手作りの産学地域連携の知育イベント「大学生と学ぼう! SDGs2024」(1)
猛暑酷暑の夏休みに突入した2024年8月。関西大学堺キャンパスにて、「大学生と学ぼう! SDGs2024」が開催されました。このイベントの主催は、関西大学と個別指導塾アップ学習会などを展開する堺の企業株式会社パーソナル・サポートさん。我らが紙カフェもお声がけを受けて参加したこのイベントに取材にいってきました。向かうは、堺区の南海高野線浅香山駅の目の前にある関西大学堺キャンパス。一体、どんなイベントだったのでしょうか?
●紙カフェ
イベント会場は校舎内の複数の教室と校舎外に分かれて点在し、キャンパス全体で開催されているようです。大体一室につき3ブース程度の割り当てで、紙カフェのブースは2階の一室にありました。
イベントパンフレットを開くと、紙カフェは「地域を知ろう!」というカテゴリーに入っており、地域のショップさんが参加しているようで、先日のあべのハルカスの古墳イベントでもご一緒した古墳仲間のお名前もちらほらと見受けられます。古墳=地域を代表するものという切り口なのでしょう。
そんな中、今回の紙カフェは、グッズ販売とワークショップでの参加ですが、SDGsイベントとして意識したものはあるのでしょうか? スタッフの方に尋ねてみました。
「SDGsで言うとフードロス対策をしています。もずふるサブレの中で、ちょっと形がいびつだったりした規格外のものをセットにしてお安い値段で販売しています。それと、このセットには百舌鳥古市古墳群の豆知識が載っている紙も入っていて、子どもたちの勉強にちょっと役立ってもらえたらと思っています」
SDGsという言葉はここ数年良く聞くようになりました。これは2015年の国連総会で採択されたもので、人類がこれからもこの地球で暮らしていけるように2030年までに達成すべき17の目標(ゴール)と169のターゲットを定めたものです。
フードロスは、目標12「つくる責任、つかう責任」の中のターゲット12-3「2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる食料(一人当たりの量)を半分に減らす。また、生産者からお店への流れのなかで、食料が捨てられたり、失われたりすることを減らす。」に該当しそうです。また、百舌鳥古市古墳群の情報カードは、目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット11-4「世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。」にあたるでしょうか。
ワークショップはというと、ハンコとマステで無地のノートをデコレーションするノート作り。ペーパーフリマなどでお馴染みだったワークショップですね。
「作ったノートに夏休みの思い出を書いたりして、夏休みの宿題や勉強に役立ててもらえたらうれしですね」
そういえば、このノートも元々はあまり紙で作ったものだったので、目標12「つくる責任、つかう責任」のターゲット12-5「2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。」ともいえそうです。
では、続けて地域の仲間の様子もうかがっていきましょうか。
●飛鳥おもいで堂
お隣のブースは、飛鳥おもいで堂さん。奈良県明日香村、石舞台の近くにある土産店だそうです。お土産といっても、飛鳥おもいで堂さんが一味違うのは、3Dプリンターを駆使したオリジナルグッズを販売していること。グッズの立体造形の細かさにうならされます。
また、ワークショップでは変わった形の缶バッヂづくり体験を用意されていました。二つのでっぱりを耳や角に見立てて猫などの動物の顔を描くもよし。自由に絵を描くのが苦手だったり、小さなお子様向けには写真の世界遺産関係のぬり絵も用意されていました。至れり尽くせりですね。
●ADAMARO
こちらは古墳ファン心を超くすぐるマニア向けの逸品。ペーパークラフト古墳アートのADAMAROさん。紙に関係するお仕事をされていて、あまり紙をどうにか活用できないかと考えていた所、丁度会社の同僚と一緒に10年近くはまっていた古墳巡りの趣味から、この古墳ペーパークラフトを思いつかれたとのこと。この紙も、額縁に使う特殊な紙を使用しており、形を切り抜くのにはレーザーカッターを使用しており、切り口の焦げ跡が独特の風合いを出しています。もちろんあまり紙を利用しているということで、SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」に合致していることは言うまでもありません。
そして、最大のウリは、上の画像を見た古墳ファンなら当然気づかれるでしょうが、こちらの作品は実在する古墳それぞれの特徴をリアルに再現していること。あなたにとってかけがえのない「推し古墳」のペーパークラフトを手に入れてみたいと思いませんか?
