2年目の、七まちひな飾りめぐり

「住之江や 堺の町の 七まちの 鍛冶の音聞く 菜の花の路」
堺出身の歌人・与謝野晶子の歌に詠まれた『七まち』、阪堺線「高須神社」から「綾ノ町」停留場付近には戦前からの町家が残っています。
『七まち』では、町家の保存と活用を目指す有志で作る『堺・七まち町家会』の主催で、2月25日(土)~3月25日(日)に町家・店舗などで”ひな飾り”が行われていました。

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まずはじめに立ち寄ったのは、移転したてほやほやの『七まちびいどろ』。
この”七まち”とあしらわれたムードたっぷりの灯りは、ガラス作家である店主、平田芳厚さんの手づくりです。

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町家を改装したギャラリー兼アトリエの坪庭では、ちょうどしだれ梅が満開でした。
トンボ玉やガラスのオブジェが並んでいる中に、抽象的なデザインが魅力的な『七まちびいどろ』オリジナルのガラスのひな飾り。アール・ヌーヴォーの頃の技法が用いられているとのこと。柔らかさと温かみを感じますね。

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2階には大きめの作品が展示されいて、様々な技法を駆使して仕上げられた立体作品は見ごたえありました。
とんぼ玉の体験製作もできるんですよ!

■七まちびいどろ
住所/堺市堺区桜之町西3丁2-18

次は、昨秋から拝観できるようになった登録有形文化財『堺市立町屋歴史館 清学院』へ。日本人で初めてヒマラヤ山脈を越えた河口慧海(かわぐちえかい)が学んだ寺子屋として知られていて、ボランティアガイドさんが案内をしてくれます。

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こちらのひな飾りの女びなは切れ長の黒い瞳が印象的で、強そうな意志を感じられました。

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作り手が心を宿すのか、はたまた持ち主が・・・なんてことを考えてしまいます。

■清学院
住所/堺市堺区北旅籠町西1丁3-13
開館時間/午前10時~午後4時(入館は午後3時45分まで)
入館料/100円(20人以上の団体は80円)
※「堺市立町家歴史館 山口家住宅」との共通入館料は250円
※中学生以下、65歳以上の方、障害のある方は無料

お香の老舗『薫主堂』のひな飾りは、ガラス扉越しにたのしませてもらいます。

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お手玉のようなお体をした、まんまるふくよかで愛らしい御所人形!上目遣いがたまりません。作った方の愛情が伝わってくるようです。

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お香のよい薫りに包まれてニコニコ顔のひな飾りに、自然と顔がほころびます。

■薫主堂
住所/堺市堺区北半町西2番1号
電話番号/072-232-2549
営業時間/9:00~18:00まで
定休日/日曜日(但し、月に一度くらいです)

そこから、紀州街道へ。歩いていてひときわ目を惹くのは、一昨年の大改装で江戸期の佇まいを蘇らせた『水野鍛錬所』

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引き戸を開けると、十五人揃えの七段飾りがお出迎えしてくれます。
こちらの絢爛豪華なひな飾りは、水野さんが知人からお預かりしているもので、持ち主のおうちには3世代分のひな飾りがあるそうです。

いつもは主役のショーケースにずらりと並んだ刃物たちも、息をひそめて緋色の毛せんの舞台を観覧しているように見えてしまいます。

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このひな飾りの下段、3人の仕丁(しちょう)の持ち物は、箒(ほうき)、塵取(ちりとり)、熊手(くまで)と御所内での掃除係らしく、”公家びな”になるそうです。
それに対して、沓台(くつだい)、台傘、立傘を持った大名行列スタイルのものは”武家びな”と呼ばれるのだとか。

「どうぞ、お二階へ。」と、脇の箱階段を登って、水野鍛錬所4代目ご夫婦が案内して下さいました。
虫籠窓が雰囲気たっぷりの素敵な空間には、ひな飾りの他にも思い出ある玩具やお土産の人形、商家らしく招き猫のコレクションなどたくさん並べれられて、小さな博物館さながら。
その中で一番の存在感、趣あるひな飾りは”武家びな”で、奥さま照子さんのもの。先ほどのものよりやや小さめですが、歳月を重ねた渋さと重みがあります。

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こちらのひな飾り、一昨年まで座敷に飾っていたところ女びなの髪飾りが頻繁にずれて仕方なかったのそうなのですが、昨年からのひな飾り巡りでたくさんの人に愛でられるようになり、お姫さまも満足されたのか、飾りが一度もずれなくなったのだとか。
実際には、ちょっとした振動でずれていただけのことかもしれないのですが、人形の心を感じられるエピソードですね。

