堺ブレイザーズの挑戦(14)

20180610_blazers02_00_01.jpg
「第67回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会」も3日目。
グループ戦の首位をかけて堺ブレイザーズは同じV・プレミアリーグに所属する豊田合成トレフェルサと戦っていました。第1セットは豊田合成トレフェルサ、第2セットは堺ブレイザーズがとり、セットカウントは1-1になりました。(前篇
セットポイントは互角ですが、第2セットは豊田合成トレフェルサが突如絶不調に陥り、堺ブレイザーズは一度も連続得点するブレイクを許さず一方的な勝利を収めています。豊田合成トレフェルサは不調から立ち直るのか、それとも堺ブレイザーズが流れをそのままに勝利へ突き進むのか。
第3セットからの試合の様子をレポートします。
■第3セット
20180610_blazers02_01_01.jpg
▲最初のサーブに向かう松本選手。

 

第3セットのスターティングメンバ―は、第1・2セットと同じ松本慶彦選手(1)、松岡祐太選手(13)、堤智久選手(9)、竹元裕太郎選手(21)、山口頌平選手(14)、髙野直哉選手(4)。そしてスターティングリベロは今富稜介選手(16)。※( )内の数字は背番号。
このセットは松本選手のサーブからはじまり、堺ブレイザーズはいきなりブレイクします。左利きの松岡選手、今シーズンブレイクした堤選手の攻撃が決まって3-0に。強い堺ブレイザーズは継続中です。
しかし、タイムアウト後に風向きが変わります。サーブ権を奪った豊田合成トレフェルサが久しぶりにブレイクします。いいサーブに堺ブレイザーズのレシーブも乱され4連続失点で、3-4と逆転されてしまいます。
その後は互いにサーブミスでサイドアウトを続けて6-8となって、豊田合成トレフェルサ先行でファーストテクニカルタイムアウトとなります。
20180610_blazers02_01_02.jpg
▲堤選手のスパイクが豊田合成トレフェルサコートを襲う。

 

中盤戦は互いにサイドアウトの繰り返しからはじまりました。
この時堺ブレイザーズの攻撃をリードしたのが松岡選手の左腕。3連続得点をあげます。一方の豊田合成トレフェルサも堺ブレイザーズのブロックを破る攻撃で得点をあげ、互角のサイドアウト合戦の様相となり9-10と得点差は広がりません。
このバランスが崩れてきたのは、堺ブレイザーズのサーブミスが続いたあたりからでしょうか。豊田合成トレフェルサがブレイクを得て、サービスエースで16点目を決めると、12-16と点差が開いた状態でセカンドテクニカルタイムアウトを迎えます。
20180610_blazers02_01_03.jpg
▲松岡選手があげたボールに全員の視線が集中。次のプレーは?

 

4点差ではじまった終盤戦。
早いうちに点差を詰めたい堺ブレイザーズですが、ここで活躍したのは、またも松岡選手でした。豊田合成トレフェルサのサーブミスでサーブ権が移り、サーバーは山口選手に。豊田合成トレフェルサの攻撃を受けてつなぐと松岡選手のスパイクは確実に得点を重ね、16-16と追いつきます。
このまま逆転という勢いだったのですが、堺ブレイザーズがレシーブした後、審判の笛がなります。ドリブルの反則があったのでしょうか、観客席からは「えーー厳しいっ!」と声があがります。それだけ微妙な判定だったのかもしれません。
この判定が堺ブレイザーズの調子を変えたのかどうかはわかりませんが、この後サイドアウトを挟んで豊田合成トレフェルサがブレイクして17-19に。堤選手の攻撃で18-19となった後、内藤和也選手(5)がリリーフサーバーとして登場。ビッグサーブが期待されましたが、ボールはネットに吸い込まれて18-20に。さらにブレイクされ18-21と、点差を詰めるつもりが点差を広げられてしまいました。
20180610_blazers02_01_04.jpg
▲重圧がかかる中、サーブに挑む堤選手。
ここは堺ブレイザーズの踏ん張りどころです。相手の攻撃をブロックしたボールがライン際に落ち、主審と線審で判定が分かれます。選手はもちろん、観客席からも「入った! 入った! 入った!」「絶対入ったよ!」と叫び声。判定はインで19-21となります。
しかし、すかさず豊田合成トレフェルサにサイドアウトされて19-22になり、点差は縮まらず。
ここで髙野選手が気を吐き20-22に。堤選手のサーブはコート外に外れ20-23に。もう一度髙野選手が決めて21-23、さらに髙野選手でブレイクし22-23となります。
もう1点というところ、豊田合成トレフェルサのスパイクは堺ブレイザーズのブロックを突き抜け、長身の竹元選手が手を伸ばした先をすり抜けて、ついに22-24とセットポイントに。
しかし、相手にも重圧です。豊田合成トレフェルサも肝心な所でミスが出たのかサーブが外れて23-24。
どちらもミスが許されない中、山口選手のサーブを豊田合成トレフェルサはレシーブで綺麗なパスをセッターに返し、トスから狙いすましたスパイクに対して、今富選手は反応したものの上げることは出来なかったのでした。23-25。
一進一退だった第3セットは、ぎりぎりの所で豊田合成トレフェルサに奪われました。セットカウントは1:2に。次の第4セットを奪わねば敗戦です。
■第4セット
20180610_blazers02_02_00.jpg
▲第4セットはビッグサーバーの内藤選手のサーブから。

