日本製鉄堺ブレイザーズ観戦記23-24(5) vs名古屋ウルフドッグス第一戦
2023−24シーズン。日本製鉄堺ブレイザーズのホームで対戦する2チーム目は昨シーズン優勝を果たしたウルフドッグス名古屋でした。
10月28日(土)と29日(日)の2連戦を日本製鉄堺体育館に迎える、早速やってきたチームにとって今シーズンのを占う試金石となる二連戦はどのようなものだったのか、試合と記者会見をレポートします。
■アットホームなエンターテイメントを堪能する一日
ホーム開幕戦で使用した最新設備の整った大浜だいしんアリーナと違って、日本製鉄堺体育館は普段の練習にも使っているコンパクトな体育館です。
大浜だいしんアリーナでは、炎の吹き上がるド派手な演出で「まるでアメリカンプロレスのWWEみたいだ!」とハワイ出身渡邉晃瑠選手を驚かせ(喜ばせ?)たのですが、日本製鉄堺体育館は狭さをむしろ武器にしてアットホームな演出を目指していました。
バレーボールに身近に触れてもらえるようにということで、屋外ブースでのバレーボール教室や、夏祭りをイメージした屋台、もちろんキッチンカーのグルメに試合開始前やセット間のインターバルを利用したパフォーマンスショーにも力が入っています。この日のパフォーマンスは、地元の堺市立金岡小学校合唱団による「にじ」の合唱。地元愛の強い人でなくとも、目が優しくなっちゃいますが、ひいき目なしで歌と一緒にステップを踏んでのムーブメントも見事でブラボーなパフォーマンス。
そんなわけで、この日は熱心なファンでも初見の方でも、バレーボール観戦にプラスして何か貴重な体験を得ることができる休日。そんな意図を感じることができる演出でした。
ちなみに日本製鉄堺体育館までは、最寄駅の南海本線「七道駅」からは、徒歩で30分弱。ちょっと遠いなという方には、試合当日は「堺駅」から臨時のシャトルバスが出ていますので、そちらをご利用くださいね。
■強豪ウルフドッグス名古屋との対戦は!?
会場は立見が出るほどの満席。「なるべく多くの人が座れるようお荷物は膝の上に」といったアナウンスが流れるのも、いかにも盛況の雰囲気に一役かっていました。
さて、スターティングメンバーはというと、セッターは不動のキャプテン山頌平選手(14)。オポジットには大砲シャロン・バーノン・エバンズ選手(13)。アウトサイドヒッターはベテランの高野直哉選手(4)と若武者迫郭志(9)選手。ミドルブロッカーには頼もしさを増した竹元裕太郎選手(21)と、リーグ最年長レジェンド松本慶彦選手(1)。松本選手は今シーズン初出場になります。このポジションは開幕以来、新加入渡邉晃瑠選手(10)が務め、大変な活躍を見せていましたが、今日はベンチスタート。松本選手の出場は楽しみですが、渡邉選手に何かあったのかちょっと気がかりでした。もちろん、リベロは堀江友裕選手(5)と森愛樹選手(6)が攻守で役割分担して出場します。
試合経過を簡単に振り返ってみましょう。
第一セットは、日本製鉄堺ブレイザーズはサイドアウトを取られてブレイク(連続得点)が出ないもどかしい展開でした。初得点は松本選手のブロックポイントで健在ぶりを見せつけますが、チームとしてはなすところなくセットを取られます。ウルフドッグス名古屋が圧倒的に強いというよりは、日本製鉄堺ブレイザーズの良い所が出ないという印象でした。
ウルフドッグス名古屋に勢いが出てきた2セット目。序盤は日本製鉄堺ブレイザーズのミス絡みで、ウルフドッグス名古屋のブレイクが続きます。早々にタイムアウトをとって一息つき、ラリーから高野選手が決めてようやく1点もぎ取ると、迫田選手にも得点がではじめ追撃態勢に。しかし、折り返しのファーストテクニカルタイムアウト(どちらかが先に12点とった段階でタイムアウトになる)後は、再びウルフドッグス名古屋が優勢に。取れるブレイクは確実にとり、日本製鉄堺ブレイザーズの攻撃はサイドアウトで一回で断ち切る。名古屋から来たお客様にしてみれば、この2セットを見れただけで、電車代も元が取れてお釣りがきそうです。
