堺ブレイザーズ観戦記 2022-2023(2)Vs VC長野トライデンツ戦
堺ブレイザーズの観戦レポート(前編)の後編です。今年(2023年)観戦したのは、日本製鉄堺体育館で開催されたVC長野トライデンツ戦です。2023年2月17日の時点で、17勝をあげてリーグ3位の堺ブレイザーズに対して、VC長野トライデンツは1勝で10位と順位は大きく開いています。第1セットは、その順位差が反映したかのように一方的なスコアでセットを得たのは堺ブレイザーズでしたが、第2セットはVC長野トライデンツが奮戦しセットを取り返します。第3セットは堺ブレイザーズが大差で先行する展開でしたが、またもVC長野トライデンツは粘りをみせて驚異の追い上げを見せるものの、序盤のアドバンテージは大きく堺ブレイザーズが逃げ切りセットカウントは2-1に。
ここまでVC長野トライデンツの健闘が光り熱戦の様相をみせていますが、上位をキープしファイナルステージ進出を狙う堺ブレイザーズとしては、第4セットで勝負を決めたいところです。さて決着の行方は?
■熱戦の決着
ところが第4セットの幕開けは、VC長野トライデンツのキャプテン池田幸太(9)選手のサービスエースから。いきなりの先制パンチです。その後もミスで失点する堺ブレイザーズに対してブレイクを続けるVC長野トライデンツと、第3セット後半の勢いが持ち越される試合展開に。8-12で先に12点に到達し、テクニカルタイムアウトを取ったのはVC長野トライデンツでした。
テクニカルタイムアウト明けも両チーム、好プレーの連続でサイドアウトが続き一進一退。ここで流れを変えたのは、まずは堺ブレイザーズのシャロン・バーノン エバンズ(13)選手でした。強力無比のスパイクでブレイクし、続けさまに得点を重ねます。ついでサーバーとして交代出場したルーキーの赤星伸城(22)選手。なんと2連続でサービスエースを決め、同点、そして逆転し17-16。若い力が躍動します。
こうなってくると、堺ブレイザーズが地力を発揮します。赤星選手に負けじとキャプテンの出耒田敬(7)選手が、クイックアタックにサービスエースを決めて連続ポイントし23-19。そしてバーノン選手の爆発するようなスパイクが決まって24-20。最後はバーノン選手のブロックポイントで25-20。まさに千両役者が試合を決めたといった風情でした。
さて、試合後には勝利者インタビューがあり、この試合で最も活躍した選手がVOMに選出されてインタビューを受けます。この試合では誰が選ばれるのでしょうか? 最多得点をあげているバーノン選手か、安定した活躍を見せる樋口裕希(2)選手か、あるいは第4セットで流れをかえた赤星選手も面白いかもと想像を巡らしていましたが、コールされたのはセッターの深津旭弘(17)選手でした。今回も縦横に攻撃陣を操り、感情豊かな表現でチームを盛り上げる深津選手の姿は印象的でしたので、もちろん納得の選出です。名前が呼ばれた瞬間拳をつきあげて喜びを爆発する姿にほっこりしてしまいます。
さて、試合後には、監督と選手の記者会見があります。この接戦、堺ブレイザーズの監督と選手はどう見たのでしょうか?
■記者会見
記者会見に及びしたのは、キャプテンの出耒田選手、VOMの深津選手、最多得点のバーノン選手の三人です。まずは試合の振り返りから。
出耒田「自分自身4試合空いて、久々の試合ということで、まだまだでした。ラリー中のクイックの決定率であったり、そういう所に課題が見つかったので、しっかり修正して明日はもう一段上のプレーができるように準備したいと思います」
深津「明日も厳しい戦いになると思うので、今日の1セット以降のモチベーションで臨みたいと思いますし、相手よりも粘ってきたいと思います」
バーノン「今日の試合に関していえば、やはりちょっとハッピーとはいえない結果でした。もっと良くならなければいけません。もっと重要な時に集中しなければいけないと思います。特にサイドですね。それからゲームプランも見直さなければいけないと思います。タッチに関しても今日はあまり良くなかったと思います。そして、今日はチームとして良くなる機会をちょっと逃してしまったと思うんです。なぜかというと、これからプレイオフに挑むチームになるためには、1試合1試合もっと集中してプレイしなければいけないという風に思いました」
次に記者からの質問です。
--先ほど深津選手は、1セット目以降のモチベーションでいきたいとおっしゃっていましたが、1セット目と2セット目以降ではなにかさがあったのでしょうか?
