手作りの産学地域連携の知育イベント「大学生と学ぼう! SDGs2024」(2)

 

紙カフェも参加した関西大学堺キャンパスで開催された「大学生と学ぼう! SDGs2024」のレポート記事の後編をお届けします。(前編

 

●揚げたて天ぷらみよちゃん

 

取材を続けているといい感じにお腹がすいてきました。このイベントでは「フード」カテゴリーとして、大学のゼミ生らによる学祭ちっくな屋台と、何台かのキッチンカーがグルメストリートを構成しています。
さて、どのグルメでお腹を満たそうか? 目についたのは、明るい笑顔が魅力的な揚げたて天ぷらみよちゃんさん。和泉市のいずみファーマーズ葉菜の森に店舗がありますが、このイベントにはキッチンカーで出店されていました。イベントに参加されている作家さんからの「みよちゃんの天ぷらが食べたい」との要望に応えての参加だったとか。
おススメのゴボウ、アスパラ、がっちょを食べたのですが、こだわりの衣がさっくり軽くて素材の味が楽しめて、人気も当然と大満足の美味しさ。揚げ物なのに重くない「前菜」でした。
ちなみに、がっちょは南大阪では人気の白身魚。海遊館のウェブ記事によると大阪湾沿岸部の砂場に生息していますが、生息に適した砂場の減少によって漁獲高が減少しているとのこと。がっちょをいつまでも楽しみたいなら、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲット14-2「2020年までに、海と沿岸の生態系に重大な悪い影響がでないように、回復力を高めることなどによって、持続的な管理や保護をおこなう。健全で生産的な海を実現できるように、海と沿岸の生態系を回復させるための取り組みをおこなう。」を達成しないといけませんね。

 

●餃子専門店紬刃

 

もう一店舗。これはびっくり古墳型の餃子、古墳王餃子を開発した餃子専門店紬刃(つむは)さん。店舗は堺市美原町にあるそうです。餃子を古墳の形にするのには、皮と餡の開発には随分苦労されたそうです。
この餃子にとりかかったのは、堺市が世帯当たりの餃子購入額で日本3位というニュースを見たことだそうです。ユネスコ世界遺産になった百舌鳥古市古墳群の古墳をモチーフにした餃子を作ることで、堺を餃子の町として盛り上げたいと思われたのだとか。こちらはSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット11-4「世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。」にもあたるでしょう。
肝心の古墳王餃子を食してみたところ、ぎゅっとつまった餡ともっちりの皮で食べ応え満点でした。「前菜」に続く「主菜」として大満足です。なお、この後前編で紹介したCROWAさんのクロワッサンと古墳くんのプリンさんのとろとろプリンを購入したので、炭水化物からデザートまでコンプリートすることになりました。

 

●アスレチックに挑戦!

 

続いては、青空の下で体を動かすアトラクションが行われる、様々なスポーツ設備が設置されている体験学習エリアへ足を運びました。ここでは、十種競技のアスリートで人気TV番組『SASUKE』でも活躍した伊佐嘉矩さんが指導するアスレチックに挑戦! が行われます。これは伊佐さんが考案した子どもたちを対象としたアスレチックコースへのタイムトライアルで、さながらミニSASUKE。
取材をしたのは小学生低学年の回でしたが、全員が2つめの課題であるローリングボックスを越えることが出来ずにリタイア。二巡目のチャレンジでようやく1名が全課題クリアを達成できるという厳しめの難易度でした。

 

▲お見事! 全課題クリアの瞬間!

 

この開始すぐに難易度の高いローリングボックスを置いたコースセッティングには、何か意図があるに違いないと、体験終了後に伊佐さんに聞いてみたところ、
「最初に困難な課題を置いた方が、それをクリアしようとみんなで盛り上がるんです」
との答え。伊佐さんは堺市出身のアスリートで、教師を目指して大阪教育大学で学びました。「子供が好きで、強い心を育てたい」との思いがあるそうです。伊佐さんも2019年に現役復帰を果たすと同時に、堺市で児童支援やスポーツ教室を運営する会社を設立されています。自らが挑戦し続けている姿勢を子供たちに背中で示しているのですね。指導中、フレンドリーだけど子供たちを自然に尊重している伊佐さんの態度も立派なものだと感じました。伊佐さんの背中を見て、子供たちが育まれていくというのが、健全な社会が世代を超えて受け継がれ循環していくという何よりのSDGsかもしれません。

 

●地震が来た! 君ならどうする!

▲地震が起きた瞬間にすべき行動は?

 

これから紹介するのは、「学ぼう! 遊ぼう!」のカテゴリーから。
まずは、関西大学といっても、堺キャンパスではなく吹田キャンパスから来られていた関西大学SDGsキャンパスサポーターの皆さんによる「地震が来た! 君ならどうする!」。普段から体験学習に取り組んでこられたそうですが、今回はこれまでなかった防災をテーマにしたワークショップを企画したのだそうです。2024年元日に能登半島を襲った大地震は記憶に新しいところ。イベント終了後には、九州、関東と地震が連発しました。

 

▲防災グッズとして持ち出すべきものは何? こう暑いと、まずハンディ扇風機に手がのびそうですが……。

 

大地震が起きたという設定でゲームスタート。まずは身を守り、次いで地震が収まれば避難生活を念頭にテーブルに並べられたグッズの中から、必要な防災グッズをカバンに詰めて、避難エリアに移動。果たして正しい行動、グッズのチョイスを出来たのかを競います。

 

▲水、カップ麺、ビニール袋、etc.あなたが選ぶのはどれかな?

