金岡公園体育館では、久しぶりにコートが熱く燃え盛るような試合が行われていました。
バレーボールのV・プレミアリーグ男子。堺ブレイザーズと東レアローズの一戦です。昨年の覇者で今シーズンも2位につける強豪のアローズに対して、下位に沈んでいる堺ブレイザーズが挑戦する闘い。ホームゲームの応援を背に受けて、2セットを終えてセットカウントは1-1と堺ブレイザーズは互角の闘いを行っていたのです。
東レアローズ戦の後篇では、3セット目からの闘いの決着をお届けします。
■強味で圧倒した第3セット
メンバー交代はなく第3セット。
初手は、なんとまたも堺ブレイザーズの出耒田敬選手のノータッチエースから始まりました。シーズン前は日本代表でオポジットを務めていたこともあり、チームでのミドルブロッカーの感覚がなかなか戻ってこなかったという出耒田選手の復調は頼もしい限りです。
その後は、アローズもブレイクすれば、堺ブレイザーズもブレイクする、競った試合展開でした。ぐっと盛り上がったのはアローズのシュミット・ギャビン選手のスパイクをウォレス選手が1枚でシャットアウトしたプレイでした。ウォレス選手が客席に腕をつきあげてアピールして6-6に追いつきます。さらにキャプテン伊藤康貴選手が攻めのサーブで相手を乱した所をウォレス選手がスパイクで突き刺して8-7となり、堺ブレイザーズ先行でファーストテクニカルタイムアウトとなったのです。
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▲いきなりのノータッチエースで盛り上がる堺ブレイザーズのコート。 |
タイムアウト空けはサイドアウトが続いて10-9となってからサーブはウォレス選手に。またも強烈サーブがアローズを襲います。サーブのリターンが直接返ってきた所を千々木駿介選手が一撃で決めると、続くサーブもノータッチエース。12-9とリードを広げます。獲り返された後も即座にウォレス選手の攻撃でサイドアウトし攻撃権をゲット。続いてコート外に大きく逃げたボールを山口選手が追いかけてコートに返し、戻ってきたボールをウォレス選手が直接決めて14-10。仲間の肩を抱くウォレス選手はこの日一番の満面の笑顔となりました。
続いてサーブミスした千々木選手ですが、即座に得意のパイプ攻撃を決めて15-11。ピンチサーバーの内藤和也選手も登場しますが、ブレイクは叶わず。しかし、続いてアローズの攻撃はギャビン選手のサーブミス。16-12となり、少し堺ブレイザーズがリートを広げてセカンドテクニカルタイムアウトになりました。
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▲雄たけびをあげガッツポーズの出耒田選手。全日本選手でもある出耒田選手の復調は頼もしい。 |
その後は、互いにサイドアウトしながら、得点が積み重なります。
ラリーが続いても最後はウォレス選手が決めてくれる頼もしさ。19-15でウォレス選手のサーブとなると、自らのスパイクで決め、サービスエースも決めて21-15。仲間もひっぱられるように活躍して23-16に。アローズがブレイクで粘っても、ウォレス選手が相手を吹き飛ばすようなスパイクを決めてセットカウント24-18。最後はアローズがドリブルのミスで25-18。第3セットは堺ブレイザーズのものになりました。
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▲失点時でもリベロの井上選手は仲間を鼓舞する。 |
堺ブレイザーズの攻撃的なサーブがアローズを崩したシーンが多くみられた第3セットでした。そこにスパイク、サーブ、ブロックでウォレス選手が大車輪の活躍を見せると、他の選手も調子をあげていく。そんな好循環が始まったように思えます。あと1セットで勝利です。
■鎬を削る第4セット
運命の第4セットが始まりました。
まずはアローズのサーブに対し、松本選手の速攻で最初の得点を堺ブレイザーズが奪います。続くサーバーはウォレス選手からで、瞬く間に3-0とブレイクします。一方、アローズはギャビン選手が今一つ……ならばと、李博選手のサーブ時にブレイクし4-4と互角に。軟打も織り交ぜたアローズの攻撃もうまくはまって、7-8とアローズが8点目を奪ってファーストテクニカルタイムアウトとなりました。さすが強豪のアローズは堺ブレイザーズの勢いに飲み込まれずに粘り強く闘いを続けます。
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▲第4セットは序盤からもつれた展開。 |
アローズは、堺ブレイザーズの得点源であるウォレス選手を止めようと、3枚ブロックが壁となるのですが、ウォレス選手は構わず打ち破ります。そしてサーバーとなれば、4つめのサービスエースで11-10。相変わらずの好調です。
しかし、そこからは堺ブレイザーズの攻めのサーブが入らないなどミスが続いたこともあって、アローズが抜け出して13-16で、セカンドテクニカルタイムアウトを迎えました。
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▲3枚ブロックもお構いなしにぶち破るウォレス選手。強くて上手い! |
連敗が続いていたころは、この差がずるずると広がってあえなくセットを失うことがあったのですが、今日の堺ブレイザーズは違いました。
タイムアウト空けに、すぐに相手の攻撃を切ると、やっぱりウォレス選手が決め続けて16-16に追いつきます。その後、互いにサーブ権を奪うサイドアウトを繰り返し19-19という終盤の展開へ。両者ともサーブミスが続き、疲労がプレイにブレーキをかけていることがうかがえます。
堺ブレイザーズがヒヤリとしたのは、ギャビン選手のスパイクのアウトと判定が、チャレンジでインにひっくり返り、さらにサービスエースと嫌な形でブレイクが続いて19-21と突き放された時。しかし、堺ブレイザーズもブレイクのお返しで21-21。決して引き離されません。更にウォレス選手が連続得点で24-23のマッチポイントへ!!