深津「1セット目はああいう形で勝ったので、2セット目以降は難しい感じのゲームになりやすいというか、自分たちは抜いてるわけではないのですが、有利にこっちは進められるって安易に考えちゃうので。とにかく2セット目以降ぐらいの緊張感をもってチーム全体がプレイすることが重要だと思います。丁寧にやるってことが明日も重要になってきます。(VC長野トライデンツは)絶対に簡単に勝てる相手じゃない。名古屋(ウルフドッグス)にもフルセットしているしサントリー(サンバーズ)にも勝っているし、先週はJT(サンダース)にもフルセットしているし。力のあるチームだとはわかっているので、選手が自分たちのやることにどんどん集中して、フォーカスしてやることが重要だと思います」
--ありがとうございます。バーノン選手、今季の堺ブレイザーズはとても好調だったように思えますが、今日の試合に集中できなかった理由はなんだと思われますか?
バーノン「チームの状態は、身体的にはいいコンディションであると思うんですけれど、今日の試合については1セット目を簡単に取れすぎてしまったために、皆さんリラックスしてしまった。1セット目をとれた理由っていうのは、全員がすごくテンションをあげて集中して試合に挑んだのですけれど、深津さんも言っていましたが、2セット目に関して言えば、ファイティングスピリッツ、集中力が落ちてしまったという風に思います。4セット目は、いつも通りブレイクがとれて、試合にも勝てたことに関しては良かったと思います」
--なるほど、では今シーズンは全般的に好調でファンとしては嬉しい限りなのですが、その要因はなんだと思われますか? 出耒田選手。
出耒田「そうですね。昨シーズンと同じメンバーで戦ってまして、最後は優勝争いから脱落してしまいましたが、しっかりと自分たちのバレーが通用するっていうことがわかりました。そういった所ですごい自信になった。自分たちのバレーをやればどこ相手でも勝てる力を持っているということを、選手一人一人が自信として持っているので、今の結果につながっていると思います」
--深津選手からみて、昨シーズンと今シーズンだと何か積み上げがあったりとか、変化があったりとかはどう思われますか?
深津「昨シーズンは優勝争いをして、ここからが重要だと思います。昨シーズンはここから自分たちはいい状態にいけなかったんで、ここからが重要です。今まで積み上げてきたものが、台無しになって、ちょっとしたきっかけで崩れるっていうのは、大いにあることだと思います。今、好調だったというのは、まあまあの自信にしつつ、これからが本当の勝負というか、ここを経験することによって、よりチームがどういうスピリッツをもって闘えるのかとか、技術的にどう闘えるのかの証明や進化につながってくると思うので。これは本当に重要だなと思います」
--ファイナルステージに行くということに関して、バーノン選手は集中が必要とおっしゃっていました。ファイナルや優勝に向けて他に何が必要か、他に付け加えることがあればお願いします。
バーノン「ファイナルステージに行くことに関しては、個人的にはそれぞれ自覚を持つということが重要だと思っていますが、その自覚というのはなぜ自分がこうやって、ここで戦っているのかということを、もう一度考えて欲しいということです。なぜかというと、例えば、毎日、アキ(深津選手)でしたら、お子さんと奥さんを置いて体育館に来て、なぜ一所懸命に練習しているのか。自分は闘っている理由というのは、全くハッキリ分かっていて、なぜ自分が闘っているのかというと、自分は母のために闘っています。それが闘う理由です。一人一人、なぜ自分がバレーボールをやって、なぜ闘っているのかということを考えてほしい。わかってほしい。理解してほしい。それが重要だと思います。また、先ほど出耒田くんも言っていたのですが、このチームになって2年目になって、みんなで闘っていくということについて、ハーモニーの中でケミストリーが生まれてきていて、いい感じになってきているということを言っていたのですけれど、やはりそれも重要です。例えば、選手同士で何が必要なのかということを言い合うことも必要だと思います。それはもちろんお互い尊敬をもってということなんですれど」
--そのあたりキャプテンとしては、チームの雰囲気は今どんな風だと感じられていますか?