またペーパークラフトを自作するキットもありました。切り込みが入っているので、指で簡単に抜けるそうです。現在は、個人でも入手できる価格帯のレーザーカッターが販売されており、そちらを使われているとのことですが、すごい性能ですね。
なお、現在ADAMAROさんの作品は店舗等での販売はされておらず、こうしたイベントでの販売は作品をゲットできる貴重な機会なのでした。
●CHUPRO
あべのハルカスで開催された「古墳とハニワと星月夜」のレポートでもCHUPROさんに再会いたしました。なんでも個々の所、ずっとイベントに出ずっぱりで、この「大学生と遊ぼう! SDGs」への出店でようやく一息つくとのこと。やはりカードゲームなど、一味違う作品が多いだけに、人気の高さがうかがえますね。
今回の出店では、恐竜をテーマにしたグッズや、関西圏では入手が難しい古代エジプトをテーマにしたグッズもラインナップに加わっていました。
CHUPROさんのワークショップはこちらの写真。紙をくるくるまいてオリジナルの円筒埴輪づくり。何回巻くかでオリジナリティが出せるそうです。こちらは素人さんには一見してわからないという点で、粋な逸品といえましょう。
●木製雑貨ウッドストック
ウッドストックさんは、和歌山県の白浜アドベンチャーワールドのパンダやイルカの木製グッズなどを販売されています。堺市東区の会社ですが、販売先は遠隔地が多く、地元での認知度があまりないということに課題を感じられていました。丁度、百舌鳥古市古墳群がユネスコ世界遺産に登録されたこともあり、地元グッズとして古墳グッズの製造販売を始めたそうです。
SDGsイベントとしてふさわしいのは、この木製グッズがヒノキの間伐材を使っているということ。現在、日本の森林は林業の衰退などが原因で手入れが行き届かなくなっています。そのため森は薄暗くて木々は細くなったり、食物不足などで熊が人間の生活空間へと出没するようになったり、土砂崩れを誘発したりと様々な問題が起きています。
「切り出した木材をどうやって運ぶのかなど課題は多いのですが、日本の木を消費していくということが大切なんです」
ということで、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」のターゲット15-2「2020年までに、あらゆる種類の森林の、持続可能な形の管理をすすめ、森林の減少をくいとめる。また、おとろえてしまった森林を回復させ、世界全体で植林を大きく増やす。」に該当。さらに森の環境は、水系の環境に直結するので、目標14「海の豊かさを守ろう」にも関わってきます。
また、ウッドストックさんは女性社員が中心の会社だそうで、目標8「働きがいも経済成長も」のターゲット8-5「2030年までに、若い人たちや障害がある人たち、男性も女性も、働きがいのある人間らしい仕事をできるようにする。そして、同じ仕事に対しては、同じだけの給料が支払われるようにする。」に取り組んでいるといえそうですね。
なお、ワークショップはアルファベットなどの木製パーツを使ったストラップづくりでした。
●こども基地
縁日が引っ越してきたかのような店構えだったのは、こども基地さん。貝塚市で週一回のこども食堂を開かれていて、電子ゲームではなく昔ながらのアナログな遊びをということで、スマートボールと紐引きが楽しめるブースになっていました。
こども基地さんは、オープンするにあたって堺の子ども食堂ネットワークに見学にいくなどもされたのだとか。今回のイベントは、この後他のイベントへの参加が事前に決まっていたため短時間で撤収せっざるをえなかったのですが、それでもぜひにと請われての参加されたのだそうです。堺のサポートを受けた貝塚の子ども食堂が、こうして堺のイベントを盛り上げてくれるなんて、縁のつながりを感じますね。
SDGsでいえば目標2「飢餓をゼロに」のターゲット2-1「2030年までに、飢えをなくし、貧しい人も、幼い子どもも、だれもが一年中安全で栄養のある食料を、十分に手に入れられるようにする。」に関連しそうです。ただ、つーる・ど・堺でこれまで取材をしてきた子ども食堂のスタッフの皆さんが口をそろえて言われていた、「子ども食堂は飢餓やその原因である貧困に対する解決にはならない」ということも追記しておく必要があるでしょう。先日、給食の無い夏休み中では、ひとり親家庭の34%で子どもが1日2食以下で過ごしていると報じられました(記事)。これは到底、民間の有志のみで解決できる社会問題ではありません。こども基地さんも、自身を「3世代が集まれる場」とおっしゃっており、多くの子ども食堂は地域コミュニティ再生の場と機能しています。むしろSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット11-3「2030年までに、だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。すべての国で、だれもが参加できる形で持続可能なまちづくりを計画し実行できるような能力を高める。」が近いでしょう。
