輝く瞳との出会い

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初芝立命館中学の広い一室に、海外からのお客様を迎えて座席はすっかり埋まっています。老若男女が集った「4クラブ合同青少年交流会 輝く瞳に会いに会いに行こう 大阪大作戦」は、タイ王国のダムロン高校から先生と生徒をお迎えしての交流会です。
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▲近隣の学校のインターアクトクラブに所属する生徒や、ロータリークラブのメンバーが集まりました。 ▲日本語主任のノンヤオ先生が日本語でご挨拶。
壇上で今日の主役の1人がタイ語で挨拶をしますが、なんと日本人の年輩の男性です。
男性は、タイのチャンラーイロータリークラブ会長である原田義之さん。日本人で初めて、タイのロータリークラブで会長になった人物です。
原田さんが、タイ語を習得したのは、実は60才を過ぎてから。もともとは鉄工会社など日本企業で働いていた原田さんが、なぜ60の手習いでタイ語を習うようになったのか、興味深い講演がスタートしました。
■ロータリークラブのバッヂの重み
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▲年間100講演をこなすという原田義之さん。
1990年、日本の企業戦士の1人として原田さんはタイ王国に降り立ちました。習慣の違いなどに驚く中、ある日テレビにタイ北部の町チェンラーイの小学校に本が寄贈される様子が映り、原田さんは衝撃を受けます。
ボロボロの服装の子供たちが、コンクリートの床で本を読んでいる映像。モデル校であるにも関わらず貧しい教育環境と、それでも本を読む喜びに瞳を輝かせる子供たちの姿の両方に衝撃を受けたのです。
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▲原田さんの活動をスライドで解説。 ▲タイで成し遂げた数々の実績が紹介されます。
ロータリアン(ロータリークラブの会員)であった原田さんは、衝撃に突き動かされるようにチェンラーイへと飛び、タクシーの運転手に町で一番古いホテルへと行くように頼みます。あてがあったわけではなく、予感があったのです。予感は的中、ホテルの社長はロータリアンで、その日のうちにチェンラーイロータリークラブの会員と会長に会うことが出来たのです。
「この時ほど、1㎝、50gにも満たないロータリークラブのバッヂの重みを感じたことはない」
と、原田さんは振り返ります。
この出会いをきっかけに原田さんが橋渡しになって、日本のロータリークラブの支援で、タイ北部の山岳民族の学校を中心に多くの図書や図書館が寄贈されました。
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▲ドラマティックとさえ言える原田さんの体験談に聞き入る。
支援を続ける中で、原田さんは自分のすべてを奉仕に捧げる決意をします。
「子供たちの輝く瞳にもっと向き合いたい」
60才にして夜間学校でタイ語を学び、教師の資格まで取って、タイのダムロン高校でボランティアの日本語教師になったのです。
報酬を受け取らずに教師を続ける月日が流れ、タイとの絆が深まる中、世界規模の不況の波に日本もタイも飲み込まれます。この波は、北タイの山岳民族にとって、一際大きな荒波として覆いかぶさります。
■アカ族の嘆きの涙
原田さんは、10年ぶりにタイ人の日本語通訳のアリヤさんと再会します。アリヤさんは原田さんに訴えました。その目には光るものがあったといいます。
「原田さん。アカ族の子供たちをどうか助けてほしい」

 

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▲再会したアリヤさんと共にアカ族のもとへ。
アリヤさんは、北タイの山岳民族アカ族の出身でした。
アカ族は貧しい少数民族です。ルーツは中国南部にあり、焼畑農業で暮らしていました。焼畑で土地を拓き、生産性が落ちると別の場所へ移動する。およそ30年周期で移動を繰り返して回遊し、300年かけて南下してきました。
北タイへの移動は100年ほど前なのですが、アカ族の歴史上最大の激震が起きます。80年前の第二次世界大戦の開戦で国境が生まれ、アカ族の回遊が禁じられてしまったのです。
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▲30年周期で移動していたアカ族。 ▲急こう配での農作業。

 

アカ族が居住を許された土地は、山岳地の急こう配で農耕には不向きな上、大規模な森林伐採が押し寄せ焼畑も難しくなってきました。タイの平均的な農民の月収は4万円程度ですが、アカ族はその1/5にも満たないのです。
一方で、アカ族は独自のアカ語を使用していますが、母国語となったタイ語を学ぶ教育機関は村にはありません。話すことも読み書きも出来なくては、町で働くことも難しい。
そのため、アカ族はケシの実を栽培し麻薬の運び屋になったり、女性は身売りをしエイズ感染の危険にさらされるなど、暗い運命が待ち構えているのです。

