堺で世界に会いにいこう! グローバルフェスタin本願寺堺別院
“ごぼうさん”の愛称で親しまれる本願寺堺別院に、世界の美味、芸術が集結しました。
2024年11月17日に開催されたのは、題して「グローバルフェスタin本願寺堺別院」。あの美しい大屋根と大銀杏の空間に世界各国の屋台が立ちなんだのです。親鸞聖人・蓮如上人の像も見守る中、さてどんなイベントだったのでしょうか?
オープニングセレモニーが行われたのは本堂。主宰者である依田真幸さん、松永友美さん、大中薫さんが挨拶をされました。このイベントのきっかけとなったのは、堺生まれの依田さんが久しぶりの帰堺の際に、近所のごぼうさんにある襖絵の魅力に気づいたことからはじまります。作者である安川如風さんの存在にたどり着き、堺の魅力発信に奮闘する松永さんを誘って如風さんのもとを訪れ縁が結ばれたのだとか。縁といえば、この世界各国の人々をつないだのが、もう一人の大中さんだったというのが、このイベントのコアなのだという話でした。
オープニングセレモニーを飾ったのは、西村佳子さんと植埜登士子さんによる「書と茶事」でした。西村さんは、ライブでは「いろは」しか書かないということで、かなを書かれました。かなも茶道も、中国から伝わった漢字とお茶が日本で独自に発展したもの。代表的な和の文化といっても、源流をたどれば海外へ行きつく。そう考えると、グローバルフェスタのオープニングに「書と茶事」が選ばれたのは、ふさわしいことに思えました。
本堂から境内に出てみましょう。所狭しとテントが並んでいますが、これは世界の様々な国のブースになっています。一体どんな国のブースがあるのか、その一部をご紹介しましょう。
スリランカの「BISTRO cafe」さん。揚げたてのサモサなどを販売されていました。「辛いですよ」と言われて食してみましたが、やや辛って感じで、辛さが激しく苦手な人でなければ全然オッケーだと思います。お味の方はもちろん、激うまでした。
フィリピンコーヒーの「カペデフィリピーナ」さん。アジアでコーヒーというと、世界有数のコーヒー産出国のベトナムや、コピルアックで知られるインドネシア、そインドネシアから独立したばかりでコーヒー産業に力をいれている東ティモールなどが思い浮かびますが、フィリピンコーヒーも実はかつては世界の流通量4位のコーヒー大国だったのだとか。木の病気で衰退してしまったのですが、小規模農家さんの手で再び良質なコーヒー豆づくりが行われるようになったのだそうです。フィリピンコーヒーは特に香りが素晴らしく、陶酔するような魅力がありました。
アジア屈指の美食大国台湾の「士林夜市」さん。堺に台湾夜市が出現しました。目があった瞬間、「台湾バーガー美味しいよ」と言われてしまったらもう食べるしかない。胃袋直撃の美味しさにノックアウトされてしまったのでした。
ヨーロッパを代表する美食の国といえば、フランス……と思いきや、メキシカンフレンチの「ラ・カンティーナ芦屋」さん。え、メキシコなのフランスなの? メキシコもそりゃもう美味しいたら、美味しいわけですが。メキシコとフランスのフュージョン料理だそうです。それは美味しいの二乗で、ゴテンクスみたいなもんですよね。
グルメだけじゃなくてアルコールもという方もいますよね。こちらは最近注目のワイン国のモルドヴァのモルドヴァワインさん。ヨーロッパでも最古の歴史を持つワインのひとつだとか。漫画になってますが、イギリスのエリザベス女王愛飲のワインということのようですね。
やたら笑顔の素敵なお二人は、「アジャンス さこ ジャポン」さん。お話しをききそびれてしまったので、後日ネット検索してみたところ、現代アフリカ文化をフォーカスした会社だそうです。アフリカというと、どうしてもサバンナや砂漠、動物や伝統生活が頭にすりこまれていますが、めざましく発展をしている国もあるエリアで、長い歴史を踏まえた上で現代の文化が築かれています。そしてアジアがそうであるように、アフリカも地域によって多様な文化があります。並んでいる商品をぱっとみてもアート、プロダクトも笑顔に負けず魅力的じゃないですか!?