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隣のガラスケースに入ったふっくらとしたお顔が上品な木目込み雛は、水野家のお嬢さんで5代目鍛冶職人である七菜子さんのもの。2世代の雛飾りが並ぶ姿は、なんとも感慨深いです。

■水野鍛錬所
住所/大阪府堺市堺区桜之町西1-1-27
電話番号/072-229-3253
営業時間/平日9:00~18:00 土・日・祝日11:00~16:00

綾ノ町駅の方へ歩き、『堺テクネルーム』へ。ご主人の耕一さんがクラリネットソリスト、長男の響さんがピアニスト・作曲家、次男の渡さんがクラリネット奏者・音楽プロデューサーという音楽一家である稲本さんが、自宅の一角を音楽ルームとして開放し、時折コンサートなどを催されています。

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“テクネ”という名前は、ギリシャ語に由来しているのだそう。「ローマ時代に、寝っころがってお酒を飲みながら、気楽に音楽や芸術を楽しむ文化があったの。」と暁子婦人。肩ひじ張らずに、豊かな心で音楽に触れてほしいという想いが込められています。

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ひな飾りの期間中に無料コンサートが催され、100年の歳月を重ねたというベーゼンドルファーピアノの音色を楽しめたそうです。
その奥には、ピアノのストラディバリウスと云われる名器、”ベヒシュタイン”のアップライトピアノが。

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そしてそのピアノたちと肩を並べているのは、稲本家のひな飾り。
下段のほうは75年前のものだそうで、現代のものに比べあらゆるところに細やかな細工が施され、作り手の息づかいを感じます。その後ろに立掛けられた屏風は、親子3代に渡って結婚式で使われたものだと聞いて、感心しきり。
明治生まれのおばあちゃまのものというひな飾りも、ピアノの横に飾られていました。

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ひな飾りの期間中は、珈琲などドリンクとお菓子のセット(500円)を用意されているということで、いただきました。暁子さんお手製、生姜と文旦の砂糖漬けを使った飲み物。どちらも手間をかけられていて、優しい甘さが染み渡ります。
テクネルームで開かれるコンサートの際にも、お茶やお菓子がいただけます。友人宅のリビングルームに招かれたような寛いだ気分で、極上の音楽が楽しめる町屋コンサートホール。なんて贅沢なのでしょう!

■堺テクネルーム
住所/大阪府堺市堺区錦之町東2-1-11
電話番号/072-221-2731

思わず”うれしいひなまつり”を口ずさんでしまう、ひな飾りめぐり。ゆっくりと回っていたら、タイムアップ!『堺市立町家歴史館 山口家住宅』の閉館時間になってしまいました。

昨年より展示される数もグッと増え内容も豊かになり、来年もたのしみな七まちひな飾りめぐり。
ひな飾りを愛でながらも、幼き日々に思いを馳せる方も多いのではないでしょうか。語り継ぎ、紡がれる思い出。そして・・・押入れの奥に仕舞われたままのひな飾り。
来年こそは、我が家も・・・!

【ひな飾りめぐりの概要】
平成24年2月25日(土)~3月25日(日)

■営業時間・定休日
水野鍛錬所  営業時間=平日/午前9時~午後6時、土・日曜日・祝日/午前11時~午後4時
ろおじ  営業時間=午前11時~午後6時、定休日=火・水・木曜日
七まちびいどろ  営業時間=日・月曜日/午前11時~午後4時
内田家住宅  営業時間=原則土・日曜日・祝日のみ/午前11時~午後4時
藤井刃物製作所  営業時間=午前9時~午後6時、定休日=日曜日
薫主堂  営業時間=午前9時~午後6時、日曜日・祝日/午前10時~午後4時
鳳翔館  営業時間=土・日曜日/午前11時~午後5時
堺鉄砲館  営業時間=土・日曜日/午前11時~午後4時
堺テクネルーム  営業時間=午前11時~午後4時、定休日=火・木曜日、2月26日、3月25日
■問い合わせ先
水野鍛錬所/TEL.072-229-3253、FAX 072-228-1354
観光推進課/TEL.072-228-7493、FAX 072-228-7342

■その他:臨時休業の場合がありますのでご了承ください

※2012年の七まちひな飾りめぐりは修了しました。

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