津久野フェスTHE夜店は一味違う、自由のフェスティバル(2)

 

津久野駅西側にあるロータリーを占拠、道路を完全封鎖して開催された「津久野フェスTHE夜店」。道路のセンターラインにスタンドマイクや機材を置いてミュージシャンが熱唱する姿は、あまり見たことのないものでした。一体、なぜこんなお祭りが開催できているのか不思議でしょうがありません。

「警察から許可はもらっている」
というステージ担当の角野一彦さんは、お祭り気分で赤ら顔でご機嫌です。路上のステージはいよいよ角野さんも大プッシュするバンド『ヲクイ鍵盤塾』が登場するのです。津久野フェスの秘密も気になりますが、まずは『ヲクイ鍵盤塾』さんのステージアクトに注目することにしましょう。

 

■センターラインのステージ

 

 

実は『ヲクイ鍵盤塾』さんのステージを見るのは、この日で3度目です。今日はボーカルのヒロキ塾長、サックスでオーナーのユカさま、そして寡黙な空気を漂わせながら芸達者なハカセの3人編成。さて、どんなステージになるのでしょうか。

やはり路上でも輝きを見せるのは、サングラスに白いスーツ、赤いバラが誰よりも似合うヒロキ塾長でしょう。自他共に認める美声が朗々と津久野の空に響くと、小学生も集まってきて体育座りでかぶりつきに並びます。

もちろんキャーキャー騒ぐのは子どもたちだけではありません。歌うのは30代から50代ぐらいの、お父さんお母さん世代のハートをずきゅんと打ち抜くアニメソングや昭和歌謡。ヒロキ塾長に、天国のヒデキが降臨したかのよう。

 

▲ヒロキ塾長がハートを打ち抜く!

 

しかし、ヒロキ塾長は、この美声を簡単には披露させてもらえません。オーナーのユカさまからの茶々が入ったり、掛け合いがギャグになったり、「歌わせてや」というヒロキ塾長の、カッコイイのにコミカルな佇まいは、観客たちを盛り上げます。MCの比率は、一体何パーセントになるのでしょう。25%、30%、それとも50%ぐらい……!?

MCで歌えないストレスを溜めて溜めて、ついに披露されるヒロキ塾長の歌に、一層うっとりしてします。普通に歌ってくれても聞き応えがあるのに、この高倉健の映画張りの溜めで感動もひとしお。この完全に計算されたステージングの妙には、脱帽するしかないでしょう。

『ヲクイ鍵盤塾』さんのステージに魅了されていると、いつの間にか角野さんの姿がありません。酔っ払っているのかと思いきや、ステージの責任者としてあれこれ忙しくされているよう。野外イベントは周辺との兼ね合いもあって、折衝役も大変です。

陽も沈んで、夜店らしくなってきたお祭り会場を、ぶらぶらと見回ってみることにしましょう。

 

■地元オンリーの屋台

 

 

やきそばや、やきとりに、かたぬき……。よくある夜店屋台。よくある屋台には違いないのですが、どこか様子が違います。この違和感は何か、しばらく見ているうちに幾つかの特徴に気づきます。

 

ひとつは、郷土の伝統産業に関するコーナーがあること。

こちらは和泉木綿の体験コーナー。泉州の木綿の歴史は、室町時代に遡るようですが、江戸時代には和泉木綿としてブランド化していました。そこから、繊維産業や染織産業が誕生したのですから、木綿は今につながる大切な産物といえるでしょう。ここでは、糸紡ぎや綿打ちといった、和泉木綿の製造工程を知ることが出来る体験コーナーがありました。

 

こちらは染め物。津久野を流れる石津川沿いでは、晒や注染が発展しました。大量生産のプリントにはない味わいのある染め物は、再び注目を集めています。こちらも染め物体験ができるようです。

ちょっと、普通の夏祭りではありませんよね。よくよく他の飲食系の屋台を見直してみると、値段も妙に安いし、地元の町会の提灯がかかっています。どうも、プロの屋台……業者さんらしき屋台はなく、みんな地元の人たちによる出店。本当の意味で手作りのお祭りのようです。

 

こちらでは、子どもたちを中心に熱心に将棋を指しています。「将棋のまち津久野」といった幟も目につきます。おそろいのTシャツは将棋クラブのものでしょう。伝説の名人阪田三吉を輩出した堺ですから、もちろん将棋との縁はあります。しかし、津久野というピンポイントのエリアが、「将棋のまち」を名乗るほど書技が盛んになっていたとは知りませんでした。

 

 

ステージコーナーに戻ると、あの道路のセンターラインを利用したステージでは、ヤスキチさんのライブが続いていました。実行委員会のメンバー角野さんを探して話をききます。

 

--これは普通のお祭りではなかったですね。地域の伝統産業の体験コーナーがあったかと思えば、プロの屋台がなくて、まちに住んでいる方が地域を盛り上げるためにやっているお祭りですよね。
角野「そうなんです。町会だけで地域のためにやっているお祭りだから、警察も道路の使用許可を出したんです。プロの屋台を呼ぶと営利目的になるからそうはいかない」
--将棋のコーナーにはびっくりしました。
角野「これもね津久野を将棋で盛り上げようということで将棋クラブをはじめたものがおったんです。こないだ将棋日本一になった堺の中学生が表彰されたニュースになったでしょう。あれも津久野中学校の将棋部の子なんですよ」
--そのニュースは見ました。なるほど、そういうことだったんですね。

 

通りすがるようにして見れば、とこにでもある地域のお祭りのように見える「津久野フェスTHE夜店」ですが、よくよく見てみると、この地域に住む人だからこそできる地域の魅力を感じられる唯一無二のお祭りでした。毎年のように人数が増えているというのも納得です。今後も、センターラインを堂々と占拠して、解放的なお祭り空間を作り続けてほしいですね。

 


灯台守かえる

関連記事

Remodal

Remodalテスト

Write something.


PAGETOP

remodal