ただ終盤は互いにサーブミスが続き、セットポイントも日本製鉄堺ブレイザーズのサーブミスで相手にセット献上と、やや締まらないものでした。
攻めのサーブは日本製鉄堺ブレイザーズの伝統ですが、悪い方にハマると自滅してしまう。これはダメな時の日本製鉄堺ブレイザーズのパターンではないですか。
もう後が無い第三セット。第二セット途中交代で入った高野選手に代わって鵜野幸也選手(23)がスタートからコートへ。両チームともサイドアウトで中々ブレイクが出ない中、鵜野選手のバックアタックがよく決まる。しかし、流れはまだウルフドッグス名古屋のまま、ファーストてクニカルタイムアウトまでに9−12、そしてタイムアウト明けにもブレイクが続き9ー14と大きな差をつけられます。
「これはストレート負けか」
と、敗戦が頭をよぎります。流石に千葉監督も手を打ち、竹元選手に代えて渡邉選手、山口選手に代えて赤星伸城選手(22)を投入。これが功を奏し、15−16と一点差に詰め寄ります。特にウルフドッグス名古屋のクレク選手のアタックをバーノン選手がブロックで止めたプレーは、チームを更に勢いづけたのではないでしょうか。乗ってきたのか、続いてバーノン選手のスパイクがショートバウンドして、ウルフドッグス名古屋の永露腹部を直撃し、バーノン選手がネットを潜って永露選手に駆け寄るというシーンがありました。バーノン選手の優しさにプラス1点したくなるシーンでした。
20点台の攻防となり登場したのがピンチサーバーの安井恒介選手(3)。ビッグボディの異名は伊達じゃない剛腕からのサーブが猛威をふるい、サービスエースも含む四連続得点でついに22−20と逆転。最後は千両役者のバーノン選手がスパイクを決め、ついに一セットをもぎとります。
第四セットは、松本選手に代えて渡邉選手が頭から。第三セットの勢いそのままに、ようやく日本製鉄堺ブレイザーズが調子を上げ、両者ブレイクを取り合う白熱の展開に。ファーストテクニカルタイムアウトが明けてからの後半でも追いつき追い越されと見応えもたっぷり。
「第一セットからこれをやってよ!」
と、思わずにはいられません。しかし勝負は非情でした。得点が20点台に入った所で、ウルフドッグス名古屋が攻勢をかけます。まさにギアをあげたとでもいうのか、三連続得点で19−24とマッチポイントに持ち込みます。最後は、クレク選手のバックアタックが決まり、日本製鉄堺ブレイザーズはホームで黒星を喫したのでした。
■記者会見
試合終了後の記者会見には、主将の山口選手、副主将の迫田選手、試合の流れを変えた鵜野選手の三人にお越しいただきました。
鵜野「私個人としては、途中からの出場だったので3セット目のチームのが立て直すところでセットを取り切ることが出来て良かったと思います。明日も3セット目を取れたような展開を続けて行こうと思います」
迫田「試合前のミーティングでは軟打ボールを落とさないようにということで徹底していたんですけれど、いざ試合になると落とすボールが何回か見受けられたので、もっともっとアグレッシブに取りに行けたらいい結果につながるのかなって思います」
山口「サーブで押し負けたのと、迫田選手が言ったように、ちょっと細かい強打じゃない相手のボールを点数にもう少し繋げられたら、明日も勝機が見えてくるのかなと思っています。以上です」
記者との質疑応答に入ります。
ーーウルフドッグスとの違いは何か感じたのか?
