しめ縄づくりで縁がはじまる

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藁束がざっくり山積みになっています。
「ふた束分使いますので、藁たたきしてください」
堺市南区の畑自治会館に集まった人々に、しめ縄作りの指導をする先生は、辻畑徹夫さん。
「このあたりでは『しぶ』と呼んでいる藁の表面を藁叩きで取って、中の芯だけをつかいます」
指示に従い木槌でトントンと藁叩きが始まりました。
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▲「畑の辻に住んでいたから辻畑と呼ばれるようになったんじゃないですかね?」と辻畑さんは自らのルーツを語ります。 ▲とんとん藁叩き。
■しめ飾りとしめ縄づくり
このしめ縄づくりのイベントは、『畑まちづくり推進委員会』と『若者支援1484』の共同イベントとして開催されました。
しめ縄づくりは、この地区の各家庭で普通に行われていたそうです。
「色々調べてみたのですが、しめ縄づくりは地方ごと家庭ごとに違うようなんです。私がやっているのは私の家で教わったやり方です。ここではしめ縄の株(カブ)が向かって右に来るように作りますが、出雲大社では左ですね。しめ縄づくりに正解はないんのでは? と思います」
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▲太くなっている株が向かって右になるのが辻畑さんのやり方。 ▲足で藁を抑えて縄ない。
しぶを取ったら、次は基本の縄ないです。2本の束をそれぞれねじりながら、編み込んでいきます。ちょっとコツがいって、なかなか先生のようには綺麗にできません。
「全国的には、だいたい8割ぐらいが左ないというやり方なんですが、私は右ないで教わったので右ないでしか出来ないんですよ」
見よう見まね不格好ながらも縄がなえるようになると、次はしめ飾り作りに挑戦。先生の見本を見せられると、本当にこんな立派なものができるのかと期待半分不安半分です。
二重の輪っかをつくって藁でくくり、飾りをつけていきます。
「紙の御幣は清らかさを。ウラジロは潔白さを。ダイダイは先祖代々。ユズリハはこのあたりでは手に入らないので、榊と梅の枝で代用します」
御幣は神社などでよく目にする白いビラビラですが、紙を二つ折りにして鋏をいれるだけで簡単に作れてしまいます。
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▲縄を二重の輪っかにして飾り付け。 ▲立派なしめ飾りが出来てきました。

 

飾りを藁でくくりつけてしめ飾りが完成したら、次はしめ縄づくりに挑みます。
俵状に丸めた芯を中にいれて藁を編み込むことで、太く立派なしめ縄ができあがっていきます。
■伝説に彩られた「畑」
豊かな自然に恵まれ、素晴らしい環境に恵まれているように思える畑地区ですが、その歴史には様々な苦難がありました。
そもそも「畑」地域は、水源に恵まれない山地で、田んぼを作ることが出来ず、麓から見ると畑だらけだったから「畑」と呼ばれるようになったという謂れがある土地柄。
弘法太師が山頂で杖をついた場所から水が湧き出たという湧き水が、今もあります。
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▲会場になった畑自治会館。

 

会場の畑自治会館は立派な建物とグラウンドがありますが、もともとは神社とお寺があった山を切り崩して整地した場所。お寺は明治時代に廃寺になり、宗派もよく分かっていないそうです。
神社はただ「お宮さん」と呼ばれていました。
「車のナビで突然『天祖神社』と出てきて驚きましたよ」
天祖神社という名前は全国の神社でよくつけられる名前で、地元の人にはやっぱり「お宮さん」や「八幡さん」という方が通りがよいようです。
しかしお寺が廃寺になったように、「お宮さん」も近くの桜井神社に合祀されて、参道も荒れた状況となっていました。
そんな状況だったからでしょうか。「畑」は産廃業者に目を付けられます。
■ピンチをチャンスに変えて
「産廃業者が処理施設を作る計画を持ち込んできたんです」
平成17年秋のことでした。そこから産廃業者との戦いが始まったのです。
当時の「畑」ではゴミの不法投棄にも悩まされていました。
「村がこんな状況だから狙われるんだ」
当時の自治会長だった向井さんらは、産廃業者との戦いと並行して、村の美化運動にも手を付けます。
「畑まちづくり推進委員会」の誕生です。
都市整備機構の支援も受け、荒れていた「お宮さん」の参道も整備し、里山や竹林の伐採を行い、村の環境を整えていきます。
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▲『畑まちづくり推進委員会』の槇さんと、自治会長の北井さん。2人の間に見える森にお宮があり、昔はお寺もありました。「お寺は阿弥陀寺と呼ばれていたようです。残っている戒名を見ると浄土真宗だったようにも思うのですが、確かなことはわかりません」

