松原市もほど近く、堺市の東の外縁部で中央環状線沿いにある大きな工場、つーる・ど・堺でも取材したことがある「ハグルマ封筒」がその舞台。この日行われた「第2回 かるた市」には、生憎の雨模様にも関わらず多くの人が押し寄せていました。
予定していた予約人数をはるかに上回る申し込みで、1回の参加人数や回数を増やして急きょ増員するほどでした。普段は見ることが出来ない「工場見学ツアー」に同行してみましょう。
■封筒を作る機械 その名も製袋機
小さなお子さんも交えて10人強の見学者は、スタッフに案内されて、会社のバックヤードへと向かうと、広い工場内には大きな機械がいくつも設置されています。
「テープを貼っている内側には入らないように気をつけてください」
と注意され、一台の機械の前へ。
「封筒を作ることを製袋(せいたい)といいます。製袋する機械を製袋機(せいたいき)。今日はこの言葉を覚えて帰ってください。今回は、二つの製袋のやり方を見ていただきますが、まずは大きな紙のロールから封筒を作るやりかたです」
抱えきれないほどの大きさの紙のロールは、重さ300kg、伸ばせば長さは7000mにもなります。
「誰か押してみたい人はいますか?」
子供2人で挑戦すると、回転方向に転がすことは出来ても、方向を変えることは出来ません。
「動かすのは大人でも難しいんです。普段は機械のリフトで運ぶんですよ」
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▲巨大な製袋機を操作。 |
いよいよその重いロールがセットされた製袋機を動かします。
「この製袋機は角形2号封筒専用にセッティングされています」
角形2号封筒は、A4サイズの書類などをいれるのにお馴染みの大きめの封筒です。
この専用の製袋機では、紙を高速度で「流し」、郵便枠などを「印刷し」、不要部分を「切り落とし」、「糊付けし」、「折り曲げて袋にし」、一枚づつ「切り離す」という6つの作業を一台で一気にやりとげてしまいます。
「この製袋機では、1分間に300枚の封筒が作れます。一日では10万枚になります」
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▲製袋機のコンベアの上を高速で紙が移動。 |
▲出来上がった封筒をチェック。 |
続いて二つ目の作り方を見学。こちらは製袋の1工程1工程を違う機械で行います。
まずは大きな紙を封筒の大きさに切る機械「断裁機」。
「500~600枚の紙を一度に切ります。作業台の下から空気が出ていて、重い紙の束を軽々と動かせるようになっています」
オペレーターが紙をセットし、分厚い鉄板が降りてきて動かないように固定しますが、すぐに刃は降りてきません。
「安全のために、両手を使ってスイッチを入れないと刃は降りてこないようになっています。またセンサーもついていて、作業台の上に手などがあると動かないようになっています」
刃はギロチンさながらの大きさで、紙の束を一刀両断!!
「どのぐらいの細さまで切れると思いますか? なんと1mm幅の細さまで切ることが出来ます。調子がいい時には0.5mm幅の細い紙を作ることも出来るんです」
こんな大きな刃でそんな繊細な作業が出来るなんて! オペレーターもちょっと得意げです。
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▲断裁機は両手でスイッチをいれないと刃がおりません。安全対策はばっちりです。 |
▲「綺麗に切れた時が嬉しいです」とオペレーターの角張さん。切れるようになるのに1か月、先輩に認められるのに3年かかったといいます。 |
次の工程は紙を封筒の形に切り抜く工程です。担当する機械は、なんと1960年代以前から使われていたドイツ製のハイデルベルグ活版印刷機です。黒く塗られたボディに、日本製とはどこか違う重厚かつ洗練された機能美の塊のような機械。
「今ブームの活版印刷機です。もちろんこの機械で印刷も出来るんですが、今は型抜き専用で使っています」
活字の代わりに、型抜きの刃をセットして使用します。
「刃が潰れないように気をつけながら、紙が切れるか切れないかぐらいの寸前で止めるのが難しいんです」
こちらも繊細さでは負けていません。ほんのわずかに切り抜かれた紙と外枠がつながったままになっている紙の束。この外枠に手をかけてひっぱると、綺麗に枠がはがれていきます。残ったのは封筒の原型になる紙です。
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▲漆黒のハイデルベルグ活版印刷機。ローラーで巻き取られた黄色い紙が型抜きされていきます。 |
▲型抜きの刃。後ろの棚に様々なタイプの刃があります。 |
活版印刷機で切り抜かれた紙を、今度は(また別の)製袋機で封筒にしあげていきます。
