堺ブレイザーズ観戦記録2021-22(4)パナソニックパンサーズ戦 2/27

 

 

2022年2月27日。大浜体育館で開催されるV.LEAGUE堺大会2日目の対戦相手は、昨日に引き続き強豪パナソニックパンサーズ。この上位チーム2連戦は、大阪府下の堺市と枚方市をホームタウンとするチーム同士の対戦であるだけでなく、両チームのセッターは堺ブレイザーズが兄・深津旭弘選手(17)でパナソニックパンサーズが弟・深津英臣選手(2)の兄弟対決でもありました。
初戦は大阪ダービー兼兄弟ダービーに相応しいどちらが勝ってもおかしくない熱戦を、堺ブレイザーズがフルセットの末に制しました。負けられない一戦に負けたパナソニックパンサーズのロラン・ティリ監督をして「面白い試合だったでしょう」と言わしめた名勝負でした。
一夜明けた第2戦、その勝敗の行方やいかに。

堺ブレイザーズのスターティングメンバーには、レジェンドミドルブロッカー松本慶彦選手(1)の名があります。昨日の記者会見の千葉進也監督のコメントでは、41才のベテランなので無理せずに体調が整うのを待っているとのことでしたが、ゴーサインが出たということなのでしょう。もう1人のミドルブロッカーには主将の出耒田敬(7)選手。セッターは前述の深津選手、オポジットは昨日大暴れしたシャロン・バーノンエヴァンズ選手(13)。両サイドには攻守の要の樋口裕希選手(2)と新星迫田郭志選手(9)。リベロには日本代表の守護神山本智大選手(20)。松本選手が入ると、いっそう分厚い布陣という印象です。

 

▲満を持して出場した松本選手(1)。安定の活躍ぶりです。

 

試合展開を見ていきましょう。
第1セット。パナソニックパンサーズの小宮雄一郎選手(22)のサーブから。これを深津選手は松本選手にあげて速攻でサイドアウト。この松本選手健在を印象づけるプレーで堺ブレイザーズは波に乗ります。深津選手らしい、勝負の勘所を押さえたプレーではないでしょうか。堺ブレイザーズは、ここからしっかりとブレイク(連続得点)を取りながらゲームをすすめ、8:5でファーストテクニカルタイムアウトをものにします。堺ブレイザーズは、昨日の好調をキープ。
中盤戦は、バーノン選手が前線のローテーションともあって無双状態で16:11と引き離してセカンドテクニカルタイムアウトに。
そのまま終盤戦は、堺ブレイザーズのバーノン選手とパナソニックパンサーズのアウトサイドヒッター・ミハウ・クビアク選手(13)のマッチアップが火花を散らします。カナダ代表とポーランド代表の世界レベルの対決は両者一歩も譲らぬ見応えのあるものでした。パナソニックパンサーズは、チームの顔でもある元日本代表オポジットの清水邦広選手(1)を投入しますが、流れを変えることは出来ず、堺ブレイザーズが25:20と序盤からの勢いそのままに押し切ります。

 

▲世界トップレベルの高さ、V.LEAGUE最高打点のバーノン選手(13)のアタック。

 

第2セット。パナソニックパンサーズはメンバーを大きく入れ替えます。第1セットの終盤から入ったオポジット清水選手、セッター新貴裕選手(20)。そしてアウトサイドヒッターには仲本賢優選手(8)。この采配は大当たりで、交代して入った選手が活躍し、5:8とファーストテクニカルタイムアウトはパナソニックパンサーズが奪います。
中盤戦も流れはパナソニックパンサーズのままに。特に清水選手はベテランらしく、フェイント攻撃もおりまぜる憎い得点を重ねます。10:16と点差が開いてセカンドテクニカルタイムアウトもパナソニックパンサーズのものに。
終盤戦、堺ブレイザーズは得意のブロックが機能せず、攻撃も精彩を欠き点差は開いていきます。16:22になって、今度は千葉監督が思い切ります。バーノン選手と深津選手を、千々木駿介選手(10)と山口頌平選手(14)に交代。これで堺ブレイザーズもムードを変えたのか追撃をはじめますが及ばず20:25でセットを奪われる結果に。
これでセットカウントは1:1。どうやら今日も熱戦となりそうです。