 

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▲アリヤさんの建てた『夢の家』。 ▲家族や故郷と離れて『夢の家』で生活する子供たち。
アカ族の村から、教育機関のあるチェンラーイまでの距離は60㎞あり、子供が毎日通える距離ではありません。犯罪と貧困のスパイラルから脱出するためには、タイ語を学ばなくてはならないと、アカ族の教育支援を行うアリヤさんは、子供たちのために『夢の家』という子供寮をチェンラーイに建てたのでした。しかし……。
「アカ族の希望、タイ語を学ぶための子供寮『夢の家』が、今存続の危機にある」
世界不況により外部からの支援が激減し、『夢の家』は食うにも困る有様となったのです。
原田さんはアカ族支援のために奔走します。
日本に帰国して、全国で講演しては支援を訴え、マスコミにも取り上げてもらいました。原田さんのこれまでのタイでの活動も一冊の本『輝く瞳に会いに行こう』にまとめられたのでした。
この活動を通じて支援が集まるようになり、『夢の家』へと送られるようになったのです。
■交流の一日
「4クラブ合同青少年交流会」には、原田さんが日本語教師を務めるダムロン高校から、2人の先生と4人の選抜された成績優秀な生徒が招かれました。
原田さんや、タイの日本語教師に教わった日本語で挨拶をします。成績優秀な生徒ということですが、日本の料理やアニメが好きだったり、ご近所の学校に通っていても不思議じゃない子供たちです。

 

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▲左からプルカキーさん。ボムさん。ニウさん。 ▲ルークムーさん。フレンドさん。
生徒うちの1人は、アカ族出身のフレンドさん。
フレンドさんの家庭もトウモロコシを栽培するわずかな収入で、決して裕福ではありません。しかし、日本へ行きたいという強い希望を胸に努力し、成績有数者3名に選ばれ、渡航が決まったのです。
原田さんの講演会が終わると、お昼ごはんです。『堺フェニックスロータリークラブ』でもよくふるまわれるという、豚汁におにぎり。原田さんも子供たちも一緒になって、いただきます。
ダムロン高校の生徒たちは、別々のテーブルに分かれ日本人の生徒たちと一緒に席につきました。交流を促すための配慮ですが、さて仲良くなれるでしょうか……!?
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▲いつ食べ始めるといいのかな? と、戸惑い気味でしたが。「美味しいです」。 ▲一緒にテーブルを囲んでいただきます。
昼ごはんの後は、コマ回しなど日本の遊びやもちつきがが行われました。日本のインターアクトクラブの生徒たちが、ホストとしてダムロン高校の生徒たちをエスコート。
タイの生徒たちが日本の文化に触れる一日ですが、同時に日本の生徒たちがフレンドさんたちを通じて海外に触れる一日にもなったことでしょう。
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▲原田さんの講演に先立って、ダムロン高校の生徒自身によるタイやダムロン高校の紹介がありました。

 

■未来に向けて
原田さんが支援をはじめて数年。アカ族の村では、再び歴史的な大事件が起きました。
といっても、今度は喜びの大事件。村に水道がひかれたのです。
アカ族の歴史上はじめてのことです。蛇口をひねると、綺麗な飲料水があふれ出る。衛生面での、大きな飛躍が起きたのです。
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▲「チェンライ特殊養護学校」をはじめ、多くの支援により雨水から解放された人々がいます。
水道だけではありません。原田さんたちの支援は、与えて終わりの支援ではなく、自立を促す支援でした。
ダムロン高校の生徒に贈ったミシンは、それを使って自活を促すため。自転車は学校への通学を楽にするため。コンピュータ室は、どこへ行っても通用する技術を身に着け就労を支援するため。
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▲30名ほどのスタッフが裏方として交流会を支えました。 ▲えびす顔の原田さん。これからも奉仕の活動を続けていかれるのでしょう。
全てを投げ打ってタイ王国で活動する原田さんがいるからこその、きめ細かな支援が印象的でした。
ただ、それよりも何よりも印象的なのは、やはり子供たちの輝く瞳でした。日本滞在中に、多くの人々や異国の自然や文化に触れあった子供たち。高野山の雪にはしゃぐ姿、日本の子供たちと交流する姿。
輝く瞳は、確かにそこにありました。

 

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▲同じ年頃の花咲ける女子同士ですね。
堺フェニックスロータリークラブ

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