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堺にユネスコのセンターがあった!!(1)

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「『百舌鳥・古市古墳群』ユネスコ世界文化遺産への国内推薦に内定」のニュースは、堺市民にとってはインパクトのあるニュースでした。では、ユネスコカテゴリー2センターが、この堺市に、それも世界遺産を狙う大仙陵古墳のお隣にある堺市博物館の中に存在するのをご存じでしょうか。
それはアジア太平洋無形文化遺産研究センター(IRCI)。ユネスコの無形文化遺産には、音楽や舞踏、祭りや儀式、伝統工芸技術などが含まれます。ちなみに日本では、和食や和紙などが無形文化遺産のリストに加えられています。
どうやら無形文化遺産を研究する機関らしいですが、なんでまた堺市にそんな機関があるのか、センターに足を運んでお話を伺ってきました。
■ユネスコの精神的なメッセージを伝える
迎えてくれたのは、岩本渉IRCI所長。IRCIは、正式には「独立行政法人国立文化財機構 アジア太平洋無形文化遺産研究センター」という長い名前で、堺市立の機関ではなく国立の機関です。
「文化庁の関係機関になるのですが、民間的な意識を入れるため独立行政法人となっています。国立文化財機構には、東京国立博物館や奈良文化財研究所なども属しています」
国立文化財機構に属する組織はIRCIを含めて7つしかなく、かなりグレードの高い組織のようですが、ユネスコのカテゴリー2というのはどういう意味なのでしょうか。
「カテゴリー1は、ユネスコ直轄の機関です。カテゴリー2はユネスコと連携してユネスコのミッションを共に達成するために運営される機関です。IRCIの運営理事会のメンバーにはユネスコの代表も含まれています」
IRCIの発行物を見ると、そこにはギリシャ神殿のようなユネスコのロゴが掲載されています。
「ユネスコのロゴを使うのは簡単ではありません。カテゴリー2機関は、ユネスコのロゴの使用が許可される、ユネスコの精神的なメッセージを伝えていくことが出来るというのはミッションを達成するために大きな意義のあることです」
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▲岩本渉IRCIセンター所長。

 

このカテゴリー2機関であるIRCIが堺に出来た経緯は以下のようなものでした。
「日本政府がユネスコと協定を結んで、無形文化財遺産のセンターを作ろうということになったんです。しかし同じころ、中国・韓国も無形文化財遺産のセンターを作ろうとしていて、三つも作っても仕方がないので、三国で役割分担をしようということになったんです」
その三国の役割とは、
・中国 人材育成
・韓国 情報ネットワーク
・日本 研究の促進
でした。そして2010年の8月にユネスコとの間に協定が結ばれます。
「堺市は、2000年に民族音楽祭(世界民族芸能祭「ワッショイ!2000」)を開催するなど、無形文化遺産に関心をしめしていました。推測ですが、古墳群のある堺市として世界文化遺産を目指して認知を高めたいという意図もあったのかもしれません。そんな背景もあって、ユネスコと協定を結ぶならぜひユネスコの機関を堺に誘致したいと堺市から申し出がありました」
そんなわけで、協定の翌年の2011年10月に堺市博物館内のスペース提供を受けて、IRCIが開設されたのです。
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▲無形文化遺産に関するシンポジウムの様子。(写真提供:IRCI)
昨年2016年には、IRCIは開設5周年の節目にサンスクエア堺(堺区)にて「無形文化遺産国際シンポジウム」を開催しました。これはカンボジア、マレーシア、そして日本の研究者を交えたものでした。堺以外でも、吹田市の国立民族学博物館や東京でもシンポジウムを開催していますが、一般向けというよりは研究者向けのものであることもあって、IRCIの活動や存在は広く知られているとはいえません。
「博物館内に活動を紹介するパネルもあるのですがPR不足ですね」
と岩本さんもおっしゃいます。では、IRCIとはどんな活動をするどんな組織なのか、実態に迫りましょう。
■堺から世界を股にかける研究員
IRCIには、現在10人の職員がいます。それに対して、韓国では20人ほどの常勤の職員がおり、中国も同程度の規模だそうです。人員や予算面では、両国の機関に及ばない中、スペースを無償提供している堺市の支援は小さなものではありません。
「今後も堺市とはソフト面でも協力していきたいですね」
と岩本さんも、堺市に感謝を述べられます。
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▲多彩な国の研究者と仕事をするIRCIでは語学能力は必須。

(写真提供:IRCI)

 

この10人の職員は、日々どんな仕事をしているのでしょうか。
「文化人類学や言語学などのバックグランドがある方が、その分野の論文を書くというよりも、シンポジウムなどを企画したりする。研究者と事務屋の半々のお仕事ですね。中東から太平洋までの広い範囲の無形文化遺産に関する研究の振興を目指して、研究を企画オーガナイズする。研究のバックグラウンドをもとにコーディネートする、研究コーディネーターとでもいいましょうか。諸外国だと認知されている職業ですが、日本だと社会的に知られていないところはありますね」
コーディネーターとなると、研究室に閉じこもってというわけにはいきません。
「無形文化財は、地域の中で、政府なり地方自治体なりとある種の緊張関係の関係を保ちながら保持されています。の中でやっている。そんな現場で無形文化財を継承している人、研究者、政府との交渉を行います。語学は必須で、英語でいうと、TOEIC820点以上が必要です」
国際部門の社員に期待されるTOEICのスコアは660~840。820点以上が必要ということは、国際的に仕事をする人たちの中でもかなり高い英語能力が要求されているということですね。
「仕事のやりがいとしては、基礎知識を生かして無形文化遺産を守るために活動できる。研究というよりは研究の奨励ですから、色んな研究者と知り合いになれる。これからの時代は、一つのプロジェクトをやるには、色んな研究者や機関と協力してやっていく必要があるので、傾向としてコーディネーター的な人の役割は重要になってきます。だから、今後は『あのシンポジウムを手掛けたのは、あの人だ』と、コーディネーターとしての仕事が業績として評価されてくるようになるのではないでしょうか」
高いコミュニケーション能力が求められるようですが、他にどんな資質を持った人が、このお仕事には向いているのでしょうか。
「感性があって、色んなものを組み合わせて問題解決をしていく人でしょうか。知識を詰め込むだけじゃなくて、自分で答えを見つける人。いや、まず自分で問題が何かを見つける人ですね」
広い視野と同時に創造性も求められるお仕事ですね。
担当するエリアも広くIRCIの活動範囲は、アジアから太平洋までの広い範囲を股にかけたお仕事です。この広範な地域は、国情が安定している国ばかりとはいえません。むしろ、様々な困難を抱えた国が多くあります。
そんな中でIRCIの活動にどんな意味があるのか。後篇ではユネスコの精神性、それが社会に何をもたらしているのかにも迫ります。
独立行政法人国立文化財機構 アジア太平洋無形文化遺産研究センター
堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 堺市博物館内
TEL:(072) 275 – 8050
FAX:(072) 275 – 8151

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