 

▲アウトサイドヒッターながらブロック部門でもV.LEAGUE第四位(2/27日現在)につける樋口選手(2)。サーブ、アタックも得意な上「最近ディグも掴んだ」と、万能超人ぶりを発揮。

 

 

第3セット。堺ブレイザーズは、深津選手とバーノン選手をコートに戻し、スターティングメンバーで闘いに挑みます。一進一退の攻防ですが、出耒田選手のセンターラインが機能して8:7でファーストテクニカルタイムアウトは堺ブレイザーズのものに。
どうやら第2セットの逆風を堺ブレイザーズは完全に断ち切った模様。
中盤戦になると、堺ブレイザーズはバーノン選手だけでなく、両アウトサイド、両ミドルブロッカー、どこからでも点がとれる多彩な攻撃を発揮。対するパナソニックパンサーズは、交代で入った清水選手が状況に合わせて剛柔両方の攻撃でくらいつきます。拮抗した闘いとなり、16:14でセカンドテクニカルタイムアウトを堺ブレイザーズが制します。
終盤戦、リーグナンバー1の堺ブレイザーズのブロック力が猛威を振るいます。セッターの深津選手がパナソニックパンサーズのエース・清水選手のスパイクをたたき落とし、バーノン選手も2連続でブロックポイントを決めます。この攻撃的な守備力でブレイクを重ね、最後は後衛のバーノン選手がバックアタックを一閃。25:21と堺ブレイザーズはパナソニックパンサーズをねじ伏せるようにしてセットを奪ったのです。

 

▲まさに”スティールカーテン(鋼鉄の壁)”というべき堺ブレイザーズのブロック。

 

勝負のかかる第4セット。いきなり堺ブレイザーズは飛ばします。
深津選手の強烈なサーブに対するサーブレシーブがそのまま返ってきた所を松本選手がダイレクトにスパイクをたたき込み先制点。するとリズムを崩したのかパナソニックパンサーズは2連続タッチネットで失点し、堺ブレイザーズは4連続得点。バーノン選手はスパイク、ブロックで得点をあげ、8:2という大差でファーストテクニカルタイムアウトを堺ブレイザーズが奪います。
パナソニックパンサーズは、再びセッターを深津英臣選手に、オポジットを大竹選手に替えます。こうなると両チームともブレイクしあう派手な展開となり、16:12とやや差をつめられるもセカンドテクニカルタイムアウトも堺ブレイザーズのものに。
終盤も両チームともテンションの落ちないプレーが続きます。堺ブレイザーズはバーノン選手頼りではなく、誰もが得点源という盤石のプレーで追撃するパナソニックパンサーズを寄せ付けません。追いつかれそうになっても慌てる事無くブレイクで突き放し、24:21のマッチポイント。最後のプレーは素晴らしいラリーが続くも、仲本選手のスパイクはコート外へ。ティリ・ロラン監督はボールタッチがなかったかチャレンジしますが、チャレンジ失敗。25:21で堺ブレイザーズはセットを取り、セットカウント3:1で勝利。どちらも落とせない上位対決を制したのは堺ブレイザーズでした。

 

▲普段コートではクールな印象のバーノン選手ですが、第4セットになってガッツポーズで雄叫びをあげる。

 

2試合ともバレーボールの面白さが堪能できる好試合、熱戦でしたが、ギリギリ競り勝った昨日の試合に対して、この日は力量で上回って勝利をものにしたという印象が強くありました。第2セットこそ、清水選手に翻弄されましたが、第3セットからはしだいにアジャストしてシャットアウト。横綱相撲というと大げさかもしれませんが、強者の風格が漂う勝利と見えました。堺ブレイザーズにとって、ここ何シーズンもパナソニックパンサーズは、まるで敵わない、蛙と蛇のような差を感じさせる相手でした。それが、互角以上の闘いで2連勝するなんて……。
古豪復活。あるいは堺ブレイザーズ新生。どう言うにせよ、2022年に入って落としていた調子を取り戻し、強い堺ブレイザーズがファンの前に姿を見せてくれたのは確かなことです。この強さを本物にするためにも、この勢いのまま突っ走り久しぶりのタイトルを獲得してほしい。それが決して夢物語とは思えないパナソニックパンサーズ戦でした。

