日本製鉄堺ブレイザーズ2024―25シーズン観戦記(1) vsヴォレアス北海道
オリンピックで、バレーボール日本代表の活躍に夢中になったみなさん。4年後まで待てないですよね。だったら今こそ国内リーグ、新生SVリーグを観てみませんか?
今シーズンからバレーボールの国内トップリーグは世界ナンバー1リーグを目指すSVリーグとなり、男子は10チーム(女子14チーム)が所属するこのリーグは、秋の10月から春の4月まで、ホーム&アウェーで毎週末の土日に2試合開催されます。特に大阪府はチームが3チーム(女子は1チーム)もあるバレーボール王国なんですから、大阪府民としてバレーボールにはまらない手はありません。
我が堺市には、そのうちの日本製鉄堺ブレイザーズが存在します。古豪のイメージがある歴史の長いチームで、強気のサーブと攻撃的なブロックが伝統的なカラーといえるでしょう。日本代表ファン向けにおすすめ選手を一人あげておきますと、昨シーズン加入して新人王となったハワイ出身の渡邉晃瑠(こーる)選手でしょうか。フィジカルとブロックが強い選手で、オリンピックへの出場はなりませんでしたが日本代表に選出されています。兄の渡邉飛勇選手はバスケットボールの日本代表として、一足先にオリンピックでも活躍しており、異競技の兄弟選手でオリンピックメダルを狙おうとかという逸材です。
その日本製鉄堺ブレイザーズの開幕戦は10月12日(土)。相手は2016年にチーム創設というヴォレアス北海道で、“古豪”日本製鉄堺ブレイザーズとは対照的な若いチームです。
しかし、この初戦に日本製鉄堺ブレイザーズは苦戦します。最初の2セットを連取されあわやホームゲームの開幕戦で敗戦の危機。さすがに目が覚めたのか、そこから3セットを連取してセットカウント3-2と薄氷の勝利を掴んだのでした。
今シーズンの日本製鉄堺ブレイザーズはどれだけ活躍できるのか? つーる・ど・堺では、翌10月13日のGAME2を取材することにしました。
■会場へGO!
青空の下、チームフラッグのたなびく駅前商店街から、港に近い潮風薫る道を会場に向かいます。
試合会場は、南海本線「堺」駅から徒歩で10分ほどの大浜公園内にある真新しい大浜だいしんアリーナ。日本製鉄堺ブレイザーズが堺でホームゲームを開催する際は、ここか日本製鉄堺体育館のどちらかになります。
会場付近には、キッチンカーやバルーンドームの遊具も出てイベント感が満載です。グッズ売り場にはタオルマフラーなど選手やチームの応援グッズが取り揃えられています。売り場のスタッフの方をつかまえて、こっそり人気調査をしてみました。
――今年、人気の選手はいますか?
「重留日向選手(11)のグッズが良く出てますね」
――さすが地元、堺出身ですね。
「そうですね。やっぱり大学から加入したばかりの若い選手が人気ですね」
若い選手は、応援を糧に頑張ってチームの勝利に貢献できる選手へと成長して欲しいですね。
会場に入ると黄色いチームカラーのユニフォームデザインのTシャツを身につけた日本製鉄堺ブレイザーズファンが客席を埋め尽くしていますが、ちらほらと赤いシャツのヴォレアス北海道ファンも目につきます。両者の注目はもちろんコート上。試合開始の一時間前ぐらいからコート上では公式パフォーマンスチームB-REXのパフォーマンスや、選手の練習が行われており、自然とテンションがあがってきます。
■試合開始!