 

ベテランの松本選手に代わって内藤選手がコートに姿を現しました。まずはこの内藤選手が期待に応えます。
豊田合成トレフェルサのサーブを髙野選手が山口選手の頭上に返すと、素早いトスを内藤選手が相手コートに叩き込みます。続いて内藤選手のサーブ、堤選手の得点でブレイク。
しかし、させじと豊田合成トレフェルサもブレイクで2-2に。
松岡選手のスパイクでサーブ権を奪い返すと、自らのサーブでサービスエースをとりブレイクし4-2に。豊田合成トレフェルサが1点取り返した後、今度は堤選手の活躍でブレイクし6-3に。そのまま互いにサイドアウトで点数を積み上げ8-5となって、堺ブレイザーズのファーストテクニカルタイムアウトとなります。
ここにきて今大会一番平均年齢の若いメンバーで挑んだ第4セット序盤でしたが、若い力が躍動する試合展開でした。
20180610_blazers02_02_01.jpg
▲竹元選手がボールを拾う。後の無い第4セットだが、堺ブレイザーズはボールに食らいつくプレーでリードを奪う。

 

堺ブレイザーズのリードで突入した中盤戦。
まずブレイクして9-5となった後は、サイドアウトが続いて11-7となります。
ここまでは順調な試合展開だったのですが、豊田合成トレフェルサにブレイクが出て11-9となった次のプレー。豊田合成トレフェルサのスパイクはラインの外へと思われた所、豊田合成トレフェルサの得点と判定されます。
堺ブレイザーズのブロックにタッチがあったのでしょうか。堺ブレイザーズの選手から髙野選手が審判に確認に行きますが判定は覆りません。11-10に。
それはともかく、この判定で調子が狂ったわけではないのでしょうが、次のプレーではこれまで必殺の威力を発揮していた松岡選手の左腕も2度に亘って防がれ、粘りのラリーの末に豊田合成トレフェルサの得点となって11-11。ついに追いつかれてしまいます。
タイムアウトで息をつくと、次のプレーでは松岡選手のスパイクが決まって一端豊田合成トレフェルサのブレイクは途切れます。
しかし、流れを引き戻すことはできません。再び豊田合成トレフェルサのブレイクが始まります。松岡選手、堤選手の攻撃も相手コートを外れ12-15。さらに点数を取り合い13-16になって、セカンドテクニカルタイムアウト。
堺ブレイザーズが2点を奪う間に豊田合成トレフェルサは9点も奪ったことになります。
20180610_blazers02_02_02.jpg
▲気合いをいれてコートに入る堺ブレイザーズの選手たち。

 

