大学生がトップリーグのチームに勝つ。そんな飛び切りのジャイアントキリング(大物食い)が起きようとしているのでしょうか。
「第67回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会」は、高校生からトップリーグまで幅広いカテゴリーからトップチームが集いナンバー1を決める大会。大会2日目の2018年5月1日、堺ブレイザーズvs中央大学の闘いは1セットずつとりあいセットポイント1-1となっていたのです。
順調に勝利した第1セットでも、堺ブレイザーズは強味であるはずのサーブが不調でした。それが第2セットになると、サーブの不調が堺ブレイザーズの重い足かせのようになってきます。ギアが空回りしている間に中央大学が調子をあげ連続ブレイクで堺ブレイザーズを突き放し、そのまま逃げ切って第2セットを奪ってしまいます。
第2セットが終わると、どちらがトップリーグのチームなのかわからないような空気がコートには漂っていました。(→
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■第3セット
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▲サウスポーの松岡選手(13)がコートに入る。※( )内の数字は背番号。 |
第3セット、出耒田敬選手(7)に代わって昨日活躍したサウスポーの松岡祐太選手(13)がコートに入ります。サーブも得意な松岡選手が入ることで、流れを変えて欲しいところです。
しかし、「サーブ入らない」病は第3セットに入っても、堺ブレイザーズの選手を苦しめます。
第3セットでも、内藤和也選手(5)、髙野直哉選手(4)、竹元裕太郎選手(21)、山口頌平選手(14)、伊藤康貴選手(11)とまんべんなくサーブミスが続くのです。
堺ブレイザーズがサーブミスする→中央大学の攻撃→サイドアウトしサーブ権は堺ブレイザーズに→堺ブレイザーズがサーブミスする→中央大学の攻撃→サイドアウトしサーブ権は堺ブレイザーズに→堺ブレイザーズがサーブミスする→……。
ひたすらこのループが続き、中央大学先行で7-8のスコアでファーストテクニカルタイムアウトとなります。
これほどフラストレーションがたまる試合展開はめったにないでしょう。
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▲ひたすらサーブが入らない!! 自らのサーブミスに苦しめられた中央大学戦。 |
中盤戦に入っても、この無限ループは終わらないのでしょうか。松岡選手もサーブミスをして、これで先発全員サーブミスです。
ようやく竹元選手サーブ時にブレイクして13-11となり、やっと堺ブレイザーズがリードします。これから先はサイドアウトを繰り返すのですが、唐突にサーブが改善します。
後で知ったところによると、マルキーニョスコーチからのアドバイスがあって、サーブの打ち方をフローターサーブに変えたのだとか。
とにもかくにも16-14でセカンドテクニカルタイムアウトになり、ひさしぶりに堺ブレイザーズの先行でタイムアウトを迎えることができたのでした。
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▲総力戦で勝利をもぎとりにいく。 |
長いトンネルを抜けた堺ブレイザーズは、第3セットから入った松岡選手の攻撃も決まってブレイクして19-16。さらにブレイクして20-16で堺ブレイザーズは20点の大台に乗せます。
このあと互いに点を積み重ねる展開で23-20となって、フレッシュな宮原貴人選手(3)も投入。
もはや総力戦で堺ブレイザーズは勝利をもぎ取りに行きます。中央大学もこの点差をひっくり返すことは出来ず、25-21で堺ブレイザーズが第3セットをものにします。
■第4セット
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▲主将の伊藤選手、リベロの井上選手といったベテランも活躍します。 |
あと1セットで、堺ブレイザーズの勝利。中央大学が逆転勝利するには、このセットを取り、さらにもう1セット取らねばなりません。そんな状況で、堺ブレイザーズは悪くないスタートを切ります。
サーブの不調が改善するとブレイクも出るようになり、堺ブレイザーズは本来の力を発揮し6-3でリード。
