会社・団体

子育ち応援あそびっこ

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子どもたちがアクリル絵の具で木箱に思うように描く「トールペイント」や、自然の中で遊ぶ「里山あそび」を行う一方で、保育士を招いて「子育て支援者講座」を開催するなど、幅広い活動をされているのが「こそだち応援あそびっこ(特定非営利活動法人)」さん。
子ども遊びと保護者向けの講座という硬軟織り交ぜた活動スタイルは、他にない独特のもの。どうしてこんな活動を行うようになったのでしょうか?
■声をかけある町にしたい
「トールペイント」イベント会場には準備に忙しい「こそだち応援あそびっこ」代表の近藤真理子さんの姿がありました。
「『こそだち応援あそびっこ』の結成は2001年の9月。そのきっかけは池田小の事件なんです」
多数の児童が犠牲になったいわゆる「附属池田小事件」は2001年の6月に起こりました。
「あの後、『話しかけてくる人は危ない』『知らない人を見たら盗人と思え』とでも言わんばかりの風潮が巻き起こりました。私はそれは違うんじゃないかと思ったんですが、私の意見に同意してくれる人は少なくて、そのことにも驚きました」
危機感を覚えた近藤さんは、「みんなの顔が見える町づくりをしたい」と考えるようになりました。
「子育てをする人たちが楽しめる、みんなの顔が見えるコンサートをしようと準備をはじめました。なんの組織もない所からの手作りで、当時はネットも普及してなかったし、子育てサークルにいっても民生委員のおじさんが腕組みして見守っているような硬い感じでした」
そんな中、口コミで拡げたコンサートは西区のウェスティホール(西文化会館)に400人を集める大盛況となりました。
「3000円もするコンサートだったのに! 丁度息子の4才の誕生日の日だったので忘れもしません」

 

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▲この日は汚れていいスウェットで活動的な近藤真理子さん。

 

「子育ては個人から社会の問題になっている」
そう感じた近藤さんは「こそだち応援あそびっこ」の活動を継続します。当時の近藤さんは中学校の英語の先生で、キャンプリーダーやグループワークなども得意としていました。
経験を活かし、移動喫茶店や絵本の講習会なども開催します。夏休みの宿題にもなるトールペイントのワークショップも好評で、7~8年ほど前から毎年開催するようになりました。
「トールペイントは幅広い年齢の子どもたちが出来るのがいいですね。2才ぐらいの子どもでも夢中でやって、飽きてしまったら残りをお母さんが続きを仕上げたりできるんです」
多くのイベントをこなす「こそだち応援あそびっこ」は他からも注目されるようになり、今では子育てイベントやアートイベントなどからも参加を頼まれるようになりました。
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▲お母さんと相談しながら作品を仕上げていくことも。

 

 
■変わり者の先生

 

6年間教員生活を送った近藤さんは自ら「変わり者の先生だった」といいます。
「不登校の子ばっかりよってくるような先生でしたね。英語の先生でしたけど、当時はまだ珍しかったタイ人の子やインドネシア人も授業ゲストに招いたりしてね」
しかし、近藤さんのわけ隔てのなさは、『学校』と必ずしもそりが合いませんでした。
「英語教育にネイディブの先生を呼ぶことになったんですね。どんな先生が来てほしいか要望を出せるんですが、私は英語で演劇をやりたいと思っていたので演劇経験のある先生をと希望を出したんです。実は具体的なあてもあって、経験のある韓国系アメリカ人の先生に『よろしく』と言ってました」
しかし、校長には別の希望がありました。
「校長に訊いたら、『金髪のアメリカ人の女の先生』がいいって。その理由は『わかりやすいから』。でも、やってきたのが韓国系アメリカ人の先生で、校長は校長室から出てきませんでしたよ。おっぱいの大きな先生が来てほしかったんでしょうね(笑)」

 