いよいよ終盤へ。
タイムアウトで切り替わってくれればいいのですが、豊田合成トレフェルサのサーブをリベロの今富選手が大きくはじいてしまいサービスエースに。
次の攻撃も竹元選手のスパイクはコートを外れて13-18。ようやく、髙野選手の攻撃が決まって14-18で豊田合成トレフェルサのブレイクが止まりました。
堺ブレイザーズにもブレイクが欲しい所ですがサイドアウトされ、その次もラリーで粘りつなぐも松岡選手のスパイクはネットに捕まってしまいます。14-20で、ついに豊田合成トレフェルサの得点は20点台になりました。
これまでかなりの高確率で決めてきた松岡選手の攻撃ですが、相手に止められ決まらなくなってきました。やはり疲労の蓄積がプレーの精度に影響しているのでしょうか。
20180610_blazers02_02_03.jpg
▲守備の要、リベロの今富選手がコートを守る。

 

それでも堺ブレイザーズは粘りを見せます。
こちらも必殺だった右の髙野選手の攻撃も止められ繋がれるも、諦めずに繰り返して得点をもぎ取って15-20。チームでボールを追い続けて相手のミスを誘い16-20に。
タイムアウト後、1点を奪われますが、堤選手、松岡選手の攻撃でブレイクし18-21にまで差を縮めます。一端失点して18-22となった後も、堤選手のスパイクで19-22に。
しかし、堺ブレイザーズの抵抗もここまでだったようです。
再びリリーフサーバーとして内藤選手が登場しましたが、その攻撃は実らずに19-23のスコアに。そのまま押し切られて19-25でマッチポイントを奪われ、セットカウント1:3となり、堺ブレイザーズは敗北したのでした。
■決勝トーナメントへ
豊田合成トレフェルサには負けましたが、グループ戦を2勝1敗のグループ2位で堺ブレイザーズは突破しました。
選手は今日の結果をどのように考えているのでしょうか。試合後、幾人かの選手にインタビューしてみました。
20180610_blazers02_03_01.jpg
▲黒鷲旗大会で初の敗戦だが、明日の決勝トーナメントに備える。

 

まず、この日の試合には出場しなかったリベロの井上裕介選手(2)。
井上「若い選手が頑張ってくれました。また明日頑張ります」
この大会を最後に現役引退を発表している井上選手にとっては、負ければそれが現役最後の試合になってしまいます。
その井上選手に代わってリベロでフル出場した今富選手。
今富「勝って全勝で決勝トーナメントへ行きたかった。次は負けられない総力戦です。雪辱を晴らしたいです」
セッターとして試合をコントロールした山口選手。
山口「1セット目。豊田合成トレフェルサはリーグとは違うメンバーに変更してきていました。そこでセットを落としたのが大きかった。自分自身4セット目は良かったけれど、サーブミスが多くて崩れていってしまった。(明日は)リーグ優勝のパナソニックパンサーズですし、思い切りやるだけです。次負けたらと思わずに、ひとつでも多く勝ってリーグ戦のリベンジを果たしたいです」
3セットの勝てそうな所を落としたことより、とっておくべき1セット目でセットをとれなかったことが尾を引いたのですね。
グループ2位となったことで、堺ブレイザーズの決勝トーナメント初戦の相手は今季ぶっちぎりでリーグ優勝を果たしたパナソニックパンサーズになりました。パナソニックパンサーズ戦に向けて強い気持ちを見せてくれていた堺ブレイザーズの選手たち。
しかし、翌日のパナソニックパンサーズ戦はセットカウント1-3で敗北し、堺ブレイザーズの今季の闘いは全て終わったのでした。パナソニックパンサーズは、準決勝、決勝も快勝し黒鷲旗をものにします。
今季は若い新戦力がチームの中心となって闘ってきた堺ブレイザーズは、チームを生まれ変わらせる真っ最中でもありました。黒鷲旗を最後に3人のベテランが現役を引退し、2年間在籍した外国籍選手のウォレス・マルティンス選手も退団することになりました。来季はチームが更に変化することは明らかでしょう。
不安もありますが、一方で個性的な若手選手が入れ替わり活躍する試合は見ていて楽しいものでした。一体この選手たちは、このチームはどんな風に成長していくのだろう。そんな、未来の可能性を想像する楽しみが今の堺ブレイザーズにはあるのかもしれません。
さて、来季はどんな闘いを見せてくれるでしょうか。

灯台守かえる

関連記事

Remodal

Remodalテスト

Write something.


PAGETOP

remodal