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かるたで遊ぼう! 町の歴史

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▲奈良から大阪、堺へと流れる大和川を題材にした「大和川かるた」。意外なマメ知識が目白押し!?

 

「和泉河内大和あわせて堺県」。
堺カルタ……堺で小学生時代を過ごした方なら馴染み深いカルタです。古墳や南蛮貿易・神社のお祭りなど、堺を題材にし、小学校ではかるた大会が盛んに開かれました。
ところで、さらに地元に密着したカルタがあるのをご存じでしょうか?
「五箇荘歴史かるた」に「大和川かるた」。堺市の北東部五箇荘地域と、大和川に題材をしぼったカルタを子どもたちと一緒に作ったのは、長年堺の小学校に勤め、今「大阪歴史教育者協議会堺支部」や「堺たんけんクラブ」などで活動する小松清生さん。
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▲「堺たんけんクラブ」や「大和川市民ネットワーク」でも活動する小松清生さん。
二つのかるたの誕生秘話を手がかりに、堺の地域の文化や歴史に親しむためのエトセトラを訪ねてみました。
■いっしょに作った身近な『かるた』
1970年代の堺、小松さんが初めて教師として赴任した当時、農村だった五箇荘は臨海工業地帯の後背地として乱開発や大気汚染に悩まされていました。また新日鉄社宅では八幡からの移住者が多く、不慣れな土地や厳しい勤務に苦労も多かったとか。
地元の話を子どもたちと一緒に聞き取る地域学習を小松さんは始めました。学校の前の道が古来の長尾街道だと知り奈良までサイクリングしたり、地域の人達から学んでいきます。
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▲長尾街道の起点は堺区の戎之町。五箇荘を通り、奈良の長尾神社まで続きます。
そんな中、五箇荘東小学校の養護学級の子どもたちと『堺かるた』を使って遊んでいた小松さんは『堺かるた』は子どもたちには少し難しいと感じていました。
「もっと身近なものを作ればいいんじゃないか?」
と、アドバイスをくれたのは教頭先生でした。
小松さんは、卒業生たちの助けも借り、地元の方々と相談して、読み札の文や絵札の絵を作り上げます。
1986年、『五箇荘歴史かるた』が完成。
「大事なことをかるたの裏の解説文で伝えています。文が短いから、本より作りやすいんです」
遊びながら学べるのも、かるたの優れている点です。埋もれていた地元の歴史を取り上げたかるたは、地元で喜びと驚きの声で迎えられたのでした。
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▲懐かしの「堺かるた」。小学校で遊んだ記憶があるのは30代~40代ぐらいのようですが……。(関連記事:「復活の堺かるた」 ▲「五箇荘歴史かるた」。五箇荘は堺市の東北部にあり、もとは五箇荘村。1938年に堺市に編入されました。
新しい赴任地・新浅香山小学校では、身近な大和川を題材に学習し、1996年『大和川かるた』を作り上げます。
「五箇荘かるた」も「大和川かるた」も教材なんです。子どもたちが喜んであそびながら勉強してくれるし、忙しい先生も裏の解説ぐらいならすぐ読める。今も、地元の学校で使ってもらっています。製作してからずいぶんになった今も購入してくれる人がいるんです。
『大和川かるた』は、大和川市民ネットワークの活動につながり、『五箇荘歴史かるた』は、堺市北区のまちづくり活動につながってきたことがうれしいです」
かるたで遊んだ喜びの声。そして製作してから、20年、10年以上たった今も購入してくれる人がいるのだとか。
■『プリント堺』の完成、『堺たんけんクラブ』の誕生
1995年暮、臨海工業地の造成のもとでも頑張ってきた堺の漁業者と出会い、堺の歴史や産業、くらしを海からの視点で見直すべきだと痛感しました。
翌年3月、大阪歴教協研究大会を出島漁港でもち、漁師の高田利夫さん達のお話を聞き、船で大阪湾見学をさせてもらった日に、歴史教育者協議会(歴教協)堺支部の活動を再開しました。
2001年には、地元の人達とともに、金岡公園周辺が騎兵隊・輜重隊(しちょうたい)・陸軍病院だった歴史を記録しようと「金岡公園ピースメモリークラブ」をスタート。軍隊の内側や地元の人々の体験などの聞き取りや研究を始めました。
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▲小松さんたちに堺の漁業について教えてくれた漁師の高田利夫さん。
「堺の資料を歴史教育に生かしたい」という夢が生まれ、1970年代からはじまった地域学習の成果は、プリント教材として、堺の小中学校で活用されることになります。
2005年、小松さんは錦小学校に転勤。錦小学校は泉州一番小学。幕末からの史料があり、校区は歴史と伝統産業が息づくまち。ここで子ども達と学んだことはとても大きいものでした。
2008年。小松さんは定年退職しますが、短時間勤務で地元の学校に勤めることになります。
「今をはずして『プリント堺』完成のチャンスはない」
『試作版 プリント堺』を経て、2009年4月にフルカラーでCD版の『プリント堺』を制作し全小中学校に贈り、6月には冊子版『歴史たんけんプリント堺』が完成すると大きな反響を得ました。
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▲創立当初は錦之町にあった錦小学校。現在は九間町にあります。 ▲錦小学校校区には戦災を免れた建物が多く残ります。
これで話は終わりません。学校内だけでなく、一般向けに書店置きをするプロジェクトが立ち上がります。
「堺たんけんクラブ」が生まれたのはこの時。
出版事業で堺市都市整備公社の支援を受ける際に、より自由に広く動ける組織として「堺たんけんクラブ」が設立されたのです。
2011年、『プリント堺』に、たんけんマップを入れるなど増補版の『歴史たんけん堺』が刊行されます。いくつもの新聞で報道され、大人にも読みごたえがあると、書店でも好評でした。
この年、「堺たんけんクラブ」が生まれました。堺市都市整備公社のまちづくり支援事業への応募をすすめられたのがきっかけです。『歴史たんけん堺』を普及し、まちづくりにいかしたい、子ども達・市民と学び続けるクラブにしたいと考えてのスタートでした。
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▲「歴史たんけん堺」。堺市文化財課・博物館・図書館はじめ、専門家や地元の方々の協力をいただき、写真や資料がすばらしい。 ▲子どもだけでなく、堺の歴史好きなら傍らにおいておきたい充実の内容。