 

■記者会見

記者会見に登場した堺ブレイザーズの選手は、松本選手、樋口選手、出耒田選手、深津選手、山本選手の5人です。まずは、試合を振り返ってのコメントから。

 

▲勝利者インタビューは樋口裕希選手。南海コラボデーということで、南海電車のラピートにすみっコぐらしのキャラクターを乗せて記念撮影。

 

 

松本選手「いまチームとしてまた一段いいチーム状況にあるんじゃないかと思います。昨日もフルセットで勝って、ポジティブな声がけができていたと思いますが、今日もネガティブにならずに、点を取られた後も自分たちで点を取るということを確認しながらできたので、それは非常に良かった部分だと思います」
樋口選手「かなり大事な試合だったので、土日連勝できたことはすごく大きくて、今後に絶対に生きてくると思うのですごく良かったです。ただ、いいときはいい、悪いときは悪いじゃなくて、悪いところがでないチームが強いチームで最後まで勝ち残ると思います。その悪いところが出そうになる場面がまだまだあるので、チームとして出さないようにどうしていくのかを考えて、次の試合にむけていいところを出しつつやってけたらと思います」
出耒田選手「まず2連勝できて安心しています。4セット目も序盤リードしていて、中盤サイドアウトするたびに1ブレイクずつされて、なかなか気持ちよく戦えなかったというところが課題なのかなと思います。そういった所を潰しながら終盤戦がんばっていきたいと思います」
深津選手「マツさん(松本選手)も言ったんですけど、昨日も今日も良いコミュニケーションを取れていて、そこは本当によかった。イライラしたり、自分たちが良くない状況があったときもなんとか立て直せるヒントがこういう試合にあるのかなと思いました。そうは言っても、今日勝ったのは大きいですけれど、まだあるので来週にむけてしっかり練習したいです」
山本選手「この二日間とてもタフな試合になると予想していたので、この二日間2連勝できた事を嬉しくおもいます。自分自身もうちょっと返せるボール、拾えるボールがあると思うので、ボールを拾ってチームに貢献したいと思います。まだまだ負けられない試合が続きますが、チームでいい練習をしていい試合を出来るように頑張っていきたいと思います」

 

▲この日も年齢を感じさせないプレーを見せた松本選手。堺ブレイザーズの若手にとっても高い壁だ。

 

続いて、記者からの質問ですが、いきなり松本選手のお茶目な一面が飛び出します。
――(バレーボールマガジンさん)松本選手に、昨日はたしかベンチアウトでしたか?(松本選手首をひねる)全然でなかったわけでは……?
松本選手「……全然でなかったわけではないです」
出耒田選手「マツさん。昨日はベンチアウトです(冷静に)」
松本選手「……あ、ごめんなさい。ベンチアウトです(片手でごめんのポーズ)」
深津選手「マツさん、ふざけだした?(笑)」
(記者室笑いに満ちる。出耒田選手手を叩いて大笑い)
松本選手「ちょっと疲れてたんで(笑)。はい、もうしわけありません。ベンチアウトでした。はい」
――笑。今日試合に入るにあたって、どういう気持ちづくりをされました?
松本選手「昨日、ベンチアウトで……??」
出耒田選手「ベンチアウトです」
松本選手「笑。ベンチアウトで外からみながら、みんないいパフォーマンスでフルセットながらも勝ったのを見て、その中でも僕がやらなきゃいけない仕事っていうのは、サイドアウトであったりというのがあったので、昨日からずっとそれをイメージしていました。パナソニックパンサーズさんのムーブの付き方だったり、それをいままでのデータをもとに参考にしつつ、どういう攻撃をしたらいいのかっていうのを考えながら今日入っていったんです。1セット目というか、スタートで決めて、そこだけで今日は仕事をやったかな(笑) 後半ちょっとチームには申し訳なかった。サイドアウトをクイックでもうちょっと取りたい所があったと思うんですけれど、そこで僕が決めきれなかった部分があって、そこはベテラン選手として今後修正してやりたいと思います」
――昨日コンディションが悪かったというわけではないのですよね?
松本選手「はい」
――試合に出てたつもりだったということですよね。(記者室、笑)
松本選手「(大きくうなずく)はい」
レジェンドで最年長なのにほっこりキャラの松本選手。そして出耒田選手と深津選手の的確なつっこみにも脱帽です。

