株式会社 免震工房

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▲免震工房の代表・古田健治さんと制振装置。制振装置、免震装置ばかりでなく、それらの耐久性を実験するための装置も古田さん自らが設計しています。
地震列島の日本。阪神淡路、中越、そして東北。数年おきの大地震を経験し、近い将来にも大地震の発生が確実視されています。
誰もが防災を意識せざるを得ない中、
「地震が起きたら家にいなさい、と言いたい」
と語る人物が堺にいました。「より現実的で精度の高い耐震診断・耐久補強システムを構築したい」と、免震・制振に携わる『免震工房』の代表・古田健治さんです。
■奇跡の土偶を地震から守れ
2004年の中越地震は、多大な人的・物的被害のみならず文化財にも被害を及ぼしました。
国宝の『縄文式土器』が破損したのです。免震装置で保護されていたにもかかわらず。
「免震装置が横揺れにしか対応してなかったんです。中越地震は直下型で縦揺れが襲いかかり、建物は無事でも中の美術品がダメージを受けてしまいました」
横揺れに縦揺れをくわえた地震を再現しての試作実験は大変でしたが、古田さんは『三次元免震装置』の開発に成功したのです。
縄文土器のレプリカ展示物を載せたデモ機の実演をしていただきました。
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▲数学モデルで設計されているため、どれだけ揺れても鉛筆も倒れない三次元免震台の開発に成功(平成17年)し、特許取得(平成23年)。重量バランスが崩れると免震効果が出ないので、繊細な調整が必要です。
▲揺れを起こすと起震装置と連動しているグラスの水がこぼれんばかりに揺れます。
免震装置の下には起震装置があり、スイッチを入れると横揺れが発生してグラスの中の水が揺れ出します。
一方、免震装置の上の土器は微動だにしません。
「鉛筆を立てておいても倒れませんよ」
土器と同じテーブルに置いた鉛筆は直立したまま。
「縦揺れを加えます」
振動装置を操作し縦揺れを加えても、土器はもちろん、鉛筆も倒れないままでした。
「秘密は内蔵しているバネです。普通は作れない特別に設計した緩いバネで、縦横の揺れを吸収します」
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▲直下型にも対応できる三次元免震装置が辰野美術館で採用されました(平成23年)。

 

「長野県の辰野美術館から『所蔵している土偶を守る免震装置が欲しい』という依頼が来ました。土偶は宗教的な儀式に使われると壊されてしまうらしくて、所蔵されている土偶は奇跡的にほぼ原形をとどめている貴重なものでした」
調査すると、懸念していた東海地震よりも、糸魚川・静岡構造線断層帯(震度6弱以上)による直下型地震の危険性が高いことが判りました。『三次元免震装置』でなければ対応できません。
シミュレートしてみた所、中越地震と同じ地震が発生した場合『三次元免震装置』の免震効果は、横揺れで91%、縦揺れで65%に達し、無事に守れることがわかったのです。
■制振装置で10倍の実績
美術品などに地震の揺れを伝えない「免震」に対して、「制振」とは振動・揺れを緩和すること。振り子の原理を利用し、揺れに対してカウンターで揺れをぶつけ、建物や構造物の揺れを制御します。
古田さんは、従来の「衝突型」の制振装置を改良し、広い範囲の複数の揺れ・振動に対応できる「非衝突型」の制御装置を開発したのです。
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▲制振する対象物や位置に応じて、制振装置も各種用意されています。「ボールの制振装置は、リスクの高いものでしたが、これこそ私たちの能力が発揮できる求めているものでした」
▲制震装置の設計も古田さんによるもの。こちらにも縦揺れ、横揺れに対応した特性のバネと粘性の高いオイルが入っています。

 

高架道路の監視カメラや照明柱は、設置場所によっては強い風や交通振動で、ランプが切れたり、金具やボルトがゆるんだり、時には金属疲労でポールが破損するため、制振装置がついていることが望ましいのです。
「免震工房の制振装置は首都高速や中部空港の外周路の監視カメラや照明柱にも使われています」
一般的な制振装置では思うような効果が出ない難しい条件であっても、『免震工房』の制振装置は高い効果を発揮しています。
「この装置は精密に出来ており数理モデルで正確な計算が出来るのです」
制振装置を設計したのは古田さん自身。この精密な装置のおかげで、他では不可能なシミュレートが可能になりました。制振装置をどこにどれだけ取り付ければ、どのぐらい効果が出るのか分かるのです。
金属疲労を引き起こしやすい場所に制振装置を取り付けた結果、それまでは1年以内に取り替え作業が必要だったところが、すでに10年以上も問題なく過ごしているケースもあります。実に10倍以上の効果を見せるなど多くの実績があるのです。

 

