「もずふるサブレができるまで! 宝泉菓子舗取材」を取材する!(2)
紙cafeオンライン商店の人気商品、もずふるサブレがリニューアルされました!
ひと目見てわかる違いは、その形。堺のシンボルである前方後円墳の古墳型になったのです。そしてこれを実現したのが、老舗宝泉菓子舗の三代目、堺が誇る天才和菓子職人前田敬之さんでした。
今回の記事は、前回に引き続き、前田さんによるもずふるサブレの製造工程実演を取材する紙cafeオンライン商店の次女ともぞう&新人栞コンビをつーる・ど・堺が取材するという二重取材。しかし、老舗の厨房はぴっかぴかでも、歴史のつまったアイテムがあっちこっちにあって現役で活躍しているものだから、ともぞう&栞コンビの興味も目移りして、あちことちに話は拡散していきます。
取材班の質問に答えながら、それでも着実に仕事をこなす前田さん。バターにグラニュー糖、卵黄、葛粉などがまざった生地がミキサーから取り出されたのが前回まで。そして、ここから、もずふるサブレ作りも佳境に入るのでした。
■もずふるサブレ最大の敵は!?
できた生地を今度はのばしていくのですが、ここで小雨まじりだったこの日の天候が問題になりました。
前田「湿気が多いと上手くいかないことが多いんです。下にひくのは紙とビニールがあるんですが……」
前田さんは、ペーパーシートに油を吹き付けて生地を伸ばし始めます。手である程度伸ばしてから、生地の両脇にものさしのような平たい木の板を置きます。シートを上からもかぶせ麺棒をその上で転がすと、木の板の厚みに合わせて生地の高さが均一になるというわけです。たった2本の板だけで誰でも再現可能な素晴らしきソリューション!
前田さんは、上下のシートを剥がす作業に入るのですが……。
前田「あかんな」
シートが上手く剥がれず、やり直すことに。
ともぞう「取材前にお電話で、雨の日は難しいとおっしゃってましたね」
前田「湿度によって紙がいい時と、ビニールがいい時があるんです」
日々の微妙な環境の違いで、ちょっとした道具の選択も変ってくる。もずふるサブレはなんとも繊細なお菓子だったのです。
生地を伸ばす作業をビニールシートを使って再チャレンジ。シートを剥がすときは取材班も緊張の一瞬でしたが、今度はうまくできました。
前田「これを冷蔵庫で冷やします。冷やすと型が抜きやすくなります」
前田さんは、冷蔵庫にできたての生地をいれると、すでにしまってあった別の生地を取り出します。
前田「生地は3~4日寝かします。雨の日は作れないとなると困りますから、こういう用意もしているんです」
ともぞう「そうかぁ。見えない所でこんな事をしてくれていたんですね……」
栞「驚きですねぇ」
取材班も関心することしきりです。
そして、いよいよ古墳への型抜きが始まります。取り出したるは、紙caféオンライン商店と共同で作った抜き型。何度か試作を重ねたものだとのこと。前田さんによると、今使っているのは中々調子がいいのだけれど、高さが深すぎてちょっと使いづらい所もあるそうです。ともぞうは熱心に話をきいており、おそらく更に改良版が作られることでしょう。
前田「抜くのもなかなか技がいるんですよ」
と言いながら、生地に抜き型をぐっと押しつけると、古墳のサブレが生み出されていきます。
前田「ちょっとやってみますか?」
ともぞう「ええの!?」
なんと、前田さんの提案で取材班の2人も型抜きに挑戦です。
前田「ともぞうの焼いたサブレと銘打ってプレミアをつけましょう」
ともぞう「抜くだけで、焼くんは前田さんやけどな」
そんなこんなで、前方後円墳がずらりと並びました。機械に入れて焼き上がりるまで、ちょっとおしゃべりをしながら待つことになりました。
せっかくなのでもずふるサブレリニューアル秘話を2人から聞いてみましょう。
■もずふるサブレ秘話
――そもそも、どうしてもずふるサブレのリニューアルは行われたのでしょうか。
ともぞう「リニューアル前のもずふるサブレは石川県の工場で作っていただいていて、その仕分けを堺の作業所にやっていただいたりもしていました。ところが、去年はコロナでしょ。観光関係で扱っていた分の動きがぴたっと止まってしまって、すごいフードロスが出そうになったんです。それはなんとか皆さんのおかげもフードロスは出ないですんだのですが、今度はもずふるサブレの入荷をどうしようかということになりました」
工場だと一度に沢山のロット数を頼まないといけませんから、コロナ禍での需要に対して供給が多すぎるのです。
ともぞう「それでどなたかもずふるサブレを作ってもらえないかあちこちに声をかけてみたんですが、なんとそれが堺市にいた。目の前にいた。まるで青い鳥だったんです」
――前田さんが青い鳥(笑) しかしサブレは洋菓子でしょ。和菓子職人の前田さんに頼むのも驚きですが、前田さんもよく引き受けましたね。
ともぞう「前田さんならなんとかしてくれると思って」
前田「普通やったらやらんことをやらしてもらえるのはいい機会ですからね。でも、作り直しはいっぱいしましたよ」
栞「ありがたいですね」
ともぞう「ありがたい」
前田「なんでも、こなれるのは良くないですからね」
ともぞう「そう、こなれたらあかん」
新しいことに挑戦すること自体がモチベーションになるというには、前田さんとともぞうの2人に共通する部分だったようです。そんなこんなで話をしていると……。
前田母「一服どうぞ」
突如、前田さんのお母さんが昆布茶といちご大福を振る舞ってくださったりして、焼き上がりまでの一〇分はあっという間でした。
「焼きたて食べますか? 熱いですよ」
いよいよもずふるサブレの試食です。一端お皿の上に載せて鑑賞。きつね色に焼き上がった古墳型のサブレは、見た目にも食欲をそそります。取材班2人は、
「2つそろうとカワイイ!」
と、配置をあれこれしながら撮影。その様子に、前田さんからは「焼きたて美味しいですよ」と再度アピールがあったほどでした。そう勧める理由は一口食べてわかりました。
熱をもったままのもずふるサブレ。この熱がひいて冷めると、サブレの独特の食感になるわけですが、熱をもったままだとまた違った美味しさがあります。この美味しさを味わうには、宝泉菓子舗の厨房でできたてを食べるしかない。これは貴重な経験でした。
色んな思いや技術が詰まったもずふるサブレ。リニューアル前から好きだったという方、まだ未体験という方、ぜひお買い求めになって、ご賞味くださいね!
もずふるサブレが出来るまで……取材の取材となりましたが、いかがだったでしょうか? 取材班2人は、試食で火がついたのか、宝泉菓子舗のショーウインドウへ直行。もちろん筆者お同じく、好きな和菓子を購入。お家で美味しくいただいたのでした。
なお、今回の取材は、前田さんのワークショップへの想いや、お母様が語る宝泉菓子舗の歴史や昔の和菓子職人さんのお話が大変面白く、改めて記事にしたいと思います。
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https://shop.kami-cafe.jp/?pid=129650390
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