 

■春と夏の講座で
歴教協堺支部は、2008年から春と夏の講座を続けてきました。
これは毎回、堺の貴重な史跡や文化遺産にスポットをあてたもので、これまで錦
西~錦校区探訪や「錦小学校の史料見学と講演会」、行基さんの「土塔」、橋脚跡が発見された「ニサンザイ古墳」などが取り上げられてきました。
『ニサンザイ古墳 見学と講演会』では、地元の先生からも、「こんなに価値のある古墳だとは知らなかった」と感嘆の声があがりました。ニサンザイ古墳を校区に持つ東百舌鳥中学校の新聞部も参加し、11月の文化学習発表会で学んだことを発表する予定。
「歴史好きの子どもたちを育てていきたい」
という小松さん。講演会でも部長の小川さんはしっかりと質問していました。
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▲2013年の夏の講座ではニサンザイ古墳の講演と見学会が行われました。
今回の講座の講師は、堺市の『生涯学習 まちづくり出前講座』で派遣された、堺市の文化財課の土井和幸さん。実は、まちづくり出前講座は堺市民なら気軽に利用できます。
堺市 生涯学習課の山崎茜さんにお話を伺いました。
この事業は、平成12年度からはじまり、90種類以上のメニューから、堺市民が受講を依頼できるというもの。講師への謝礼なども一切不要です。
24年度では16000人強が利用しました。
「防災関係の講座が一番人気です。小学校からの依頼も多く、『ムーやんおしえて! ごみもんだい』は幼稚園からの申し込みも多いですね」
教育・文化関連も人気が高い講座です。
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▲講師を勤めた文化財課の土井和幸さん。 ▲ムーやんが登場する出前講座も。

 

「他の講座だと毎回同じ内容になりがちなのですが、こちらは参加者のニーズに合わせて毎回違う講座内容になるので複数回受講することも出来るんです」
まずは歴史全般に関する講座を受けて、次は校区の歴史遺産のことをリクエスト、なんてパターンもあるとか。
「堺市の生涯学習は、市の活動を説明するというスタンスではなく、私たちも一緒に学ぼうというスタンスで行っています」
このスタンスが最新の研究成果が反映する瑞々しい講座を生み出しているのでしょう。
参加者からの評価は非常に高いという『まちづくり出前講座』ですが、一方でまだまだ認知度は低いのが課題のようです。
■現場の知識が市民に還元される
小松さんが堺で歴史教育に携わって40年。かるた作りを手伝ってくれた子どもたちも、成人し大人になっています。これだけの時間、地域を自分の足で歩き学習し、今思うことは?
「堺の人々の動きやできごとが、日本や世界の歴史につながってきたし、今もそうだと思います。観光で外から来てもらう努力も要るけれど、市民がもっともっと堺を知って、値打ちに気づいてほしい。市民のボランティアが活発だし、堺市の職員さんもがんばっておられる。歴史と文化をいかしたまちづくりを今こそ・・・と願っています。」
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▲ニサンザイ古墳の外縁で小松さん。土井さんらと共に。

 

かるた作りや、堺たんけんクラブの活動をたどると、職人さんや漁師さん、町に住む普通のお年寄りたちが守り育んできた知識が『歴史たんけん堺』や春夏の講座へと流れ込んでいったのだとわかります。
様々な活動を通じて育った「歴史好きの子どもたち」が、成果を受け継ぎ、育てていくことでしょう。
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▲大和川の水辺の楽校。子どもたちに囲まれて。

 

「堺たんけんクラブ」は2013年になって、新たに『東浅香山の昔たんけん』を発行しました。活動はまだこれからです。
堺たんけんクラブ
TEL:080-2444-2098
※今回紹介した三つの「かるた」はいずれも紙cafeでお買い求めいただけます。
紙cafe
堺区市之町東2丁1
TEL:072-228-5201

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