『堺少女歌劇団』 (後篇) 語る夢に果てはなく 

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『堺少女歌劇団』は、かつてあった『大浜歌劇団』の80年ぶりの復活を目指し、堺東に舞台を移し77名のレッスン生と共にスタートしました。前篇ではプロジェクトリーダーで地元堺東駅前商店街でお店を構える奥元裕典さんにお話を伺いましたが、後篇ではレッスンの現場を見学します。
レッスンはダンスと歌で週二回。この日はダンスのレッスンで先生は「宝塚歌劇団」で雪組副組長をつとめ昨年退団されたばかりの麻樹ゆめみ先生。2時間の下級生のレッスンのあと、上級生のレッスンが始まりました。
■基礎を徹底するレッスン
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▲この日はインフルエンザが猛威を振るっている影響か、下級生クラスも上級生クラスも欠席が目立ちました。下級生クラスは13人、上級生クラスは9人と少し少な目。
練習着に着替えて現れたレッスン生は、自分たちでバーの準備をすまし、ポーズをとって挨拶すると柔軟運動から開始。
麻樹先生の指示のもと柔軟がひたすらじっくり続きます。
「1mmでも自分の方にひっぱって。自分が限界だと思ったら限界。まだ限界じゃないからね。綺麗に足をあげるために必要だからね」
麻樹先生の叱咤に、レッスン生たちも頑張ります。
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▲まだ体の硬いレッスン生にも「前よりよくなってるよ」と。

 

40分ほどしてようやくバーを使っての練習がはじまりましたが、ポージングなどの基礎的な練習です。基礎でもレッスン生によって、上手い下手は見てとれますが、麻樹先生はどちらの子にも丁寧に声をかけ個別の評価や指示を与えています。基礎練習といっても、それぞれ短く変化に富んだもので、レッスン生たちは気持ちを切らさずに続けられるように工夫されているようでした。
バーを片付けて、本公演に向けての実践練習がはじまる頃には、すでに1時間半ほど経過していました。
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▲オリジナル曲や誰もが知る名曲も。本公演が楽しみです。

 

本番の曲を歌いながらのダンスは、指導されるにつれ徐々に命の躍動する様が感じられるようでした。
あっという間のレッスンが終わっても、レッスン生たちは笑顔で元気一杯です。
先生は厳しいですか? とあえて質問すると、
「先生は優しいです!」
その言葉に麻樹先生は、
「怖い時には怖いわよ」
と眉間にしわを寄せますが、すぐに皆と一緒に破顔一笑。輪になったレッスン生の将来の夢は様々です。
「歌手になりたいです」
「宝塚に入りたい」
「劇団四季か、ディズニーランドのパフォーマー」
「舞台で出られる仕事につきたいです」
「これから考えるところです」
若葉のようなレッスン生たち。そんな子供たちを、どうしてプロとして宝塚の舞台を踏んだ麻樹さんが務めることになったのでしょうか? そこには、特別な麻樹さんの想いがあったのでした。
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▲レッスン終了後のひと時。
■みんなが笑顔になることを目指して
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▲麻樹ゆめみ先生。レッスンは4時間休みなし。
「『堺少女歌劇団』のクリエイティブプロデューサーの仙堂花歩とは、宝塚で同期だったんです。私が昨年に退団することになっていたのを知って声をかけられたんですね。私は舞台をやりたくて東京へ行きたいという気持ちもあったんですけど、先生をやるのも面白いという気持ちがあって、引き受けることにしたんです。今まで宝塚で上級生として下級生にアドバイスをすることはありましたが、先生をするのはこれが初めてなんです」
麻樹さんの言葉には驚かされます。レッスン場での丁寧な教え振りは、とても先生一年生とは思えないものでした
「実はカリキュラムを組むのも人の振り付けを考えるのも初めてなんですが、自分のやってきたことを思い出しながら試行錯誤してやっています。宝塚の時はみな出来る子ばかりでしたが、ここはそうではありません。特に下級生の中には、最初の頃はレッスンどころか走り回る子もいたりで大変でした」
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▲スタッフからも、「見てないと子供はすぐ散漫になります。麻樹さんはその都度そのタイミングで細かく見てあげています」
経験にも意識にも差がある中でクラスを引っ張っていくためには工夫が必要でした。
「出来ていない時には出来ていないとちゃんと言うようにしています。出来ない子に合わせると出来る子がつまらなくなりますから、振りは難しくしたり。でも、出来ない子も出来るようにゆっくりとやる」
麻樹さん自身も小さな頃から歌や踊りの世界に憧れ、仕事にしようと決意したのは小学6年の時でした。宝塚を受けるためにスクールにも通いましたが、新体操をやっていてバレエを始めたのは高校1年の時と遅かったそうです。
「だから、私には出来ない人の苦しみも分かるし、出来る人の気持ちも分かるんです」
引っ込み思案の子には、こちらから話しかけてみる。そんな子でも先生が相手にしてくれたら一歩前に出ます。子供のことを見逃さないでちゃんと全員を意識してあげることが大事なのです。
レッスン生の様子が変化したのは、「堺まつり」での舞台がきっかけでした。
「『堺まつり』の発表の時には並ぶ順番を決めたんです。すると普段からちゃんとしないと真ん中にいけないとわかったんですね。競争することで意識が芽生えた」
そして2015年には大きな舞台が待っています。
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▲上級生は意識高く意欲的にレッスンに取り組んでいました。

