インタビュー

日本のバレーボールへのアドバイス~ミハウ・ゴゴール監督ショートインタビュー~

 

2024年、バレーボール日本代表へ注目が集まっています。パリオリンピックに挑む日本代表男子は5月の国別対抗戦ネイションズリーグでは、強豪チームをなぎ倒し準優勝の好成績を収めており、期待も高まるのも当然です。
代表メンバーの中には、残念ながらつーる・ど・堺が地元チームとして応援してきた日本製鉄堺ブレイザーズの選手はいないのですが、元所属選手としてはセッターの関田誠大選手、深津旭弘選手、リベロの山本智大選手がいます。関田選手と山本選手が同時にコートにいる時が多いので、「大体1/3は(元)ブレイザーズだ!」と思えば、赤い代表ユニフォームも、ちょっぴり黄色く見えてこようというもの!

そんな戯言はさておき、日本製鉄堺ブレイザーズが活躍してきた日本のトップリーグは、今年大きな変革の時を迎えています。Vリーグから、将来的なプロリーグ化を目指して、新たにSVリーグが立ち上がるのです。
これまでも何度も「プロリーグ化」の声があがり、リーグ改変が行われており、漸進はすれど決定的に上手くいったとはいえず悪戦苦闘している印象です。

ここで、第三者からのアドバイスはいかがでしょうか?
2023年~24年シーズンの日本製鉄堺ブレイザーズvsジェイテクトSTINGSの試合後記者会見に行った、ジェイテクトSTINGSを率いるミハウ・ゴゴール監督へのショートインタビューをここに掲載したいと思います。

 

▲日本代表で”魔術師”と称される関田誠大選手は、元堺ブレイザーズ所属で、現在はミハウ監督率いるジェイテクトSTINGSに所属しています。

 

 

ミハウ・ゴゴール監督は、現在世界ランキング1位に輝くバレーボール強国ポーランドの出身。ポーランドではアナリスト、コーチとして活躍し、前職はラトビア代表監督という輝かしいキャリアの持ち主です。
トップの頂からやってきた彼の目に、日本のバレーボールはどのように映ったのでしょうか?

まずは、日本製鉄堺ブレイザーズが勝利したこの日の試合の振り返りから。
ミハウ監督「まず堺ブレイザーズさんは、今日の試合で本当にアグレッシブなプレーをし、ミスの少ないバレーボールを展開しましたので、我々にとって本当に難しい試合展開となりました。まずは堺ブレイザーズさんの今日のプレーを讃えたいと思います。
2セット目以降は少しずつリズムを作ることはできたんですけれども、相手のオポジット、エヴァンス選手を止めることができなかったので、こういった結果になったと思います。ただし、明日の試合に向けてアタッキングとサーブのマネージメントを改善していかなければいけない部分だと思います」

 

▲いきなりの質問でしたが、しっかりとしたお話をしてくださったミハウ監督。

 

 

続いての質問は、日本のバレーボールに何かアドバイスはいただけませんか? とうもの。
ミハウ監督「少しずつバレーボールは注目されていると思います。特に日本代表が去年の夏に40年ぶりにメダルを取ることができたのが要因ではないかなと思っています。
ポーランドとの違いに関してなんですけれども、ポーランドのリーグではマーケティングにすごく力をいれていて、各クラブ、そしてポーランドのリーグもSNS上で発信をよくしています。で、ポーランドの場合は全試合がテレビで放映されていますし、試合の開始時間が異なります。なので、たとえばなんですけど、12時にジェイテクトSTINGSの試合があって、13時にパナソニックとウルフドッグス、15時にJTとヴォレアスとか。そうすれば日本の試合も、より多くの人たちが色んな試合を見ることが出来るのではないかと思っています。特にポーランドでは15時の試合の視聴率が一番高くて、だいたいその時間帯にはビッグゲームが放映されます。日本のリーグもそういった細かい所を変えていけば、より多くのファンに見てもらえる可能性は高いのではないかと思います」

昨年、日本製鉄堺ブレイザーズと、南海電鉄、行政、地元商店街との連携企画を取材しました。これは地元密着の素晴らしい取り組みだと思いましたが、地元チームにしかできないことがある一方で、1チームで出来ることには限りがあります。リーグ全体のマーケティングはもっとできるように思いますね。
続いて、コート内の課題についても。

 

▲2023年の企画、ブレイザーズトレイン。南海線を日本製鉄堺ブレイザーズのラッピングトレインが走りました。

 

ミハウ監督「改善した方がいいことに関してですけれども、チャレンジでセンターラインフォルトのチャレンジが要求できないことは、個人的にはおかしいと思っています。主審がセンターラインフォルトに気づかないのも仕方ないことだと思うんですけれど、それをチャレンジで要求できないのはおかしいと思っています。
あと、もう一点。チャレンジしを要求した時に、そのリプレイを大きなスクリーンで見れない所も変えればと思います」

野球やサッカーでもお馴染みになったチャレンジ。センターラインの踏み越えを、なんでチャレンジできないんでしょうね? 機材の問題なんでしょうか? 「リプレイをスクリーンで見れるように」という要求は、観戦する立場からもしてほしいですよね。他競技を見ても、チャレンジの結果を待っている時間にリプレイがあればかなり盛り上がりますからね。

最後に、日本のバレーボールへのメッセージも。
ミハウ監督「本当に難しいシーズンだったんですけれども、選手たちのことは本当に大好きですし、いつも日々の練習でもチームはいつもハードワークで一生懸命に取り組んでくれています。この日本のリーグでは私が初のポーランド人の監督であるので、すごく光栄に思っています。ポーランドの友人から日本のリーグについて聞かれる時にはすごいポジティブな話をしていますし、試合を観るように勧めています」

なんとも嬉しい言葉です。日本のバレーボールに興味をもったポーランドの選手やコーチが、SVリーグ、Vリーグに参加してくれたら、きっと日本のバレーボールももっとレベルアップするはずです。

 

▲2024年3月17日のホーム最終戦は、ベテランの出耒田敬選手以外は、若手中心のメンバーで挑みました。今振り返れば、新ブレイザーズへの布石となった一戦でした。

 

さて、オリンピックの夏を終えたら、10月にはいよいよ新生SVが始まります。
SVリーグへの参加ライセンスの発行には、ユースチームの所有や収容人数5000人以上のアリーナ所有など厳密な条件が課されています。日本製鉄堺ブレイザーズのホームアリーナ、大浜だいしんアリーナの収容人数は約3000人と足りてないという課題があるものの、無事参加が決定。
チーム編成に目を移すと、長年まさに屋台骨としてチームを支えた出耒田敬選手が引退。中堅のエースだった迫田郭志選手と樋口裕希選手がVC長野トライデンツへ移籍、若手の赤星伸城選手が北海道イエロースターズへと移籍。一方、SVリーグの外国籍選手枠の拡大に伴い、アルゼンチン代表のルチアーノ・パロンスキー選手と台湾出身のツァイ・ペイチャン選手が入団。カナダ代表のオポジット、シャロン・バーノンエバンズ選手は残留されているようなので、外国籍選手枠はフル活用ということになりそうですね。
また、昨シーズン、即戦力として活躍した渡邉晃瑠選手や成長著しかった安井恒介選手らに、新戦力がどれだけ融合するのか。そして、千葉進也監督からバトンを引き継いだ北島武監督のチーム作りや指揮は? と気になるポイントが盛りだくさん。プレシーズンマッチでは、ジェイテクトSTINGSとの試合も予定されています。
シーズン開幕が待ち遠しいですね!

 

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