バレーボールの堺ブレイザーズは、チームを支えてきたベテラン選手たちの引退と新戦力の一斉加入があり、ほとんど新生チームになろうとしています。ここ数年間不本意な成績が続いていますが、新生チームで古豪復活を果たすことはできるでしょうか?
シーズン開幕をひかえた10月3日に行われた記者会見では、挑戦者としてタイトルを狙うというチームの姿勢が示されました。
記者会見の様子をお届けした
前篇に続き、後篇では選手個別インタビューをお届けします。
■3人のセッター
今シーズンの堺ブレイザーズの注目ポジションは、セッターということになるでしょうか。新加入選手もあり、堺ブレイザーズは3人のセッターでシーズンに挑むことになります。
まずは堺ブレイザーズのジュニアチームから輩出された佐川翔選手に、大学ナンバーワンセッターと呼び声も高かった山口頌平選手が加入し、昨シーズンは2人がポジションを争いました。今シーズンは、それに加えて、昨季3冠チームであるパナソニックパンサーズから全日本代表選手の関田誠大選手の加入が記者会見当日発表されました。
では、そんな3人のセッターにお話を伺ってみましょう。
●山口頌平選手
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▲山口頌平選手。14番セッター。今シーズンは主将に就任。 |
――まずは主将としての山口選手にお聞きします。チームの状況はどうでしょうか?
山口「黒鷲旗大会が終わって、6月から今シーズンの練習が始まりました。アジア競技大会に行っていた3人(千々木駿介選手、出耒田敬選手、髙野直哉選手)が6~8月とほとんどいなかったので、残ったメンバーで先ほども(質疑応答で)あったようにボールコントロールですとか、レシーブ練習とかつなぎとか、そういった地道な練習を特に重ねてきていました。8月は大学生との練習もありましたが、9月に入って3人も帰ってきて、ニコ(ジョルジェフ・ニコラ選手)も加わって、ようやく全員が揃ってチーム練習というものも出来てきました。ニコも初めてなんですけれど、よく自分からコミュニケーションをとってくれたり、自分はルーキーだっていいながら、人一倍アップから声を出してくれますし、みんなもそれに感化されてコミュニケーションをとったり声を出したりして相乗効果をみんな感じていると思います。薩摩川内で行った合宿では韓国の水原KEPCOビッグストームや大分三好ヴァイセアドラーと練習試合をしたのですけれど、サーブから攻めて優位な展開に持ち込んで、オフェンスの面でもチームとしてコンビが確立してきたという手ごたえがありました。あとはコートで毎試合敵に向かって戦っていく、やってきてことを出していくことが今後大事なことではないかと思います」
――では、今度は選手として。今シーズンはセッターが3人になってチーム内でも厳しいポジション争いになると思いますが、山口選手はどう感じておられますか?
山口「そうですね。出場機会に関していえば、ライバルが1人増えて厳しくなったというのは間違いないです。しかし、自分らしさや良さをしっかり出していきながら、どんな状況であっても場面であっても、キャプテンでもあるのでチームのために自分は何ができるのかを考えながら、このシーズンを戦っていきたいと思います」
●佐川翔選手
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▲佐川翔選手。8番セッター。堺ジュニアブレイザーズが輩出した佐川選手。高い運動能力を誇る。 |
――若い新加入の選手も増えましたが、佐川選手は今季の堺ブレイザーズをどのようなチームだと見ておられますか?
佐川「おっしゃるように若手が増えてエネルギーがあるので、爆発力は間違いなくあります。あとは攻撃がうまくいかないとか、チームがうまく回らない時に、僕やさらに上の中堅やベテランと呼ばれる選手がどういう軸になっていくのかが課題ともいえますし、そういう意味では若手にはどんどんがむしゃらに後ろをみずにいってほしいなと思います」
――では、その若手に関して、セッターの佐川さんから見てどんな色があるのか、ファンの方にここに注目したら面白いよというのを教えてもらえませんか?
