新生・堺ブレイザーズ2018-2019(5)vsJTサンダーズ戦

11月も最後の週末になってようやく冬の気配が漂い始め、紅葉の目立つ金岡公園。その中にある堺市金岡公園体育館には千人を超える
バレーボールファンが集まっていました。
2018年11月24日。この日、バレーボールの国内トップリーグである新生V.LEAGUEの試合が開催されるのです。ホームチームの堺ブレイザーズと対戦するのは強敵JTサンダーズです。
堺ブレイザーズは11月3日のホーム戦で初勝利をあげた後、アウェーでの戦いを続けて直近の試合で2連勝し、2勝2敗で堺に帰ってきました。通算で3勝4敗。今日の試合にも勝って3連勝し、星を五分にもっていきたいところです。
■俳優大谷亮平さん降臨!

 

▲ゲーム前のトークショーに俳優の大谷亮平さんが登場。バレーボール愛を熱く語ってくれました。
この日は試合に先立って、勝利への後押しになるに違いない心強いお客様が、なおき応援団長司会のトークショーに登場しました。2018年の朝の連続テレビ小説や数々のヒット映画に出演されている俳優の大谷亮平さんがゲストとして招かれていたのです。
実は大谷さんはバレーボールに青春を捧げ、かつては大阪代表選抜チームのキャプテンとして国体に出場したほどの実力の持ち主だったのです。そして偶然にも堺ブレイザーズの上杉徹コーチとは、当時、選抜チームで共にプレーする間柄でした。コートに呼ばれた上杉コーチを前に、大谷さんは過去を回想します。
「(上杉コーチは)少し太ったかな? (学生時代は)かっこよくてモテましたよ」
なんて裏話も飛び出して、2人は旧交を温めていました。その後は、同年代の松本慶彦選手(1)を交え3人でボール回しを披露。大谷さんは、今でも休日はプライベートでバレーボールを楽しむというだけあって、松本選手も感心する見事なボールさばきでした。
※( )内は背番号。
▲大谷亮平さんは始球式でも腕前を披露してくれました。俳優でスポーツマンとあって、シンプルな白Tシャツが似合いますね。
始球式でサーブを打つのも、もちろん大谷さんです。ジャケットを脱ぎ捨て白Tシャツ姿になると、見事なジャンプサーブを放ちます。ボールはJTサンダーズの外国籍選手・劉力賓(リュー・リービン)選手(16)が受け、軽くレシーブしたボールはコートの外へ。
大谷さんが選手にエールを送ってコートを去ると、いよいよ試合開始です。
■第1セット
▲千々木選手のスパイク。最初のプレーから千々木選手とニコ選手の両翼からの強烈な攻撃が繰り出される。

 

堺ブレイザーズのスターティングメンバーは、出耒田敬選手(7)、ジョルジェフ・ニコラ(ニコ)選手(18)、千々木駿介選手(10)、竹元裕太郎選手(21)、関田誠大選手(11)、髙野直哉選手(4)、リベロは山本智大選手(20)。
前回のホーム初戦では佐川翔選手(8)がセッターでしたが、この日は今季新加入した関田選手がスタメンです。真保綱一郎監督が関田選手をチョイスしたのは、3週間の転戦の間に関田選手と他の選手のコンビネーションも成熟したということでしょうか。
一方、JTサンダーズの選手の中でも脅威といえば、身長212cmのトーマス・エドガー選手(6)でしょう。堺ブレイザーズ1の長身選手が200cmの出耒田選手ですから、堺ブレイザーズはこの差をどう埋めていくのか注目です。もう1人、今季から出来たアジア枠で加入した中国代表の劉選手も要注意でしょう。
▲JTサンダーズに新加入した中国代表の劉選手。得点を決めた後もクール! 

 

最初のサーブはJTサンダーズのセッターの深津旭弘選手(3)から。このサーブを千々木選手がレシーブであげると、関田選手はその千々木選手にトス。千々木選手のスパイクはエドガー選手のブロックに阻まれて堺ブレイザーズのコートへ、髙野選手がこれをレシーブ。最初のプレーはいきなりラリーが続きます。攻める堺ブレイザーズのニコ選手や千々木選手の強いスパイクにJTサンダーズは乱され、ボールをつないで返すのに精一杯でエドガー選手にボールが渡りません。ついには千々木選手がストレートに打ち込んで初得点を決めます。
この後も、エドガー選手を堺ブレイザーズがうまく封じて実力を発揮させない中、両者は互角の戦いを見せます。
そのままスコアは7-8となって、どちらかのチームが先に8点に達するとタイムアウトになるファーストテクニカルタイムアウトはJTサンダーズのものとなりましたが、差はわずかに1点でしかありませんでした。
▲エドガー選手のスパイクを千々木選手と竹元選手のブロックがたたき落とす。