 

▲攻守に活躍。頼もしさが増す樋口選手。

 

続いては、エースの風格が漂いだした樋口選手と、パナソニックパンサーズのクビアク選手の対決が話題に。
――(フリーランスの方)樋口さんと深津さんに。3セットの24点目に樋口選手がディグして打った場面は、あれが次のセットにもつながる勢いだったかと思うのですが、(樋口さん)ご自身に上がってきた時にどういう心境でどう決めたのかと、深津さんはなぜ託したのか。また松本選手の一本目はあげると決めていたのかを教えてください。
樋口選手「あの場面は、その前にクビアク選手とバチバチする場面があったのですが、そうなってくると、クビアク選手は必ずバチバチした選手を狙ってきます(周囲笑い)。それが自分の所に来るとわかっていたので、絶対自分がレシーブに入って上げるっていう意識があって、自分でディグをあげて、その後いつも通りの点数を決めるという気持ちは変わらないです。ディグの部分では意識している部分ではあったので、何をして勝った負けたというかわかりませんが、自分の中ではそこでクビアク選手に勝ったと思っていて、あそこは大きなポイントだったなと思っています」
深津選手「樋口にサイドを託したのは……上げた理由ですか……(記者から、はい)……どうなんでしょうね? (周囲、笑い)自分のポジションって活かす側って思われがちなんですけれど、このチームは特にみんな打てる人が多いんで、僕が活かされているっていうか、あの場面は、樋口のそういう思いがあって自分が上げさせられたっていう感じなんでしょう。あと、マツさんの一本目は決めてなかったんですけれど、とりあえずマツさんからはじめたら勝てるかなと思ったんで(笑) あれでちょっと決まらなかったら……わかんないですけどね。でも、あそこでマツさんが決めたのが試合を優位に進める大きな一手だったんじゃないかと思います。さっきも言いましたけれど、マツさんが本気で来てたので、多分瞬間の判断で上げたので、自分で上げたというよりは、マツさんに上げさせられたという感じです」
――松本選手。他のチームですが、大学生や高校生、息子さんに近い年齢の選手がリーグに入ってきています。そういう選手と同じリーグでプレーしている現状についてはどう思われてますか。
松本選手「ずっと長くバレーボールをやっていて、流行の戦術とか技術的な事とかはちょっとずつ変わってきていて、自分の昔のスタイルだったりとかを貫き通すのか、新しい事を取り入れて今の最先端のバレーボールに変えていくのか、ということも楽しみながらやらなきゃ、自分の年齢なら出来ないので、若い選手のコミュニケーション能力とかも、僕の年齢でもすごい勉強になる。僕らがやってたころのコミュニケーションともちょっと違っていたりする。自分のチームでもそうですし、対相手であったりも、こういう風に声を出したりとかも違ったりする。すごい新しい発見があったりするので、取り入れたりを楽しみながら出来ているので、若い選手のいい部分、今のバレーボールのラリーポイントの早い展開の中で、ぱっぱとコミュニケーションをとって決めていくという部分は本当に勉強になります」
実は活かされているんだというセッターの深津選手、最年長ながら若い選手から学んでいるという松本選手。両ベテラン選手のコメントには含蓄がありますね。

 

▲コミュニケーションも大切な技術のひとつ。樋口選手が迫田選手に何かを伝えています。

 