佐川「全員色があるのですが、今シーズン新加入の3人でいえば、小池勇輝選手はそんなに背が大きくないのですが、打つ技術が強打だけじゃなく、タイミングをずらしてブロックにあてたり、軟打で相手を惑わしたりなど、相手の嫌なことをどんどんしていくプレーヤーなのでそこに注目です。逆に宮原貴人選手は身長もあってジャンプもできるし、もともとミドルブロッカーだったので、早い攻撃にも対応できるし、ひさびさに千々木選手のようにパイプからどんどん打っていける選手なんでそういうところも注目です。山﨑貴矢選手はミドルブロッカーで、松本慶彦選手のように速くクイックを打つというよりは、あの体格でパワーがあるのでミドルブロッカーらしからぬシャープというよりは強く打てるスパイクが見どころだと思います」
●関田誠大選手
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▲関田誠大選手。11番セッター。3冠チームより加入! |
――記者会見では「経験を積みたくて移籍した」とおっしゃっていましたが、どのような経験を積めると考えられたのでしょうか?
関田「(堺ブレイザーズには)初めての選手もいますし、全日本代表で一緒にやっていた選手もいる中でどういう風にチームを組み立てていくかも経験になりますし、試合に出ることで経験することも多いのではないかと考えています」
――これまで対戦相手として見てきた堺ブレイザーズはどんなチームでしたか?
関田「どういうわけか堺ブレイザーズとやる時は接戦ばかりで、前のチームにいたころはすごく嫌だなという印象がありました。すごい勢いがあって全然気が抜けないチームでした。そこに僕が入ってどう変わるかが楽しみです」
――チームに入って間もないとのことですが、第一印象はどうですか?
関田「若い選手が多いと感じてますし、なのですごい楽しみですし、すごいやりやすい環境でやらせてもらっているなと感じています」
■若き力の成長が今シーズンの鍵となるか?
今シーズンの堺ブレイザーズは、彼らの成長が鍵となるのではないか。これからの堺ブレイザーズを担う若手選手の中から3選手にお話を伺えました。
●堤智久選手
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▲堤智久選手。9番ウイングスパイカー。昨シーズンはコート上で深呼吸する姿も見られましたが、硬さもとれてきました。今シーズンはさらなる爆発を。 |
――昨シーズンの手ごたえなどは、振り返ってみていかがでしょうか?
堤「1年目はまったく試合に出られませんでしたが、昨シーズンからスタメンで出してもらって徐々に出場機会が増えてきました。最初の方は緊張していいプレーが出来なかったのですが、しだいに慣れてきていいプレーも出来るようになってきました。ただ結果としてチームの成績がついてこなかったので、今シーズンこそはって感じですね。昨シーズンは怪我をした選手も多かった中で、控えとして途中から出場したともいえます。今シーズンは初戦からスタメンとして出れるようにしっかりとがんばりたいと思います」
――ファンの方に向けて、堤選手の持ちプレーを紹介してください。
堤「高さが武器・持ち味なのでブロックやスパイクなど高さのあるプレーを見てほしいです」
●髙野直哉選手
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▲髙野直哉選手。4番ウイングスパイカー。怪我に泣かされた昨シーズン前半。その後、全日本代表でもコートに立つ。国際経験を今度は堺ブレイザーズで活かしてほしい。 |
――昨シーズンは怪我もありましたが、黒鷲旗大会や全日本代表での活躍もありました。昨シーズンを振り返るといかがですか?
髙野「怪我でほとんど試合に出れなかったことは本当にチームに迷惑をかけましたし、チームが負けている中で自分が何もできなかったので悔しいシーズンになりました。でも復帰した時に厳しい状況でしたし、自分がなんとかしないといけないという中で、ただがむしゃらにやったという感じだったので、完全燃焼でした」
――全日本代表としての経験はいかがでしたか?
髙野「今回全日本代表としての試合をはじめて経験して、守備の練習や試合の経験が本当に刺激的で、すごく自分のためになりました。アジア競技大会には、同じ堺ブレイザーズの千々木選手や出耒田選手と一緒にバレーボールが出来て本当に頼もしかったですし、一緒のチームメイトがいるということで自分自身も自分のプレーができたなと。その中で、課題とか自分が通用する部分というのもわかってきたので、その課題を今後克服することが自分のやるべきことだと思うので、そういうことをしっかりとしていきたいと思います」
――全日本代表でも経験を積んだ髙野選手ですが、ファン・サポーターの皆さんに今シーズン自分のここをぜひ見てほしいというところはありますか?
