伸栄鉄工株式会社

堺は刃物の町。堺が鉄の技術を手にしたのは、古墳時代にさかのぼるともいわれます。その数百年の歴史を経た子孫を、今日はご紹介しましょう。
堺区の寺町筋で元気に操業されている「伸栄鉄工株式会社」さんは、創業から半世紀を超えるという老舗の工場。つーる・ど・堺とは、2025年に開催したイベント「堺ぶんぐ旅」にワークショップ会場で参加された時からの縁です。青木正憲社長と奥様で伸栄鉄工のセカンドブランドmetallaの代表である青木雅子さんにお話しを伺いました。
■みんなに喜んでもらいたくて工場をオープンに

▲堺ぶんぐ旅でのマグネットづくりのワークショップ。
――「堺ぶんぐ旅」以前から、伸栄鉄工さんでは、ワークショップをされていたようですが、一般の方が顧客ではない鉄工所がどうして、ワークショップを開催されていたんですか?
正憲「きっかけはファクトリズムという、年に一度工場をオープンにするイベントがあるんです。八尾市が主催でやっているんですが、それに参加させてもらったんです。すると一般の人が会社に入ってくるというのが、すごく新鮮で面白かったんです」
雅子「ファクトリズムになぜ参加したのかというのも、この住宅街の中にある鉄工所ですので、近隣の方にうちのことを理解していただきたかったからなんです」
正憲「地域貢献じゃないですが……」
雅子「ものづくりを子供に広めたいという気持ちもありました」
正憲「ファクトリズムに来ていただいた方も、お子さんが結構多かったんです。僕らが日常にやっていることがすごいと言ってもらえる。これってすごいことなんやなっていう認識が生まれて、もっとお子さんを喜ばしたいなという気持ちになって。年に1回じゃもったいないよねっていう話で、社員にも協力してもらって月1回自分らでやろうということになりました」
――それでどんなワークショップを?

▲鉄のクリスマスツリー。
正憲「基本的に、機械で鉄に穴をあけてもらうとかになります。鉄に自分で穴を開けるというのはなかなかする機会がないでしょう。穴を開けて何かをしてもらう。やはり開ける時に、みんながすごく喜ぶんです。そんなところから、物作り好きをとにかく増やしたいなと思ったんです。物作りが好きになったお子さんには、将来うちに来てもらえたらうれしいですしね」
――気の長い人材育成ですね(笑) 物作りの町、堺の伝統が引き継がれている感じでいいですね。
正憲「はい。そうなんです。堺は物作りが有名なんですよ。やっぱり。今の時代でいえば、
ITとかになるんでしょうけれど、やはり自分で物を作るということを、すごく大事にしてもらいたいなという気持ちがあるんです」
――それで、子供さんや町の方には喜んでいただいた。
正憲「はい。もう本当に皆さんに喜んでいただいて、うちの社員の意識も変わりました。整理整頓のレベルが一個上に上がりました。やはり他人が入ってきて見られると思うと、全然変わってきましたね。先日もすぐそこにある錦小学校の3年生の皆さんに、工場見学に来ていただきました。少し座学で勉強して、各班に分かれて工場見学をして帰ってもらうということをやったんです」
――それはすごいですね。これからも社会見学のコースにされるつもりですか? 私も子供のころにいった社会見学の記憶っていまだにあります。
正憲「はい。それはもう、全然、随時受け入れていきたいです」
雅子「私もそうなんです。子供のころに見た本物っていうのは、絶対に覚えています。それがどう作用するかは別として、子供たちの記憶に一つ残ればいいなと思います」
――そうですよね。こちらの工場にある機械も、本当に実用のためだけに生まれた機械にしかない格好の良さがありますね。子供たちは忘れられないんじゃないでしょうか。
■困った時は伸栄鉄工へと頼られる工場

