挑戦!! 堺ブレイザーズ・トライアウト(1)
2019年7月には堺ブレイザーズのトライアウトが予定されています。このトライアウトがどのようなものなのか、昨年2018年に行われたトライアウトを取材させていただきましたので、時計の針をシーズン前に戻して、その時の様子を振り返ってみましょう。
■新生V.LEAGUEを前に
振り返れば堺ブレイザーズは、プレミアリーグ2017/2018シーズンは、レギュラーシーズン上位6チームが戦うファイナル6に進むことが出来ませんでした。その後の黒鷲旗全日本男女選抜大会を最後にチームを支えてきたベテラン選手3名も引退しました。
新シーズンは一体どんな戦力で戦うことになるのだろうか? そんな事を思っていたタイミングで、堺ブレイザーズからトライアウト開催のお知らせが届きました。
プロ野球でも、スカウトから漏れた選手や、戦力外となったけれど再起をかける選手が挑むトライアウトがあり、TV番組で取り上げられたりしています。一体、堺ブレイザーズの行うトライアウトはどのようなものなのか。トライアウト会場の新日鐵住金堺体育館(現:日本製鉄堺体育館)へ向かいました。
■クラブチームとしての使命
2018年のトライアウトに挑むことになった若者は4人。トライアウトを前に、このトライアウト生4人は一室に集められ、そこへ堺ブレイザーズのスタッフ首脳陣が姿を現しました。
代表して堺ブレイザーズチームディレクターの田中幹保さんが、トライアウトの意義について語りました。
「(長い歴史がある)堺ブレイザーズがクラブチームになった時に、クラブらしい活動をしようということなりました。それで、埋もれている人材や、バレーボール選手になることを諦めている人材にチャンスをということで、トライアウトを毎年実施しています」
日本でもサッカーのJリーグが誕生して25年以上経ち、クラブチームという文化が少しずつ浸透してきました。クラブチームにはそれ自体に社会の資産としての側面があり、社会に貢献する役割を果たすことがより強く求められます。堺ブレイザーズがトライアウトを実施するのも、その役割を意識してのことだったのです。
スタッフの方に伺った所、バレーボールのプレミアリーグ(当時)男子チームの中で、トライアウトを実施しているのは堺ブレイザーズだけではないかとのこと。不運にも大きな大会で活躍できなかったり、スカウトの目に留まらなかった日本の男子バレーボール選手にとってほぼ唯一開かれたトップリーグへの扉が、堺ブレイザーズのトライアウトといえるかもしれません。
4人のトライアウト生には、30分のウォームアップの後に体力測定、その後技術審査へと挑むことが告げられました。
■トライアウト開始
体育館にはトライアウト生だけでなく、堺ブレイザーズの選手たちも集まりつつありました。何人かの選手はネットを挟んでミニゲームのようなことをしています。選手からは、笑い声もあがりリラックスした様子です。ウォームアップでもバレーボールをしてしまうのは、やはり生粋のバレーボール人なのですね。
一方、4人のトライアウト生は、緊張した面持ちです。
体力測定が始まる前に、スタッフにトライアウト生に何を期待するのか尋ねてみました。
「現在、(堺ブレイザーズは)チーム的にはバランスが取れています。ですが、光るものがあって、いい人材がいれば獲りたいですね。ただ、チームも人数がいればいいというものではありませんからね」
と、期待しながらも、やはりプロフェッショナルスポーツの戦いの場として、シビアなところも覗かせます。
一方、違う角度の意見もありました。いつもパワフルな応援でファンやサポーターを盛り上げるなおき応援団長も体育館に姿を見せていました。なおき応援団長は、戦力として判定するのがまずあるのを前提として。
「明るくて、試合に入った瞬間に空気が変わるような選手に来て欲しいですね。たとえば、宮原(貴人)や小池(勇輝)といった新加入の選手が調子乗りでいいと思います(笑)」
確かに。チームがピンチの時には、元気な選手、明るいオーラをまとった選手に試合を盛り上げて欲しいですね。
「一方で、堺ブレイザーズにはベテランでは松本(慶彦)選手のように、37才でストイックにやっているスポーツ選手のお手本のような選手もいますからね」
生きのいい若手から、長く現役生活を続けるベテランまで、様々な選手がいる堺ブレイザーズに、さてトライアウト生は食い込むことが出来るでしょうか?
ウォームアップの時間は終わり、体力測定が始まりました。
トライアウト生がまず挑むのは走力テスト。順番に走り抜け、スタッフがストップウォッチの記録をとっていきます。
途中で通りがかった1人の選手がちらりと記録を目にとめて、
「はやいな……」
と呟きました。
次はアジリティテスト。素早く動いてタイムで敏捷性を測定します。
最後は跳躍力テスト。ヤードスティックという測定器を使ってジャンプ力を測定します。ヤードスティックは垂直の棒から、メモリごとに可動する棒が水平に出ているもの。ジャンプして触って動いた水平の棒の位置で高さを測ることができます。
全ての測定を終えてスタッフに、測定結果について尋ねてみました。
「驚きました。340cmとか跳んでいる子もいます。これは数値だけを見るとVリーガーとして平均的なものですが、それを決して背が高くない彼らが跳ぶのはすごい。さっきから選手たちもこちらを気にしているようですが、驚いていると思いますよ」
今回のトライアウト生は、リベロ以外のポジションの選手で180cm前後の身長で、バレーボール選手としては小柄と言えるでしょう。にもかかわらずプロ選手が注目するジャンプ力などなかなかの身体能力を見せたのでした。
「埋もれている人材というのはいるものですね」
と、スタッフから感心の声が漏れます。
さて体力測定の次は、技術審査。これは、堺ブレイザーズの選手の普段の練習に参加するというものでした。トライアウト生はVリーガーに交じって、実力を発揮することが出来るのか、注目です。
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