鵜野「さっきの振り返りのお二人の話にもあったんですけど、細かいつなぎみたいな所はうちよりも、粘り強さもそうだし、細かいところで差が出たと思います。うちのチームもそういう所を出していかないといけないと思います」
迫田「間違いなく点の取り方ですよね。強打だけじゃなく軟打でも点数を取るところに差があるかなって感じています」
山口「一人一人のブロック力というところも、やっぱり高さだったり、硬さだったり、仕掛けてくる所だったりとかで感じました。結構ブロックでプレッシャーを感じる場面では良かったんで、特にラリーに持ち込めた時にハイセットで、指先にやって決めに行くのか、もう一回リバウンドを取ってチームとしても、一回攻め直すのかっていうところとかの意識を統一させて、明日以降もラリーに持ち込んだ時に点数を取れるようにしていきたいなと思います」
ーー鵜野選手は先週の長野の試合で活躍され、今日も途中出場でチームのムードを変えるプレーをされていました。ご自身では自分のプレイについてどのように思われていますか?
鵜野「先週と同じように今週もチームが良くない状況で出るという事は、じぶんが出るとしたら、そうやって出る覚悟はあったので、逆に言えば悪い状況だからこそ、自分はちっちゃくならないで思いきったプレイは出来るかなと思っていました。外で待っている時はそう思いながら、いざ中に入った時も、良くても悪くても自分はチームに勢いをもたらすつもりでやりました」
ーー鵜野選手はコートにいる時も、笑顔がすごく多かったり、コート中を走り回ったりも多かったですが、それも意識的に勢いをつけようという思いでやられていたのですか?
鵜野「そうですね。チームを勢いづけようというのもあるんですけれど、遅れて入った分、自分のテンションもあげていかないとと思っていて。チームも自分も鼓舞するためにやっていました」
ーーありがとうございます。次に迫田選手に。今シーズン、対戦チームの監督さんから要注意の選手として迫田選手として名前が上がってきました。日本製鉄堺ブレイザーズの選手の中でも、マークされる選手として認識されるようになってきた気がするのですが、ご自身としてはどう思われていますか?
迫田「やっぱりそうですね、攻撃に限らず守備に限らず、どちらでもチームを救えるようなタイプでずっといたいので、開幕2〜3週間経つんですけれど、この日は攻撃が良かったけど守備がダメ、守備がいいけど攻撃がダメというのがまだあるので、もっともっといい状態を出していければいいのかなと思っています」
ーー今シーズンはチームの副将ですが、副将としてチームをどうしていきたいとか、そういう思いはありますか?
迫田「日本製鉄堺ブレイザーズって、僕のイメージでは昔から硬いイメージがあるので、今日の第一セット、第二セットの試合の雰囲気じゃないですけれど、もっともっと楽しくやろうというのはいつも言っているので、そんな感じですね」
ーーでは、山口選手。まず今日の試合、バーノン選手が軟打に切り替えることが多かったように思えるのですが、原因は何かあったのでしょうか?
山口「少し自分のトスが低かったりする場面はあったんで、そこは明日修正したいなと思います」
ーー今度は少し話題を変えて、つーる・ど・堺は地域情報サイトですので、選手の皆さんと堺の関わりについてもお聞きしたいのですが、お気に入りのスポットはありますか?