――(フリーランスの方から)松本選手、3週間ぐらい試合から離れていたと思うのですが、コンディショニングや心理的な影響はどうでしたか?
松本選手「いや、長期離脱とは思ってないので、そんなに精神的なプレッシャーみたいなものは、特に感じなかったです」
――樋口選手。バチバチやりあっていたクビアク選手と言葉のやりとりはあったのですか?
樋口選手「ポーランド語だったので何を言っているのかわからなかったのですが、クビアク選手がスパイクを打った時に自分が手を引いてアウトにした時にすごいにらんできて、その後自分がブロックに飛んでバックアタックを決められた時にばーっと言われました。(首をひねって)なんで言われたのかよくわかりませんけど(笑)」
――レセプションの時にオーバーハンドで取ることが多いのですが、今シーズンからですか? 以前からそうでしたか?
樋口選手「多分、内定の時から、オーバーハンドのカットは自分の武器として使っていて、オーバーが得意で、アンダーが下手くそというのもあってオーバーで取りにいくようにしています」
――山本選手に、第4セットでは、パナソニックパンサーズに対して心理的に勝ってるように見えました。山本選手自身はどのように感じましたか?
山本選手「4セット目に限らず、僕は点が取れないので、周りの選手を鼓舞したり、盛り上げたりして、自チームの選手が少しでも調子があがるような声かけだったり、相手に対してもプレッシャーのかけ方だったりは、特に4セット目にしているわけではなくて、1セット目からしているつもりでやっています」
――以前は、(パナソニックパンサーズに)気後れしている様子が見られたのですが、今日はそんなところがなくて、強いチームになったなという印象がありました。コート内の雰囲気はどうだったのでしょう。
山本選手「特に何をやっているという事ではないのですけれど、1人1人がしっかりポジティブな声かけをしたり、コミュニケーションを取ったりしたのが、そういう雰囲気になったんじゃないかなと思います」
この記者の方が指摘する通り、試合が進むにつれ堺ブレイザーズは、完全にパナソニックパンサーズを呑んで闘っていたような印象でした。

 

▲リーグナンバー1のブロックの後ろを、日本代表リベロの山本選手が守る。

 

――(関西TVさん)深津選手に、昨日と今日の違いで、センターがよく決めていたという認識があります。出耒田選手の成果が良かった部分と、昨日の組み立てが違った部分があったのなら教えてください。
深津選手「昨日試合に入る前から、チームとしてこう組み立てるという話はしていて、昨日を終えて上手くいった所と、より改善していく所を整備して今日入って、どういう展開になるかわからなかったのですが、そこの部分で思い切ってリズムを作れればこっちの展開になると思うし、昨日勝ったことによって向こうも落としたくないしという状況で、そうはいってもこちらが精神的に有利に立っていたので、そういう所で影響したのだと思います。あとは自分が上げる時に、トモ(山本選手)は特にそうなんですけれど全体が見えているので、そういう時はクイックが使える時はクイックでイケイケでいけるし、シンプルに行ける時はそういう声がけをして、自分たちのコミュニケーションの中で自分も助けてもらいながら、もちろんミドルの選手も(ボールを)呼んでくれますし、みんなが安心して上げられる状況を使って展開できたのかなと思います」
――パナソニックパンサーズが今回まったくブロックがついてこれてないような印象があったのですが、そのあたりは作戦で変えたりしていたのでしょうか?
深津選手「おおまかにはそんなに変えてないんですけれど、対策しても決められるというのがどうしようもないパターンだと思うので、出耒田とかマツさんとかもコミットブロックがきても決められる。両サイドも2枚来ても決められる、3枚来てもハイボールで決められるという状況がすごく多かったので、相手としてはどうしようもない状況を出して、こっちとしてはそれを点数を取ったからこういう風になったというのもあるし。あとはもちろんオポジットのショウ(バーノン選手)にも対策しているんだけれど、それ以上の上回ったプレーをされるから、っていうのが多く回数があったので、周りとしては疲弊しちゃう。こんなにやったのに、これで点数を取りたいのに取れないというのがあります。するとこっちがだんだん楽になってくる。だから今週に限っては良かった。来週どうなるかそれはわからないですけれど、そういう状況を多く作れれば優勝に近づいていく」
深津選手が堺ブレイザーズ好調の理由をわかりやすく解説してくれました。リーグ屈指のブロック力と、相手のブロックを上回るバーノン選手の攻撃力。鉄壁の盾に攻めあぐねている相手を、破壊力抜群の矛で粉砕する。思うようにプレーできない相手は疲弊し、ますます堺ブレイザーズの思い通りの試合展開になるというわけです。