しかし、中央大学は諦めることなく粘り強いプレーを続けます。堺ブレイザーズのスパイクにも、しっかり三枚ブロックが飛んで叩き落し、ブレイクして6-6と追いつきます。
第4セットともなると疲労の蓄積もあるはずですが、それでも跳び続けトップリーグのチームを相手に中央大学は堂々と闘い、互角に渡り合っています。
ファーストテクニカルタイムアウトは8-7で堺ブレイザーズが先行しましたが、その差はわずか1点にすぎません。
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▲日本代表での活躍も期待される髙野選手。この日も攻守に貢献。 |
中盤戦。
中央大学のサーブミスでサーブ権を奪った後の攻撃で、伊藤選手のサーブでノータッチエースが出ます。ひさびさのエースで、10-8と少し差が開きます。
この後堺ブレイザーズは右の髙野、左の松岡の攻撃が良く決まりますが、互いにサイドアウトが続く状況で、試合展開は淡々としたものでした。
セカンドテクニカルタイムアウトは16-14で堺ブレイザーズの先行。ここまで戦いは接戦で、ワンチャンスで点差をひっくり返されかねません。
そして終盤戦。
堺ブレイザーズがブレイクして19-16とすると、タイムアウトを挟んで次は中央大学のブレイクで19-18と一点差に。
再びタイムアウト。ここにいたっては、どうタイムアウトをとるのかのベンチワークも大切でしょう。
両者20点台に突入した後、松岡選手、伊藤選手の得点でブレイクし23-20に。そこで伊藤選手に代わって、堤智久選手(9)が登場します。しかし、今度は中央大学にブレイクが出て23-22に。タイムアウト後、再び伊藤選手がコートに入ります。
ここで中央大学にとって痛恨のサーブミスが出て24-22になりますが、心を折られることなく闘う中央大学は得点し24-23と1点差に堺ブレイザーズは追いつめられます。
ミスが許されない中央大学のサーブが放たれます。
この一球を髙野選手はレシーブし、ボールをセッターの山口選手に返すとネット際に突進。内藤選手が囮に跳んだ頭上を美しい軌道でボールは通り抜け、ぴったりのタイミングで髙野選手が右腕を振りぬきます。電光石火でコートに叩きつけられたボールは高く跳ね上がり勝負は決しました。
25-23。もっとも点差の迫った第4セットを堺ブレイザーズは制し、セットカウント3:1で黒鷲旗2戦目を勝利したのでした。
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▲堺ブレイザーズは、中央大学の粘り強い闘いに最後まで苦しめられた。 |
勝利したとはいえ、その内容は決して褒められたものではありませんでした。中央大学の健闘は素晴らしいものでしたが、それ以上にサーブがまったく入らない堺ブレイザーズが自らで自らの首を絞めていました。
試合終了後、控室へ戻ろうとする主将の伊藤選手にコメントを求めてみました。
「大学生と試合をするときは、受けて立ってはダメだと言われます。それは分かっていても、勝って当たり前と思われる中で受けてしまう。いつも挑戦者の気持ちでやっていかないといけないと改めて思いました。(サーブが入らなかったことに関して)あんなに入らないことは考えられないことでした。対応するのが遅くなってしまいましたが、マルキーニョスコーチから『フローターを打て』と指示があって改善されました。もっとイージーにしないと。(明日の試合に向けては?)明日はV・プレミアリーグのチームと対戦することになります。もうひとつギアをあげていきます」
伊藤選手の言う通り、いよいよ明日からは同カテゴリーのチームとの対戦になります。
相手チームは強豪・豊田合成トレフェルサ。
豊田合成トレフェルサは、昨日の中央大学戦で3:0でストレート勝ち。この日も夕方に行われた試合でも大分三好ヴァイセアドラーに3:0でやはりストレート勝ち。どちらも1セットずつ落としてしまった堺ブレイザーズに対して、豊田合成トレフェルサは同じ相手に危なげなく勝利を重ねたのです。
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▲応援に駆け付けたファンに、明日の奮戦を誓う堺ブレイザーズの選手たち。 |
ともあれ、これでグループ戦の上位2チームは豊田合成トレフェルサと堺ブレイザーズで確定し、決勝トーナメントへの進出が決まりました。もちろん、ここは勝利して1位抜けで決勝トーナメントの戦いを楽にしなければなりません。
ギアをあげての豊田合成トレフェルサ戦に注目です。