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▲トールペイントには沢山の親子がやってきます。
進路指導に関しても軋轢がありました。
「トップの高校にいけるような成績の男子生徒なんだけれど、音楽の道に進みたいっていう子がいて、男子ではなかなかなかった音楽科を薦めたんです。すると『なぜそんな指導をする!』と声があがるわけです。同じように成績の優秀な子で『先生みたいに世界で放浪の旅がしたい』から英語科にいきたいと。その子の希望が叶うよう助言すると『お前は何をやっているんだ!』となる」
そうした数々の軋轢を、当時の近藤さんは「自分の指導力不足が原因では」と思い、大学院で学び直すことにします。
「学部で習った教育学は綺麗すぎて役に立ちませんでした。『傾聴せよ』と言うけど、現場では傾聴している余裕なんてない」
かといってハウツー的なものも役に立つわけではない。
「発達などをしっかり学び、たとえば発達心理学のエリクソンなどのちゃんとした文献を脇に置きながら、自分の経験でひとつひとつ判断していくことが大切なんです」
体系的な学習をした上で、現場で個々の子どもたちに直に向き合う。近藤さんは多くの親にその機会を広げる活動もはじめます。
■見る目のある大人を育てよう
「『ほめなさい』ってよく言いますけど、毎回ほめ言葉なんて出てこないですよ。お母さんだって煮詰まってしまう。私も、あほぼけだって言ってしまいます。それにほめればいいってもんでもないでしょ。中身が伴っていない、上っ面だけのほめ言葉なんて営業テクニックと同じです。虐待も、なんでもかんでも虐待なのか。何が虐待なのかを考えるべきだと思います」
手を挙げてしまうこと、きつい言葉を使うことが即虐待なのか。
「私は子供の人権を認めないことが虐待ではないかと思います。子どもがやってることは子どもに訊いてみればいいんです。『なんで自分の足に落書きするの?』とか」
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▲定期的に開催されている「子育て支援者講座」。この日のテーマは来年から実施される保育の新制度についてと「子供の病気と自己予防」。
理解しがたい「子ども」という存在について、その発達の学習は必ずすべきだと近藤さんは考えます。
「うっとおしい2才は3才になるための準備。3才は4才になるための準備。4才はごんたの5才になるための準備。そういうことを学んでちゃんと知ることでお母さんも楽になると思うんです」
自らも三人の子どもを育てる近藤さんは、子育てを経験している教育のプロとして、「選ぶ目のある大人になる」ことが重要だと考えています。
子育て論や、子育てに関する知識・情報が溢れている現代です。「どこのお医者さんがいい」なんて、時には噂話が一番信用できたりもします。
「噂を自分でコントロールできるようになって欲しいんです。見る目のある大人になって、できれば自分の子と同じように他の子も見ていけるようになるといいですね。そのために考える場を作りたい」

 

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▲お母さん同士の実体験を交えた話は具体的で参考にしやすそうです。 ▲この日の講師をされていた元保育士の小仲久子さん。
定期的に開催している「子育て支援者講座」は、そうした生きた知識を得るための場として設けられました。
「今日求められている子育て、子育ち支援者を養成する」ことを掲げた講座で、単発ではなく毎回テーマがあり系統だって知識を学ぶことができます。
「公園にママ友を発掘しに行こうとするのは危険な兆候だと思います。なんのために公園に行くのかっていうと、子どもを遊ばせに行くためでしょ。無理にママ友と遊ばなくていい。子ども軸で考えることで、お母さんも楽になることがあります。また逆に子どもがうるさいと感じる時は、はなれることも必要です」
10年以上たって「自分らしく自分にはこれができる」と、ようやく自信をもって言えるようになった近藤さんですが、さらに次のステージに進もうとしています。
「前から外遊びが出来るプレイパークを作りたいと思っていたんですが、それがかないそうなんです。放置していた雑木林を提供していただけることになって、子どもたちと一緒に整備しはじめています。うちの子どもたちは教えているんでのこぎりも使えます。そういう外で遊ぶことも大事にして、外遊びの会を作りたいんです」
今や近藤さんの周囲には多くの人が集まるようになりました。この日のトールペイントも大盛況です。
「堺は女権のために戦った与謝野晶子の町ですからね。女性が自立していこうというのを町がもっと応援しないと」
近藤さんたちの活動で、堺という町がまた少し子どもたちと子育て世代に優しい町になりそうです。
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▲「若い人たちの活動にも期待」と近藤さん。

 

特定非営利法人こそだち応援あそびっこ
mail:mayourin@nike.econet.ne.jp
fax:072-320-8334

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