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古墳への扉を開けてみよう(2) 

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堺市博物館の学芸員橘泉さんに、百舌鳥古墳群と古市古墳群を取り上げた企画展「シークレット・オブKOFUN」のお話を伺ったところ、最新の知見に基づく古墳時代の魅力に触れることができました。一体古墳時代の魅力とは何なのでしょうか?
■古墳時代は面白い
こうした最新の成果も含めて、企画展では古墳時代とは何か。その面白さが、これまで興味のなかった人にも古墳マニアにも伝わるような展示を心がけています。
「古墳ばかりが注目されますが、古墳時代ってすごく面白い時代なんです。弥生時代にも色んな技術がありましたが、それが今の技術につながるような技術になっていくのがこの時代です。たとえば金属技術でいうと、細かい話ですが『鋲(びょう)』が作れるようになったのがこの時代です」
と、橘さん。
確かに本当に細かい話ですが、ただ金属の形を整えるだけじゃなくて、鋲があれば金属をつなげることができるから、飛躍的に人間ができることが増えそうです。
「蝶番もこの時代にできています。馬に乗る風習も登場して、四条畷では馬を飼っていた大きな遺跡も発見されています。集落の中に馬に乗る道具が発見されています」
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▲犬形埴輪。キーホルダーなど人気のグッズにもなって、堺市博物館で販売されています。

堺には、土師(はぜ)・陶荒田(すえあらた)神社、陶器(とうき)山など、土師器・須恵器・陶器にちなんだ地名があり、古墳時代には一大焼き物センターがありました。鉄器だけでなく、焼き物技術も気になります。
「窯を使って土器を焼きはじめたのもこの時代です。野焼きの土師器で作っていた埴輪も、窯を使った須恵器で作られるようになります。窯を使うと高温で硬く焼くことが出来るのですが、色が灰色になるんです。灰色に焼ける須恵器なのに、それでも赤い埴輪を目指して努力している様子があって面白いですよ」
土師器と須恵器の違いは焼くときの温度です。窯を使って高温にすることで須恵器は焼けるのですが、酸素を遮断して二酸化炭素だけになると灰色になります。製造過程のどこかで酸素を入れると灰色にはなりにくいので、埴輪ではそういう努力をしても赤い発色を目指したのだとか。
この埴輪というのも不思議なものです。
「埴輪は古墳か、製造現場でしか発見されていません」
古墳の上に取り囲むように埴輪は並べられていたようです。赤色にこだわったことといい、何か宗教的な意味のあるものだったように思えます。
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▲ユーモラスな印象の人形埴輪。

古墳時代は、技術だけでなく社会の発達した時期としても、興味深い時代です。
「丁度、前方後円墳が全国に広がっていく時代なんです。政権の目が届く範囲ということなのかもしれないし、地方の勢力が中央に寄っていったということなのかもしれない。その意味するところはよくわかっていないのですが、飛鳥・奈良時代が国が出来ていく時代だとしたら、古墳時代はその前の国が出来る過渡期ですね」
文献資料としては、中国の文献に倭の五王が登場したり、埼玉の稲荷山古墳から出土した鉄剣に刻まれた銘などがあります。わずかな文献と、出土品などを手掛かりに、黎明期の日本の様子を想像することができる。それが古墳時代の魅力かもしれません。
■古墳マニアも子供も大満足!?
こうした背景を踏まえた展示も講演も充実しています。
展示では、百舌鳥古墳群と古市古墳群の両方の古墳群から、これまであまり外に出ていない展示品が出展されます。
「小さな古墳からも面白いものが出てくることがあります。百舌鳥古墳群のいたすけ古墳からはじめて円筒埴輪が展示。人気の高い形象埴輪も展示を予定しています。古市古墳群の野中古墳(藤井寺)からは臼玉4万個を使った出土品。臼玉は灰色で一つ一つは地味なのですが、さすがに4万個使われているとすごいです。アクセサリーにするには重すぎるし、これは何につかったのかはよくわかっていません」
正体不明の出土品は、一体何のために作られ使われたのか、あなたはどう思いますか? 想像を巡らせるのも、この時代ならではの楽しみでしょう。
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▲珍しく百舌鳥古墳群から出土した鏡。

さらに知的な楽しみも。
「講演会は若手の研究者にお願いしました。それぞれの専門分野をピンスポットで、それをわかりやすくと、お願いしています」
講演会は第一回(7月30日)のテーマが「埴輪と鉄器」、第二回(8月26日)のテーマが「鏡と須恵器」です。
「鏡の出土が少ないのですが、埴輪や鉄器は百舌鳥古墳群からはよく出土しています」
若手の研究者のピンスポットな分野の講演ということで、なかなかディープな知識を知ることが出来そうです。
子ども向けの企画としては、古墳をテーマにしたワークショップが充実しています。丁度、夏休みということもあるので、夏休みの自由研究向けの企画ともいえそうです。
「勾玉作りやハニワ作りは他の博物館でもやっていますが、ダンボールで仁徳天皇陵古墳を作ろうは、うちでしかやってませんよ。完成品を持ってきましょうか」
と橘さんが、ちょっと自慢気にもってきたのは意外に立派でリアルなオブジェでした。
「仁徳天皇陵古墳の2000分の1のスケールで再現しています」
この日話題になった造り出しももちろんちゃんとあります。仁徳天皇陵古墳の雄姿を家庭で鑑賞できるのはいいのですが、ちょっと大きすぎる気もしますね……。
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▲デカイ! ダンボール古墳と学芸員の橘さん。

古墳時代に生まれた技術は、その後も技術集団の中で育まれていったことでしょう。職人のまち、技術のまちとしての堺の出発的はこの時代にあったのかもしれません。
古墳に囲まれた堺市博物館ならでは。古墳群を擁する堺市ならではの企画展。古墳ファンもそうでない方も、古墳とその時代の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
〒590-0802 
大阪府堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 
電話:072-245-6201 ファックス:072-245-6263
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