 

中盤戦。
ニコ選手が連続得点してブレイクすると、千々木選手もスパイクやブロックで得点を奪って、堺ブレイザーズの攻撃陣は好調です。しかし、JTサンダーズも負けておらず、両者が追いつき追い越す展開が続きます。
そんな均衡が崩れたのはJTサンダーズの山本将平選手(18)のサーブミスから始まった一連のプレーです。続いて出耒田選手がエドガー選手のスパイクをブロックして得点。次は髙野選手がスパイクを決めて得点。最後はエドガー選手のスパイクがラインアウトになって堺ブレイザーズの得点に。
堺ブレイザーズのブレイクが続いてスコアは16-13。堺ブレイザーズが先に16点に達してセカンドテクニカルタイムアウトを奪ったのでした。
この中盤戦はラリーが続き、両チームとも得点者が多彩で、両チームのファンならずともバレーボールの楽しさを味わえたのではないでしょうか。
▲ブロックをかいくぐりニコ選手のスパイクが決まる。
しかし、終盤戦になると様相が変わってきました。
これまで活躍を押さえられていたJTサンダーズの外国籍選手2人が解き放たれたかのように、大車輪の活躍を見せはじめたのです。
激しいスパイクが行き交うのは、まるで大砲が火を噴いて一撃で相手を沈める火力戦。ラリーの応酬はあまりなく、ブレイクにもならずサーブ権を奪うサイドアウトを交互に繰り返す展開。パワーとスピードの豪快なプレーの連続で、中盤とはまた違うバレーボールの魅力を見せてくれました。
この間、JTサンダーズのエドガー選手が3得点、劉選手が3得点取れば、堺ブレイザーズもニコ選手がなんと5得点をあげます。
また、こうなると堺ブレイザーズにとって、中盤で3点差をつけたことが大きなアドバンテージになりました。そのまま逃げ切ってスコア25-23で第1セットをものにしたのでした。まずは第1セット先取です。
■第2セット
▲セット間は大谷さんにインタビュー。
俳優の大谷さんは第1セットも観戦されていました。実は日本で活躍する前に韓国で俳優としてブレイクした大谷さんは、同じ頃に韓国で活躍していたエドガー選手のプレーを観戦したという経験を披露します。大谷さんは、そのエドガー選手に負けていない堺ブレイザーズの選手たちの戦いぶりと、両チームの健闘を称えます。
髙野選手のサーブで始まった第2セット。
このサーブは強烈で、JTサンダーズは強い攻撃を返すことができず、ふわりと戻ってきたボールでしたが、堺ブレイザーズのニコ選手も軟打で返します。すかさず拾われると、JTサンダーズにチャンスボールがあがります。これを待ってましたとばかりに打ち抜いたエドガー選手のスパイクが髙野選手を強襲し、ボールははじかれて大きくコートの外へ。まずはJTサンダーズが先制します。
次はJTサンダーズの深津選手のサーブ。お返しとばかりにニコ選手が一撃を放ち、JTサンダーズの二枚ブロックを打ち抜きます。バチーン! と破裂音がアリーナに響き、堺ブレイザーズの得点。
▲冴え渡る関田選手のトスワーク。
この後、JTサンダーズは劉選手のサーブ時にブレイクが続き、1-4とJTサンダーズがリードします。
JTサンダーズの応援席から「リーピン! リーピン!」と声援を送られる劉選手。声援に押されるようにバックアタックも決め、いよいよ本領を発揮しはじめたようです。
追いかけなければならない堺ブレイザーズは、千々木選手の軟打、関田選手の2アタックなども絡めて多彩な攻撃で対抗しますが、豪快にエドガー選手がスパイクをコートにたたきつけると、スコアは5-8となります。これで第2セットのファーストテクニカルタイムアウトはJTサンダーズのものとなりました。
第2セットの序盤。サーブミスで2点を失ったのも響いて、点差が少し開いてしまいました。しかし、どこからでも点を取る堺ブレイザーズらしいスタイルの攻撃も回転しだしています。
▲ニコ選手のスパイクが堺ブレイザーズ反撃の狼煙になる。
中盤戦。
さっそくニコ選手がレフトサイドからスパイクを決めます。
サイドアウトして得たサーブは髙野選手の手に。髙野選手のジャンプサーブはネットをかすめて軌道をかえ劉選手の真正面へ。これを劉選手は後ろにはじいてしまいます。髙野選手のサービスエースです。さらに次のサーブも劉選手へ。かろうじて劉選手のあげたボールの弾道は低く、他のJTサンダーズの選手はつなげません。これで2連続サービスエース! スコアも8-8と追いつきます。
このプレーが響いたのか、鋭い攻撃を見せていた劉選手は、この後の第2セット中のプレーは低調で得点をあげることができませんでした。髙野選手の2本のサービスエースは点数以上に大きなプレーになったのかもしれません。
▲2連続のサービスエースを決めた髙野選手。2回ともボールをはじいてしまったJTサンダーズの劉選手はこのプレーが影響したのか、このセットは目立った活躍がなかった。
一方、劉選手の穴を埋めるようにエドガー選手は2回連続でブロックポイントを決めるなど活躍をみせます。堺ブレイザーズも、好調の髙野選手がスパイクを決め、JTサンダーズのエドガー選手、山本選手のスパイクがラインアウトになるプレーが続いたこともあり、堺ブレイザーズは4連続ブレイクで追いつき追い越します。互いにブレイクしあう派手な展開に、観客の声援も大きくなりボルテージもあがってきました。
競った戦いでスコアは16-15と逆転。今度は堺ブレイザーズがセカンドテクニカルタイムアウトを奪います。
▲もはや新加入とは思えない活躍を見せています。頼れる男、小池選手が選手交代でコートへ。

