インタビュー

イランへの扉 シャジャリ ルーイン(2)

 

 

世界最古のチーズであるペルシアンパニールの輸入販売を手がけているシャジャリ ルーインさんに1年ぶりに話を伺っています。(→前篇
お父さんの故郷イランのテヘラン出身で、お母さんの故郷日本お大阪で育ったルーインさんは、大学生ながら、叔父が経営するチーズ工場から日本にはないペルシアンパニールの輸入販売をはじめたのが1年前。この1年間を準備期間として、大きな卸業者と取引をするまでになりました。多くの人と出会い助けてもらいながら働くルーインさんに、チーズ販売を通じて新しい目標が湧き上がってきたそうです。それは一体どんな目標なのでしょうか。後篇です。

 

■イランの食材100%のレストランを作りたい

 

▲ルーインさんの叔父さんが経営するチーズ工場は、国際的な基準からみても、厳格で安全。

 

ルーイン「4月末ぐらいにはホームページも出来上がります。チーズも新しい種類を販売します。イランにはチーズ以外にも美味しいものが沢山あるので、いずれはイランの食品としてピスタチオや乾燥フルーツなんかもやっていきたいと思っています」
――イランの料理や食材といっても、日本では馴染みがあまりないですね。
ルーイン「トルコレストランはありますけれど、イランレストランは日本にないでしょう。僕は、イランの食品でイラン・ペルシャレストランをやりたいんです。ハラール(イスラム教徒向けの食材)だと美味しくないと思われがちだけど、ハラールは綺麗に管理されていて、普通の食品と全然変りません」
――衛生管理が厳密なので、イスラム教徒以外にとっても、安全な食材になると言われていますね。

 

▲シャジャリ ルーインさん。堺旧港にて。

 

ルーイン「イランの食材100%にこだわったイラン料理屋さんにしたいんです。それから、イランは皮革も沢山あるのですが、なめす技術が良くないんです。日本はなめす技術が素晴らしくて栃木レザーとかが有名ですけれど、皮自体は余所から仕入れてなめしていたりします。僕は、イランの皮と日本のなめす技術を合わせたい。国と国を掛け合わすことをやりたいんです」
――食品だけでなく衣料もですか!
ルーイン「僕はシンプルな服や持ち物が好きなのですが、最近シンプルでいいものがあまりないと思うんです。だから自分で作っていきたいんです。衣食住といいますが、住はちょっと難しいですけれど、衣と食なら自分でブランドが出来なくもないでしょう」
――では、衣と食のブランドを作るのが、ルーインさんの目標なのですね。
ルーイン「目標は、イランに興味を持ってもらうことなんです。中東って、日本ではあまりいい印象がないのではないでしょうか。イランの何を知っていますか? といっても、何も浮かばない人も多いでしょう。これがペルシャとなると少し違って、ペルシャ絨毯など、ちょっといいイメージがあったりしますね。僕は、チーズの内容を伝えることで、イランに興味を持ってもらいたいのです。どんな人が売っているんだろう、この人……シャジャリが売ってるよ。僕と知り合うことで、自分が思っていたイランのイメージとちょっと違うと思ってもらいたい。僕を通じてイランに関心を持ってもらうのが、僕の目標です」

 

■嬉しいと楽しい

 

▲世界のチーズ博覧会にて。

 

――ビジネスにとどまらないお話になってきましたね。
ルーイン「これは1年ゆっくりやってわかったことなのです。店頭で売ってもらう場合はそこに僕がいないので、僕にチーズを伝えたいという熱量がもの凄くないと、お客様に思いが届かないのです。だから、イランの文化や内容にこだわった宣伝をしていきたい。チーズやイランの文化について自分でも勉強しました。バーのイベントでイランの食文化について話をしたこともあります」
――ルーインさんだからこそ出来る、質にこだわった販売方法ですね。日本人にとってルーインさんがイランへの扉になっている。
ルーイン「今って、売っている、買ってもらうという作業を簡単にやりすぎているんじゃないかと思うようになりました。これは父から教えてもらった事なのですが、ペルシャ絨毯ってものすごく高いですよね。あれは何に価値があるかわかりますか?」
――なんでしょう? やはり手作業で丁寧に作っているとかでしょうか?
ルーイン「そうじゃないんです。ある時、父はお客様から白いペルシャ絨毯が欲しいと頼まれたのだそうです。白いペルシャ絨毯って良さそうですよね。柄があるより簡単に作れそうだし。でも、父は断ったんだそうです。僕はなぜだろうと思ったのですが、父によると、ペルシャ絨毯というのは長い歴史があって、柄が何千年も変っていない。そこに価値があるんだそうです」
――なるほど、柄の無い白いペルシャ絨毯は価値が無いんですね。
ルーイン「その方はそういうことを知らなかったので、ただブランドとしてペルシャ絨毯が欲しかっただけだと思うんです。もちろんブランドを求めることは悪いことではないですし、僕だってペルシャ絨毯の価値を教わるまで知らなかったわけです。これは、ペルシャ文化としての絨毯の内容を伝えることなく商売をしてきた結果です。イランの文化を伝えて、なぜ高いのかを伝えないと、売っているだけになってしまいます」

 

▲世界最古といわれるペルシャのチーズ作りの壁画。

 

 

――価値を伝えるというのは、お客様にとっても大事なことですね。
ルーイン「近江商人の三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)に通ずる話だと思います。それなりに理由があって高いのだと、文化歴史を知った上で買って欲しい。だから最近違いを感じるようになりました。スーパーで商品が売れるのは嬉しい。イベントで(対面販売で)納得してもらって買ってもらうのは楽しいんです。だって売れたら(叔父の会社の)イランの人のためにもなるし、単純にお金も儲かるのは嬉しい。でも、納得してもらうのは楽しいんです」
――それは販売業の本質的な喜びとか意義に関わってくるようなお話ですね。
ルーイン「そうかもしれません。昔は物の売り方で内容を伝えるということがちゃんとあったのではないでしょうか。今は物が溢れて何でもできる時代なので忘れられているように思います。やっぱり、誰が作って、どうやって出来たかを知るだけで楽しいですよね。この一年の活動で、その人がどれだけ価値をわかってそのものを持つかの重要さを知りました。物を売ることの大切さを改めて知りました。僕は色んな人から刺激を受けてそう思うようになりました」

沢山の人が、ルーインさんに力を貸すのも納得できるお話でした。チーズの販売に真剣に取り組んでいるのはもちろんのこと、ルーインさんの行動の先には大きな未来が広がっています。ルーインさん架け橋となって、日本に伝えるイラン文化の魅力は一体どのようなものなのか、ルーインさんの事業がどんな展開を見せるのか。また、機会があればぜひ伺ってみたいですね。

 

株式会社西亜
住所:大阪市中央区北浜1丁目9番15号 EM北浜ビル1階
電話:070-1058-6481
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