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▲場所によっては、一日10万回以上の交通振動や、絶えず吹き付ける風速5m以上の風による共振現象など、ポールは過酷な環境にさらされています。写真は愛知県の高架道路の照明柱に取り付けられた制震装置(非衝突型)。
■耐震診断の”家ドック
「大震災では、多くの方が建物の倒壊で亡くなっています」
地震に備えるため、耐震診断をしたい、補強工事をしたいという人は少なくないでしょう。
しかし補強工事をしても、建物がどれだけの強度を持っているのか、一般的な耐震診断では設計図をもとに割り出しており、実際にその診断で正しいのかは、いざ地震が来てみないとわかりませんでした。
『免震工房』では、人間が感じないぐらいの細かな地盤の揺れ、「常時微動」を計測することにより、実際の建物の強度を計測します。
「新築の時に耐震診断をして、建物が老朽化してリフォーム時期になったら再び耐震診断をして、的確な補強をするのが理想ですね」
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▲耐震診断をするための装置。生活振動に困っている一般家庭では、洗濯機のある位置、子どもがよく走る部屋などを指定して計測し制振装置の効果をシミュレートできます。
現状の難点としては、耐震診断の機材が膨大な量になり、家中に測定器や配線を張り巡らせ、操作にも専門知識が必要があること。これでは気軽に耐震診断が出来ません。
「大学の機関を通じて小型化に取り組んでおり、キャリーバッグ1台程度の大きさになる予定です。もうすぐ試作品が出来て、これからプログラムを開発する所です。2013年の4月にはサンプルが出来るでしょう」
建物の図面と、時間も数時間で耐震診断が出来るようになる予定です。
「人間ドックと同じように”家ドック”をやりたいんです」
他では出来ない数理モデルによるシミュレーションを行える免震装置と制振装置。これを生みだしたのは、古田さんの特別な経歴と人生哲学に秘密がありました。
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▲あらゆるデータが数値化されます。プログラムが完成すると自分の家にする耐震補強の効果を目で確かめることができます。 ▲必ずデータをもとに語る古田さん。メーカーから送られてくるデータも、自分で大学に持っていき確認します。
■キャリアの締めくくりに選んだ仕事
子供の頃「発明する人になりたい」と憧れた古田さんは、『昭和アルミ』の子会社『昭和ポール』の設計部に就職し腕を振います。
「国旗などをあげるポールがありますよね。モスクワオリンピックの時に、雪でワイヤーが動かなくなったら困るというのでワイヤー内蔵ハンドル式の旗ポールを設計したのは僕なんです」
会社が創立したばかりということもあり、少数社員で現場作業と事務作業のいったりきたりだったと古田さんは振り返ります。
「自分が設計し書いた図面で物が出来ていく過程を身をもって経験できました。私を技術屋として育ててくれた日々でした」
設計部門で20年間勤めた後、畑違いの「構造計算」の分野に飛び込みました。
新たな職場である名古屋の飯島建築事務所は、60m以上の超高層建築物の特別な構造計算を請け負う、日本でも指折りの設計事務所でした。
この事務所でも古田さんは20年間のキャリアを積みます。
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▲なんと堺市民に馴染み深い大小路の電灯や車止めも若き日の古田さんの作品!
▲今も古田さんが設計した電灯が大小路の夜を照らしています。
「構造物の揺れを緩和できるような制振装置を作れないか?」という話が、飛び込んできます。「技術屋」と「構造屋」が一体となれる仕事で、両方の技術を持っている数少ない人間である古田さんの経験が生かせる仕事でした。
二つのジャンルの知識と技術が結集したのが、数理モデルで計算できる免震装置と制振装置なのです。
古田さんは『免震工房』での仕事を、キャリアの締めくくりにと考えています。
「最後に世の中の役に立つような仕事がしたいと思いました。社員にも無理に儲けようとしなくていいと言っているんです。だから従業員もこれ以上増やしませんし、自社の工場も持ちません。この制振装置の部品は全部堺の工場に頼んで作っている『made in 堺』なんです」
地元のメーカーと一緒に仕事をするのも、地域への貢献を考えてのことでした。
古田さんが住む堺市の泉北地区は古い建物が少なくありません。住人もお年寄りが多く、耐震対策が急がれています。
「地震が起きた時に『家にいれば大丈夫ですよ。地震が収まってから逃げてください』と、責任を持って言えるようにしたいんです」
来年の4月、開発中の耐震診断装置が完成したら、まずは地元の知り合いのお年寄りの家を診断する予定です。
「すでに4軒予約が入っているんですよ」
幼い頃の『発明家になりたい』という夢を叶えた古田さん。しかしその活躍は今後ますます多くの人に求められることでしょう。
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▲「自分の背丈にプラス一歩先を見て生きることですね」必要に迫られると学校に通って知識や技術を取得し、経理など会社に必要な業務は一通り自分で出来るという古田さん。
株式会社免震工房
〒590-0812
大阪府堺市堺区霞ヶ丘町1丁2番6号
Tel :  072-241-5290
Fax: 072-245-0923

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