マッチポイントの一撃は皆が必死でくらいついてつないだボールをウォレス選手が決めるという今日の試合を象徴するような一撃でした。あと1点で勝利です。
次のプレイ、アローズの米山裕太選手のスパイクがアウトと判定されたのですが、歓喜に沸く堺コートを後目にすかさずチャレンジ。チャレンジが失敗なら堺ブレイザーズの勝利ですが、緊張の判定時間が過ぎて結果は、チャレンジ成功。堺ブレイザーズのマッチポイントが消えてデュースとなります。
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▲マッチポイントを決めたか? コートに倒れるウォレス選手に駆け寄る千々木選手。しかし……。 |
このデュースで、互いのチームが意地と意地をぶつけ合います。アローズがセットポイントをとると、ウォレス選手の一撃がそれを打ち消して25-25。サーブミスが両者にあって26-26。「今年戦力になった」と監督に評価された堤選手がコートに入ってサーバーとなると、ウォレス選手がギャビン選手のスパイクを1枚で止めて27-26で再びマッチポイント。やられたらやりかえすとギャビン選手がスパイクで返して27-27。ところがそれ続かずギャビン選手のサーブミスで28-27。ウォレス選手もお付き合いのサーブミスで28-28。千々木選手がスパイクを決めて29-28。アローズ米山選手のサーブがウォレス選手を強襲して29-29。ウォレスがブロックを上から抜いて30-29。次いで松本選手サーブから、しつこくラリーが続くと最後はやっぱりウォレスがストレートでボールをコートにたたきつけました。
勝利です。今度こそ、チャレンジの入る余地もない勝利でした。
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▲長い長いデュースを制し、ついに決着。コート外だった選手も喜びを爆発させる |
■勝利者の声
勝利の余韻が残るコートでは、ヒーローインタビューが行われていました。もちろん今日のヒーローはこの人、ウォレス・マルティンス選手をおいて他にないでしょう。インタビュワーがマイクを向けます。
――今日の感想を。
ウォレス「チーム一丸となって勝利できた。最後は決めることができた」
――どんな気持ちでプレイしていました?
ウォレス「ファンの方たちにもっと盛り上げてもらえるように、気持ちを抑えて最後までがんばれた」
――スパイクもサーブも調子よかったけれどどうだったのか。
ウォレス「お陰様で今日はいいプレイができたかと思うけど、チーム全員の力でこれまで乗り切ってこられたかな」
――ウォレス選手はチームメイトからはまるちゃんと呼ばれているそうですけれど、ファンからは何と呼んでほしいですか?
ウォレス「(笑みを浮かべて)まるちゃん。まるちゃん、大丈夫。応援の皆様足を運んでいただいてありがとうございました」
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▲文句なしの今日のヒーローはこの人。ヒーローインタビューを受けるウォレス選手。 |
さらにこの日はホームゲームでの勝利ということもあり、もう一人セッターの山口頌平選手もヒーローインタビューを受けることになりました。
――自己紹介をお願いします。
山口「(力一杯)イェーイ。今年来ました山口頌平ですよろしくお願いします!」
――(イェーイについて)説明しないとわからないと思いますが、ファンフェスティバルでやったんですよね。山口選手にはそんな一面もあるということで。激しい試合でしたが、3セット目14点目のラリーのシーンは覚えていますか?
山口「覚えていません(きっぱり)。多くのサポータがかけつけてくれた中で、勝利をつかめたのはありがたく思います。ありがとうございます」
――どんなことを思いながらトスをあげいるのです?