「こちらの製袋機では300種類の封筒を折って糊付けすることが出来ます。1分間に250枚。1日で8~10万枚を封筒に出来ます。出来た封筒を1000枚~2000枚に1枚、ちゃんと出来ているか破いて破壊検査というのをやります。皆さんもやってみてください」
さっき機械を通ったばかりだというのに、ひっぱると抵抗があり、しっかりと糊付けされています。
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▲おしゃれな洋封筒が糊付けされて完成です。 |
▲こちらの製袋機は半年前に導入されたばかり。使い勝手が良くてオペレーターの佐野さんと酒巻さんのお二人も大満足だそうです。 |
見学者も満足の「工場見学」でした。
町中でなく郊外でここまで多くの人を巻き込んだイベントを開催できたのは何故なのか、その仕掛け人にお話を伺ってみましょう。
■総務が企画した「かるた市」
東京で営業を担当していた田中克昌さんは、本社への転勤で総務部の所属となりました。
「『かるた市』は総務としての企画で、まずは『紙文化を知ってほしい』ということ。社会情勢の変化によって、手紙を書く習慣が減ったりしています。手紙文化を大切したり、自分たちで新たに紙文化を作り、強い体質にしていきたいと考えました。もう一つはハグルマ封筒の社員を地域の人に知って欲しい。堺に本社が移転して数年たち、地域に密着し、地域の人と社員を出会わせたかったんです」
そうして昨年始めた第一回かるた市。
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▲「かるた市」を発案した田中さん。「会社一丸となって助けてもらいました」 |
「現場のオペレーターは話すのは苦手じゃないかという勝手なイメージがあったんですが、そんなことはありませんでした。工場見学に来たお客様に接する社員のイキイキとした姿を見て驚き、そんな姿を見て欲しいと思いました。ご近所では評判も良くて、『毎月あるんですか』とか『来年もあるんですか』と尋ねられることもあり、嬉しいですね」
第一回は150名ほどのお客様に来ていただき、第二回は300名以上を目指しました。
「話も大きくなってきて、他の会社も何社呼ぼうかと話し合い。前回と違って飲み物やお菓子もカフェ風にしてお出ししたい。ワークショップも紙を使ったものが色々できるんじゃないか……なんて色々話し合いました」
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▲ワークショップも順番待ちが出る盛況ぶり。 |
当日は天候も悪かったのですが、目標の300名はなんなくクリア。
「工場見学の回数と参加人数を慌てて増やしたり、未経験なことばかりで、皆パニックになりながらも、その場で対応した臨機応変のスタッフに感謝です」
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▲怪我が無いように気を使いながらご案内。 |
他社や作家さんを呼んで大々的に開催したワークショップも大賑わい。
「お客様が、『紙が好きだから来た』といってくれる。親子連れや若い女性も多くて、紙好きがこんなにいることが実感できるのが嬉しい所です。社員も、他社の方・作家の方と出会うことで刺激になります」
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▲我ら「紙カフェ」も当然出店しておりましたよ!! |
▲「江戸堀印刷」さんの活字探しに子供のみならず親御さんも夢中に!? |
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▲ぴったり作りすぎた「開きにくい箱」で笑いを取りながらを販売。 |
普段はインドアで機械相手、パソコン相手の仕事が中心の社員の方も、この日は普段の業務を離れて接客に関われたことで「楽しかった」「人と触れ合えてよかった」との声がきかれました。
「また来年もやりたいです! 出店者大募集です!」
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▲いつもはDTPやSEのお仕事をしている二人も今日は受付で活躍。 |
▲「来年もやります!!」と力強く宣言した広報の炭谷さん。 |
工場見学など、大手メーカーならではの魅力もあり、様々な形で紙文化と触れ合うことが出来る「かるた市」。さらにグレードアップした開催が今から待ち遠しいですね。
ハグルマ封筒株式会社
堺市東区八下町3-50
TEL:0120-890-982
FAX:0120-890-883
E-mail info@haguruma.co.jp
受付時間:月曜日~金曜日までのAM9:00~PM6:00(祝日除く)