物販系を続けましょう。こちらは日本というか、アジアというか、ご近所さん。車ノ町の電車道でひときわ目立つお店といえば「色々な国の雑貨RAKUDA」さん。この日は、衣料というよりは雑貨中心のラインナップを揃えておられたよう。
身内の紹介で恐縮ですが「堺ぶんぐ旅」のブースでは、ワークショップやミルクせんべいの販売をしていました。ミルクせんべいは、なつかしさに大人が夢中になってた模様。11月30日に開催された「堺ぶんぐ旅」については、後日レポートしますので、しばしおまちを。
まだまだお店はあるのですが、トークショーがはじまった本堂に戻ってみましょう。依田さんを司会に、襖絵の作者である安川如風さん、僧侶の寺本世存さん、橘堂麻美さんの四人のトークがはじまりました。仏教とはなんなのか? という話から、襖絵の解説まで幅広いお話しを聞くことができました。自分が死んだあとも、この襖絵はずっと残るというお話しを淡々とされちた如風さんの言葉を聞いていると、そういう仕事が自分にも出来るだろうかと、わが身を振り返る気持ちになりました。
大迫力の和太鼓を響かせてくれたのは、尼崎から来られた「和太鼓天音」さん。若いメンバーのチームということもあり、瑞々しくタフな演奏に驚かされました。
この後、引き続きアフリカンダンスやウイグルダンス、朗読劇などがあったのですが、所用があり取材はここまで。後ろ髪をひかれながら、本願寺堺別院を後にすることに。
最後に主催の松永友美さんのコメントでしめましょう。
--今日のイベントをやった趣旨や感想をお聞かせいただけますか?
松永「ここは私のご縁のある場所で、物心ついた時にはここの思い出だったのは、(堺別院に併設されている)龍谷保育園に 2 歳の頃からお世話になってて、うちの息子娘もここの保育園お世話になってて。だから今まで。地域というイメージが薄かったんですが、本願寺堺別院さんのおかげで地域の人たちと仲良くなれたきっかけというのがたくさんたくさん生まれたんですね。
そもそもお寺って。やっぱり人と人をつなぐ場所だったよな。ちょっと行政ぽくて、市役所の役割をしたり、学校の役割をしたり。ふと見たら本願寺堺別院の本堂ってちょうど 200 周年を迎える。200年前ということは、日本が開国したのが1854年、170年前なんですよ。開国前から存在しているってことで、この本堂は私たち、ちっちゃな人間一人一人の生きるところ、生きてる暮らしぶりをずっと見てくれてくださった。だからここにずっといるって事は 100年後の 200 年後も 300 年後もずっとここにいらっしゃるということを想定すれば、私たちの子孫であったり、子供たちのやっぱり同じくここで集まって何か救いを求めたり、助けお互いそういう世界っていうのがつながるんであれば、やっぱここにあるっていう意味がある」
松永「ただ今令和の時代になって人と人との関わりも薄くなり、宗教の感覚も薄くなっていってて、神様仏様がちょっと身近に感じにくくなっている。この情報社会とかでいろんな辛いこと悲しいことがあるのに、みんなネットとかに逃げてしまっている。仏様って逃げる場所じゃなくて、自分と向き合う場所。神様もそう、神様っていうのは手を合わせることが自分と向き合う、そういう手を合わせる行為行動っていうことに対してすごく今感覚が気薄になっているので、手を合わせるっていう事は昔ながらの日本人そのものの助け合いであったり、自分への慰めであったり、叱咤激励であったりする。それが、ここでもう一度復活することで。未来に繋がって起爆剤になるじゃないか?」
--お寺は人もコミュニティも復活する場所と捉えているんですね。
松永「もちろん、もちろん。だからネオ寺コミュニティといってるんですけど、寺コミュニティは昔からあった。今令和の時代で寺コミュニティの復活はやろうと思ったらできるでしょ。だけど、そのネオてつけるのは例えば多国籍の方、色んな国の人、色んな立場の人がここで集まる。次は例えばLGBTQの人たちも呼んで、色んな感覚を共有できる、否定せず受け入れる。それこそ、浄土真宗の教えで、誰をも受け入れる。その懐の中で安心してここで語り合える、そういう場所を作りたい」
--素晴らしいですね。反動も今は激しく、差別はもう日本でもアメリカでもすごいある中で、そういう活動をするのすごく大切だなと思うし、それを昔からの港町の堺でやるのも価値があると思いますね。
松永「堺の町というのは、誰もがを受け入れる街で、もちろん商業という意味もあるし。でも輸入輸出するものの中に宗教もあるからね。経典であったりとか、仏具であったりとか、そういうことにも玄関、窓口っていうのは、堺の港と長崎の港この 2 つ、すごく重要な港で、都市になっていった。長崎はまだそういう矜持があるのに、堺にはそういう矜持がちょっと少なくなってて、それも思い出してほしい。自分たちのその町はこんなに裾野が広くて異文化を受け入れてきた町であり、その末裔である。それを大切にしてほしい」
ーーなるほど。よくわかりました。ありがとうございます。
松永さんの話からは、ネオ寺コミュニティという興味深いワードがでてきました。それは従来の寺コミュニティに加えて、国境を越えた人々とのつながり、LGBTQのようなこれまで隠されてきた人々とのつながりを含めた現代的なコミュニティということのようです。それが港町堺から発信されるのは、素晴らしいことのように思えました。
サイト:https://www.instagram.com/global_festa_honganji/