髙野「僕の役割としては、レシーブ・レセプションをする場面が多いですが、レシーブを見ていても地味ですしファンの方はそんなに楽しくはないと思うので、やはりキレのあるスパイクや、点数の取り方を注目してみてほしいですね」
●竹元裕太郎選手
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▲竹元裕太郎選手。21番ミドルブロッカー。ピンチの時でも、どこか余裕のある表情が印象的だった竹元選手。クールに相手の攻撃をシャットアウトしてほしい。 |
――昨シーズンは試合出場の機会も多くなったシーズンでしたね。
竹元「昨シーズンは試合に出られたので、自分が試合に出てどういう状況にあるのか、立ち位置的なことが2年目にしてよくわかったシーズンでした。チームとしての成績もそうですし、自分自身としてもいいプレーが出来たわけではないので、今シーズンはどれだけ昨シーズンを越えられるかが大事になってくるかなと思っています」
――ファン・サポーターの方に自分のどこを見て欲しいですか?
竹元「自分の役割はブロックなので、ブロックでチームに貢献しているところを見てほしいですね。スパイクも練習しているので、昨シーズンとは違う姿を見てもらえたらと思います」
――よくマルキーニョスコーチと話している姿も見るのですが、コーチとは何を話しているのですか?
竹元「そうですね、大体前のミーティングで話したことを徹底してやっていこうとか、試合中だとデータをとった通りになっているからその通りで行こうとか、そういう戦術的なことを話したりもします」
――試合で竹元選手の様子を見ているといつも余裕がある風に見えるのですが、緊張しないのですか?
竹元「そうですね。緊張はあまりしないですね(笑)」
■長いチームの歴史の中で
最後は、チーム1のベテラン選手である松本選手のインタビューです。堺ブレイザーズの栄光も苦難も知る松本選手は、現状と未来をどう見ているのでしょうか?
●松本慶彦選手
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▲松本慶彦選手。1番ミドルブロッカー。高い攻撃力は昨シーズンもチームを救った。 |
――これまで見てきた歴代の堺ブレイザーズのチームの中で、今季はどんなチームになりそうですか?
松本「そうですね。どのチームも一緒だと思うのですけれど、長いチームの歴史の中でいい時、悪い時、いっぱいあると思います。堺ブレイザーズは昨シーズンはあまりいい成績ではなかったのですけれど、今シーズンこれだけチームが成長したということをファンの皆様に結果として伝えたいとみんな思っていると思います。もちろん優勝というのはいい経験ですけれど、チームがどん底にいる時ほどチームは結束すると思うので、これをスタートの試合から爆発させられるようにやっていければと、やはりみんなそう思ってやっているので、今まで以上にアグレッシブにゲームに取り組めるそういうチームになっているのではないかと思います」
――では、ファンの方に今年の松本のここを見てくれというのはありますか?
松本「それは今までと変わらず、クイックもそうですし、真保監督になってからディフェンスも強化しているので、ブロックとレシーブの関係だったりというディフェンスを見てもらえたらなというのがあります」
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▲今シーズンは、堺市でのホームゲームは5試合(さらに北九州市2試合、和歌山市1試合もホームゲーム)とホームゲームが増えています。ぜひ堺市金岡公園体育館でバレーボールトップリーグの迫力を体験してみてください。 |
以上、選手インタビューでした。
昨シーズンの悔しさを抱きながら、自らの課題、チームの課題に向き合い、若手からベテランまでポジティブな成長を積み重ねているように感じましたが、いかがだったでしょうか。
すでに10月27日(土)の初戦・ジェイテクトSTINGS戦まで一か月を切り、新戦力もそろった今チームとしての練習も過熱しているはず。
熱い鉄のように鍛えられた新生・堺ブレイザーズがどんな戦い方を見せるのか注目していきます。