船場ごちゃまぜ文化祭(1)
今回は、大阪市内の船場で開催された「船場ごちゃまぜ文化祭」の紹介です。
きっかけは、西陣美術織のイベントで出会った堺で長く着物を手がけておられるなごみ企画の増谷保さんから、「障がいのある人たちをモデルに着物のファッションショーをするんです」とお話をきかされたこと。写真と見まがう精密な西陣着物織の寄贈にも驚かされましたが、さて今回はどんな驚きがまっているのでしょうか?
■ビルまるごとの文化祭
「船場ごちゃまぜ文化祭」は、立て替えを予定しているという船場エクセルビルの5フロアをまるまる使ったイベントのようです。受付でもらったリーフレットをみると「ごちゃまぜ」というだけあって、どうやらビル内には他ではお目にかかれないようなバラエティに富んだ出店ブースや展示、ワークショップにあふれています。なんだか、ちょっとしたダンジョンへの冒険に出かけるかのようなわくわく感がありますね。さっそくてっぺんのフロアに向かってみましょう。
まず目にとまったのは、アート展示ブース。自身もアーティストとして活動しながら、6年前から支援学校で美術の指導をしているという中野両さんにお話を伺いました。
指導を始めてみると質のいい作品が多いことに中野さんは気づいたそうです。
「障がい者アートではなく、アートとして評価してほしい」
中野さんの指導は、教え子それぞれの個性に合わせたもので決まった教材もないそうです。展示されている作品も、平面作品、立体作品ともに作者が楽しんで作っていることが伺えるものでした。また、メーカーのお菓子パッケージに採用された作品もあるとのこと。
日本では「アートを買う」という行為は一般的ではなく、行政や企業によるアーティスト支援も微々たるものであり、アーティストがアーティストとして生活していくことは非常に困難です。そんな中、支援学校で教えた生徒たちが「アーティスト」として自活していく道を開拓しようとしている中野さんの活動は画期的なものといえるのではないでしょうか。
●おりーぶ庵
アートとは別の角度での取組といえるのが、こちら「おりーぶ庵」さんといえるでしょう。
「にんにく工房」という看板で、スプラウトにんにくの販売ということでお話をきいてみましたところ、スプラウトにんにくもさることながら、非常にユニークな事業を展開されていたのです。
こちらの畠博思さんは、グループホームなどの福祉事業をされていました。しかし、そこで障がい者雇用の問題につきあたります。
「一ヶ月働いた工賃が1万円程度です。これでは明日の買い物を明日買うこともできない。これでは夢がなさすぎる」
企業にちゃんと雇用してもらう必要がある。しかし、企業側に雇用の意志があっても、障がい者にやってもらう仕事があるかどうかわからず二の足を踏む状況だったりします。
「だったらこちらで仕事を作れば良い。スプラウトにんにくを加工する仕事を作って、会社のサテライトとして関わってもらう。加工したスプラウトにんにくを本社に送って、それを販売してもらってもいいし、消費してもらってもいい」
逆転の発想とでもいうのでしょうか。この事業は、当事者として波那本豊さんが企業への営業もおこなっているとか。
●株式会社シュクレサレ
「かわいい」雰囲気にひきつけられたのが、こちらシュクレサレのブース。
訪問介護とカフェをやっている会社で、次はドッグカフェも開店予定だとか。
支援事業をしていると、行き場のない人たちがどうしてもでてくる。しかし、中には雑貨屋さんならできるという人だっている。
「こういった所で売っているものといえば決まりきったものですけれど、そうではなくて可愛いもの、おしゃれなものを売っていきたいんです」
これは先のアート展示の中野さんのおっしゃっていることと通じる話のように思えます。「障がい者の○○」というくくりを作ることで、作り手も買い手も作品の価値を低くみつもるのが当たり前になっていたのではないでしょうか。
このブースに並べられた商品は、作品の可愛さはもちろん、パッケージにも気を遣っていて、「商品」としての妥協の無いこだわりを感じさせるのでした。
まだまだブースは沢山あるのですが、お話をうかがっているうちにファッションショーの時間がやってきました。急いで階を移動します。次回の記事ではファッションショーの様子を紹介いたします!
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