 

そうした活動の成果もあり、処理施設建設計画は立ち消えになりました。
計画は消えましたが、「畑まちづくり推進委員会」は残りました。そして村をよりよくしていこうという情熱も。

 

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▲畑地区の竹林。 ▲竹炭作り。
「竹には活用できる可能性がある」
と竹林の伐採を定期的に行い、竹炭堆肥づくりや、竹のクラフトづくりなどのイベントも。特にタケノコ掘りとバーベキューは楽しみな行事だとか。
農家の多いこの地区では伐採した竹を処理する大型の機材や、皆が集まれる広いスペースのあるお宅もあります。
「クヌギ林もあって、原木しいたけも作っているんですが、菌床しいたけよりも肉厚で美味しいですよ」
実は「畑」には恵まれた資源が沢山あったのです。
■村の外からのコラボレーション
村の資源を活用した他の団体とのコラボレーションも始まりました。
「堺自然ふれあいの森などで活動する『いっちんクラブ』さんと、定期的に伐採活動などをしています」
同じ都市整備機構の支援を受ける団体として知り合ったのが、婚活を主催する「若者支援サークル1484」の石橋さんです。今回のしめ縄作りのイベントでは、『若者支援1484』の呼びかけた若い人たちの姿が見受けられました。
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▲槇さん。『若者支援1484』の石橋さん(左)と上埜さん(右)に挟まれて。

 

「合コンの方が人が多く集まるんですが、合コンだと、おしゃべりが得意な人ばかりが目立ってしまいます。こうしたイベントだと、それ以外の部分で輝く人たちが活躍できるんですよ」
石橋さんは結婚後にこのサークルを立ち上げましたが、参加者から運営スタッフになった人たちもいるそうです。活動そのものが楽しいということかもしれません。
実際にしめ縄作りの様子を見ると、隣の人と相談したりして、自然に会話が生まれています。和気あいあいといった印象です。
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▲御幣の作り方の正解は?
参加した感想は?
初めて参加されたMさん。
「お正月に向けてテンションがあがりました。楽しかったので、また来年も参加したいです」
参加は二回目というTさん。
「去年のことなんで記憶は曖昧なんですが、最初作った時よりも、二回目の方が楽しいですね」
と、すっかりはまった様子です。
Wさんは、毎年お知り合いからしめ飾りをもらっていたそうです。
「こんなに大変な作業だなって知らなかったです」
と、驚かれていました。お友達に感謝ですね。
山間部の「村」である「畑」も高齢化や過疎化が進んでいます。外部から若い人たちがやってくるこうしたイベントは期待されているようです。
「村は閉鎖的なところもありますから、焦らず時間をかけてぼちぼち外部の人たちと一緒にやっていけたらと思います」
しめ縄づくりの後は、近くのオーガニックレストラン「畑キッチン結」さんへ移動。楽しいランチタイムを過ごしました。
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▲古民家を改装し、無農薬の野菜を自ら栽培して使用しているという『畑kitchen結』さん。

 

『畑まちづくり推進委員会』と『若者支援1484』では、これからも様々なイベントを開催する予定。今後の活動に注目です。
畑まちづくり推進委員会
堺市南区畑187 畑自治会館
若者支援サークル1484
堺市南区檜尾471-1西上建設2階


畑kitchen結 

堺市南区釜室122
tel:072-283-1406

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