出耒田「見てもらえばわかるように、チームの雰囲気はとてもいいので、ここからは本当に必要以上にネガティブにならずに、ポジティブに物事を捉えて。本当に負けられない試合が続く、そういった雰囲気を大事にしたいと思っています」
--ありがとうございます。ここから少し角度をかえて、皆さんと地元堺との関わりについて少しお聞きしたいです。この数年、特に大浜体育館が新しくなってから、町中で堺ブレイザーズのポスターや幟を見ることが多くなってきたように感じます。鉄道会社とのコラボレーションなどもありました。選手として何か変化であったり、市民との交流で何かエピソードがあれば教えていただきたいと思います。
出耒田「本当そうですね。色々なところにチラシであったり、ポスターであったり、幟が出ていたりします。そういったところですごいアピールはしているんですけれど、なかなか堺市内を歩いていて声をかけられないので、まだまだ認知不足なのかなっていうのは感じています。なかなか交流しづらいご時世ですし。機会があれば、そういったイベントごとにも、しっかりと積極的に参加していきたいなという風に思っています」
深津「認知としてはまだまだ。自分たちの努力も足りないし、チームとしてもっと出来ることはいっぱいあると思います。とにかくバレーボールというものの価値だったり、選手一人一人の価値っていうものこれから上げていくように一人一人が努力する必要もあると思います。バレーボール全体で考えないといけないと思うので、このチームはそういう部分で先駆者として、バレーボールの価値を上げていくような、引っ張っていけるようなチーム、クラブになれるように。その一員として頑張りたいと思います」
--深津選手はVOMとして、今日はスポンサーから自転車が提供されていました。これも面白い試みだなと思いました。自転車の町、堺ということもありますし。深津選手は、いただいた自転車でどこか行きたいとかはありますか?
深津「ちょうど家族で1つ自転車が足りなくて、取れたらいいなと思っていたんです。今日は本当にうれしく思っていますし、近くに色々大きい公園がいっぱいあるので、春になってもうちょっと暖かくなったら自転車で行きたいなと思います」
バーノン「自分はあまり外に行くタイプではないので、市民の方との交流というのはあまりないのですけれど、自分の家の横にハンバーガー屋さんがあって、そこの人たちはいつでもウェルカムで、自分がバレーボールプレイヤーであるということもわかってくれています。また、自分がいつも行く床屋さんがあるのですけれども、そこでも一緒に写真を撮ってSNSにあげてくださったりとか、してくださったりしています。また町中で宣伝物を見るのですけれど、このホームゲームやどこの会場に行っても応援に来てくださる皆さまがいらっしゃるので、こうやってプロモーションしていくことももっと続けていって、市民との交流をして、宣伝してけるような形になったらいいと思います」
--では最後に、ファイナルステージに向けての意気込みなどのコメントを一言いただければと思います。
出耒田「本当にここから、今リーグのランキングを見てもらってもわかるように、上位が本当に拮抗していて、ここからの一敗というのが響いてくると思います。まずは目の前の一試合を勝てるようにチーム一丸となって頑張っていきたいと思います」
深津「明日も重要な試合があるし、どんどん重要な試合が多くなってくると思うのですけれど、こういう状況を楽しめるようなメンタルでいて、毎日練習したいと思います。試合をしたいと思います。この状況を辛いなとかそういう部分じゃなくて、楽しいなって、どんどんバレーボールができるのが楽しいなと思って、このメンバーとやって楽しいな、嬉しいな、幸せだなって、そういう気持ちを持ちながら、本当に試合の時はコートの上でそういうものを表現したいと思います」
バーノン「やはり、これが幸せだなという風に思って、その一つ一つの物事に対面していくことがすごく重要だと思います。なぜかというと、本当に色んなことに毎回対面しているわけです。けれどもその結果がどうなるのかっていうことは全くわからないわけなので、その一つ一つに集中して、好きなことをやっているということなので、結果を見るような形でやっていきたいと思っています」
続いて千葉監督の記者会見、試合のふりかえりから。
千葉「非常に難しいゲームではありましたけど、最終的にしっかりと勝ち切れたというのは大きかったです。なかなか自分たちの思い通りにいかないゲーム展開の中で、しっかりと結果を出せたこと、チーム全員で点数を取りに行けたっていうことは、非常に良かったと思います。今日のようなVC長野トライデンツさんのように粘り強いバレーボールに対して、根負けしないような姿勢であったりは修正する必要があるので、明日以降しっかり修正して挑みたいと思います」
--ここまで高い順位をキープする中で、今日のVC長野トライデンツさん相手にここまで苦戦するというのは想定してらしたのでしょうか?