▲無骨な工作機械が所せましと並ぶ。まさに鉄工所といった風情。
――伸栄鉄工自体のこともお聞きしたいのですが、まず創業はいつからでしょうか?
正憲「1968年。祖父の時代からで、私で三代目になります」
――半世紀の歴史があるんですね。鉄工をされているとのことですが、主にどういった製品をどういうところを対象に作られているのでしょうか?
青木「うちは量産ではなく、単品、一品物ばかりを扱っている会社なんです。たとえばある大手の自転車企業さんの金型をやらせていただいりしています。うちはメインの会社を持っていない下請けなんです。とにかく来た品物を捌いていくという形になっていて、たとえばテーマパークのアトラクションの部品なんかも作っています」
――そんなものまで!
青木「結局完成品ではなくて部品なので、うちも最初これが何になるかっていうのはわからなかったりもします。図面を見て、最後にこうなるんやというところもあるんです。あとは、大体産業機械の一部の部品であったり、土台というところを加工させていただいているんです。たとえば瓶にラベルを貼る機械。その下の土台の部分や、そこについている部品を加工させていただいています。一般の人の目につかないところにある品物ばかりなので、なかなか説明するのが難しいんですね」
――物を作る機械に必要な物を作っているという感じですね。日本の物作りのまさに土台というか。
青木「今はどんどんロボットが盛んになっているんですけれど、そのロボット自体は大手メーカーさんが作っています。すごく精密なことをされているんですが、そのロボットを取りつける下の土台をうちがやらしてもらっています。その土台の精度が出ていないと、なんぼ上の精度が良くてもあかんというところがあります。そういう目に見えないところの部品が主になっています」
――そうか。土台が傾いていたら、ロボットが精密な仕事しても意味がないんだ。それで一品物ということは、取引先の方も、これぐらいのものを、この精度でやってくれるところということでお願いしに来られるんですよね。
青木「基本なんでも屋みたいな形になっているんでい、余所でできなかったのを、伸栄さんに持っていったらやってくれるんちゃうみたいな話で、どんどん広がっていって、なんとか続いています」
――どなると、伸栄さんの特徴は、技術力ということですか?
青木「そうですね。はい。まだまだですけれど、一応の品物ができるということで」
――困っているところが来てくれたら、対応できますよ、ということなんですね。
青木「そこから、また繋がって、またこっちっていう形で口コミが広がっているような状態ですね」
■鉄とアートのコラボレーションがしたい!

▲伸栄鉄工株式会社のセカンドブランド「metalia」が誕生!
――そういう精密な技術を体感してもらえるという意味でも、ワークショップは面白い試みですね。
正憲「このコマもうまく回すと5分ぐらいまわるんですよ。海外の人向けにもインバウンドを意識して、日本のおもちゃを体験してもらうイベントもやっています。コマ以外にも、色んなものを試作していまして。扇子とかも作れたら面白いとおもっています」
――ここまでくると、鉄のアートですね。
雅子「私個人的には、様々な芸術家の方、舞台もそうですし、絵も歌も音楽も花も、色んな表現をされる方を一番リスペクトしています。そのことに数年前に気づいたんです。今、夫がこの鉄工所をやっていて、夫の気持ちの中に、子供たちに伝えたいという気持ちはあるけれど、やっぱり従業員さんや、その家族も守らないといけない。本業があるので、なかなか手が届かない。そんな中で、私も子育てが忙しいんですけれど、新しく好きなことをさせて欲しいと思って、Metallaというのを作りました。metal(金属)とbella(イタリア語で美しい)を組み合わせた名前です」
正憲「伸栄鉄工のセカンドブランドになります」

▲伸栄鉄工株式会社の技術力を活かしたコマ。
――すごい。一般のお客様が購入できるような、色んな製品を作られていますね。
雅子「鉄を使って色んな製品を作りたくて、今はインスタで、鉄だけでなく、いいと思うものを全部発信したいといいう思いがあります。すぐ近くに創業200年になる(花屋の)花市さんがあります。花市さんに桜を(鉄の花器に)いけてもらって、うちの前にあるお寺の参拝の方がすごく多いので、飾ってみていただいたりしました。いつかは音楽とコラボもやってみたかったりします」
――セカンドブランドが出来たことで、一般の方とはなかなか接触のなかった鉄工所がぐっと身近な存在になったように思えますね。鉄のアートと他分野のアーティストとのコラボレーションもぜひ見て見たいと思います。楽しみですね。
伸栄鉄工株式会社
Web :https://shin-ei-japan.info/
住所:590-0933 大阪府堺市堺区柳之町東2丁1−23