 

■夢に向けて邁進する
2月21日には「ガシバル(堺東まちなか逸品バル)」のステージがあり、3月14日には本公演があります。
「歌劇で表現するのははじめてなのでどうなるかと思いますが、はじめて舞台でお芝居をする。それを楽しんでもらいたいと思います。歌ったり踊ったり舞台に立った時の楽しさをあの子たちに知って欲しいですね」
麻樹さんが徹底して基礎にこだわるのにも理由があります。
「私が下級生の時に上級生の方でこの人はすごいと思った方は、皆基礎をおろそかにしない方ばかりでした。柔軟を徹底してやるのも、それが綺麗に足をあげたりするのに絶対必要だからです」
『綺麗に』という言葉も、レッスンの中で麻樹さんは何度も繰り返されていました。「綺麗に降りる」「綺麗に半円を描く」「鏡を見て。綺麗ですか?」……。
「意識しないと(不格好に)ドスンと落ちてしまいます。本番の舞台では自分の姿を見ることは出来ません。鏡を見て綺麗な姿でいることを確認できるのはお稽古場だけですから、クセにしてほしい」
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▲「綺麗に立つ」ことを徹底的に学びます。
女性として自然な美しい姿勢を身に着けてほしいのは、将来宝塚の受験をしたり、舞台や表現の仕事をする基礎になるからです。
「私は舞台に立って、見せることの大切さや責任感を学びました。ただうまくやるだけではなく、自分の心からやらないとお客様には伝わらないんです」
人前で表現することとはどういうことかをレッスン生には学んでほしい。
「自分で個人でそれぞれ思ったことをどう表現できるのか。踊りや歌がうまいことに加えてプラスアルファの何が必要なのか。普通の会社に就職するのだって、自分を表現しないといけないと思うんです。自分を表現するクセをつけていって欲しいですね。普通の子とは違うかもしれないけれど、それが個性になっていけばと思います」
長くプロとしてやってこられた麻樹さんが考える、舞台人としてやっていくのに一番必要な事はなんでしょうか?
「必要なのは忍耐ですね。人と接するにしても、自分のことを出しながらも相手の事を考えなくてはいけない。つらくても我慢して笑顔を出さないといけない時もある。プロだったらいやなことがあっても、やらないってわけにはいかないですから」
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▲レッスンを終えた麻樹さんに生徒から差し入れが!?。

 

最後に『堺少女歌劇団』に関して、麻樹さん自身の夢や目標を聞いてみました。
「宝塚を退団して、もう一度違う世界で挑戦したい。OGの方と共演したり、大きい世界に出てみたいというのが夢なんです。それをする上で、今、先生になったことで学んだこと、人に教えるために今までやったことを思い出していることが舞台に立つことに役に立っていると思います」
先生を引き受けたことで、舞台人として麻樹さんも成長し、次のステップへと進んでいるのですね。
もう一つ麻樹さんは付け加えました。
「この子たちががんばっていることを見て、レッスン生の家族や親族や知り合いも笑顔になって元気になってくれたらと思います。笑顔の相乗効果が出てほしいですね」
対談のほんの一コマから生まれた『堺少女歌劇団』ですが、今や多くの人を巻き込み、商店街や子供たちの夢をのせ、さらに多くの人々の喜びを生み出す存在になろうとしています。
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▲「堺少女歌劇団」を観に行こう!

※前篇はこちら→https://toursakai.jp/wp/2015/02/21/post_69/

 【堺少女歌劇団第1回公演「想い出の一瞬!」】
 日時:2014年3月14日(土)①公演 開演15:00(開場14:30) / ②公演 開演17:30(開場17:00)
 会場:堺市総合福祉会館6階ホール(堺市堺区南瓦町2番1号)
 出演者:堺少女歌劇団、
  特別出演:島田珠代 / 高橋靖子 / 吉岡友見
 チケット:前売り2,000円 ・ 当日2,500円 (指定席)
  ※チケットよしもと 15:00公演・Yコード[ 501417] / 17:30公演・Yコード[501418]
 チケットに関するお問合せ:チケットよしもと TEL:0570-550-110(10:00~19:00)
 ※詳しくは、堺少女歌劇団ホームページをご覧ください!!
堺少女歌劇団
専用レッスン場
住所:堺市堺区 中瓦町1-4-24 7階・8階

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