑行事)もその役割を果たしていますよね。
万力「こうした神賑行事も、5年、10年と継続してやった時に効果がわかるのだと思います。今はただがむしゃらにやっていくだけですね」

春の花摘祭の花摘市に続いて、7月30日には夏神幸祭・宵宮の開催が予定されています。
こちらは、夏休みの開催ということで、工作教室や夜店も出店。また、ヤマトタケルを題材にした、人気のリアル謎解きゲームや舞台演劇、地域の吹奏楽部や和太鼓、バンドの出演するステージなど盛りだくさんのイベントになる予定だそうです。もちろん、暑気祓の神事として宵宮特別御神楽も行います。

神事や伝統文化に触れながら、夏の夕暮れを楽しく過ごす絶好の機会です。鳳近隣の地域の方、また遠方の方も、ぜひ遊びにいらしてくださいね。

 

大鳥大社

住所:堺市西区鳳北町1丁
TEL:072-262-0040
web:http://www.ootoritaisha.jp/

 

 

※※イベント情報※※

■大鳥大社夏神幸祭・宵宮
日時:2019年7月30日(火)16:00~21:00
会場:大鳥大社境内

■リアル謎解きゲーム

日本最大の英雄ヤマトタケルを祭神とする聖域・和泉國一宮大鳥大社の空に不気味な暗雲が立ちこめ、異変が発生!! この怪現象の謎を解き明かすのはキミだ!!
実際の大鳥大社の境内で行うリアル謎解きゲームです。受付で謎解きキットを購入し、プレイヤーは大鳥大社の依頼を受けた陰陽探偵ケイオスシーカーとなって、ミッションクリアに挑みましょう!!
※境内では15:00より夏神幸祭宵宮を開催。19:30より舞台「幻想ヤマトタケル」上演。

日時:2019年7月30日(火)10:00~17:00(受付16:00まで)
目安プレイ時間:1時間
会場:大鳥大社(堺市西区鳳北町1-1-2 JR阪和線鳳駅西出口より徒歩6分)※受付場所は授与所です。
料金:700円
問合せ:sksg2019@gmail.com

https://sksg2019.wixsite.com/sksg

 

■舞台「幻想ヤマトタケル」

大鳥大社夏神幸祭・宵宮
堺国際市民劇団「幻想ヤマトタケル」
日時: 2019年7月30日(火)19:30開演
会場: 大鳥大社・拝殿前
(堺市西区鳳北町1-1-2 JR阪和線鳳駅西出口より徒歩6分)
観覧無料
問合せ:
堺国際市民劇団準備会 sksg2019@gmail.com
https://sksg2019.wixsite.com/sksg
大鳥大社々務所 TEL:072-262-0040
http://www.ootoritaisha.jp/

作: 渕上哲也
演出: 田村佳代(Theatre Group GUMBO)
出演: 大城戸洋貴(FREAM! theatre)、出田英人(劇団とっても便利)、廣瀬れい
田村佳代、西原亮、宮坂野々、真渕健一(Theatre Group GUMBO)
堺国際市民劇団
照明: 比田克弘(Reset) 音響:松尾謙(SOUND-1)
ダンス振付: ToBi 殺陣: 大城戸洋貴 衣装: Theatre Group GUMBO 白鳥造形: 坂口雅彦
協力: 大鳥大社、堺市立西文化会館(ウェスティ)、FSアカデミー

 


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