千葉「前回長野でやった時も非常に難しい試合展開になったので、簡単にはいかないことは想定していました。もうリーグも終盤に入って、各チーム2周目にあたるので、それぞれうちも含めて各チームともデータは揃ってますので、その中でどれだけデータを上回れるかっていうことは大事だと思いますけれど」
--選手からは集中力の問題があがっていましたが、苦戦の原因はなんだったのでしょうか?
千葉「まず一つはVC長野トライデンツさんが、非常にバランスが良くて、拾ってつないでという粘りのバレーボールをされたきたっていうことと、我々の方もレセプションの所でちょっと崩されてセッターが2、3歩動く場面があって、そこがリズムに乗り切れなかったところで、選手たちは多分ストレスがどんどん溜まって集中力が途切れたのではないでしょうか」
--ファイナルステージ進出が見えてきた中で、勝ち抜くために必要なものは何だという風に考えていますか?
千葉「まだレギュラーシーズンが全部終わってないので、あまり詳しくは言えないのですけれど、まずやってきたサーブで崩してブロックで止めるというバレーボールプラス、しっかりとクイックとパイプで真ん中の攻撃でしっかりとサイドアウトを取るっていうのは1年間継続してやってきたことなので、それが最後までしっかりと自分たちを信じてできるかっていうことだと思います」
--選手にもお聞きしたのですが、堺市のクラブチームとしての認知度についてはどう思われますか?
千葉「少しずつ色んな企業さんとのコラボレーションしたり、イベントをしたりっていうことはできているんですけれど、実際にコロナ禍もあって、選手と触れ合う機会っていうのはそんなに多くは持ててないので、そういうコラボを含めたイベントに選手と市民の皆さんの触れ合う機会が増えればもっと認知度はあがる思いますが、すぐには上がらないので地道にやっていくのが一番だと思います」
--ありがとうございます。最後にファイナルステージに向けて市民へのコメントをお願いします。
千葉「もちろんファイナル。その後の日本一というのを目指してずっとやってきているんで、一球一球、一つのボールに執念を燃やして闘っていきたいと思います。市民の皆さんにはぜひ堺ブレイザーズを応援していただければと思いますし、見に来ていただければ満足して帰っていただけるような試合を我々もしたいと思いますので、ぜひ応援してください」
堺ブレイザーズの勝利で終わった試合でしたが、VC長野トライデンツの選手の奮戦と、観客席の応援が印象的でした。堺ブレイザーズといえば、リーグ屈指の熱狂的な応援がチームカラーのひとつですが、アウェーの堺まで駆け付けたVC長野トライデンツサポーター&ファンの応援も決して引けを取るものではありませんでした。好プレーの時の熱気は、選手の背中を押していましたし、会場全体を盛り上げ、この日の試合を魅力的なものにしてくれました。影のVOMはVC長野トライデンツサポーター&ファンの皆さんだと個人的には思います。
相手チームの応援を取り上げた以上、堺ブレイザーズの応援についても取り上げねばなりますまい。コロナ禍で声が出せない、客数を半分にするといった逆風の中、なおき応援団長やスタッフの皆さんは大変な苦労をされていることは想像に難くありません。しかし、逆風だからこそなのか、応援が工夫され洗練されてきているように感じました。また、堺をホームタウンとするプロ野球独立リーグチームの堺シュライクスのチアリーディングチームが応援に参加していたことも特筆しておきたいことでした。競技は違えど、横のつながりることによって、地域のスポーツ文化全体が盛り上がっていくのなら、それは素晴らしいことだと思うのです。