 

SDGsには目標13「気候変動に具体的な対策を」のターゲット13-1「気候に関する災害や自然災害が起きたときに、対応したり立ち直ったりできるような力を、すべての国でそなえる。」がありす。気候変動によって頻発する大型台風や豪雨と地震が重なる複合災害は現実的な脅威となっています。また、能登半島地震の被災地の中には、半年たっても復興がままならないエリアがあり、社会全体で防災に取り組むという機運を盛り上げる必要があることは明らかでしょう。そんな中で、防災をテーマにした体験型ワークショップは素晴らしい試みなのではないでしょうか。

 

●カイロスライムをつくろう!

 

カイロスライムと聞くとなんだかピラミッドを守るモンスターか何かか思い浮かぶのですが、これは体を温めるカイロの中に入っている鉄粉を材料にして、子どもたいが遊ぶスライムを作ろうというもの。出来上がったスライムはただのスライムと違って鉄製なので、磁石にひっつくなど面白い性質を楽しむこともできるそうです。こちらのワークショップを担当しているのは、桃山学院中学校・高等学校GO GREEN PROJECTの皆さん。

 

 

普段は主にカイロスライムと同様、カイロから取り出した鉄粉を固めたキューブによる水質浄化プロジェクトに取り組んでいるそうです。一例として、羽曳野市にある古市古墳群の墓山古墳の堀にカイロキューブを散布した水質浄化の調査の比較画像を見せていただいたのですが、緑に濁った水面が澄んだ水に変化している様子は驚くべきものでした。
このカイロスライムづくりは、そうした水質浄化活動をアピール、周知するために考えた企画なのだそうです。
SDGs活動としては複数のものに関わってきそうですが、とりわけ目標6「安全な水とトイレを世界中に」のターゲット6-6「2020年までに、山や森林、湿地、川、地下水を含んでいる地層、湖などの水に関わる生態系を守り、回復させる。」がしっくりきそうに思えます。

 

●個別指導アップ学習会

 

この「大学生と学ぼう!SDGs2024」を関西大学と共催された個別指導アップ学習会さんは、SDGsを学べるアトラクションとして、射的や輪投げ、カルタを用意していました。射的や輪投げの的がSDGs17の目標を書いたものになっていたり、カルタもSDGsをテーマにしたオリジナルのものだったりします。

 

▲SDGsカルタで遊ぶ子供たち。

 

学習塾が大学と一緒になってこのようなイベントを開催したのはなぜなのでしょうか? スタッフの方に疑問をぶつけてみました。
「昔に比べると大学進学率は高くなっています。少子化の影響で、家庭が子供にかける教育費が多くなっていることもあるでしょう。そこで子供たちに大学に来てもらって、実際に大学に触れてもらって、夢をもってもらいたいという思いがありました。「夢を応援して 笑顔にする」というのがうちの会社の理念なんです」
アップ学習会を経営する株式会社パーソナルサポートは、個別指導の学習塾だけでなく、不登校の子供たちのためのフリースクールなど、進学目的には限らずに幅広く子供たちと関わる事業を展開しています。SDGsや地域に目線を向けたイベントを開催したのも、そうした会社の理念や個性だからこそなのでしょう。

子供たちにしてみれば、思いっきり体を動かしたり、古墳グッズを買ったり、地域の美味しいものを食べたりした夏休みの一コマに過ぎないかもしれません。しかし、遊園地やテーマパークにいったのとはどこか違うなという違和感が心の中に残れば、年を重ねるうちに「SDGs」「古墳」といったキーワードあ大きくなって、何かその子供の将来に影響を与えるかもしれません。大学生にあこがれる子もいるでしょう。伊佐さんのようなアスリートを目指す子もいるでしょう。桃山学院や関西大学の学生たちのようにSDGs活動に取り組むようになるかもしれないし、古墳ファンが高じて地域の資産を活用した商売を始めるかもしれない。そんな可能性の種を撒いたのが、「大学生と学ぼう!SDGs」というイベントだったと思えます。今回の記事ではすべての参加ブースを紹介することはできなかったのですが、来年にはもっと参加者も増えて、大学という施設をさらに活用したイベントになり、沢山の子供たちや地域の方に来て欲しいと感じました。

 

さて、お話を伺ったアップ学習会の方から、気になる事をききました。
「夏休みがあけるタイミングというのは、実は子供たちの自殺者がすごく増えるんです。今、【#学校ムリでもここあるよ】というキャンペーンが行われていて、私たちも参加しているんです」
いったいこれはどういう取り組みなのか、フリースクールの「お昼間の塾わなどぅ」さんを取材することになりました。そのご報告はまた改めて。

 

関西大学堺キャンパス
堺市堺区香ヶ丘町1丁11−1

 

 

灯台守かえる

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