 

終盤戦。
堺ブレイザーズは、セカンドテクニカルタイムアウトの前に千々木選手と替わった小池勇輝選手(12)がそのままコートにたちます。
プレーは引き続き竹元選手のサーブから。JTサンダーズは拾ったボールをエドガー選手に託します。堺ブレイザーズもこれにしっかり対応し、髙野選手・出耒田選手がブロックに飛びますが、強烈なスパイクは出耒田選手のブロックにぶつかると天井へと高く上がり、壁に達せんばかりの弾道を描きます。観客のどよめきとともにボールはコートのはるか外へ出て派手なブロックアウト。両チームのパワー対決はエドガー選手に軍配があがりました。
しかし、これで引き下がるわけにはいきません。次のJTサンダーズのサーブ、小池選手がレシーブしたボールを関田選手は出耒田選手に配球します。出耒田選手は速攻で真ん中からコートの隅にたたきつけてお返し成功!!
▲繰り返されたエース対決!! ニコ選手vsエドガー選手は毎回大迫力でした。
この後、一足先に堺ブレイザーズが20-17で20点となったあたりから、両チームとも選手交代を頻繁に行いゲームは慌ただしくなります。
選手の感情表現も激しくなってきます。エドガー選手のスパイクを、はずみで抱きかかえてしまい失点してしまった千々木選手が、手にしたボールをコートにたたきつけて悔しがるシーンもありました。
そしてこのセットを決めたのは、その両選手のプレーでした。
エドガー選手がサーブミスでついに24-22のセットポイント。
次のプレーはエドガー選手が意地のスパイクをクロスに決めて24-23に。
替ったJTサンダーズの久原選手のサーブを髙野選手がオーバーハンドであげると、出耒田選手がネット際でジャンプ。しかしこれは囮で、関田選手は背後から跳んだ千々木選手に合わせると見事にバックアタックが炸裂! スコアは25-23。
選手の動きが一瞬で交差するプレーは芸術的な格好良さ。出耒田選手がかみしめるように身をかがめてガッツポーズをした後、千々木選手と両手をあげてダブルハイタッチ。これで堺ブレイザーズは第2セットもものにしたのでした。
▲第2セットを綺麗なパイプ攻撃で決めた千々木選手と関田選手。
強敵JTサンダーズに2セット先取するという好スタート。こうなれば次のセットも取って勝負を決めてしまいところですが、さてどうなるか。
なにしろ、JTサンダーズには名セッター深津選手や、機敏な動きを見せる山本選手に、下馬評の高いルーキー小野寺選手とエドガー選手以外にも要注意の選手だらけです。第2セット無得点に終わった劉選手だって、このまま沈黙したままとは思えません。
そして案の定、JTサンダーズは容易ならざる相手であることを、次のセットで思い知らされるのでした。
新日鐵住金堺体育館
堺市堺区築港八幡町1番地(新日鐵住金堺体育館内)
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