●古墳くんのプリン
古墳くんのプリンさんは、「日本プリンアワード2023 推しプリン 第1位」などの高い評価を得たプリンを販売しています。美味しいだけでなく、無添加で安心安全も追及した高級プリンです。
「堺の方には高いといわれるのですが、大阪だと安いと言われ、東京だと安すぎるといわれます」
とスタッフの方は苦笑されていました。お話しを伺うと、この古墳くんプリンを作り始めたきっかけも、郷土堺を思ってのことでした。
「かつては栄えた堺でしたが、今どんどん衰退していると感じます。古墳をテーマにした商品を作ることで堺が盛り上がる一助になれば」
販売するプリンは、「古墳」だけでなく「千利休」「与謝野晶子」「行基」といった堺の偉人がイメージキャラクターになっているだけでなく、いくつかのラインナップはつぼ市製茶本舗さんのほうじ茶や堺の老舗和菓子店御用達のあずきなど地域の食材を使っており、堺LOVEがひしひしと感じられます。
なお、食べ終わった後のプリンの容器は店舗に持っていくと、購入するプリン1個が50円引きになる取り組みもされています。これは、SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」のターゲット12-5「2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす。」にあたるといえそうです。
●パン工房CROWA
どこかでお見掛けしたクロワッサン。先日、さかい利晶の杜で開催されていた「環濠-CAN GO-橋わたしフェス」に参加されていたパン工房CROWAさんではありませんか。クロワッサン好きが高じて、ついにクロワッサンをメインにしたパンのお店を出してしまったそうです。
こだわりのひとつは、安心・安全を考えて国産の小麦を使用していること。お総菜パンに使用するお総菜も全て手作りで、価格も押さえており、美味しいパンをおてごろなお値段で提供したいというのも目指されているそうです。ただ、最近の円安のあおりで、大手メーカーが海外の小麦から国内の小麦に切り替える動きがあり、そうなってくると国内小麦の入手に苦労することになりそうというお話も。
地域の農産物を地域で消費する地産地消は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット11-a「国や地域の開発の計画を強化して、都市部とそのまわりの地域と農村部とが、経済的、社会的、環境的にうまくつながりあうことを支援する。」に関係してきます。CROWAさんのような、地域のお店を利用することで、消費者もSDGsにつながってくるので、積極的に利用していけたらなと思います。
●ねるりのねりきり
「あんこde作ろう! オリジナル埴輪菓子」のワークショップをされていたのがねるりのねりきりさん。今回は、校舎の外に停まっていたhome cafe LinoLinoさんのキッチンカーと一緒に参加。
ねりきりのワークショップをすると、参加者からよく「なぜ堺で和菓子」と不思議がられることが多いそうです。
「いつもは南蛮貿易の時代にポルトガルから砂糖が入ってきて、それで堺で和菓子の歴史が始まったんだよという話をさせてもらうんです。それから千利休さんがいて、和菓子の町になった。ところが、堺の人でもあまりにも身近に和菓子のお店がありすぎて、よその町に引っ越ししてはじめて堺が和菓子の町であるということを、知ったりもしますよね」
今回のワークショップでは、ユネスコ世界遺産の百舌鳥古市古墳群とからめて、埴輪の和菓子作りに挑戦。丁度、トライしていたところを撮影させてもらいました。結構複雑な形をした埴輪を、すごく集中して作っていました。粘土細工のような手軽さで、しかも食べても美味しいく、地域の歴史にも触れることができる。なかなかお得なワークショップですね。
●河内こんだハニワの里大蔵屋
あべのハルカスの「みんなでもずふる5周年をお祝いしよう!」でご一緒した河内こんだハニワの里大蔵屋さんは、古墳グッズ販売とはにわ作り体験で出店されていました。
大蔵屋さんといえば、大人気の古墳クッションでお馴染みですが、紙カフェの母体であるホウユウ株式会社と同じく、もともとは印刷屋さん。会社が羽曳野市で古市古墳群に囲まれた立地ということもあって、2013年頃にユネスコ世界遺産登録への機運醸成に一役買いたいという思いから古墳グッズを手掛けはじめたのだそうです。世界遺産登録前の2019年4月には古墳グッズ販売やはにわ作り体験などのワークショップスペースに古墳ギャラリーまで備えた店舗をオープン。この時は、たとえ世界遺産登録がならなくても続ける覚悟だったそうですが、7月に登録が決定した時は胸をなでおろしたとか。
古墳グッズの人気は、やはりクリップや付せんなどのステーショナリー系。今回のはにわ作り体験のワークショップは大蔵屋さんの店舗でもやっていますので、興味のある方は大蔵屋さんへGO!
(後編へ続く)
関西大学堺キャンパス
堺市堺区香ヶ丘町1丁11−1