 

▲堺ブレイザーズに勝者のメンタリティをもたらした深津選手。JTサンダーズ広島に在籍した11年間を振り返っての平和のコメントも。

 

さて、つーる・ど・堺からの質問ですが、地域情報サイトとして堺市と関係のある質問をしたいと考え、また時局も考慮して以下のような質問をぶつけてみました。
――みなさんに。バレーボールとは離れますが、ロシアとウクライナとの戦争についてお尋ねします。堺市は他の都市に先駆けて非核平和都市宣言をしています。それは、先の戦争の空襲で町が丸焼けになるほどの被害を受けたからです。すぐそこの堺市駅の近くには慰霊碑があり、毎年慰霊祭も開催されています。スポーツ選手として、現在起きている戦争についてのコメントを頂けますか?
松本選手「(言葉を選びながら)そうですね。色んな争いごとがあって、世界情勢が良くない所もありますけれど、難しいですね。……よくスポーツは武器のない、戦争……とはいいませんけれど、命のやりとりのない勝負。スポーツで勝負するところで、命の大切さとか、もちろん勝負に負けたら悔しいですけれど、命まで失わない所で命の大切さというのと、勝負の楽しさというのを、メッセージとして、一スポーツ選手として、命を取り合うような世界が来ればいいなということを願いつつ、世界に発信したいなと思います」
樋口選手「スポーツって、チーム同士の争いではあると思う。その中で勝負、勝ち負けを決めていて、今大きく話題になっている戦争とは大きく違うのは命がかかっている、命をなくすとか、傷ついてしまうとかが大きく違うと思うんですけれど、こういうスポーツだけでなくて、国と国の所でも命を失わない、傷つけない争い……争いが全部ダメだとは僕は思わないんで……でも、命を落とすとか、傷つけない争いで、勝ち負けじゃないですけれど、優劣を決めたりするのも手なんじゃないかなと思います。平和が一番ですけど、話し合いだけですまないことも、スポーツみたいな争いで決められたらいいんじゃないかなと思います」
出耒田「自分たちはスポーツ選手なので、今日みたいな盛り上がる試合をして、少しでも皆さんの気持ちに届いて、試合が終わったら、今日の試合こうだったよねとかそういう所で盛り上がってくれればいいと思うし、小さなことですけれどそういうことで平和につながってくれればいいと思っています。僕たちはプレーをする。プレーをして皆さんを盛り上げるだけかなと思ってます」
深津選手「自分は11年間広島にいたので、そういったものがより身近にあったし、堺市がそういう取組をしているのを本当に素晴らしいことだなと思いました。広島だと少し歩けば、駅とか体育館もそうですけれど被爆した場所だし、そういった所がいっぱいあって、悲惨な状況というのを身近に感じていました。皆さんが言うように、そういうものは無くなった方がいいんですけれど、無くならない現状があって本当にあって、地球に生きている人はもっと考えて、色々やっていかないといけないのかなと思います。皆が言ってたように、自分たちが今できることはバレーボールという競技をして、アスリートという職業をやっていて、勇気とか感動とか、ちょっとでも笑顔に出来るプレーをして、そういったものにもつながっていけばいいと思います」
山本選手「僕たちが今できることは一生懸命バレーボールをして、見ている方々に勇気や感動を与えて、少しでもそういう気持ちになってくれればいいかなと思うので、僕たちは目の前の一戦一戦を闘って皆さんを笑顔に出来るようにこれからも頑張っていきたいと思います」

 