時間がやってきました。
選手入場は、レーザー光線が飛びかい、炎が吹き上がるハデハデな演出。気持ちがさらに盛り上がります。
この日のスターティングメンバーは、セッターに山口頌平キャプテン(14)、ミドルブロッカーに渡邉晃瑠選手(10)と蔡沛彰選手(9)、アウトサイドヒッターに髙野直哉選手(4)と安井恒介選手(3)、オポジットはシャロン・バーノンエバンズ選手(13)。リベロは森愛樹選手(6)と堀江友裕選手(5)が攻守をそれぞれ担当して出場します。
互角の闘いではじまった第一セット。昨日のヴォレアス北海道の勢いは決してフロックではありませんでした。日本製鉄堺BZが先行するものの、“ビースト”張育陞選手を中心に点数を重ねて食らいつきます。終盤になって、ブレイザーズが21-19としてからも、2連続ブレイクで21-21と追いつく。しかし、そこで本領を発揮したのが、バーノン選手。連続ブレイクの立役者となり、25-21で第一セットをとったのでした。
第一セットのちょっといい話は、ネット際でコートに倒れた山口選手をネット越しに陳建禎選手(19)が手を貸して助け起こしたこと。相手チームの選手も思いやるなんて、さすがキャプテン。なにげないシーンでしたが、スポーツマンシップを感じるシーンを見るとほっこりします。
2セット目
一進一退の息詰まる展開。折り返しのテクニカルタイムアウトまで11-12。点差が広がらないまま20点代に突入した後は互いにブレイクを取り合う激しい展開に。デュースにまで持ち込みますが、最後はバーノン選手のスパイクがラインアウトで、24-26。ヴォレアス北海道がセットを奪ってセットカウントは1-1に。
3セット目
日本製鉄堺ブレイザーズにエンジンがかかってきたのか、実力をいかんなく発揮しはじめます。効率よくブレイクをとり、前半は12-7と大きくリード。ヴォレアス北海道も追いすがり19-17と2点差まで詰め寄りますが、日本製鉄堺ブレイザーズも20点台以降は簡単にサイドアウトを取らせることがありません。リリーフサーバーで登場した上村龍之介選手(17)のエースが飛び出し、自分の得点ではニコリともしなかったバーノン選手も大喜びで祝福。25-19と余裕あるスコアでセットをものにします。
4セット目
両チームの意地がぶつかり、前半は互いに一歩も譲らない展開でしたが3連続得点で12-9と日本製鉄堺ブレイザーズがテクニカルタイムアウトを奪うと、怒涛の攻撃がはじまりました。特に見ごたえがあったのが安井選手のサーブ。攻めるサーブで、自身のサービスエースも含めて6連続得点で20-11と大量得点を奪います。その後、ヴォレアス北海道もブレイクを集中させましたが、最後はバーノン選手のスパイクが決まって25-18。
結局、第2セットこそ落としてしまったものの、危なげない戦いぶりで勝利を掴んだ試合となりました。
試合終了直後の勝利者インタビューでコートに登場したのはバーノン選手。両チーム合わせた中でも最多得点で、ブロックポイント3にサービスエースまで決めているのですから、当然といえば当然です。しかし、ゲーム中のシリアスな表情が気になりました。試合後の記者会見では質問してみることにしてみましょうか。
■記者会見
試合後の記者会見には、つーる・ど・堺以外にも2名の記者が出席していました。記者との質疑応答は、つーる・ど・堺からのものだけ掲載します。
まず今シーズンから、チームの指揮を執ることになった北島武監督の記者会見から。
――試合の振り返りを。
北島「まずは2連勝できたというところが、チームとしてここはまず勝つと、2連勝するというところを位置付けていた試合でした。全体的には一人一人がしっかりと役割を苦しみながらも果たしていますし、紙一重のところもあったんですけれど、試合に出てる人、出てない人、途中交代の人と全て本当にチームがひとつになった闘いで勝てたっていうところが、この長いシーズンが始まる中で、ものすごく勢いづけることになるので良かったと思います」
――地元堺の地域情報サイト、つーる・ど・堺と申します。日本製鉄堺ブレイザーズのチームカラーに関してですが、これまで強気のサーブとブロックというのがチームカラーとしてイメージがあるのですが、監督はどのようなチームを作っていこうと思われているのでしょうか?
北島「やっぱり日本製鉄堺ブレイザーズはサーブ&ブロック、これはずっと昨シーズンも含めてブロックも上位の方にいます。ただ昨シーズンのデータを見た時に、サイドアウト能力であったり、スパイクレシーブの所がちょっと足りないというところがあったので、そこを上げるために、このオフシーズンに色んな戦術を含めてやって、ある程度は形になってきてるんですけど、ただこれからそれを良いチームと当たる時にいかに発揮するかということだと思ってます」
――もう一問。昨日は出場がなかった蔡沛彰選手が、今日はほぼでずっぱりでしたが、その評価は?
北島「蔡は、ミドルブロッカーの中で一番スパイク能力が高いということがあるので、スターティングメンバーでしっかりと使っていきたい。今後も上位陣も含めて戦う時に必ず必要になる戦力です。ただ、ブロックの所にすごく課題があって、今チームに合流してサイドの移動のスピードだったり、見極めだったりのところを強化してて、それもだいぶ良くなってきたので、ミドルブロッカーの核として今後期待したいというところであります。スパイク能力に関しては、今日の試合をみても片鱗が見えました。セッターとのコンビもまだ間もないのですが、これからどんどん上がってくると思うので、本当にスパイクには期待したいと思います」
続いて、選手インタビュー。記者会見には、安井恒介選手、髙野直哉選手、蔡沛彰選手、
安井「昨日のゲームとは違って出だしもうまくいった所はあるし、自分たちのやるべきところができたので、1セット目はうまくとれましたけど、途中からブレークをなかなかできなかったり、リズムが使えない状況でそういう時には打開する何かが必要っていうのは今回分かりました。いい波に乗れている時ほど、しっかり最後まで勝ち切るのが大事だと思います。あとは、試合をやっていく中で課題を克服できたらなと思います
髙野「昨日の試合は安井選手が言ったように出だしがすごく悪くて、今日は出だしがいい状態で入れて1セット目はしっかりととれました。昨日は僕が途中から入って、守備の部分でチームに貢献しないといけないということでした。今日もパスからいいリズムを作って、チームにリズムをもたらすことができて、その点では良かったと思います」
蔡「(日本語で)ペイチャンです。(周囲から笑い)今日の勝ちは本当に嬉しいです。それからコートでプレーできたことがとても嬉しく思っています」
渡邉「今日のゲームは本当に勝てて良かったと思います。2セット目が昨日と同じような形で落としてしまったんですけれども、結果として勝ったことは良かったと思ってます」
バーノン「今日勝てたことは良かったと思っているんですけれど、私たちとしてはもっとトップのチームと戦っていくにあたって、もっとよりよいプレーをしていかなくてはいけないと思っています。自分といては、一端ビハインドしてから、盛り返して勝てたことは良かったと思います」
――バーノン選手に。今日のプレーで、点数を決めた後で、あまり喜んでなくて表情が硬い印象でしたが、何か問題でもあったのでしょうか?
