坂本さんがバチを置き、鈴の音を鳴らしたのが第二幕の開始でした。
ジャンベ(西アフリカの太鼓)に手をあわせて一礼し、手のひらでたたき出したのです。
足踏みするたびに、足首に付けられた鈴が鳴り、ドラムの音はたたき付けるように激しさを増しました。
坂本さんの表情は沈思する木彫りのトーテムさながら。
静謐さ故に、むしろ内なるパワーがいや増します。
重く響くドラムに込められたのは、何を思い伝えるのか。
濃密なパッション。
怒り、憤怒、誇り、強い感情がないまぜになって空間を満たします。
そして不意に訪れた終演。
誰かの溜息がもれました。
坂本さんが立ち上がります。
沸き上がる拍手。
ギャラリーのオーナー北野庸子さんの挨拶で私たちの意識は堺の町なかに帰ってきたのでした。
■#2 Mobile art
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▲初来日のMisPixelsさん。カナダの博物館で彼女の作品がモバイルアートとしてははじめて販売されるなど、国際的な評価も高いモバイルアートの先駆者です。 |
音の余韻が残る中、乳白色の壁に向かいます。
壁にはPixelsさんの作品。
作品に収められている風景のもとになっているのは、冬には-40度、夏には40度にもなるカナダの風景です。Pixelsさんは、カナダの大都市郊外の田舎に居を構え、変化の激しい都会と雄大な自然を行き来する生活をしています。
彼女の作品は、二つの環境からの刺激を受けて創作されているそうです。
これらの作品はモバイルアートと呼ばれ、iPhoneで撮影した画像をiPhoneアプリでデジタル加工したものです。デジタルで描かれた丸や四角の幾何学模様な、内に宿るパワーを描いたものだとか。
「ポケットの中にアトリエが入った」
Pixelsさんは、その場で受けたインスピレーションをその場で作品に出来るのです。
モバイルアートの本領は、携帯性だけではありません。
ネットでは自分の発言や作品にハッシュタグと呼ばれる分類のタグを付けることがあります。作者/発言者が作品の意図を明確にしたり、言外のものを含ませるなど様々な効果を持ちます。
Pixelsさんはハッシュタグをつけるという行為もアートの中に取り込んでいます。#love #like #live……とタグを付けることによって、「私はこう」というと同時に「あなたはどう?」と問われているように感じます。
これらのアートは送り手と受け手を固定的な関係には止めません。鑑賞者を、ただ鑑賞させるだけの立場に甘んじさせない「問いかけのアート」です。
時に人を不安にさせ、落ち着かせなくするアート。刺激的なアートでした。
■#3 Gallery
ライブ後。
雑談する方もいれば、ジャンベやドラムを囲んで楽器に触れる方もいます。
今回のコラボレーションは、アートに興味のあった坂本さんが「いろはに」を訪れ、廊主の北野さんと出会ったことがきっかけでした。
出会いと出会いが化学反応を示し、いつの間にか、音楽ファンとアートファンが一堂に会し、国境も趣味も越えて人が集い今日のイベントになったのです。
Pixelsさんは、日本スタッフの尽力で、アップルストアの講演、幼稚園でワークショップ、京都や高野山を訪問したりと、日本を満喫したそうです。
「日本に来たアーティストが喜んでくれると、今度は日本のアーティストがカナダに行った時、向こうの方がすごい歓迎をしてくれるんですよ」
北野さんは、次の出会いを思い描いているようです。
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▲この後、意気投合しアーティストたちは堺の居酒屋へ向かいました。 |
※『エクスポ・カルチャー・ケベック&ジャパン』は、北野さんとカナダのアーティスト・アニー・デュポンさんの出会いから始まり、今回の個展は第11回のイベントとして開催されました。