試合後の記者会見で、おそらく想定していなかった突然の質問だったと思いますが、とまどいもあったでしょうが真摯に答えて頂いたことに感謝します。
また記者会見後、複数のメディアの方から「良い質問でした。本当なら私たち専門メディアの人間が聞くべきことだと思い反省しました」「代表のキャプテンだけじゃなく全員に聞いたことに驚いた」にといった感想をいただきました。

▲2021年の東京オリンピックではフランス代表を金メダルに導いたティリ監督。

 

実は堺ブレイザーズの選手記者会見に先だったパナソニックパンサーズのロラン・ティリ監督の会見では、こんな質問が出ていました。
――(海外の記者から)フランスがロシアの試合をボイコットしました。それに関する感想は一つと、フランスがボイコットしたことでどういう影響を受けるのかという質問です。
ティリ監督「本当に重い話です。みなさんがご存じの通り、ヨーロッパで戦争が始まって、フランスの判断を本当に誇りに思います。FIVB(国際バレーボール連盟)もロシアでの大会とかを全部中止にしたこともいいと思います。中止にしたことは、スポーツの世界だけでなく、世界中に影響が起こると思っています。今は本当に悲しい時期だと思います。フランスの選手がロシアでプレーしたくないと言ったことも誇りに思っています。その後、クラブチームが同じ事をして、最終的にはフランスの協会が私たちは行かないです、と言ったことは本当に良いことだと思います。最後にこういう時期なので、戦争が起こっているのでなるべく全員が一つになれるようにと思っています。2500年間、オリンピックの時には平和に行きましょうという誓約があったんですけど、今もオリンピックの時期なので、こういうことはやらないはずなんですけれど、こういった状況になってしまっていて非常に残念だと思っています」

このやりとりから、スポーツも社会の一面、一部なのだから、こうした質問が出るのは当然なのだということを見せつけられたように思いました。だったら、堺ブレイザーズの選手にも聞いてみたいと思って、今回の質問をしてみた所、しっかりとしたコメントをもらうことができたのでした。

日本のスポーツ報道では、社会的な問題について選手がコメントしていることを滅多に目にしません。メディアがそれを求めないから、選手がコメントをする機会がなかったということなのでしょう。しかし、今回口火を切ってみたら、実はメディアの人だって関心をもっていたし、選手個人個人で思っている事は色々あったことが見えてきました。
世界の結びつきが強くなっている今、どこで起こった戦争であっても他人事ではなくなってきています。先日、堺ブレイザーズが対戦したサントリーサンバーズには、ロシア代表のドミトリー・ムセルスキー選手がいます。この日対戦したクビアク選手の母国ポーランドが、ウクライナを積極的に支援していますが、それは第二次世界大戦のきっかけになったポーランド侵攻をナチスドイツとソ連から受けていることと無関係ではないでしょう。
歴史を振り返れば、スポーツには功罪両面があり、たとえばナチスドイツが戦意高揚のためにベルリンオリンピックを利用したことなどは大きな負の歴史ですが、一方でティリ監督がコメントしたように、古来オリンピック期間中は停戦するという誓約があったり、堺ブレイザーズの選手たちが言ったようにスポーツは「命のやりとりをしない、傷つけない勝負」を通じて命の大切さを訴えるものでもあります。両面あるのだからこそ、後者の面をとりあげて、それこそスポーツにとって重要で本来の姿なのだということを、強調していくことこそ大切だと思うのです。

さて、「命のやりとりをしない闘い」であるV.LEAGUEのレギュラーシーズンもいよいよ残り試合を数えるばかりとなってきました。ファイナルステージに進む上位3位以内に食い込めるのか、堺ブレイザーズにとってまだまだ厳しい闘いが続きますが、必ずファイナル進出を果たしてほしいもの。そして今年こそ、念願のタイトル獲得へ。

 

堺ブレイザーズ
堺市堺区築港八幡町1番地
web:https://www.blazers.gr.jp/web/

 

堺市立大浜体育館
堺市堺区大浜北町5丁7-1
web:https://ohama-arena-budokan.com/

 

 

 

 


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