バーノン「(笑) たしかに今日は疲れていたということはありました。ただ点をとらないといけないという所にフォーカスしていたので表情が硬かったのかもしれないです。しかし、他の選手が得点を取った時はエネルギーを出してちゃんと喜んでいたと思います。チームを助けるために、集中してスコアを取っていかなければならないと責任感があったわけです」
――副キャプテンになって、すごく責任のある立場になったということも影響しているのかなと思うのですが。
バーノン「はい。基本的に自分はそんなんにワーッと楽しい感じではないんですけど、確かに副キャプテンになってチームのマネジメントを心がけることもすごく重要ですし、自分のプレーを保っていくことも必要なんですけれど、そういった中で、副キャプテンになったことで、チームを助けていくということに自分が集中して、さらにチームが楽しんでプレーするということに関しても助けていきたいという風に思っています」
――渡邉選手。昨シーズンは新人王をとられて、日本代表にも選出されましたが、その時の思いはどのように感じられましたか?
渡邉「自分がより良くなっていくということに対して、本当にこの二つは良かったという風に思っております。自分が人として、それからバレーボールプレイヤーとして良くなっていくという自分の指標を持つということが、これであったとい風に思います」
――安井選手。今シーズンは攻撃の軸として期待されている部分があるのではないかと思いますが、それについてご自身はどう思っていますか? そして昨日と今日のプレーの評価は?
安井「チームの中で攻撃を担う部分で自分も候補の中に入っていると思いますし、そういう所で最後のハイボールだったりとか、沢山のボールに対して決め切るっていうポジションだと思っているので、そこはしっかりとセッターの(山口)頌平だったり、チームの期待に応えようとはしていますけど、自分でも100点のプレーはなかなか出せてないし、課題も全然あるんで、そこはしっかり練習でしっかりやりこんでいきます。今日、昨日は、そこまで悪くはなかったと思いますけど、細かく見るとチームが勢いに乗れると思った場面で、ミスが出てしまったり、決め切れないという場面が少なくとも3~4回はあったんで、そこで自分が決め切れる力をつけると、もっと良い方向に行きますし、ブレイクも取れるチャンスが増えると思うんで、そこは意識してやってきたいと思います」
――年齢も同年代の渡邉選手が日本代表に選ばれましたが、安井選手も狙ったりだとか、思いはありますか?
安井「そんなにめっちゃ意識しているわけじゃないですけど、しっかり一試合一試合自分の力が発揮できて結果がそういう風についてきたら、自分でも嬉しいことなんで、まずは自分のやるべきこと、チームの中で託された仕事というのをしっかりやることを意識してやっています」
その後、他の記者さんから、バーノン選手にビーチバレーのカナダ代表としてロサンゼルスオリンピック出場を狙っているという報道に対して、ビーチバレーに転向する予定なのか? という質問がありました。
それに対するバーノン選手は、インドアの方にフォーカスしており、リタイアするまで続けたい。ビーチバレーはコンディショニングという形で、チャンスがあればそういった大会に出たいとは思うが、ビーチをやるためにインドアを妥協することはしたくない。パーセンテージでいえばインドア100%、ビーチ30%とのこと。
バーノン選手の去就が心配だった方、ご安心ください。この時、髪色を金髪に染めたのは、オリンピックで金メタルを目指すつもりだったのでは? と質問したところ。
バーノン「堺に金メダルをもたらすためです」
と笑顔で答えてくれました。
バーノン選手の言や良し。開幕2連勝で、日本製鉄堺ブレイザーズの順位は3位で、まずまずの好発進と言えるでしょう。今シーズンこそは優勝を目指して、チーム一丸頑張ってほしいものです。
日本製鉄堺ブレイザーズ
公式ウェブサイト
大浜だいしんアリーナ