山口「僕は結構映画が好きで堺浜の温泉ついでによく(映画館に)行ったりします」
迫田「近所のカフェや居酒屋に行ってます」
鵜野「堺東とかでご飯を食べることが多いのですが、お店が多くて好きな場所です」
山口「あと、リーグ開幕前に原池公園のバーベキュー施設の綺麗な所があって、選手全員でバーベキューをしました」
ーーでは、最後に明日に向けてファンに一言をお願いします。
鵜野「今日はこのような形で負けてしまったのですが、明日はホームゲームでたくさん皆さん駆けつけてくださっているので、日本製鉄堺ブレイザーズの強さを見せることが出来るように頑張りたいと思います」
迫田「先ほども言ったように、グランドボール、ディグのレシーブを頑張れば、自ずと結果もついてくると思うので、明日は3−0で勝ちたいと思います」
山口「今日、負けてしまったのは悔しいですけれど、長いリーグ戦なので負けもありますし、切り替えて明日のために、まず対策だったり、自分たちの体のケアだったり、できる準備をしっかりして、明日ホームゲームに勝って来週に繋げたいと思います」
千葉監督の振り返り。
千葉「今日は特に1、2セットでフェイントボールだとかディップのボールをポロポロ落としてしまって相手のリズムに乗られてしまったというのと、こちらがサーブで攻めたサーブがリベロに集まってしまってたところで、こちらのペースに持っていくことができなくて、後手後手になってしまったというところだと思うので、その辺は明日修正して望みたいと思います」
ーー今日は1、2セット目は選手の皆さんも体が重そうというか、先週のチームと別チームのような印象があったのですが、これはメンタル的なものかコンディション的なものか、相手が昨シーズン優勝チームということで何か気負ったり飲まれたりしてしまったのか、どうなのでしょうか?
千葉「コンディション的には別にたのチームさんも2試合多いか少ないかぐらいなので変わらないと思います。ただ名古屋ウルフドッグスさんは非常に強力なスパイカーが多いので、そこでディフェンスがちょっと構えすぎたり、動きすぎたりというところで、拾えなくなってしまったという風には思っています」
ーー昨シーズン優勝チームである相手とチームとして大きな違いがあるとかは感じませんでしたか?
千葉「優勝したのは去年の話なので、今年は今年で名古屋ウルフドッグスさんは、そんなにメンバーが代わっていないですけど、うちはメンバーが代わっているので、特にそこは全く気にすることはないです」
ーーでは、今日はミドルブロッカーで松本選手が頭から出ていたんですけど、そのチョイスは?
千葉「ちょっと渡邊の体調が今週は良くなかったというのと、出耒田も含めてて誰もコンディションが上がってきていない中、松本自身はずっと開幕からいいコンディションを維持してくれていたので、松本にしました」
ーー鵜野選手は先週のVC長野トライデント戦に続き、今日も活躍しているなという印象でしたが、監督からみて鵜野選手の評価はいかがでしょうか?
千葉「今シーズンは特にオフシーズンから非常に筋力も上がってきてますし、レセプションも含めて色んな場面で安定したプレーをしかりしてくれるということは認識しています。今日に関しても途中から出て難しい状況だったと思いますけど、持ち味はしっかりと発揮してくれたと思います」
ーーでは、最後に明日に向けて何か一言をお願いします。
千葉「今日、4セットでブロックが16本も取られています。ウルフドッグス名古屋さんにブロックで止められたということです。これはもう非常に多すぎます。先週も土曜日にブロックで止められてすぎて修正して日曜日にやったということがありました。その辺はちょっと修正して明日臨まないと、また同じ展開になるかなと思います」
ーーありがとうございました。
ウルフドッグス名古屋は、ここぞという時にちゃんと点を取り、相手に主導権を渡さない大人のチームという印象でした。大黒柱のクレク選手はプレーはもちろん素晴らしかったのですが、自チームのサーブ時に絶えず手を叩いて会場の手拍子を誘っていて、一人で会場全体の空気をコントロールしていた所に感心させられました。1ミリでも勝利に近づくために出来ることは何でもするプロフェッショナリズムを見た思いです。
一方、日本製鉄堺ブレイザーズは、第三セット以降の闘いぶりを見れば、昨シーズン優勝チームとはいえ、ウルフドッグス名古屋に対しては十分互角に闘えるチームだと感じさせてくれた試合でした。松本選手も健在ぶりをアピールしてくれましたし、鵜野、渡邉、安井、赤星という若手もしっかり役割を果たしていて、これからが楽しみで仕方ありません。
奇しくもこの日のパフォーマンス曲「にじ」のコーラスが蘇ります。
「きっと明日はいい天気」
負けた日でも、明日の晴れを信じて邁進してほしい。そんな試合でした。
日本製鉄堺ブレイザーズ
〒590-0901 大阪府堺市堺区築港八幡町1 日本製鉄堺体育館