大仙陵古墳(仁徳天皇陵)のお隣の大仙公園の緑の中にある堺市博物館は、堺市民にはお馴染みの施設です。近年は意欲的な展示も多く注目度も上がり(堺緞通の企画展に関するの
記事)、2014年の春に大幅なリニューアルが行われました。百舌鳥・古市古墳群の世界遺産入りを目指す中、どんな変化があったのでしょうか?
■無料シアターで古墳体験
博物館のエントランスに入ってすぐ目立つのは新設されたシアターホールの存在感。200インチスクリーンに30席という大きさは、丁度小学生の1クラスが視聴できるようにと想定されたものです。
一回のプログラムは12分。
航空写真やCGもふんだんに使い、現代の古墳と古代の古墳の様子を最新の研究成果をもとに復元します。ほとんどの古墳に一般の方が立ち入ることが出来ない現状で、一番古墳を間近に体感できるのは、このシアターかもしれません。
古墳の歴史もコンパクトにまとめられており、知っているようで知らなかった古墳のあれこれを知りたい方にもオススメです。
「今、上映しているプログラムは一種類だけですが、第二弾の製作も予定しており、来年の3月までにはお披露目できるかと思います」
と、おっしゃるのは、博物館を案内してくれた副理事の赤澤明さんです。
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▲30席のシアターが完成。10分ほどの休憩を挟んで常時上映しています。 |
▲200インチスクリーン。右が案内してくださった赤澤さん。 |
驚くことに、このシアターの鑑賞は無料で、博物館入場料も要らないのです。
「シアターだけではありません。一階の休憩コーナーとグッズ販売コーナー、それに地下の体験コーナーは、リニューアルして無料開放しました」
内装をリフォームした休憩コーナーは、パネル展示と全面ガラス張りで公園の景観を楽しむことができます。また、地下一階の体験コーナーは、主に子供が触れて楽しむことが出来る展示やパズル遊びが用意されています。これまでは、博物館の入場料を払った方しか利用できませんでしたが、これからは誰でも気軽に立ち寄ることができます。
「公園で遊び疲れた時や、散歩の途中で立ち寄って、ぜひ利用してほしいですね」
生まれ変わった博物館は、『日常』に利用できる博物館と言えそうです。
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▲休憩室は大仙公園に遊びに来たついでに気軽に立ち寄れるスポットに。 |
▲サカイタケルくんグッズが人気。 |
グッズ販売所では、堺市博物館のマスコットキャラクター・サカイタケルくんのグッズが登場。タケルくんの生みの親は、あの『せんとくん』の籔内佐斗司さん。籔内さんは堺で少年時代を過ごした彫刻家です。
「タケルくんがかわいいと、クリアファイルが大人気です」
クリアファイルやチケットフォルダなど、実用品としても便利なキャラクターグッズはお土産にもぴったりかもしれませんね。
■体感できるミュージアムへ
リニューアルは、シアターなど無料ゾーン・無料コーナーだけではありません。博物館内部の展示にも大きな変化がありました。
「これまで古代の展示は、縄文時代から奈良時代まで均等な展示を行っていましたが、思い切って古墳時代に特化した展示に変更しました」
これまでの展示は国内のみに視線を向けたものでしたが、最近の研究成果から中国大陸や朝鮮半島との関係などを取り入れ、国際的にダイナミックな動きがあった古代世界の様子が浮き上がってきます。
1952年に開発の影響で残念ながら消失した大塚山古墳からは、朝鮮半島産の鉄でつくられた武器や甲冑などが大量に発掘されました。その出土品も展示しています。
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▲民間所有だったため消失した大塚山古墳から出土した鉄製の甲冑。解説文も子供向に易しい文章に書き直しました。 |
▲本物の甲冑をもとにした復元品を身に着けることができます。この日は新規採用の堺市職員の方が堺市の勉強のために多数来館されていました。 |
さらに展示方針にも大きな変化がありました。
「最大の変更は、これまでの展示は触れることも撮影も禁止でしたが、それを改めたことです。ハンズオン=手で持って体感することが出来る展示を取り入れ、写真撮影も解禁しました」
さまざまな実物の展示とともに、大仙陵古墳から発見された金銅製甲冑など、ハンズオンできる複製品も展示されています。これを実際に身に着け、古代の大王の気分を味わうこともできます。
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▲▲明治時代に大仙陵古墳の前方部石室が露出した際に描かれた石棺のスケッチなどの資料。 |
▲資料をもとに再現した石棺。 |
「今はハンズオンできる展示は古代だけですが、徐々に他のコーナーも新しい方針での展示を増やしていこうと考えています」
ガラス越しに展示物を見るだけだった博物館から、体感型の博物館へ。いうなれば知的なアミューズメント施設へと、堺市博物館は大きく飛躍しようとしているのです。
楽しく、親しみやすいリニューアルを果たした堺市博物館。子供のころに足を運んだという堺市民の方も、この機会に博物館へ再訪されてはいかがでしょうか?