ミュージアム

茶聖の故郷の茶室

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毎年秋に開催される大茶会。舞台となるのは名刹南宗寺と大仙公園内の伸庵です。大仙公園といえば図書館や博物館、そして日本庭園が有名ですが、伸庵も国の登録有形文化財に登録されている施設です。
実はこの伸庵、普段から気軽に利用できるってご存じでしたか?
■茶室はファンタジー
静けさの中に伸庵は佇んでいました。広い公園の中、竹林にも囲まれ、世俗の喧噪ははるかにあるかなきか。
玄関からおじゃまして建物の中へ。
スタッフの方が常駐し、お茶会への貸出も多いからでしょうか、よく手入れされ人の出入りも活発な「生きた」建物ならではのハリが感じられます。
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▲伸庵の広間。

 

まず案内していただいたのは六畳と八畳の広間。
多人数のお茶席にも対応できる部屋になっています。
ふと疑問に思って尋ねてみました。障子は開けておくものなのでしょうか? 閉めておくものなのでしょうか?
「開けちゃダメというものではありません。お庭の借景を楽しむものですから。でも全開にしたら今度は風情が無くなりますよね」
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▲中庭を眺める。向かって右が案内してくださった市立博物館の倉橋さん。中世史が専門です。

 

中庭を望めるガラス戸が、上が磨りガラスになっているのも風情を楽しむためです。
「視界が少し遮られることによって『作り物』の世界からファンタジーの世界になるんです」
現実と虚構の狭間のファンタジー空間を作り出すためにさりげない工夫が随所にある。そんな建築芸術が茶室なんですね。
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▲茶室。左手奥のにじり口からお客様が入室します。

 

小間だとその工夫はさらに精緻なものです。
「天井は飾り天井になって空間的な変化をつけています。お客様の方が高くなっていて圧迫感が出ないように工夫されているんですよ」
本来は限られた人間の世界だったというお茶の世界。この小さな空間で濃密な対面を行われたのです。

 

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▲茶室の飾り天井。
■利休の故郷・堺だからこそ
伸庵は部屋数も多く2階まであります。
「普通、茶室は平屋なんですが、伸庵を建てた方が起きてすぐにお茶を楽しみたいと2階建ての茶室を造ったんですよ」
数寄屋普請の名匠・仰木魯堂の手による伸庵。もとは東京の芝公園にあったものを、昭和55年に福助株式会社から堺に寄贈されたのでした。
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▲住まいになっている2階へ昇る階段。

 

その働きかけをしたのが堺と縁の深い京都・大徳寺派宗務総長・立花大亀さんでした。
「利休の故郷である堺にちゃんとした茶室が無いのはいかん、と大亀さんが働きかけたそうです」
そのお陰もあって伸庵、そして小田原にあった黄梅庵が大仙公園に移築されたそうです。
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▲大亀さんの筆による額。

 

「大茶会で表千家、裏千家、武者小路千家の三つの千家が一堂に会するのも利休さんの故郷である堺だからでしょうね」
大茶会では、三つの千家の作法の違いを知ることも出来ます。
「お茶に、それにお菓子も違うでしょうから、それも楽しみですよ」
食いしん坊にはそれが一番楽しみかも!
■お茶は気楽に楽しんで
ここまで来たらお茶を飲まないわけにはいきません。
もとは応接間だった所を増築した立礼席(りゅうれいせき)では、常時お薄がいただけます。
「お休みは博物館と同じ。博物館の開いている時はいつでもお茶をご用意できますよ」
立礼席は椅子席で正座しなくてもいいのも楽でいいですね。
「もともとの利休さんの精神に返ったのがこの立礼席かもしれませんね」
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▲立礼席は予約なしでも利用できます。
お菓子とお薄を用意していただきました。器を手に取ろうとすると、
「最初はお菓子から食べてくださいね」
お菓子は『利休古印』というお菓子。
「利休さんは難しいことは何も言っていません。作法も後から出来たものです。気楽に楽しんでもらえればいいんです」
『利休古印』を口にいれるとほろりと甘さが広がり、お薄を含むと苦さのコントラストに落ち着きます。
「ただお菓子を最初に、と言うのは、その方が美味しいからというだけですよ。いきなりお茶を飲むと体がびっくりしますから」
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▲お薄と干菓子『利休古印』。(一服 300円)

 

お茶は気楽に楽しむもの。
そんな利休精神が日常に息づく伸庵に、ぜひ足をお運びください。
JR阪和線「百舌鳥」駅 下車
TEL 072-247-1447
※観光コンベンション協会 072-233-5258

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