山口「先輩方に気持ちよく打ってもらうのを考えながらトスをあげています。明日もあるので、明日も勝って2連勝してホームゲーム勝ちたいです」
テンションが高めの山口選手のインタビューを、コートの端でクールダウンしつつやや苦笑気味の笑みを浮かべて見つめる先輩選手たちも楽し気だったのが印象的でした。ともかく勝利は嬉しいものです。
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▲勝利のセレモニー。黄色いフラッグが宙を舞う。 |
続いて、その後に行われた記者会見でのやりとりです。
記者会見には最初に堺ブレイザーズからは伊藤キャプテンと山口選手にお越しいただけました。まずは2人のコメントから。
伊藤「会場が満員になって堺の皆さんの前で勝てたことが一番。内容としてはまだまだ課題が残るので明日修正して挑みます」
山口「ホームゲームは初めてだったので、このように多くの応援の中で結果を残したので嬉しく思います。明日もあるので勝って連勝したいです」
――シーズン序盤、なかなか勝利できませんでしたが、ようやく復調してきました。何か取り組みを行ったのでしょうか。
伊藤「負け試合もあったけれど、何がダメかを分析しました。選手自身も分析して課題に取り組んできたので開幕の頃より調子があがってきたのだと思います。仲間と目を見合って一つになって相手と戦うと思って」
――伊藤選手も今日は痛いミスがありましたが、そんな時はどうやって乗り切るのですか?
伊藤「仲間がすぐ寄ってくれて声をかけてくれたのでひきずらずにすぐにサイドアウトも取れたので。ミスは誰でもあるのでポジティブに切り替えました」
――山口選手は初のホームゲームの印象は?
山口「このように大声援の中でやっていて楽しかったし、結果も出せて楽しかったです」
――明日の試合に向けての意気込みをお願いします。
伊藤「今日の試合は格上だったけど勝つことができました。明日は順位的には一つ上のチームなので明日負けたら今日勝った意味がないので頑張ります」
山口「キャプテンからもあったように勝ちは勝ちとして明日が大事だと思います」
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▲セッターの山口選手と主将の伊藤選手。劇的な勝利だが、すでに次の試合に向けて表情は引き締まっていた。 |
続いて、真保綱一郎監督です。
真保「せった中で我慢して取り切れることができたのはチームに取って自信になると思う。セットを落としたところがあったのですが、ホームの皆さんに後押しさせてもらったことが大きいです」
――連勝ですが、負けが続いたシーズン当初と何が変わったのでしょうか。
真保「髙野(直哉)の怪我があって、伊藤が入って攻撃の人と守備の人の役割分担がはっきりして、サーブ・レシーブ・ブロックが崩れなくなった。また今日活躍したウォレスだけでなく、井上(裕介)、今富(稜介)リベロの二人など脇を固める選手もいい仕事ができるようになってきました」
――アントニオ・マルコス・レルバッキコーチからはどんな指導やアドバイスがあるのでしょうか。
真保「技術的なことは常々言ってもらっている。課題の一つはサーブレシーブ、そこでリベロを中心に、いろんな技術的な指導をしています。サーブレシーブが安定している時はサイドアウトが取れるので」
――今シーズンは山口選手、佐川選手と2人のセッターが出ています。新しいファンにもわかりやすく2人の特徴を紹介してください。
真保「山口は小さいけれども、真ん中の軸に左右の選手を生かす選手でクイックの攻撃が多い。佐川は身体能力が高く、ブロック、サーブを中心とした選手です」
――真保監督にとって堺でのホームゲーム初勝利かと思いますが、堺のファンに一言をお願いします。
真保「堺ブレイザーズはもっともっと強くなければいけないので皆さんの後押しをもらいながら常勝チームを目指していきます」
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▲戦況を見つめる真保監督。 |
最後に、東レアローズの小林敦監督の会見です。
小林「今日のゲームの1セット目は順調な滑り出しを見せれたけれど、出耒田選手のサーブで崩されてしまった。ホームゲームの見えない力もあってか、結果勝つことができなかった」
――堺ブレイザーズとは順位の差がありましたが、敗戦は意外なものではありませんでしたか?
小林「いや、堺ブレイザーズさんが、これまで波に乗れなかったのが不思議でした。先週の試合から堺ブレイザーズさんも浮上してくるんじゃないかという印象を持ちました」
――では、勝てなかった要因はなんでしょうか。
小林「今日はウォレス選手をどうすることもできなかった。働かせすぎてしまった。しっかり封じ込めて他の選手も活躍させないようにと思っていたのですが、エースをあそこまで大車輪させてしまっては。当たり屋を出さない取り組みがもっと必要でした」
――最後に金岡公園体育館でのファンの応援についてはどう思われましたか。
小林「この体育館はコートと観客の声も近い。アウェー感も感じる。黄色いシャツも多くて、チームとしてはアウェーとしてやっている強い印象があります。終盤になるとこの応援が堺ブレイザーズに力を与えていると思いますよ。うちの応援団も遠くまで来てくれて声をからして応援してくれているのでありがたいことですが」
こうして久しぶりに堺市の金岡公園体育館で勝利をあげることが出来た堺ブレイザーズですが、明日にももう一戦あります。直上のサントリーサンバーズを叩いて、順位をあげるチャンスを逃すわけにはいきません。
引き続きホーム2戦目をレポートします。
堺ブレイザーズ
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